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八条学園怪異譚

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第二十話 プールの妖怪その七

「そういえばこのプールってね」
「何かあるの?」
「ここに」
「何か出るってね」
 この言葉に二人は耳をぴくりとさせた、とはいっても大きくはならず無意識のうちに動いて反応を見せただけである。
「言われてるけれど」
「何かって?」
「幽霊が出るの?」
「幽霊か妖怪かは知らないけれど」
 だがそれでもだというのだ。
「夜に出るらしいわ」
「夜になの」
「そうなの」
「うん、そうらしいわ」
 とにかく出るというのだ。
「夜の十二時にね」
「またその時間ね」
「そうね」
 二人は十二時と聞いてまずはこう話した。
「かなりの割合で十二時に出るわね、あの人達」
「ここでもそうなのね」
「?あの人達って?」
 言い出した娘、赤い競泳水着の娘は二人の今の言葉に目をしばたかせて問い返した。
「誰のこと?」
「あっ、誰でもないから」
「気にしないでね」
 二人はこう言ってすぐに打ち消した、そのうえでこう返した。
「とにかく十二時なのね」
「その時間になのね」
「ここに出てね」
 そしてだというのだ。
「何かしているらしいのよ」
「何かって?」
「そこまではわからないけれど」
 赤い水着の娘は愛実の今の問いには困った感じの顔になって述べた。
「流石にね」
「そうなの」
「何でもシャワールームにも出てね」
「あそこにも出るの」
「そう、がさごそと動いてるらしいのよ」
「がさごそとなのね」
「そうらしいのよ」
 その娘はこう愛実、そして聖花に話す。
「あくまで噂だけれど」
「その噂は何処から出たの?」
 聖花も気になってそのうえでその娘に尋ねた。
「一体」
「何でも三十年前にその時の用務員さんが見たらしいのよ」
「三十年前なの」
「丁度このプールが出来た時にね」
 その頃に遡るというのだ、このプールもそれなりに古くなっているのだ。
「深夜、十二時に見回っていたらね」
「見たのね」
「そうなの、プールの中にもシャワールームにも」
 その何かがいたというのだ。
「見たらしいのよ」
「成程、そうなのね」
「この学校そうした話が多いけれどね」
「そうそう、多いのよね」
 まさにそうだとだ、聖花も自分が愛実と一緒にそうした場所を見回ってそのうえで妖怪達と友人になっていっていることは隠して応える。
「実際にね」
「幾つあるのかしらね」
 赤い水着の娘も首を捻って言う。
「商業科だけでも相当よね」
「まあとにかく。ここにも出るのね」
 愛実はこのことを確認した。
「そのことがわかっただけでもね」
「怖くないの?」
「まあねえ。人間の方が怖い場合もあるから」
「それはそうかもね」
 このことは赤い水着の娘も否定しなかった、最近はよく言われることだ。
「サイコパスとかいうのいるからね」
「明らかに頭がおかしい人がね」
 人格障害者、薬物中毒者の犯罪者は妖怪より遥かに恐ろしい、人間も幽霊も妖怪も同じ心ならその心次第でどうなるかなのだ。 
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