遊戯王GX 輪廻に囚われし赤
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ワーム・ヴィクトリー
オートシャッフル機能、良し
オートサーチ機能、良し
ランダムサーチ機能……若干偏りがあるな。ならばここの数値を弄ってと、これで良し。
デュエル機能、良し
「よし、完成した」
ツァンとの約束で新たに作成したデュエルディスクをテーブルに置き、伸びをする。改めてデュエルディスクに目をやると、随分と凝った物だと呆れてしまう。六武衆を扱う勝ち気なツァンのイメージに合わせた結果、全体的には髪の色に合わせたピンク色で余分な場所を全て取り払いコンパクトにまとめたそれは、まさしく小手である。普通の小手よりは若干厚くなってしまったが、従来のデュエルディスクよりも軽くなっている。
パーツが足りなかった為にマリニーを使って本土にまで戻って組み立てたそれはまさに改心の出来だった。おかげでこの数日は寝不足に陥っている。完成した気の緩みからオレは眠りに落ちる。
目が覚めると、既に日は昇り、というか丸々一日以上眠り、月一テストの筆記が既に始まっている時間だった。
「ちっ、遅刻か」
自分のデュエルディスクとツァンのデュエルディスク、それからデッキホルダーを手に取り急いで寮から飛び出す。全力で走っていると、坂になっている場所で購買のおばちゃん、ウメさんがトラックを押しているのを見かけた。
「ウメさん、何をしてるんですか?」
「おやぁ、遊矢ちゃんかい。何、急にトラックが動かなくなっちゃってね」
「それで押して行こうだなんて無茶ですよ。オレが見てみますよ」
「良いのかい?確か今日はテストの日だろう?」
「挽回するチャンスなんて幾らでもありますから」
トラックのエンジンを開けて故障を調べる……までも無く、プラグが一本外れていたのでそれを付け直す。他にもおかしい部分が無いかを調べても特に異常は見当たらなかったのでキーを回す。それだけでトラックは息を吹き返した。
「これで問題無いよ」
「助かったよ、今度お礼するからね。ついでに乗ってきなさい」
「助かります」
トラックの助手席に乗り込み、校舎まで送って貰う。
「遅れてすみません」
「おやぁ~、遅刻ですかにゃ遊矢君」
「すみません、寝坊しました大徳寺先生」
「まあいいにゃ。ほら、早くテストを受けるにゃ」
大徳寺先生にテスト用紙を受け取り空いている席に着いて書き込み始める。大半が入試の時の問題と変わらず、所々がこの一ヶ月で習ったおさらいの様な問題を解いて行く。全ての回答を記入して見直すが、特に不備は見当たらない。時間はまだ残っているので暇つぶしに問題用紙の裏に絵を描く。何を描くかはすぐに決まり、描き始める。逞しい肉体、特徴的な身体の模様、オレの時代では専用テーマデッキとして存在するまだこの時代に無い特別なカード、過労死の代名詞E・HEROネオスだ。バニラでHEROの為にサポートカードが大量に存在するため、墓地から何度でも、というより普通にアドバンス召還される事が少ない最上級HEROだ。史実では遊城十代のエースカードだったが、この世界ではどうなるか分からない。一応、精霊が宿っていない普通のカードならあるからそれで何とかなるのだろうか?最悪、オレの力か彼女達の力を借りるしか無いな。
筆記テストが終わると、生徒達が急いで教室を飛び出して行く。何かあるのか?
「貴方は行かないの?」
「ツァンか、何かあるのか?」
傍にやってきたツァンに聞いてみる。
「今日、新しいパックが入荷するんですって。今回も新しいシリーズが発表されるみたいだから皆我先にって感じにね」
「ああ、『ワーム』『A・O・J』『魔轟神』『ドラグニティ』『氷結界』か。どれもが強力なシリーズだ。まあオレはテスターだから既に手元にある」
「へぇ、良いわね」
「そう言うツァンは行かなくていいのか?」
「私は『六武衆』があるから」
「そうか。話は変わるがディスクが完成した。たぶん大丈夫だと思うが最終調整が必要になるかも知れないから試しに付けてくれないか」
カバンからツァンの為に作ったデュエルディスクを取り出して手渡す。
「これが私の。結構軽いわね。それに計ったみたいにサイズが合ってる」
「目算だったが合っていたようで良かった。使い方は普通の物と変わらない。何か分からない事があれば聞いてくれ」
「見慣れないスリットが二つあるんだけど、これって何?」
「ああ、片方は手前のがエクストラデッキ、奥のが除外ゾーンだ。除外を活用するカードも最近増えてきているからポケットに入れるよりもディスクに用意してあった方が良いだろう」
そう言ってオレも自分のディスクのエクストラデッキと除外ゾーンを見せる。
「『六武衆』も新たなカードが作られてるからな。何れ必要になるだろう」
「『六武衆』はまだまだ強くなるのね」
それはもう鬼畜な位に強くなるさ。
『真・六武衆』
大将軍 紫炎の若かりし頃と言われる『真・六武衆 シエン』を筆頭に集った軍団。その強さは半端ではなく、『六武衆』と名の付くモンスターが場に居る事で真価を発揮する。『真・六武衆』ではなく『六武衆』というのがくせ者であり、両者を混ぜ合わせる事でどのような状況にも対応出来るのだ。
「それより、アンタは今日のテストで何を使うのよ」
「『ワーム』を使う。あまり見ない方が良いぞ、結構凄い外見をしてるから」
「凄い外見?」
「効果モンスターにもバニラの様にフレーバーテキストがあるのは知ってるよな」
「ええ、その方がシリーズ物を作り易いからよね」
「その中でも今回出る『ワーム』『A・O・J』『魔轟神』『ドラグニティ』『氷結界』は、とある世界のとある星にこの種族が入り乱れているという物語が存在する。その中で『ワーム』は宇宙からの侵略者だ。その見た目も『エイリアン』よりは宇宙生物と言って過言ではない。ある程度デフォルメされているが、気持ち悪い」
「……そんなに?」
「あまりソリッドビジョンで見たくない。手札とディスクにしか視線を移したくない。運が良ければ1体か2体だけで済むんだがな」
「そう(明日香が再戦を教師に願い出てたみたいだけど、私は部屋に帰っておこう)」
昼休みが終わり試験会場であるデュエル場で他の生徒のデュエルを眺める。
一番奥でツァンが止めを刺そうと攻撃を行ないミラフォで全滅するも究極背水の陣で墓地の六武衆を蘇生して見事に勝利を収めている。視線をずらすとそこには万丈目がダークエンド・ドラゴンとライトエンド・ドラゴンで危ない所など無く勝利している。更に半分位の試験が終わった所で『ドラグニティ』を使用している生徒が居た。まだ全てのカードが揃っていないのか安定していないがそれでも何とか勝利していた。そして覗きで停学処分を受けていた丸藤翔はただの『装備ビート』に負けていた。団結の力も魔導士の力もアームズホールもベンケイも入っていない『装備ビート』にだ。プレイ内容がお粗末過ぎた事が原因だ。パトロイドの効果は使わない、リミッター解除を相手のメイン1で使用する、そもそもリミッター解除の効果を理解していなかった、1体のモンスターにミラフォを使用など本当に丸藤亮の弟なのかと疑いたくなる。というか全然似ていないなあの兄弟。その兄である丸藤亮はキメラテック・オーバー・ドラゴンとハーフ・シャットのコンボで対戦者を吹き飛ばしていた。それからしばらくして最後の方でやっとオレの名前が呼ばれたのでフィールドに上がると知り合いが立っていた。
「で、オレの相手はまたお前なのか、明日香」
「今度こそ私が勝ってみせるわ」
溜息をついてからディスクを構える。
「「決闘」」
先行はオレだったのでカードを6枚ドローする。
「魔法カード、手札抹殺を発動。互いに手札を全て墓地に送り、送った枚数分ドローする。オレはワーム・ゼクスを召還、効果によってデッキからワーム・ヤガンを墓地に送る。カードを2枚伏せてターンエンド」
遊矢 LP8000 手札2枚
場
ワーム・ゼクス ATK1800
セット2枚
「私のターン、ドロー。モンスターをセット、カードを2枚セットしてターンエンド」
明日香 LP8000 手札3枚
場
セットモンスター1枚
セット2枚
「オレのターン。墓地のヤガンの効果発動、オレの場のモンスターがゼクスのみの場合裏側守備表示で特殊召還出来る。2体目のゼクスを召還してヤガンを墓地へ送る。バトルだ。セットモンスターを攻撃」
「セットしていたのは見習い魔術師よ。効果によって2枚目の見習い魔術師をセットするわ」
「ならばもう一度攻撃だ」
「今度は執念深き老魔術師をセットするわ」
「メイン2、W星雲隕石を発動。裏側表示のモンスターを全て表側守備表示に変更する。そしてエンドフェイズ、表側で存在する爬虫類族・光属性モンスターを全て裏側守備表示に変更し、変更した枚数分ドローする。その後、デッキよりレベル7以上の爬虫類族・光属性モンスター1体を特殊召還する事が出来る。オレは3枚ドローしてワーム・キングを攻撃表示で特殊召還。これでエンドだ」
遊矢 LP8000 手札5枚
場
ワーム・キング ATK2700
セットモンスター3枚
セット1枚
「くっ、まずいわね。私のターン、ドロー。まずは執念深き老魔術師をリバースするわ。効果でワーム・キングを破壊。そして老魔術師をリリースしてブリザードプリンセスをアドバンス召還」
ブリザードプリンセス ATK2800
「プリンセスは魔法使い属をリリースする場合1体でアドバンス召還できるわ。そして効果発動、このターン相手はセットカードを使用出来ない。プリンセスでセットされているヤガンを攻撃するわ。この瞬間リバースカードオープン、マジシャンズ・サークル。魔法使い属が攻撃した時にこのカードは発動出来るわ。お互いにデッキから攻撃力2000以下の魔法使い属を攻撃表示で特殊召還するわ。この効果は強制よ。私はTHEトリッキーを特殊召還」
THEトリッキー ATK2000
「ちっ、オレはエフェクト・ヴェーラーを特殊召還だ」
エフェクト・ヴェーラー ATK0
「バトル続行よ、プリンセスでヤガンを、トリッキーでエフェクト・ヴェーラーを攻撃」
遊矢 LP8000→6000
「カードを1枚伏せてターンエンド」
明日香 LP8000 手札3枚
場
ブリザードプリンセス ATK2800
THEトリッキー ATK2000
セット2枚
「オレのターンだ。ドロー、良し、このデュエルはオレの勝ちだ。永続魔法未来融合を発動。エクストラデッキより融合モンスター1体を選択する。オレはワーム・ゼロを選択してデッキより融合素材を墓地に送る事で2ターン後に融合召還出来る。オレはデッキのワームと名の付く爬虫類族モンスター全てを墓地に送る。ワーム・ゼロは融合に使われたカード1枚につき攻撃力・守備力が500ポイントアップする。オレが送ったのは14枚、よって攻撃力は7000だ」
「させない。私はサイクロンを発動。未来融合を破壊するわ。これで貴方の勝ち目は「無くなったと思ったら大間違いだ」え?」
「このデッキの切り札はゼロでは無い。オレはセットされているゼクス2体をリリースしてワーム・ヴィクトリーをアドバンス召還。さらに手札より死者蘇生とヴァイパー・リボーンを発動。墓地より2体のヴィクトリーを蘇生させる。ワーム・ヴィクトリーは墓地にあるワームと名の付くモンスター1体につき攻撃力が500ポイントアップする。オレの墓地には今20体のワームが存在する。よって3体の攻撃力は」
ワーム・ヴィクトリー ATK0→10000
ワーム・ヴィクトリー ATK0→10000
ワーム・ヴィクトリー ATK0→10000
「こ、攻撃力10000が3体も!?」
「ヴィクトリーでプリンセスとトリッキー、そして明日香に攻撃」
オレの合図で一斉に飛びかかっていくヴィクトリー達。それに対して明日香は慌ててセットカードをオープンする。
「聖なるバリア―ミラーフォースを発動。3体のヴィクトリーを破壊するわ」
ミラフォによってヴィクトリーが全滅する光景に明日香がほっとしている。その隙にオレもセットカードをオープンして効果を発動する。明日香が再び目を開けるとそこにはブリザードプリンセスを頭から食べているワーム・ヴィクトリーの姿が映る。
「いやあああああああああ!!」
「「「うわああああああ!!」」」
「「「きゃあああああああああ!!」」」
会場中から叫び声が聞こえてくる。その光景にオレも唖然としていたが、すぐに正気に戻りディスクの電源を落とす。オレの時代ではヴィクトリーの攻撃は殴って倒れた所を踏む潰すはずだったのに、どうして捕食なんてするんだよ。ちなみにオレが最後に発動したのはリミット・リバース。リビングデッドの呼び声の劣化版で攻撃力1000以下のモンスターを墓地より特殊召還するカードだ。ワーム・ヴィクトリーの元々の攻撃力は0。よって蘇生可能となる。それによって蘇生したワーム・ヴィクトリーの攻撃力は11000、プリンセスを攻撃しても8200のダメージとなる。
明日香の方を見てみると涙をぼろぼろと零しながら座り込んでいる。完全にトラウマになったようだな。
「すまない、明日香。まさかヴィクトリーの攻撃があんなのだとは知らなかったんだ。明日香?」
駆け寄って謝罪をしていたのだが、様子がおかしい。引きつった顔で息を吸うばかりだ。
「まずい、過呼吸か!!」
急いで明日香を抱きかかえて保健室に走る。それにしてもこれでワームに対しての苦情が海馬コーポレーションに押し寄せられるだろうな。さすがにアレは子供には見せれない。高校生でこれなんだからな。
はあ〜、どうやって明日香に謝ろうかな。
後書き
今回のワームはリアルでも所有している物です。
未来融合が禁止になったせいで紙束になってしまいましたけどorz
帰ってきて未来融合。地味にワームは値段が高いんだから。
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