遊戯王GX 輪廻に囚われし赤
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六武衆
デッキを交換しての決闘から数日後の深夜、Dホイールを整備しているとPDAにメールが届く。
『丸藤翔は預かった。返して欲しくば一人で女子寮の湖にまで来い』
なんでオレにこんなメールが?ふむ、無視しても良いが少し気になるな。ちょうど整備を終えたDホイールもある事だしな。ディスクもハイブリッド型のがあるし、デッキは備え付けているものがいくつかと何時も持ち歩いているメインデッキがある。まあメインデッキを使う気は無いが何とかなるだろう。一応、デッキ内容を確認。げっ、女子寮に来いってことは女生徒が相手なのによりによってこれか。何処かに他のデッキはこいつか。これもちょっと不味いな。こっちは図書館エクゾで、こいつは闇の決闘用。仕方ない、向こうで決闘をする事になったら選ばせよう。それしかないな。整備用の道具を片付けてヘルメットを被る。バイザーを降ろしてシャッターを上げる。PDAを手札置きに固定して地図を表示する。距離的には2分程だろう。エンジンに火を入れ、モーメントが虹色の輝きを見せる。
「行くか」
アクセルを回し、夜の森を駆け抜ける。獣道ばかりだが、いきなり足場が爆発したりする精霊界と比べればこれ位の道は楽に走れる。地図によれば湖はすぐ傍にあるみたいだな。
え〜っと何処かに人は、あれか。丁度湖を挟んだ反対側に数人の人影が見える。このまま回り込もうかと考えたがそれでは時間がかかりすぎる。
「仕方ない。あまり人に見せる様なものではないが」
意を決して湖の上を走る。あんまり人には見られたくないんだけどな。真ん中辺りまで走った所でようやく向こう側も気付いたのか驚いた様な行動を見せている。速度を落としつつ、ゆっくりと上陸する。
「指示通り一人で来たぞ」
ヘルメットを外して素顔を見せる。女生徒が4人に縛られている気絶している丸藤の5人か。
「貴方、今のは」
「気にするな。それより事情を聞かせろ。なぜオレにこんなメールを送る。丸藤の事はどうでも良いが、気になって態々来てやったぞ」
「まあ、そうでしょうね。ただの口実だから気にしなくていいわ」
そう言うのは金髪の女生徒だ。
「君は?」
「天城院明日香よ。明日香で良いわ」
「東雲遊矢だ。好きに呼ぶと良い。それで丸藤はなんで縛られてるんだ?」
「こいつがお風呂場を覗いてたのよ」
明日香の取り巻きらしき一人が応えてくれた。それにしても覗きだと?
「なら教師に突き出せば良いだろう。何故オレを呼ぶんだ」
「それは」
「明日香があんたと決闘がしたいからだって。まったく付き合わされるこっちの身にもなって欲しいわよ」
ピンク色の短髪の女生徒が腕を組みながら不満を述べる。見覚えがあるな。
「君は確か六武衆使いの」
「ツァン・ディレよ。よろしくしなくていいから」
まあこんな時間まで付き合わされれば機嫌が悪いのも頷ける。
「決闘位なら放課後にでも声をかけてくれればいつでもするぞ」
「貴方、結構声をかけ辛いのよ。なんというか大人びているというか。それにシンクロ召還のテスターもしていたっていうし」
「オレとしてはそんなのは気にしないんだがな。それよりも決闘しなくちゃ駄目か」
「ええ、機会は逃したくないの」
そう言って明日香はディスクを構える。
「分かったよ。とりあえずどのデッキとやりたいか決めてくれ」
持ってきているデッキケースを並べる。
「一番右のよ」
一番右か。中身を確認せずにDホイールのディスクにセットする。ディスクを腕に装着してスタートボタンを押す。自動でデッキがシャッフルされデッキトップの五枚が飛び出す。明日香も準備を整えていたのか手札を構えている。
「「決闘」」
オレの先攻からか。あっ、明日香には悪いが終わった。
「すまん、オレの勝ちだ」
「「「「え?」」」」
「オレのターン、ドロー。手札から王立魔法図書館を召還。魔法カード二重召還を発動して鉄の騎士 ギア・フリードを召還」
王立魔法図書館 ATK0
鉄の騎士 ギア・フリード ATK1800
「王立魔法図書館の効果、魔法カードが発動された時、このカードに魔力カウンターを乗せる。そして最後のキーカード、蝶の短剣–エルマを発動。ギア・フリードに装備」
王立魔法図書館 魔力カウンター 0→2
「ギア・フリードは自分に装備された装備カードを破壊する。蝶の短剣–エルマは破壊されれば手札に戻る。そして、王立魔法図書館は自分に乗っている魔力カウンターを3つ取り除く事でカードを一枚ドローする」
「無限ループ!?」
「そしてオレはエクゾディアパーツが揃うまでこれを繰り返す」
18枚程ドローした所でエクゾディアが揃う。エクゾディアパーツをディスクに置くと背後にエグゾディアが現れ、灼熱の炎で明日香を焼き払った。
「運が悪かったな」
ディスクからデッキを取り出し、ケースに戻す。ディスクも腕から取りは「待ちなさい」ずすのを止める。
「ちょっとだけ興味が沸いたわ。私とも決闘しなさい」
「ツァン、一体どういう風の吹き回しなの?」
「別に、何だって良いでしょ。それで受けるの、受けないの?」
「受けよう。ただし、さっきのデッキ以外でだ」
図書館エクゾを除いたデッキを見せる。
「真ん中よ」
真ん中か。今度はちゃんと中身を確認する。うん、六武衆が相手でも何とかなるかな。デッキをセットすると自動でシャッフルが行なわれる。
「便利よね、それ」
デッキをシャッフルしながらツァンが話しかけてくる。
「まあな。自動シャッフルに音声によるサーチ、ランダムサーチ機能が搭載されてるからな。来年には販売が行なわれるみたいだが、それなりの値段がするそうだ」
「そう、残念ね」
「時間がかかっても良いのなら改造しても良いぞ。デザインとかも用意してくれるならその通りに作っても良いぞ。勝てたらな」
「上等よ」
シャッフルが終わりツァンもデッキをディスクにセットする。
「「決闘」」
先攻は、ツァンか。出来れば先攻が欲しかったが仕方ない。
「私のターン、ドロー。よし、永続魔法六武衆の結束を2枚発動。このカードは六武衆と名の付くモンスターが召還、特殊召還されるたびに武士道カウンターを乗せる。そしてこのカードを墓地に送り、このカードの上に乗った武士道カウンターの分だけドロー出来る。私は六武衆―ザンジを召還、更に私の場に六武衆と名の付くモンスターが居る事で手札から六武衆の師範を特殊召還するわ」
六武衆の結束 武士道カウンター 0→2
六武衆の結束 武士道カウンター 0→2
六武衆―ザンジ ATK1800
六武衆の師範 ATK2100
ヤバい、回ってやがる。このままだとアレが来るか?
「そして2枚の結束を墓地に送り、4枚ドロー。よし、更に私の場に六武衆と名の付くモンスターが2体居る事で手札から大将軍 紫炎を2体特殊召還するわ。そして連合軍を発動。カードを1枚伏せてターンエンド」
ツァン LP8000 手札2枚
場
六武衆―ザンジ ATK1800→2600
六武衆の師範 ATK2100→2900
大将軍 紫炎 ATK2500→3300
大将軍 紫炎 ATK2500→3300
永続魔法 連合軍
セット1枚
キツい。キツすぎる。この状況をなんとか出来る事は出来るが、さすがは六武衆。展開力が高すぎる。それでも頑張ってみせる。カードよ、オレに応えてくれ。
「オレのターン、ドロー」
よし、カードはオレにちゃんと応えてくれた。行くぞ、日の目を浴びて来なかったカード達よ。今こそ、その真の力を見せつけてやれ。
「オレはおジャマ・レッドを召還する」
「「「「おジャマ!?」」」」
おジャマ・レッド ATK0
「おジャマって、あのおジャマよね。しかも見たことのないおジャマだわ」
「ああ、世間では弱小や雑魚などと呼ばれているシリーズだ。真の力も知らずにな。おジャマ・レッドの効果発動。このカードが召還に成功した時、手札よりおジャマと名の付くモンスターを4体まで特殊召還出来る。来い、イエロー、グリーン、ブラック」
おジャマ・イエロー DEF1000
おジャマ・グリーン DEF1000
おジャマ・ブラック DEF1000
「真の力を見せつけてやれ。魔法カード、おジャマ・デルタハリケーン!!自分の場にイエロー、グリーン、ブラックが表側で存在する場合発動することが出来る。相手フィールド上のカード全てを破壊する」
「なっ、リセットカード!?」
おジャマ3兄弟がお尻を合わせて回転し始める。どんどんと回転の速度が上がっていき遂にはハリケーンを起こす。ハリケーンはツァンのフィールドを覆い尽くしす。ハリケーンが収まるとそこには全てが無くなったツァンのフィールドが現れる。
「これで魔法が使える。強欲な壷を発動、2枚ドローする。魔法カードフュージョン・バースを発動。デッキトップを五枚墓地に送り、その中で融合を行なえるのなら融合を行なっても良い。墓地に送られたのは、融合、おジャマ・イエロー、貪欲な壷、テラ・フォーミング、おジャマトリオ。つまりはミスだ。カードを1枚伏せてターンエンド」
フュージョン・バースをミスったのも融合が手元に無かったのも辛いな。レッドを守れるカードが無い。
遊矢 LP8000 手札0枚
場
おジャマ・レッド ATK0
おジャマ・イエロー DEF1000
おジャマ・グリーン DEF1000
おジャマ・ブラック DEF1000
セット1枚
「私のターン、ドロー」
「スタンバイフェイズに罠発動、おジャマトリオ。相手フィールド上におジャマトークンを3体守備表示で特殊召還。このトークンはアドバンス召還に利用する事は出来ない」
おジャマトークン DEF1000
おジャマトークン DEF1000
おジャマトークン DEF1000
「名前通りに本当に邪魔ね。私は六武衆ーイロウを召還、更に2枚目の師範を特殊召還」
六武衆ーイロウ ATK1700
六武衆の師範 ATK2100
「バトル。師範でレッドを、イロウでイエローを攻撃」
遊矢 LP8000→6900
「ターンエンドよ」
ツァン LP8000 手札1枚
場
六武衆―イロウ ATK1700
六武衆の師範 ATK2100
おジャマトークン DEF1000
おジャマトークン DEF1000
おジャマトークン DEF1000
「オレのターン、ドロー。手札より簡易融合を発動。ライフを1000払い、レベル5以下の融合モンスター1体を融合召還扱いで特殊召還する。この効果で特殊召還したモンスターは攻撃出来ず、エンドフェイズに破壊される。おジャマ・ナイトを融合召還」
遊矢 LP6900→5900
「何もせずにターンエンド。エンドフェイズ、おジャマ・ナイトは破壊される」
遊矢 LP5900 手札0枚
場
おジャマ・グリーン DEF1000
おジャマ・ブラック DEF1000
「融合召還扱いするってことは蘇生条件は満たしたのか。私のターン、ドロー。このままバトルに入るわ。グリーンとブラックに攻撃。ターンエンド」
ツァン LP8000 手札2枚
場
六武衆―イロウ ATK1700
六武衆の師範 ATK2100
おジャマトークン DEF1000
おジャマトークン DEF1000
おジャマトークン DEF1000
「オレのターン、ドロー。くっ、このままエンドだ」
遊矢 LP5900 手札1枚
「私のターン、ドロー。師範とイロウでダイレクトアタック、カードを1枚伏せてターンエンド」
遊矢LP5900→2100
ツァン LP8000 手札2枚
場
六武衆―イロウ ATK1700
六武衆の師範 ATK2100
おジャマトークン DEF1000
おジャマトークン DEF1000
おジャマトークン DEF1000
セット1枚
このままだと負けるか。だが、最後まで諦める事はしない。
「オレのターンだ。ドロー!!」
気合いを入れて引いたカードを見る。ナイスなタイミングだ。
「埋葬呪文の宝札を発動、墓地より魔法カードを3枚除外して2枚ドローする。更に貪欲な壷を発動、墓地に居るモンスターを5枚デッキに戻して2枚ドローする。おジャマ・ナイト以外をデッキに戻して2枚ドロー」
「ここで宝札を引くの!?しかも超レアカードじゃない」
新たに手札に加えたカードを見る。よし、これならいける。
「手札より、フィールド魔法おジャマ・カントリーを発動。そして手札よりおジャマジックを墓地に送り効果を発動。1ターンに1度、墓地に居るおジャマと名の付くモンスターを特殊召還する。おジャマ・ナイトを攻撃表示で特殊召還」
「攻撃力0を攻撃表示?何の意味が、ってなんで攻撃力が。私のモンスターまで」
おジャマ・ナイト ATK2500
六武衆―イロウ ATK1200
六武衆の師範 ATK800
おジャマトークン DEF0
おジャマトークン DEF0
おジャマトークン DEF0
「おジャマ・カントリーの効果だ。おジャマと名の付くモンスターがオレのフィールド上に居る時、フィールド上全てのモンスターの元々の攻撃力・守備力を入れ替える。更に墓地に送ったおジャマジックの効果発動、デッキよりおジャマ三兄弟を手札に加える。そして融合を発動。おジャマ三兄弟よ、今こそ真の姿を現せ」
おジャマ3兄弟が交ざりあい、巨大な白い塊となってフィールドに姿を現す。
「おジャマ達を統べる王、おジャマ・キング。そしておジャマッスルを発動。おジャマ・キング以外のおジャマと名の付くモンスターを全て破壊し、破壊したモンスターの数×1000ポイント分、おジャマ・キングの攻撃力をアップさせる。これにはトークンも含まれる。オレの場のおジャマ・ナイトとツァンの場のおジャマトークン3体を破壊。よっておジャマ・キングの攻撃力は4000アップ。そしておジャマトークンが破壊された時、300ポイントのダメージを与える。3体破壊した事で900のダメージを喰らえ」
おジャマ・キング ATK3000→7000
ツァン LP8000→7100
「更におジャマ・キングの効果でツァンのフィールドのモンスターゾーン三カ所を使用不能にする。そしてバトルだ、おジャマ・キングで師範を攻撃」
ツァン LP7100→900
「ターンエンド」
遊矢 LP2100 手札0枚
場
おジャマ・キング ATK7000
おジャマ・カントリー
なんとかこれで巻き返せたが油断は出来ない。デュエルが楽しいのはここからだ。オレは持てる限りの手を尽くした。ここからツァンはどうやるのか、どんな手を使ってオレを倒すのか、何よりデッキがツァンに応えてくれるのかが見物だ。
「負けてたまるものですか、私のターン、ドロー!!来た、強欲な壷を発動、デッキから2枚ドロー。良し、手札よりサイクロンを発動。おジャマ・カントリーを破壊する。これで攻撃力は元に戻る」
おジャマ・キング ATK4000
六武衆―イロウ ATK1700
「そして六武衆の露払いを召還して効果発動。イロウをリリースしておジャマ・キングを破壊するわ。バトル、露払いでダイレクトアタック」
六武衆の露払い ATK1600
遊矢 LP2100→500
「これで最後よ、手札から速攻魔法六武衆の理を発動。露払いをリリースして墓地よりザンジを蘇生。そしてダイレクトアタック」
「オレの負けだな」
遊矢 LP500→0
負けてしまったが、決闘の内容には十分満足出来た。デッキをケースに戻してツァンに近づく。
「良いデュエルだった。ツァン」
「アンタもね。でもそれがアンタのメインデッキって訳じゃないんでしょう」
「まあな。出来れば使いたくないが、3年間の間に見る事もあるだろう」
この学園で起こる事件を解決する為には必要になるはずだ。偶々精霊界を旅していた時に出会った一族のデッキ。あの一族だけが唯一オレを覚えている事が出来る種族だった。だからこそオレは彼らに協力を仰ぎ、彼らはそれに応えてくれた。オレが精霊の力を最大に発揮しなければならないような事件が発生すれば見る事になるだろう。さすがにあの一族のカードは量産していない。この世界に現存するのはオレが持っている分だけだ。
「それで、約束のディスクなんだがどうする?改造だけなら2日程で終わるが」
「そうねえ、戦績が成績に反映されるから2日と言えど使えないのは困るから、一から作って貰えるかしら。デザインは任せるわ」
「了解だ。完成したら届けよう」
今度こそディスクをDホイールに戻してヘルメットを被る。
「そうそう、出来ればこいつの事は内緒にしてくれるとありがたい。I2社の試作品なんでな」
「別に良いわよ。明日香達も構わないわよね」
「え、ええ。それにしてもバイク?よね、それ」
「一応な、正式名称はDホイール。こいつはオレの相棒でマリニー。新しいデュエルを目的に開発中の試作機だ」
モーメントとスタジアムさえ開発されれば発表を行ないたいと会長は言っているが、その場合はゾーン達が消そうと躍起になる可能性が高い。できればその前にゾーン達と決着をつけないとな。
Dホイールのエンジンに火を入れる。
「じゃあな、お休み」
「ええ、お休み」
女子寮を離れて車庫を目指す。
ゾーン達が来るとすればおそらくプラシドが来るだろう。一番シンクロ召還を恨んでいる奴だからな。アンチデッキを用意しておいた方が良いだろうな。
それにしてもやはり何時の時代にもカードと心を通わせることがいる人間は何人もいるんだな。この絆を信じる限り、カードは、精霊はオレ達に力を貸してくれる。オレはその絆を信じて輪廻に挑戦し続ける。
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