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ハイスクールD×D ~聖人少女と腐った蛇と一途な赤龍帝~

作者:enagon
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第3章 さらば聖剣泥棒コカビエル
  第47話 忌々しき過去

 
前書き


現在暁で「転生者達が異世界でギフトゲームをするそうですよ?」を連載していますスラッシュ様から要望を受けまして、火織があちらの小説に出張することとなりました。
数いる転生者たちのうち、火織に目を留めて頂き光栄です。
あちらの火織もよろしくお願いします。


 

 



 今日も今日とて放課後オカルト研究部に足を向ける私達。オカ研に入部し、悪魔になってもうそろそろ3ヶ月、この新たな生活にもだいぶ慣れてきた。荒事も増えたけれど幼少の頃から龍巳に修行を付けてもらってたこともあって、今のところ身の危険を感じるようなことはなかったし、それ以上に新たな仲間との生活は楽しい事ばかりだった。

 さて、今日は私とイッセーは剣道部ないし、龍巳も漫研の活動はないらしいので同じクラスのアーシアとレイナーレも連れ立って旧校舎へとやってきたんだけど……何故か私達以外のオカ研部員全員が旧校舎の前に勢揃いしていた。

「あ、火織達やっと来たにゃ」

「どうしたの黒姉? 皆揃って旧校舎の入口の前で?」

 その私の質問に答えてくれたのは部長だった。

「連絡を忘れていたのだけれども、今日は定期的に旧校舎の中を掃除する日なのよ。毎回使い魔に1日かけて掃除をさせていたのだけれど……」

 その言葉におずおずと手を挙げる者が約2名。

「使い魔が掃除って……もしかして私も?」

「……我も?」

 ……あ、そういえば2人も一応使い魔だっけ? さ、さすがに2人に掃除させて私たちはしないってのは……

「ふふ、大丈夫よ。今回からは事情が変わったから冥界の業者に頼むことにしたわ。先ほど到着して、もう中では始まっているわ」

 部長はまるでいたずらが成功したかのように笑った。さすが部長、使い魔とはいえ2人にまで掃除をさせることはなかったわね。

「じゃあ部長、今日の活動はお休みですか?」

 もしそうなら部活のない放課後って久しぶりかも。今までは剣道部のない日は放課後空いてたんだけど、オカ研って基本毎日だし。

「それでも良かったのだけれど、今日はちょっと環境を変えようと思って」

 環境? それってどういう……?

「今日の会議はイッセーの家で行うわ」







「で、こっちが小学生の時のイッセーなのよー」

「あらあら、イッセー君ったら海で全裸に」

「ちょっと朱乃さん! っていうか母さんも見せんなよ!」

「この頃からイッセーってやんちゃだったよねぇ」

「ってこの時俺から海パン剥ぎ取ったのは黒歌姉だろうが!」

「って次の写真、龍巳まで全裸じゃない」

「ん、イッセーとおそろい」

「でも龍巳姉様、このあと母さまに怒られてましたよね。はしたないって」

「うっ……」

「そういえば黒姉も一緒に怒られたっけ? 皆のお姉さんなのに何してるんだって」

「うぐっ」

 イッセーの家でオカ研会議をするはずが、おばさんが昔のアルバム持ってきて崩壊しちゃった。しかも黒姉がそれならとうちのアルバムまで持って来ちゃって。昔から家族ぐるみでお付き合いしてたから、どっちのアルバムにもイッセー宅とうちとが同じくらいの割合で写ってたりする。

「皆さん本当に昔から一緒なんですね……羨ましいです」

 アルバムをめくっていたアーシアが羨ましそうな、そしてどこか寂しそうな目をしていた。そんなアーシアをレイナーレが後ろからきゅっと抱きしめる。

「そうね、私もその気持ち、ちょっと分かるわ。……だからこそ、これからは皆でたくさん思い出を作って行きましょう。ね?」

 それを聞いたアーシアは、瞳に涙を乗せつつも、ニッコリと笑った。

「はいっ! 皆さんでいっぱい写真を撮りましょう!」

 そのアーシアの言葉に皆も笑顔になる。ってあれ? そういえば部長は……?

 視線を巡らせると、皆の輪から少し離れてアルバムを凝視してた。

「……小さいイッセー」

 そう言う部長はまじまじと子供の頃のイッセーの写真を凝視しながら頬をほんのり赤くしていた。

「……幼い頃のイッセー幼い頃のイッセー幼い頃のイッセー幼い頃のイッセー幼い頃のイッセー……」

 ぶ、部長ちょっと病んでる? 病んでるのは原作では朱乃さんだったと思うんだけど……。

「私もなんとなく部長さんの気持ち、分かります!」

 って純粋なアーシアは分かっちゃダメ! と、そこに黒姉が首を突っ込み、その写真を見るとにやり笑った。

「そうそう、確かこの時イッセーうちに泊まって、朝になったらおねsy……」

「だぁあ! 黒歌姉ほんとそういうこと言わなくていいから!」

 イッセーの恥ずかしい秘密をバラそうとした黒姉を、イッセーが後ろから抱きついて口を手で覆った。なんかこの前のキメラの時に黒姉を抱きしめてから、こうやって2人がひっつく回数が増えてる気がする。なんていうか……遠慮というか壁が無くなったっていうのかな? 白音ともよく膝に乗っけてくっついているし、やっぱりこの2人が皆より少しリードしてるわね。

「あら? これは……」

 と、そこでアルバムをめくっていた朱乃さんが不思議そうな声を上げた。

「どうしました? なにか変な写真でもありましたか?」

「えぇ。イッセー君と龍巳ちゃん、それに白音ちゃんがおかしな格好でおかしなポーズを……」

 と、そこまで朱乃さんが言った所で

「「「ギャアアアアアア!!!」」」

 イッセーと龍巳、白音がものすごい速さで朱乃さんの持つアルバムに飛びついたかと思うと、そのままアルバムをかっ攫って部屋の隅まで移動した。

「なんでまだこんな写真が残ってんだよ!?」

「あの時確かに処分した!」

「今はそんなことより早くその写真を処分してください!」

 と、白音が言った所で龍巳がその件の写真をアルバムから抜き取り、そのまま細切れになるまで破ってゴミ箱に捨てた。そしてそれを確認した3人はホッと安堵の溜息を付く。

「さ、3人とも一体どうしたの?」

 部長が疑問の声を上げた。見れば他の皆も頭に疑問符を浮かべてる。そんな中私と黒姉、おばさんは視線を交わらせると……2人はそのまま黒い笑みを浮かべた。それから多分私も同じような表情を浮かべてると思う。

「そうそうこんな写真もあるんですよ?」

 私は生徒手帳に挟んである写真、私の大切な人たちが写っている何枚かの中の一枚を抜き取って皆に向けた。そこには黒いコートにおもちゃの大剣を背負うイッセー、眼帯にあっちこっち切れ目が入り裾はボロボロの黒いゴスロリ服を着た龍巳、白ゴスロリに猫耳カチューシャとあっちこっちに包帯を巻いた白音が変なポーズを取りながら「「「ギャアアアアアア!!!」」」……おぉっ、なんという速さ。まさかイッセーにまで反応できずに写真を奪われるとは。

「火織姉様なんでこんな写真生徒手帳に入れてるんですか!?」

「っていうかなんでまだ残ってんだよ!? 俺達で徹底的に処分したはずだぞ!?」

「データ削除したあとパソコン、初期化までしたはず!」

 いやなんでって言われても……

「大切な思い出だし?」

「「「どこがぁぁぁあああ!?」」」

 3人が悲鳴を上げる。

「ね、ねぇ火織。今の写真って……」

 部長が聞いてきた。そりゃまあ気になるわよね。

「私達が中学上がってからすぐの頃なんですけど、3人とも見事な中二病を発症したんですよ」

 期間は半年とすっごく短かったけど、それはもう見事なものだった。外から見たら明らかに痛々しいのに本人たちはノリノリだったから余計にね。将来話のネタになると思って色々記録残したっけ? あれ? そういえば黒姉もあの時……

「じゃーん! これなぁ~んだ?」

 そんなことを考えてると黒姉が右手を掲げた。その手の中には……ボイスレコーダーが。

「ま、まさか……」

 イッセーの呆然としたつぶやきに黒姉はニヤリと笑うと、レコーダーの再生ボタンを押した。すると……

『フゥ~ッアッハッハッハッハッハ!!』

 いきなりレコーダーからは狂ったような高笑い! その声に部長たちはビクゥッとなり、イッセーは床でのたうち始めた!

『我が名は黒き聖皇帝の竜騎士(ブラック・ホーリー・カイザー・ドラゴンナイト)! この世を統べる覇王である!』

「や、やめろぉぉぉ! やめてくれぇぇぇ!」

 昔の痛々しい発言に耳を抑えて転げまわるイッセー。一方龍巳と白音はレコーダーを奪い取ろうと黒姉に跳びかかるけど、黒姉も予想してたのかふわりと避ける。それにしても2人共必死ね。まあ理由は分かるけど。だってイッセーの長々とした口上が終われば次は……ね? と、そこで

『我こそは……』

「だめぇぇぇぇえええ!!」

 と、龍巳の声がレコーダーから響いた瞬間、龍巳がレコーダーを奪い取ることに成功し、再生が止まった。そんな状況を私と黒姉、それにおばさんはニヤニヤと見ていた。さらに部長たちもようやく思考が追いついてきたのか顔がにやけ始めてる。

「削除、削除……」

 龍巳は奪い取ったレコーダーの中身を削除してるけど……

「無駄だよ龍巳、それはコピーだから」

 その黒姉の言葉を聞いた龍巳は絶望したような表情を浮かべた。

「っていうかなんで残ってるんですか!?」

「そうだ! この家と火織んちの中はくまなく探してデータは全部処分したはずなのに!」

「私達自身も隠し持ってたっていうのもあるけど……お父さんたちがそう簡単に大切な娘や息子の記録を消させるはずないじゃない?」

「……ってちょっと待て。大切な娘や()()?」

 その言葉に嫌な予感がしたのか、イッセーはギギギ……と首を軋ませながらおばさんのほうを向く。そのおばさんの手には……

「じゃん♪」

 当時最新式のデジタルビデオカメラが。

「か、母さん、まさかとは思うけど……」

「大丈夫よイッセー……綺麗にバッチリ撮ってあるから♪」

「大丈夫じゃねぇぇぇえええ!!」

 そう言って今度はおばさんにイッセーたちは飛びかかろうとするけど……

ガシッ! ×3

 イッセーは両腕を部長とレイナーレが、白音は黒姉が、そして龍巳は私がしっかり押さえつけた。

「か、火織お姉ちゃん! 離す!」

 腕の中で龍巳がもがくけど私の腕からは抜けられない。普段ならこんなことはありえないけど、ここにはおばさんがいるから本当の力を使うことが出来ずもがくばかり!

「まあまあ、見ても減るものじゃないから♪」

「く、黒歌姉様! 離して下さい!」

「いいじゃない、一緒に白音の勇姿を見よう?」

「見たくありません!」

「お願いです部長! 離して下さい!」

「ごめんなさいね。私も見てみたいわ」

「レイ……夕麻も離せ!」

「こんな面白そうなもの、見逃せるはずないじゃない」

 どうやら白音とイッセーも振りほどけない様子。その間も着々とテレビで再生する準備が進み……

「それじゃあ再生するわね?」

「「「やめてぇぇぇえええ!!!」」」







「ぷっ、ぷぷ……」

「くくくっ……」

 再生が終わってから部屋には延々と忍び笑いが続いていた。

「イ、イッセーさん。とても可愛かったです」

「本当ですわね。ああいうのを痛可愛いと……ふふっ」

 ダメだ。私を含めて皆お腹の痙攣が収まらない。そんな中渦中の3人はというと……

「空が、青いなぁ……」

「青い……」

「青いです……」

 庭に通じる窓辺に座り空を見つつ3人揃って真っ白に燃え尽きてた。うふふっ、可愛いんだからそんなに気にしなくってもいいのに。

 こちらに戻ってこない3人は放っておいて、私たちはアルバムの鑑賞会に戻る。ちなみにおばさんは用事を思い出したのか再生中に出かけていった。

「あら? このアルバムはかなり古いわね」

 部長が新たに開いたアルバムには今までよりさらに小さな私とイッセーの写真が収まっていた。さらに違うのが黒姉や龍巳、白音の写真が1枚もなく、代わりに私とイッセー、そしてもう1人の同年代の男の子のように元気そうな女の子が写っていた。

「これは年齢的に幼稚園の頃かしら」

「この頃は私も知らないにゃ」

「あの、お2人と一緒によく写っている女の子がいますけど、どちら様ですか?」

「ああ、この娘は私とイッセーの幼馴染よ」

「幼馴染? 我知らない」

 と、そこでようやくどこかに逝ってた龍巳たちが帰ってきた。

「火織、俺の幼馴染はお前たちだぞ?」

「イッセー、あんた覚えてないの? あんなに一緒に遊んだのに」

 私はイッセーに向き直るけど……ホント覚えてなさそうね。

「よく3人で遊んだり、お菓子を分けあったりしたのに……ほんとに覚えてないの?」

「……そういえばそんなこともあったような……あれ? じゃあなんで龍巳は知らないんだ?」

「この娘、幼稚園の時にイギリスに引っ越しちゃったのよ。龍巳と出会ったのはその後」

 その言葉にイッセーはまじまじとその娘の写る写真を見始めた。どうやら本当に忘れちゃってるみたいね。原作だともうちょい覚えてた気がするのに。と、そこでもう1人、写真を食い入る様に見ている人がいるのに気が付いた。私はその人、祐斗の視線の先にある写真を見てみると……

「っ!!」

 そこには私がイッセーともう1人の幼馴染の肩に手を回し、笑い合っている写真が。ここで問題なのは笑ってる私達の後ろ、そこにはその娘の父親が写っていて、その人の手には……

「火織さん、これに見覚えは?」

 そこで祐斗はその写真を指差しつつ私に聞いてきた。そこでようやく事情を知っているであろう部長と朱乃さんがそのことに気が付いたのかハッと息を飲んだ。

「……うん、覚えてるよ。この娘のお父さんがいつも持ってた。模造刀だとは思うけど……」

 模造刀なんかじゃないってことは分かってる。でも……そっか。この間ライザーとのゲームも終わったし、そろそろその時期だよね。

「こんなことがあるんだね。こんな思いがけない場所で見かけるなんて…………これは聖剣だよ」

 聖剣を巡る戦いが、もうすぐ始まる。


 
 

 
後書き


次回予告

「やっほー、火織ちゃん」

「木場! シャキッとしろよ!」

「うるさいわね、殺すわよ?」

「なんか避けてるみたいになっちゃってすみませんでした」

「あんたたちの彼氏がお呼びよ?」

 次回、第48話 邂逅

「てめぇなんか死んでしまえ!」


 
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