八条学園怪異譚
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第二十話 プールの妖怪その八
それでまた言う愛実だった。
「そっちの方が遥かに怖いのよね」
「それに比べたらっていうことね」
「うん、妖怪さんや幽霊さんは怖くないわ」
愛実はあらためて言った。
「実際にね」
「何か会ったみたいな言い方だけれど」
女の子は愛実の今の言葉にふと察して首を捻って言った。
「妖怪とか幽霊に」
「あれっ、そうかな」
愛実はこの言葉に一瞬焦りながらもそれを打ち消さんとした。
「気のせいじゃないの?」
「まあね。そんなことってないから」
人間としてそれはというのだ。
「妖怪とか幽霊とかはいてもね」
「いるとは思ってるのね」
「ひょっとしたらね。けれど何とかっていう刀と化け物は見たことがないっていう言葉もあるから」
「その何とかも気になるわね」
「何ろかいう名前だったのよ」
どうにも返答になっていない返答だった。
「ちょっと思い出せないけれど」
「何とかじゃわからないけれど」
「ごうとかすけきよとかいうね」
そうした名前だったというのだ。
「菊一文字とか虎徹じゃないのは確かよ」
「そっちは有名じゃない」
「新撰組だからね」
「とにかくそうした名前なのね」
「そう、何かそんな刀だったわ」
とりあえずそうした刀と共にだというのだ。
「化け物はレアだからね」
「会いにくいっていうのね」
「いい男はその辺りにいてもね」
赤い水着の娘はそれはあると笑って述べる。
「妖怪とか幽霊は違うじゃない」
「いい男は多いの?」
「男は星の数程いるってね」
それでだというのだ。
「普通にいるでしょ」
「そうしたものなのね」
「ちょっとクラス見たら?向こう側でも」
女の子はプールサイドの向こう側を見て愛実にそちらを見る様に促した、見ればそこには彼女達のクラスの男子生徒がトランクスの水着姿でいた。
その彼等を見ながら女の子は話すのだった。
「ほら、皆顔はいいでしょ」
「まあね。皆それぞれ個性はあるけれど」
太った子に痩せた子もいるがそれでもだった。
「皆性格もわかってきたし」
「男は性格よ、女もね」
「それで皆合格なのね」
「そう思うけれどね。とにかくね」
何はともあれだというのだ。
「うちのクラスだって百花繚乱じゃない」
「男の子で百花繚乱?」
「女から見ればそうよ。まあとにかくいい男は何処にでもいるのよ、しかも大勢ね」
「いい男でも皆あれよね」
ここで愛実はこうも言った。
「見てるわよ」
「そうね。私達を一人一人じろじろとね」
視線を感じていた、男子の数に二をかけただけ。
「上から下までね」
「私胸を集中的に見られてるけれど」
「私は脚をね」
聖花はそちらだった。
「もう凄い視線だけれど」
「見られるのは覚悟してたけれど」
「ちょっとねえ」
「そうよね」
「だって二人共平均点高いから」
赤い水着の女の子は今度は二人に話した。
「それも当然でしょ、愛実ちゃんの髪の毛だって」
「これ?」
「そう、その髪の毛」
愛実は言われて自分のその髪の毛を左手でさらりと掻き分けた、女の子はその髪を見ながら言うのだった。
「奇麗だからね」
「お手入れには気を使ってるけれど」
「自慢の髪?」
「そう言われるとね。だって髪の毛が奇麗じゃないと」
「お店にとってもまずいっていうのね」
「フケだらけの人がいるお店には誰も行かないから」
このことでもお店のことが念頭にある愛実だった。
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