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ソードアートオンライン VIRUS

作者:暗黒少年
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速さと力の勝負

 
前書き
ゲツガの戦闘。戦闘描写って描きにくい…… 

 
「っと、じゃあこの辺でいいかい?お兄さん?」

「ああ。だが、お兄さんって言うのはやめろ」

「OK、じゃあゲツガさん。早く始めようか」

「もう始めていいんだぜ?俺は準備が整ってるからな」

「そう、じゃあ遠慮なく行かせてもらうよ!」

 バルダはそう言って三十メートルくらいあった距離を僅か一瞬で詰めて首に短剣を突き出してくる。一瞬の出来事に反応するのに遅れたが何とか交わす事ができた。

「あら、結構速くしたつもりなんだけど避けれたんだ。ゲツガさん目がいいね」

「バーカ。たまたまだ。さっきの攻撃なんてまったく反応できてなかっただろう」

「ふーん、そうには見えなかったけどね。僕の剣を初見でたまたまで避けられるなんて普通できないよ」

 そう言ってゲツガは素早く矢を番え、バルダに向けて放つ。しかし、バルダは一瞬で数十メートル移動してから再び突っ込んで来る。ゲツガも追いつかれないように飛行するが、バルダのほうが装備の重さが軽いおかげでゲツガよりも速く、追いつかれてしまう。素早く矢を放ち、距離を取ろうとするがそれを身体を捻るだけで避けられて、素早く首許に短剣を突き出してくる。ゲツガはそれを掠りながら避けて、弓で払うように攻撃するとようやくバルダはゲツガと距離を取った。

「すごいね、ゲツガさん。僕とこんなに渡り合えるなんて!ジンさん以来だよ!」

 バルダは嬉々した声を上げてゲツガに賞賛を送っていた。

「お前こそ強いな。それよりも三十秒経ったんじゃないのか」

「いや、ジンさんもあのスプリガンと殺すまで戦うつもりらしいし、僕達もどちらかが死ぬまでやろうよ」

「ふざけたチビだぜ……それなら俺もテメェを泣かせるまでやらせてもらおうじゃねえか」

「できたらねっ!」

 そう叫んで攻撃を開始する。しかし、今度は単発の攻撃ではなく連発の攻撃、ゲツガはそれを何とか掠りながらも避ける。しかし、この世界では痛みを感じなくなってしまって気が緩んでいるのかあの世界の感覚ほど研ぎ澄まされない。

「どうしたの、ゲツガさん!!早く攻撃してきなよ!!そうしないと死んじゃうよ!!もっと僕を楽しませてくださいよ!!」

 そう言ってさらに攻撃する速さが加速する。どんどん身体が追いつかなくなりどんどんHPが削られていく。

『このままじゃヤバイ……』

 すると、後ろで黒い煙が出ていた。この黒いのは確か、スプリガンの幻惑魔法の一つだったような気がする。範囲が広く蝶の谷を覆っている。ゲツガは今の状況を打開する案を考えるのと逃げるために入ることにする。ゲツガは弓の端っこを持ち振るってバルダを離した後、素早く黒い煙の中に入った。

「どうしたの?逃げる気なの?僕を泣かせるんじゃなかったの?」

 バルダは外からそう叫んでいるがゲツガは黒い煙の中で考える。あのガキを倒す方法を。あいつの攻撃は自分にとっては見切れないぐらい速いわけではないが攻撃に移れていない。しかも、奇襲をかけようにも確実に避けられる。考えていたとき、大きな風により黒煙が吹き飛んでゲツガの姿を曝け出させた。その風の出所を調べるとユージーンが両手剣を振って起こしたものと知る。

「やあ、ゲツガさん。ようやく出てきた、というよりも姿を現したね。どう、少しは僕を倒す方法を思いついた?」

「全然」

 そう言ってゲツガは弓を畳み背中に戻した。

「そう。じゃあつまんないから死んでくれる?ゲツガさん」

そう言ってバルダはゲツガに向けて突っ込んで来る。そして首に向けて短剣を横薙ぎに斬りつけてくる。ゲツガはただ動かずにその攻撃を食らうかに思えた。しかし、ゲツガはそんな気はさらさらない。短剣を持つ腕を掴み攻撃を止めた。

「なっ!?」

「全然思いつかないから本気で行くことにするわ」

「寝言は寝て言ってくれるかな、ゲツガさん?攻撃を避けるのに精一杯だったくせに何言ってるんですか?」

 そう言ってバルダは掴まれていた腕に握られた短剣を落としてもう一方の手に持ち替えて斬りつけてくる。それももう一つの手で止める。

「どうしたんだ?さっきまでの威勢は?」

「そういうゲツガさんはどうなってんの?弓を背中に戻しただけでここまで変わるんですか?」

「もともと俺は近接格闘や剣の方が得意なんだよ。だいだい弓は近距離で戦うのは不向きだろ」

 そう言ってからゲツガはバルダを蹴り飛ばそうと足を上げたとき、バルダは身体を回転させて腕を外そうとしたが、ゲツガはそれぐらいで外れるほどやわな筋力値をしていない。蹴りを入れて吹き飛ばす。

「ちっ、とっさに同じ方向に飛んで衝撃を和らげたか……だけど、俺の蹴りの衝撃はそんなんじゃ受け流せないくらいハンパないぜ」

 空中で受身を取ってから辛そうな表情でこちらを見てくる。

「げほっ、げほっ……ゲツガさん……アンタ、どんな馬鹿力してんの……一撃で四分の三減ったよ……」

「人をおちょくってるからだ、ボケ。それと、テメェのその軽装が悪いんだろ」

 そう言ってる間に回復形の魔法を唱えて回復していていたのでムカついた。

「テメェ!人が話してるときに何回復してんだよ!」

「無駄口叩いてるからですよ」

「減らず口が……お前を確実にぶん殴ってやる!」

 そう言ってゲツガはスペルを唱えながらバルダに突っ込んだ。今度はバルダは警戒してか、ある程度の距離を取って飛行している。その間を詰めようとするが逃げに入ったのか、一向に近づいてこない。そしてスペルを唱え終えたゲツガは地面に降りて手を地面に置くと岩の柱が幾つか出てくる。

「さあ、お前に送るプレゼントだ」

 そう言って一つの柱を殴って壊すと持ち上げ空を飛んでいるバルダに向けて投げ飛ばす。

「ちょ、ゲツガさん!それはありえないっしょ!!」

 バルダは慌てたようにそう言ってから、柱を避ける。ゲツガは近くにある柱を一つ一つ壊すとその柱をバルダに向けて投げ飛ばす。

「ちょっと、いい加減にしてくださいよ!!そんなん食らったら僕終わりじゃ……ってあれいない?」

 さっきまで投げていたゲツガを見失ったバルダはあたりを捜索し始める。だが、ゲツガを見つけることができない。

 ゲツガは自分で投げた柱のバルダからは死角になる部分に引っ付いていた。そしてゲツガはバルダの近くまで来ると柱を殴って破壊する。驚いてその方向を向くバルダは岩の破片を避けるように飛ぼうとしたがゲツガはそれを捕まえる。

「捕まえたぜ、おチビさん……」

「クソ!!離せ!!」

 そう言って短剣を腕に刺してくる。そのせいでHPが減らされイエローにまで行くが空いている腕でその短剣を掴んで砕いた。

「なっ!!嘘でしょ!?」

「肉を切らせて骨を絶つ、ってやつだ。じゃあ、終いにしようか、サラマンダーのチビ」

 そう言ってゲツガは拳を構えて顔面を思いきり殴った。HPは急激に減ってゼロになると炎となってその場に留まった。それを掴むとキリトの方を見る。キリトの方もちょうどゲツガと同時に終わったようだ。ゲツガはキリトの近くに飛んでいく。

「お疲れ、キリト」

「お前もだろ」

「そうだな」

 拳を打ち付けると周りからドッと歓声が沸く。

「見事、見事!!」

「すごーい!ナイスファイトだヨ!」

「すげーぞ!お前等!!」

「いい勝負だったぞ!!」

 シルフ、ケットシーだけではなくサラマンダーも叫んで先ほどのバトルを褒め称えていた。ゲツガは苦笑してからキリトの方を見るキリトも苦笑してからいつも通りの飄々した態度に戻り右手を上げた。

「や、どーもどーも!」

 ゲツガも苦笑して拳を上げた。そして、リーファの方を向いてキリトが叫ぶ。

「誰かこの二人の蘇生を頼む!」

「解った」

 そう言うとシルフの髪の長い和服を着た女性が叫び、こちらの方に飛んでくる。ふわふわと漂うユージーンとゲツガが持っていたリメインライトの傍らまで飛んでくるとスペルワードの詠唱を開始する。

 やがて、女性の手に青い炎が迸り、二つの赤い炎を包み込んだ。複雑な立法魔法陣が現れその中央で二つの残り火は徐々に人の形を取り戻していく。そして閃光とともに二人は身体が戻る。そのまま五人は無言のまま、台地へと降りる。しばらくの静寂。

「……見事な腕だな。俺が今まで見たなかで最強のプレイヤーだ。貴様は」

「ホント、最後はゴリ押しだったけどゲツガさん、あなたと戦えてよかったよ」

「「そりゃどうも」」

 キリトとゲツガは短くそれに応じる。

「貴様らのようなプレイヤーがいるとはな……。世界は広いということかな」

「そりゃ、九種族もあるしこんなにも広いんだ。俺達よりも強い奴なんてまだたくさんいるかもしれないぜ」

 ゲツガがそう言うとユージーンは確かにな、と呟く。

「それで、これで俺達が大使だって言う話を信じてもらえるかな?」

「……」

「うーん」

 ユージーンは目を細め、バルダは考えるように腕を組む。

 その時、台地を取り囲んでいたサラマンダーのランス隊の一人が歩み寄ってくる。そしてガシャリとと鎧を鳴らして止めると、左手で面頬を跳ね上げた。

「ジンさん、バルダ。ちょっといいか」

「どうしたのカゲムネさん?」

「カゲムネかなんだ?」

 たしか今日のルグルー回廊でサラマンダーのメイジが言っていた名前だな。そして、この前、ゲツガの質問に答えずにパッと帰ったサラマンダーだった。

「昨日、俺のパーティーが全滅させられたのはもうしってるよと思う」

「ああ、カゲムネさんが珍しくぼろぼろに帰ってきたやつか」

「それがどうかしたのか?」

「バルダは相変わらず痛いとこばっか突いてくるな。まあ、その話しなんだけど、この二人にやられたんだ。確かに逃げる前にちょっと見たが連れにウンディーネがいたよ。それに、エスの情報でメイジ隊が追ってたのもこいつらだ、確か。どうやら撃退されたらしいけど」

 エスとは何かわからないがなぜかこのカゲムネという男は何かと口裏を合わせてくれたらしい。そして、ユージーンとバルダは軽く頷いて言った。

「そうか」

「ふーん」

 そして二人は笑みを浮かべ、

「そういうことにしておこう」

「まあ、ジンさんがそういうなら僕らは従うしかないね」

 そして、キリトのほうを向き直り、言う。

「確かに現状でスプリガン、ウンディーネと事を構えるつもりは俺にも領主にもない。この場は引こう。だが貴様とはいずれもう一度戦うぞ。そっちのケットシーもだ」

「僕も、今度こそゲツガさんに勝つからね。でもって、キリトさんとも戦うからね」

 そう言って四人は互いの拳を打ち付ける。その後、バルダとユージーンは身を翻し、翅を広げ地を蹴った。そしてその後に飛び立つカゲムネは一瞬こっちを見ると、不器用に右目をつぶる。借りは返したとでも言うつもりだったのだろう。ゲツガは口をかすかに動かしてありがとうと呟いた。そして、その後についていくように残りのサラマンダーも隊列を組みなおして飛び去った。

 そして、サラマンダーが空の彼方に消えていくと同時にキリトは笑いを含んだ声で呟いた。

「……サラマンダーにも話の解る奴がいるんじゃないか」

「確かにな。だけどあのチビはムカついたな。今度あったときはちゃんと叩き潰してやるか」

「……あんた達って、ホント無茶苦茶だわ」

「よく言われるよ。特にこいつが」

「ああ、不本意ながらな」

「……ふふふ」

 笑いがこぼれるが、ゲツガは正直苦笑をこぼすしかできなかった。その時、咳払いが聞こえたのでそちらを向く。そこにはユージーンとバルダを復活させてくれた女性がいた。

「すまんが……状況を説明してもらえると助かる」




 
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