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ソードアートオンライン VIRUS

作者:暗黒少年
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スイルベーン

 
前書き
休みって……いいね 

 
 急に出てきて、好戦的な言葉を放った浅黒い肌の男に剣を構える。

「誰だ、お前。見たとこスプリガンだけど、戦うためにここにきたのか?」

「いや、ここにきたのはプレイヤーとの戦いがあったから来てみただけで、戦う気なんてまったくないよ」

 そう言ってスプリガンは、両手を挙げて敵意のないことを示す。それを見ると武器をしまう。

「悪かったな。勝手な勘違いして。というよりどうやってここで戦いをしてたって知ったんだ?」

「それは私です、お兄ちゃん!!」

 幼い子供の声が聞こえると、スプリガンの男の胸ポケットがもぞもぞと動き、何か小さい物が出てくる。それを見るとゲツガも嬉しそうな顔をした。

「もしかして……ユイか!!」

 出てきたのはSAO内で一緒に過ごした時間は少ないが妹のような存在だったユイだ。ユイはゲツガのほうに飛んできて抱きついてくる。

「お兄ちゃん!!」

「ユイ!!また会えたな!!ということはあのスプリガンは……」

「はい。パパです!」

 そう聞くとゆっくりとスプリガンの男の方を見る。

「お前がキリトだったのか……あんま変わんないな。服だけ」

「そういうお前は変わりすぎだ。特に耳が」

 そう言って笑ったので殴りかかる。それをかわされた。その後は二人はこちらの世界での再開を喜ぶように軽くド突き合いをする。そして、笑いながら互いの姿のことを言いあってると事情のつかめないリーファが話しかけてくる。

「えっと、お取り込み中悪いんだけど……二人とも知り合い?」

「ああ、悪い悪い。こいつは前のゲームでも友達だったキリト」

 そう言ってリーファにキリトを紹介する。

「で、こっちがユイ。ナビゲーションピクシーだ」

「よろしくね。キリト君とユイちゃん」

 確か、この世界にはそういう存在があると昨日調べてわかったのでそう説明する。リーファは珍しそうな顔をして納得した。

「でも、ゲツガ君とキリト君ってナビゲーションピクシーに何でそう呼ばせてるの?もしかして……そういう趣味?」

 リーファは若干引き気味に聞いてくる。その質問はユイが答える。

「私のパパとお兄ちゃんだからです」

「ユイ、それ説明になっていない。まあ、それよりもこんなトコにいつまでもいるのはあれだし、スイルベーンってとこに行こうぜ」

 ゲツガはそうリーファに言う。

「……そうね。じゃあ、とりあえず行きましょう」

 そう言ってリーファは翅を出す。

「へー、リーファさんは補助コントローラー無しで飛べるんだ」

「さんはいいよ。それよりも君達は?」

「ちょっと前にこいつの使い方知ったところだからなぁ」

「俺はまったく知らん」

「だろうね。随意飛行にはコツがあるからね。二人とも、教えてあげるから翅を出して」

 そう言われたのでキリトとゲツガは翅を出す。ゲツガは翅の出す感覚がどういうものなのか知らなかったが頭で翅を想像すると出てきた。

「とりあえず、後ろ向いて」

「「おう」」

 後ろを向くとリーファは肩甲骨の上辺りを触る。キリトの方に座るユイは興味津々と言った風に見ている。

「今触っているのがわかる?」

「「ああ」」

「あのね、随時飛行って呼ばれてるけど、ほんとはイメージ力で飛ぶだけじゃないの。ここんとこから仮想の骨と筋肉がのびていると想定してみて、それを動かすの」

「仮想の骨と筋肉か……難しいな……」

 キリトはそう言って身体を翅を動かそうとする。しかしそう言われてもピンとこないゲツガは肩甲骨辺りを動かす。すると、翅が反応してか動き始める。

「お、ゲツガ君のは動き始めた」

 コツを掴んだゲツガは激しく動かして飛び始める。

「お、だいぶわかってきた」

 そして、いろいろな飛行方法を試す。それを見たリーファは手を叩き賞賛を送る。

「うまいうまい。ゲツガ君はすごいね。すぐに覚えちゃうなんて」

「まあ、コツさえ掴めばこんなもんよ。それでキリトはどんな感じだ?」

 キリトはどういう感じなのかだけに気付いただけでまだ飛んではいなかった。しかし、もう少しで飛べそうな感じではあった。

「そう!そのまま!今の動きをもう一度、もっと強く、動かして!!」

 ゲツガはキリトの様子を空中から見物する。その時に、自分の尻尾も動かせるかなっと思ったので翅と同じ感じで動かしてみる。ちょうどキリトは唸りながら両手を引き絞っていた。十分な推進力が生まれると同時にリーファがその背中を押す。すると、キリトはロケットのように真上に飛んでいった。

「うわああああああぁぁぁぁぁ」

 キリトの体はたちまち小さくなっていき梢の彼方へと消えていった。そしてゲツガはあまりにもおかしかったので空中で笑い転げる。そして、だいぶ収まるとリーファに向けて言う。

「あいつを追わなくても大丈夫なのか?」

 ぽかんとしていたユイとリーファに向かって言うとようやく我に返った。

「やばっ」

「パパー!!」

 三人はキリトの消えていった梢に向かって飛びキリトの後を追う。樹海を脱し、ぐるりと夜空を見渡すと金色に輝く月に影を刻みながら左右にふらふらする影を見つけた。

「わあああああああああぁ……と、止めてくれえええええぇぇぇぇぇぇぇ」

 キリトの情けない声が広い夜空に響き渡った。それを見たユイとリーファとゲツガは顔を見合わせる。そして、ユイがくすっとした瞬間皆一斉に吹き出した。

「あははははははははは」

「ご、ごめんなさいパパ、おもしろいです~」

「キリト、悪いが面白すぎる」

 三人は空中でホバリングしたまま、お腹を抱えて笑う。少し収まったゲツガはキリトの襟首を掴んで無理やり止める。そして、キリトに改めてリーファが随時飛行を伝授した。キリトは空中で十分ほどで覚え、自由に飛べるようになった。

「おお、これはなかなかいいな!」

 旋回やループを繰り返しながら叫んだ。

「そーでしょ!」

 リーファもそれを聞いてキリトの叫び返す。

「なんていうか……感動的だな。このままずっと飛んでいたいよ」

「確かにな。俺はあの頃を思い出すわ」

「ね、飛ぶって楽しいでしょ」

 そう言ってリーファは、ゲツガとキリトの近くまで飛んでくる。そして、軌道を合わせると平行飛行に入った。

「あー、ずるいです、私も!」

 そう言ってユイも平行飛行を始めた。

「慣れてきたら、背筋と肩甲骨の動きを極力小さく出来るように練習するといいよ。あんまり大きく動かしていると空中戦闘のときちゃんと剣を振れないからそれじゃあ、このまま中立域飛ぼうか」

 そう言うと、ゲツガとキリトは首をかしげた。

「リーファ、スイルベーンに行くんじゃなかったのか?」

「行こうと思ったけど、キリト君も連れて行くんだったら、中立域の方がいいからね」

「何で俺が行くなら中立域なんだ?スイルベーンのほうが近いのに?」

 そう言うとリーファは、ため息を吐きながら振り返る。

「本当に君達は何も知らないんだね。ゲツガ君はケットシーだから仲のいい種族だから攻撃されないかもしれないけど、スプリガンの君は攻撃されても文句言えないんだよ」

「リーファがいれば大丈夫だろ。それにスイルベーンって綺麗らしいからさ。見てみたいんだよ」

「そこまで言うなら、いいけど命の保障はないわよ」

「おう」

「キリトもこう言ってることだし、行こうぜ」

「そうね、じゃあ私の後についてきて」

 そう言ってリーファは飛び立つ。キリトとゲツガはその後についていく。リーファはゲツガとキリトを配慮してか控えめなスピードであった。

「もっとスピードをあげてもいいぜ」

「ああ、どれぐらい出るか試してみたい」

「ほほう」

 リーファはニヤッと笑うと翅を鋭角に畳んで、ゆるい加速に入っていった。ゲツガもそれを真似て翅を畳むと加速した。スピードがどんどん上がっていくごとに耳元で風切り音が唸る。

 しばらく加速し続けていると隣にいるユイが疲れてきたのか少しずつスピードが落ち始めていた。尻尾を翅の動かした時と同様の感覚で動かしユイを掴む。その時、変な感覚がしたが気にしなかった。手を動かしてユイを掴むと胸ポケットに入れる。

「大丈夫か?ユイ?」

「お、お兄ちゃん、ありがとうございます~。で、でも、もうだめです~。皆さんのスピードには私じゃついていけません~」

 それを見ていたキリトとリーファは笑った。気付くと森が切れ、その向こうには色とりどりの交点の群が見えてきた。中央には一際明るい大きな光るタワーがのびている。あれがシルフ領の首都スイルベーンだ。

「お、ようやく着いたな!!」

 風切り音に負けないくらいの大声でゲツガが言う。

「それじゃ、あの塔の根元に着陸するわよ!……って……」

 不意に何かに気付いたようにリーファはゆっくりとこちらを向いてくる。

「ね、ねえ。二人とも、ライディングのやり方解る……?」

「まったくわからん!!」

「清清しいほどの真顔で答えるなゲツガー!!」

 キリトはゲツガに叫んでであわてだす。視界の先には巨大な塔に半分以上で占められていた。

「……えーと……もうレクチャーも出来ないから、自分たちで頑張ってね。二人とも」

 そう言ってリーファは減速して広場に降下し始める。

「そ……そんな馬鹿なあああああぁぁぁぁ!!」

 キリトは絶叫する。そして先に飛んでいたため塔に大きな音を立ててぶつかった。それを見たユイは痛そうと手で顔隠していたが急にあわてだす。

「ど、どうするんですか、お兄ちゃん!!このままじゃ私達もパパみたいになってしまいますよ!!」

「大丈夫、大丈夫。俺に任せとけって」

 そう言って翅を一気に広げて急ブレーキをかけながら体を反転させる。

「ユイ、少しゆれるけど我慢してくれよ」

 そして、塔に足から衝突する。その瞬間、大きな音を立てて、塔に引っ付く。これくらいの衝撃はあちらの世界でもなんども味わっていたためそこまでないと感じたがユイはそうじゃなかったらしく相当びっくりしていた。

「び、びっくりしましたよ。でも、お兄ちゃんはすごいですね。こんな対処法で切り抜けるなんて」

「SAO内ではこんなの日常茶飯事だったからな。それよりもキリト回収して降りるぞ」

 そう言って顔の埋まったキリトを引き抜いて、塔の元にゆっくりと下降していった。降りたところでリーファと会ったが驚いた表情で見ていた。

「君って、何者なの?あんなスピード出して、あんな着陸してダメージを受けないなんて……」

「ま、そこは気にしない気にしない。それより伸びてるキリトをどうするか考えなきゃなんないだろ」

 そう言ってキリトを持ち上げて、どうするか聞いた。リーファは下ろしてからいいなよと、苦笑いしながら何か唱えだすと体の周りに英語みたいなものが回り、唱えた単語らしきものが止まる。そして唱え終わると、キリトのHPが回復した。キリトを落として、目を覚まさせる。

「痛い!」

「よう、キリト。ようやく起きたか」

 そう言うと、キリトは頭が混乱しているようで頭を掻きながら記憶を整理していた。そして思い出したのか、リーファをジト目で見る。

「ひどいぜリーファ。俺飛行恐怖症になっちまうよ……」

 リーファは腰に手を当てながら笑いを噛み殺していた。

「君が調子に乗ってあんなスピード出すからだよ~。しかし、ゲツガ君と違ってモロにぶつかったのによく死ななかったね」

「うわ、そりゃあんまりだ。っていうか、何でゲツガはダメージを食らってないんだよ……」

 そして肩をすくめながら立ち上がるキリト。大きく体を伸ばした後、辺りを見渡すとまたいつもの表情に戻った。

「おお、ここがシルフの街か」

「綺麗だな~」

「そうですね」

「でしょ!」

 リーファはそれを聞いた途端、うれしそうな顔をして言う。行き交う人を見入っていると不意にリーファを呼ぶ声が聞こえた。

「リーファちゃん!無事だったんだね!」

 そちらに顔を向けると手を振りながら近寄ってくる黄緑色の髪をした少年シルフがいた。リーファはその男に手を振りながら答える。

「あ、レコン。うん、どうにかねー」

「すごいや、あれだけの人数から逃げ延びるなんてさすがリーファちゃん……って……」

 今更のようにリーファの横に立つキリトとゲツガに気付くと数秒間口を開けたまま立ち尽くす。

「け、ケットシーはともかく何でスプリガンが!!何で!!」

 飛び退り、腰のダガーに手をやろうとするのをリーファがあわてて制する。

「あ、いいのよ。レコン。この人が助けてくれたの。こっちの人は助けてくれたケットシーの友達」

「へっ……」

 唖然とするレコンといわれる男に手を差し出し握手を求める。

「俺はケットシーのゲツガって言うんだ。よろしく」

 レコンは流されて自分もそうしてしまう。

「あ、僕はシルフのレコンって言います。よろしく」

「俺はその友達のキリト。スプリガンだ」

「あ、どもども」

 レコンはぺこりと頭を下げながら握手する。そして我に戻ってから再び剣を構える。

「嫌そうじゃなくて!こいつら本当に大丈夫なの!?スパイとかじゃないよね!?」

「大丈夫よ。このケットシーの人は悪い人柄に見えないし、初心者だから絶対にない。それと、こっちのスプリガンは、スパイにしては天然ボケが入りすぎて話しにならないと思うよ」

 それを聞いて、二人とも腹を抱えて笑う。それにムカついてキリトが蹴りを飛ばしてくるがそれを軽く避ける。そしてレコンはしばらく疑惑の目を向けていたがやがて咳払いをする。

「リーファちゃん、シグルトたちは先に水仙館で席を取ってるから、分配はそこでやろうって」

「あ、そっか。うーん……」

 リーファはこちらを見てしばらく考えた後、レコンに向かって言う。

「あたし、今日の分配はいいわ。スキルに合ったアイテムもなかったしね。あんたに預けるから四人で分けて」

「へ……リーファちゃん来ないの?」

「うん。お礼にゲツガ君に一杯奢る約束してるんだ」

「リーファ、俺のは?」

「あ、忘れてた」

 キリトが聞くとうっかりしてたといった風に言った。キリトはそれを聞いていじけはじめるが、さっきサラマンダーを倒したことによって少しこの世界のお金をゲットしたため俺がおごってやるよ、というと戻ってくれた。レコンはゲツガのほうを警戒心を滲ませた目で見ていた。それを見たリーファはレコンをつま先で蹴った。

「ちょっと変な勘繰りはしないでよね」

 そう言ってウィンドウを操作して素早く操作した。たぶんトレードしたんだろうと思う。

「次の狩りの時間が決まったらメールしといて。行けそうだったら参加するからさ、じゃあ、おつかれ~!」

「あ、リーファちゃん……」

 そう言ってリーファはゲツガの袖を引っ張って歩き出す。

「あいつのことはいいのか?」

「いいんです!」

 何で怒ってんだ?そう思いながらゲツガとキリトとユイはリーファの後をついて行った。 
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