ソードアートオンライン VIRUS
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過去の友人
前書き
この回で出てくる、なんかウザイキャラは後々大切なキャラになります。
桐ケ谷家の近くの公園に着いた優はあいつがいないか辺りを見渡す。しかし、あいつの姿は何処にも見当たらない。ふう、息を吐いたところで、
「よう、早かったな」
その声に驚き、とっさに飛びのき構えを取ってしまった。
「おいおい、いきなりなんだよ。二年ぶりのせっかくの友人が来てやったのに警戒するなんてひでぇじゃねえか」
「俺はお前を友人だと思ったことなんて無ねえんだよ!!」
怒鳴るように返すと男は木の陰から姿を現す。男の名前は九条隼人。目が少し隠れるくらいまで髪を伸ばしていて、普通の人よりはかっこいい容姿。しかし、優はこいつに対していい印象をもてなかった。
「おいおい、友達に対してそんな口の聞き方はないだろ」
「俺を呼び出した理由を早く言え!!」
優は早くこいつから離れたいと思い、そう言う。
「はあ。ったくこれだからお前は……まあ、いいや。俺が呼び出した理由はこれを渡したかったからだ」
そう言って小さな封筒を取り出してこちらに投げた。優はそれを取って開封する。その中に入っているものを見て驚愕の表情をした。
「どうだ?驚いたろ。最近レクトがなんか高度な暗号を使ってるから解読してみたらこんなのがあったんだぜ。確かこれ、カズがこの女よく見舞いに行っているからな。もしかしてと思ったんだが、どうやら正解だったみたいだな」
「お前、この写真何処で手に入れたんだ!!」
優が持っている写真には金髪の男とアスナらしき人物が映っていた。
「はあ、お前、耳いかれてんのか?さっきの言ったことから分かるだろ。レクトって」
「お前……まだあんないかれたことをしてるのか!!」
優は隼人に向かって食いかかる。優の言ったあんなこととはハッキングである。優は隼人とがハッカーと知っている理由は、こいつから聞いた。
なぜかこいつは俺にそんなことを言ったかというと、俺のバックアップになれ、といって無理やり自分の正体をべらべらと喋った。
そして、奴は自分が今までやってきたことを話してきた。自分の行ってきたサイバー犯罪を。それによって、おこした殺人のことを。それを聞いた瞬間、こいつをすぐさま警察に通報した。しかし、こいつの家を家宅捜査したってそんな痕跡を見つけることが出来ず、何もなかったことにされた。
「いかれてる?それはお前もそうだろ?あっちの世界のこと、こっちの世界からお前のことを見てたんだぜ。楽しかったろ?あのラフコフって言う殺人集団との殺し合い。あのときのお前の表情めっちゃ楽しそうだったぜ」
「ふざけるてんじゃねえ!!俺は一度も人殺しを楽しいと思ったことは無いんだよ!!」
「そんなこと無いだろ。その前にも何時だったけ。前に殺されそうになった時、お前にやりと笑いながら、楽しそうに殺してたじゃねえか」
そういわれると、背中に嫌な汗が出てくる。こいつは、あの茅場晶彦にも気付かれずに俺の監視をしていたようだ。しかし、あいつらのことは知られていないようだ。だが、こいつは何でそこまで俺にこだわるかがわからない。
「……なんで、お前は俺にそんなにこだわるんだ?」
「何でって、俺のバックアップに適材の人物だったからじゃねえか」
そう言って、近づいてきて肩を叩いてくる。
「早く、俺と組もうぜ。優。俺とお前が組んだら楽しいぞ」
優は肩に置かれた腕を払って、公園の出口へと向かいながら言った。
「俺は、絶対にお前とは組まねえよ。それに、俺はお前と組んだって楽しいと思うことなんて一個もねえ」
そして、優は隼人から離れた。その後、隼人はニヤリとしながら呟く。
「お前のナーヴギアの中にいる奴は絶対賛成だろうけどな……」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
隼人が近くにいるため帰るのをやめ、少し遠く所まできた。ちょうど時間を潰すために調度いい喫茶店を見つけたため、中に入る。
「いらっしゃい」
「ホットコーヒーを頼む」
そう言って優はカウンターの席に座る。そして、先ほどもらった写真を取り出し、この写真をどこかを特定するために携帯を取り出し、検索する。とりあえず、まずはレクトから検索を開始すると、ちょうどコーヒーを置かれる。それを取り、口をつける。
「おい、何調べてんだゲツガ?」
「この写真についてだよ」
そう返して、なんか聞き覚えにある声に顔を上げる。そこにいたのは、五十層の雑貨屋の店主、エギルがいたのだ。
「エギル!お前久しぶりだな!」
エギルに手を差し伸べる。それをエギルも掴んでくる。そしていきなり手を引かれ、顔を殴られた。
「痛ぇな、いきなりなにすんだ!」
「お前、死んだはずじゃなかったのか!つうか俺らに心配をかけて何で謝りに来ないんだよ!!」
エギルは怒鳴ってきた。しかし、その目には涙が浮かんでいる。優はそういえば皆に迷惑かけたんだな、と改めて思い、エギルに謝る。
「ゴメンな」
するとエギルは、殴ってすまないと謝った。謝るぐらいなら殴るなよと思いながら再び席に戻る。
「で、これはなんなんだ?」
そう言ってエギルは優の持ってきた写真をもって見る。エギルは驚きの表情を浮かべた。
「これ……アスナじゃねえか!!何でお前こんなもんを持ってんだ!!」
「嫌な野郎に呼び出されて、渡されたんだよ」
そう言ってコーヒーを啜る。エギルも優の本気で嫌っているのを悟り、それ以上聞かなかった。しかし、写真を裏返し、何か呟いた。
「アルヴヘイムオンライン……」
その言葉に優は反応した。
「エギル!今なんていった!!」
「アルヴヘイムオンライン。この裏に書かれている単語だ。意味は妖精の国だな」
優は素早くネット検索にアルヴヘイムオンラインを打って検索する。数秒も経たないうちに検索結果が出てきた。そして、一番上にあったアルヴヘイムオンラインをタッチして、詳細を見た。
「あったぞ。エギル。多分この中にいると思う」
そう言ってエギルに携帯を見せる。すると、少し何か動かしてから、優に返す。すると画面が変わっていて、その画像を見て驚く。
「これ、世界樹の上か?」
「ああ。一回戻って攻略って所調べたらその画像が出た」
「鳥かご、それにこっちの写真にも映ってるこの檻みたいなものと似ているから多分同じで間違いないだろう」
そう言って、またコーヒーを啜る。すぐに話をきりだす。
「これがゲーム内ならまだアスナ、それにユキもいる。俺はこの中に行く」
「おい、まだ確証が無いだろ。それにキリトにも言えばあいつも来るだろ」
「まあそうだが、あいつは今日は話さないほうがいい。なんか病院であったらしいからな」
そう言って一気にコーヒーを飲み干した。そして、封筒とお金を置き、言った。
「俺はこれから買いに行ってくるからそれ、今日か明日のうちにカズ、いやキリトに見せといてくれ」
「おう、じゃあ、必ず助け出せよ」
「何言ってやがる。そんなの聞かなくてもわかっているだろう」
そう言うとエギルはそうだなといって親指を立てて優に向かって突き立てた。
「必ずつれて帰って来いよ。そうしなきゃ俺らのあの出来事は終わらない」
「ああ、必ずな」
そう言って優はエギルの店を後にした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
とあるサーバー内の大きな木の中、その中に一つ大きな部屋があった。その中には数は少ないがアンティーク系統の家具が置かれていた。その中心におかれているベッドの上には少女が体操座りで身体を丸めていた。その部屋の扉から小さな電子音が響き、男が入ってくる。
「やあ、我が妃。そんな丸くなっていないで顔を上げなよ。お前にそんな顔や姿は似合わないよ」
「気持ち悪いこといわないで。玖珂さん」
少女はそう言って、少し顔を上げると、キッと玖珂を睨みつける。それを見た玖珂は笑いながら少女のいるベットに近づく。
「そう怒んなよ、雪乃。俺とお前の仲じゃねえか」
そう言ってベットにどすんと腰を降ろす。
「私は前に、何度も言ったはずよ。あなたのことは嫌いと」
それを聞いた玖珂は、再び笑い始める。
「はっ、はっ。雪乃そんなこと言ったって無駄だって。もう式は来月に決まってんだから。もう、逃げられないぜ。それに、今行っている実験が成功すればお前を起こした後、俺はお前を思いのままに出来る」
そう言うとユキは驚愕の表情を浮かべて、顔を上げる。その表情を見た玖珂は、ユキの顎に手をやってから顔を近づけて覗き込むように見る。
「やっぱり、お前の驚いたり恐怖の顔になるのを見ていると興奮してくるよ。もっとしてくれよ」
ユキは顎にある手を払って端っこに逃げる。
「やめて!」
「はあ。まったく面白くないな」
そう言ってベットに寝転がる。すると玖珂は何かいいおもちゃを見つけた、または面白いことを思い出したような顔をして身体を起こしてユキの方を見た。
「今日な、お前の病室で彼に会ったんだ。面白かったよー、彼の顔。すごく愉快な気分になれたよ」
「彼って誰?キリト君?」
ユキはそう言うと玖珂は首を振ってからおもむろに焦らしてくる。そしてようやく話した。
「彼って言うのはね、もう一人の英雄のゲツガっていうやつだよ。いやー、ホントあいつは面白かった。君の身体に触れた時の顔なんて超傑作だったよ」
そう言って足をじたばたさせながら笑う。そして、笑うのが苦しくなったのかひーひーと息をしていた。ユキはそれを聞いて思考が一瞬止まった。
『ゲツガ君は……やっぱり生きている……』
あの時、自分を犠牲にしてまでクリアに導いた男。ゲツガは茅場晶彦を倒したものの自分のHPがなくなって死んだ。しかし、ユキは生きていることを信じていた。しかも、自分の居場所を調べて見舞いにも来ていてくれていたこと。
「ゲツガ君を馬鹿にしないで。あなたのような男とはちがって優しいの」
「何を言ってるんだ?どうせ、あんな小僧にどうこうできる権力も財力も行動力もない」
「そんなこと無い!!」
ユキは反論して声を張り上げるがそれを玖珂は笑い飛ばす。
「だから、あんなクソガキがここのことを気付くことがあってもここに来ることは不可能。警察に言ってもそのことを金でモミけしゃ問題ない」
そして玖珂は立ち上がり、扉の方に向かって歩き出す。
「まあ、せいぜい今ある自尊心で堪えてみな。ま、どうせ、もうすぐでその自尊心もなくなるから意味無いけどな」
そして、壁にあるパネル何処からか取り出したカードに読込み機にスライドすると扉が開く。
「また来るよ。その時は、俺をいい加減認めろ」
そう言って外に出て行く。その後ゆっくりと扉が閉まり、大きな音をたてた。
「ゲツガ君……絶対に助けに来て……」
ユキは両手を合わせて彼が助けてくれることを祈った。
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