遊戯王GX 輪廻に囚われし赤
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バスター・モード
時間は日付が変わってから少し経った頃、オレの目の前にあるのは寂れた洋館。隣にはツァンと怯えきっている明日香の二人が居る。
「こんな夜中に何のようだ?というか明日香の怯えようがかわいそうになってくるんだが」
「私が連れてきたんじゃなくて明日香が付いてきて欲しいって言ったのよ。アンタを呼んだのは何かあった時のためよ。少し位は役に立つでしょ」
「まあ、少し所じゃないがな」
精霊は着いているし、カードを実体化させる事も少しは出来るからな。それに何よりサテライト暮らしは気配に敏感になる。だからこそ
「そこに隠れているのは分かっている。出て来い」
トークンカードを引き抜いてツァン達の後ろに向かって、デュエリストの必須技能であるカード手裏剣を投げつける。後ろに誰かがいたと言う事に明日香が驚いて気を失ってしまうが気にしない。
「ぬぅ、気付かれていたか」
その言葉と共に樹の裏から仮面を付けた大男が現れる。不審者か。
「気付かれていたのなら仕方ない。闇の決闘の餌食にしてくれよう」
「闇の決闘だと!?」
まさか闇のカードか、アイテムを所持しているのか?
「闇の決闘なんてあるわけないじゃない」
ツァンがデュエルディスクを構えようとするのを手で止める。
「どうかしたの?」
「ツァン、明日香と一緒に下がっていろ。こいつはオレのメインデッキでやる」
オレはメインデッキを取りだしてディスクにセットする。
(私達を使うってことは何かあったのね?)
(ああ、闇の決闘を使うデュエリストらしい。力は感じないが念のためにな)
(そう、準備しておくわ。闇の決闘の)
「貴様が一番手か。覚悟しろ」
「そちらこそな。闇の決闘でライフが無くなった者は死ぬ。それ位は分かっているだろうな」
男もディスクを構える。
「「決闘」」
先行は相手か。
「私のターン、ドロォー。手札よりインフェルノクインデーモンを召還」
インフェルノクインデーモン ATK900
デーモンデッキか。スタンバイフェイズにライフコストを払う事と、対象にとった時にサイコロで効果を無効にして破壊する共通効果を持っているのが特徴だ。だが、このデッキなら問題無い。
「さらぁに手札より万魔殿―悪魔の巣窟―を発動、そしてカードを1枚伏せてターンエンドだ」
仮面の男 LP8000 手札3
場 万魔殿―悪魔の巣窟―
インフェルノクインデーモン ATK900
伏せ1枚
ふむ、闇の決闘とはハッタリだったか。特に闇の気配は感じない。ならばオレが闇の決闘にしてやろう。
(すまないが闇を頼む)
(後ろの二人に見られても良いのね?)
(ああ、どうせこの時間軸にも闇の決闘はあるんだからな。これで自分から闇の決闘を進んでしようとは思わないだろうからな)
(分かったわ)
オレと大男を包む様に闇が濃くなる。普通の一般人には分からないだろうが、これでこの決闘は闇の決闘に変化した。ライフが減れば、身を削ることになる。だが、恐れる事はない。オレは相棒達を信じているからな。
「オレのターン、ドロー」
「スタンバイフェイズ、インフェルノクインデーモンの効果発動。私の場に居るデーモンと名の付くモンスター1体の攻撃力を1000アップさせる。私はインフェルノクインデーモンを選択」
インフェルノクインデーモン ATK900→1900
「それがどうした。オレはディストラクターを召還して効果を発動する。ライフを1000払い、お前のセットカードを破壊する。ぐ、ぐぅぅ」
遊矢LP8000→7000
久しぶりに闇の決闘の痛みに、呻いてしまう。
「遊矢!?」
「だ、大丈夫だ。これが闇の決闘の痛みか」
白々しくも相手に罪を擦り付ける。
「な、私は何もしていないぞ]
「何言ってるのよ。アンタが闇の決闘だって言ったじゃない」
「知らん。私は本当に知らんぞ!?」
大男がそう言ってディスクの電源を落とそうとするが落ちない。
「闇の決闘を終わらせる方法はただ一つ。どちらかが死ぬ事だ。そんな事も知らずに闇の決闘を行なったのか。オレはさらに魔法カード、最古式念動を発動。オレのフィールドにサイキック族が存在する場合、フィールド上のカード1枚を選択して発動、選択したカードを破壊し、1000ポイントのダメージを受ける。オレは万魔殿―悪魔の巣窟―を破壊する。ぬ、っく」
遊矢LP7000→6000
最古式念動のカードから球状のエネルギーが飛び出して、万魔殿―悪魔の巣窟―に命中すると同時に2枚のカードが爆発する。その爆発でお気に入りの赤い帽子がツァンの所まで飛ばされる。
「遊矢、止めなさいよ。ライフコストでさえボロボロになるっていうのに、モンスターのダイレクトアタックなんてされたら」
「残念だけどツァン、逃げれないんだ。何度か闇の決闘はやってきたが、どれも逃げれる事は出来なかった。出来る事は勝って、相手を殺すしかない。すまんが、オレの為に死ね。速攻魔法、緊急テレポートを発動。手札・デッキからレベル3以下のサイキック族モンスター1体を特殊召還する。オレはデッキよりサイコ・コマンダーを特殊召還。レベル4ディストラクターにレベル3サイコ・コマンダーをチューニング、次元を越えて皆を癒せ、シンクロ召還現れろ、サイコ・ヘルストランサー」
サイコ・ヘルストランサー ATK2400
「サイコ・ヘルストランサーの効果発動。1ターンに1度、自分の墓地のサイキック族モンスター1体をゲームから除外して発動出来る。オレは墓地のディストラクターを除外してライフを1200回復する」
遊矢LP6000→7200
「サイコ・ヘルストランサーでインフェルノクインデーモンを攻撃」
「ぬぅおおお!!」
大男LP8000→7500
「カードを2枚伏せてターンエンド」
遊矢 LP7200 手札1
場
サイコ・ヘルストランサー ATK2400
伏せ2枚
「わ、私のターン、ドロォー。強欲な壷を発動、さらに天使の施しを発動」
ここで手札補充と交換か。
「天使の施しで墓地に送った暗黒魔族ギルファー・デーモンの効果を発動。このカードが墓地に送られた時、フェールド上にいるモンスター1体の装備カードとなって装備する。装備されたモンスターは攻撃力が500ポイントダウンする。私はサイコ・ヘルストランサーに装備させる」
サイコ・ヘルストランサー ATK2400→1900
「そしてジェネラルデーモンを墓地に送り、万魔殿―悪魔の巣窟―を手札に加えて発動。さらにジェノサイドキングデーモンを召還してバトルだ。サイコ・ヘルストランサーに攻撃」
ジェノサイドキングデーモン ATK2000
「ちぃ!!」
遊矢 LP7200→7100
「再びギルファー・デーモンの効果が発動するが今は意味がないので止めておこう。カードを1枚伏せてターンエンド」
仮面の男 LP7500 手札3
場 万魔殿―悪魔の巣窟―
ジェノサイドキングデーモン ATK2000
伏せ1枚
「オレのターン、ドロー。モンスターをセットしてターンエンド」
遊矢 LP7100 手札1
場
セットモンスター1枚
伏せ2枚
「ふふふ、私の方にツキは回ってきているようだな。ドロォー、スタンバイフェイズに墓地に存在するプリズンクインデーモンの効果発動。万魔殿―悪魔の巣窟―が私の場にある時、私の場のレベル4以下の悪魔族モンスターの攻撃力をエンドフェイズまで1000ポイントアップする。更にリバースカード、リビングデットの呼び声を発動。インフェルノクインデーモンを特殊召還し2体の効果でジェノサイドキングデーモンの攻撃力をアップさせるぞ」
ジェノサイドキングデーモン ATK2000→4000
インフェルノクインデーモン ATK900
「そしてインフェルノクインデーモンをリリースし、デーモンの召還を召還。さあ、覚悟するが良い。デーモンの召還でセットモンスターを攻撃」
「セットモンスターは静寂のサイコウィッチ。このモンスターが戦闘で破壊された時、デッキから攻撃力2000以下のサイキック族を1枚除外出来る。オレはサイ・ガールを除外」
「それがどうした。ジェノサイドキングデーモンでダイレクトアタック」
「ぐわあああああああああ!!!!」
遊矢LP7100→LP3100
「遊矢!!」
攻撃力4000のダイレクトアタックを受けて吹き飛ばされる。全身に切り傷や擦り傷を作り口から血を吐く。服は今の一撃でボロボロになる。くそが、お気に入りのジャケットが着れなくなったじゃないか。
それにしても久しぶりに闇の決闘で纏まったダメージを受けてしまった。油断しすぎたな。調整もしていないから未来での制限のままだった。近くの木に掴まりながら身体を起こす。
「遊矢、もう止めて。このままじゃ死んじゃうわ」
ツァンが泣きそうになりながら叫んでくる。
「止めたくてもどちらかが死ぬまで止められない。それにオレのライフは残っている。それでターンエンドか」
「私はカードを1枚伏せさせてもらおう。ターンエンドだ」
仮面の男 LP7500 手札2
場 万魔殿―悪魔の巣窟―
ジェノサイドキングデーモン ATK2000
デーモンの召還 ATK2500
伏せ1枚
リビングデットの呼び声(対象無し)
「オレの、ターン。ドロー、スタンバイフェイズ、サイコウィッチの効果で除外されていたモンスターを特殊召還する。オレはサイ・ガールを特殊召還。頼むぞ、相棒」
(任せときなさい)
サイ・ガール ATK500
「そんな雑魚で何をするつもりだ」
「雑魚なものか。こいつはオレのデッキのメインエンジンなんだよ。サイ・ガールの効果発動、除外されているこのカードの特殊召還に成功したとき、デッキトップを裏側のままで除外する。そしてサイ・ガールをリリース、現れろ頼れる兄貴、マックス・テレポーター」
マックス・テレポーター ATK2100
「サイ・ガールの効果発動、このカードが墓地に送られた時、除外していたカードを手札に加える。そしてマックス・テレポーターの効果発動、ライフを2000払い、デッキよりレベル3のサイキック族を2体特殊召還する。メンタルシーカーとサイコ・コマンダーの2体特殊召還。更に2枚目の最古式念動を発動して伏せカードを破壊する。ぐうぅぅ!!」
遊矢 LP3100→100
メンタルシーカー ATK800
サイコ・コマンダー ATK1400
「これで、準備が、整った」
残りのライフが100になり、意識が朦朧としてきたがまだまだ頭は回る。気合いを入れて一気に駆け抜ける。
「レベル6マックス・テレポーターにレベル3メンタルシーカーをチューニング。次元の彼方より我が敵を葬る為に現れろ。シンクロ召還、ハイパーサイコガンナー」
ハイパーサイコガンナー ATK3000
「更にリバースカードオープン、ミラクルシンクロフュージョン!!フィールド・墓地より融合モンスターに記載された融合素材モンスターをゲームから除外し、シンクロモンスターを融合素材とする融合モンスター1体を融合召還する。オレは墓地のサイコウィッチとサイコ・ヘルストランサーを除外する。現れろ、アルティメットサイキッカー」
アルティメットサイキッカー ATK2900
「手札より装備カード、サイコ・ソードをアルティメットサイキッカーに装備。サイコ・ソードは相手のライフより自分のライフが少ない場合、その差分だけ攻撃力がアップする。そしてオレ達のライフの差分は7400」
「な、なんだとおぉ!?」
「だが、上限は2000までだ。よってアルティメットサイキッカーの攻撃力は4900となる。バトルだ。アルティメットサイキッカーでデーモンの召還を攻撃」
「ぬぅおおおおお!!」
大男 LP7500→5100
「アルティメットサイキッカーの効果発動、バトルで破壊したモンスターの攻撃力分だけオレのライフを回復させる」
遊矢 LP100→2600
ライフが回復した事で身体に活力が幾らか戻る。これで決闘中に倒れる心配はしなくていい。
「次はハイパーサイコガンナーでジェノサイドキングデーモンを攻撃。そしてサイコ・コマンダーでダイレクトアタック」
「ぐうぅ!!」
大男 LP5100→4100→2700
「くっ、中々やるな。だが、次のターンで巻き返してくれるわ」
「残念だが、お前に次のターンは回って来ない。リバースカードオープン、バスター・モード!!」
「なんだ、そのカードは?」
「このカードはオレのフィールド上に居るシンクロモンスターをリリースし、デッキからリリースしたモンスターの強化形態、/バスターを特殊召還するカードだ。ハイパーサイコガンナーをリリース、現れろハイパーサイコガンナー/バスター」
ハイパーサイコガンナー/バスター ATK3500
「な、何いぃぃぃ!?」
「あばよ、名も知らぬ愚か者よ。闇を語るには速過ぎたな。ハイパーサイコガンナー/バスターでダイレクトアタック」
「いやだ、死にたくないいいいいいいいいいいい!!」
ハイパーサイコガンナー/バスターの両腕の銃から放たれた光線を浴びて大男が吹き飛ぶ。ギリギリの所でサイ・ガールが闇を解除した事で死んではいないだろう。気を抜いた途端、地面に膝を付く。
「遊矢、しっかりしなさい」
ツァンがオレの元に駆け寄ってくる。
「死んじゃ駄目よ」
「死なないから、耳元で叫ばないでくれ。地味に辛いから」
「本当に大丈夫なのね?」
「ああ、辛いと言えば辛いが動けない程じゃない。それより、あいつはどうなった」
「分からない。最後の攻撃で吹き飛ばされたみたいだけど」
「なら、とりあえずここから離れよう。あいつの仲間がいたら面倒だ」
「ええ、分かったわ。ほら明日香、しっかりなさいよ。アンタがここに来たいって言ったんでしょうが」
ツァンが気絶している明日香を起こしに行っている隙に至高の木の実を実体化させて飲み込む。これで先程以上に身体に活力が戻ってくる。さすがに傷が塞がったりはしないが、これで命の危機からは脱せた。
(遊矢、本当に大丈夫?)
サイ・ガールがツァン達には見えない状態でオレの隣に現れる。
(ああ、大丈夫だサイ・ガール。今回は悪かったな)
(気にしなくていいよ。それよりもその建物には気をつけて)
(何かあるのか)
(もの凄い闇の気配を感じるの。それにこの島自体もなんだか闇の気配がするの)
(闇の気配か。おそらくそいつにも関わる事になるだろうな。注意だけはしておくさ)
(気をつけてね。何かあればすぐに呼ぶのよ)
(分かってるさ、相棒)
軽く頭を撫でると納得したのか姿が見えなくなる。おそらくは次元の隙間に帰ったのだろう。
あの後すぐに目を覚ました明日香に保険医の鮎川先生に連絡しに行ってもらい、ツァンの肩を借りて保健室まで歩いて行く。
「ごめんなさい。私が呼んだせいでこんな目に会わせて」
「気にするな、と言っても気にするんだろう。オレは呼んでくれてありがたかったがな。もしツァン達が闇の決闘に巻き込まれていたらと考えると、ぞっとする」
ツァンも想像したのだろう。一瞬、足が止まる。
「あの決闘は闇の決闘の中では比較的易しい方だ。もっと闇が濃くなれば、ライフが無くなる前に死ぬ事だってある。実際、伝説の決闘者である城之内さんが一度命を失いかけているし、オレも何度か殺している」
「アンタ、何回闇の決闘をしたって言うのよ」
「数えるのが虚しくなる位にはな。それだけの数の命をオレは奪ってきた」
命と表現したのは精霊もその中に含まれるからだ。
「オレの両手は既に血まみれだ。ツァン達の代わりに成れるのなら、オレは進んで闇の決闘を受けてやるさ」
「馬鹿!!それでアンタが死んだらどうするのよ」
「死なないさ。カードを、相棒達を信じる限り、オレは負けないし、死なない」
デッキケースを軽く叩いてみせる。どうせ死んでも人生をやり直すだけだからな。それも中途半端な時間から。
「分かってない、分かってないわよ、アンタ何も分かってないじゃない」
ツァンが涙目でオレを見てくる。
「怖かった。アンタが、遊矢が死ぬんじゃないかって、私のせいで巻き込まれたのに。悔しかった。見ているだけしか出来なかった自分に」
「ツァン」
「闇の決闘なんて受ける必要なかったのに、知っていたなら逃げれば良かったのに」
とうとう泣き出してしまったツァンを抱きしめて胸を貸す。
「馬鹿馬鹿馬鹿!!本当に、本当に怖かったんだから」
「すまん、ツァン。だけど、ツァンが傷つく姿なんて見たくなかった」
「馬鹿、そんな事言われたら何も言えなくなるじゃない」
そのまま明日香に呼ばれて駆けつけてくる教師達が来るまでその場で抱きしめあい続けた。
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