久遠の神話
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第三十八話 神父その二
「おられることはおられたのね」
「だから教会でもね」
カトリックの教会、そこにおいてもだというのだ。
「子供がいたりするんだ。教皇様でも子供作ってた人がいるよ」
「そのローマ教皇でも」
「そう。教皇様でもね」
アレクサンドル六世が有名だ。かの悪名高きボルジア家の主でもありチェーザレ=ボルジア等がその子だ。チェーザレが彼の息子であることは当時から誰もが知っていることだった。
「そうだったんだよ」
「結婚しても子供を作っても駄目でも」
「そういうことはやっぱり」
「中々難しいのね」
「みたいだね。けれどね」
だがだとだ。ここで上城が言うことが変わった。
「僕がこれから会う人はね」
「その神父さんはなの」
「うん。とても真面目で清潔な人でね」
上城はその神父のことを樹里に笑顔で話していく。
「結婚とかもね」
「絶対にしない人なのね」
「背が高くてすらりとしててね」
容姿のこともだ。希望は話した。
「顔立ちも整ってるけれどね」
「それでもなの」
「うん。結婚はおろか男女交際もされないよ」
「本当に神にお仕えしてる方なのね」
「そうなんだ。凄い人なんだよ」
「上城君の尊敬する人なの」
「うん。実は高代先生もだけれどね」
言葉は現在形だった。彼は過去形はここでは使わなかった。
「高代先生も立派な人だけれどね」
「剣士であってもね」
「剣士で。僕の敵でもあるけれど」
そのことは上城も認めた。認めざるを得ないことだった。同じ剣士としてそのことはどうしてもだった。剣士だからこそそうせざるを得なかったのだ。
「それでもね」
「立派な人よね」
「ああした先生ばかりだとね」
いいのにと。上城は言外にこんなことも述べた。
「その高代先生と同じくね」
「その神父さんもまた」
「僕の尊敬する人なんだ」
目を輝かせてだ。上城は樹里に話していく。
「そうなんだ」
「そうなのね。それで今から」
「もうすぐだよ。教会は」
神父のいる教会、そこはだというのだ。
「そろそろ見えてくるかな」
「あれかしら」
樹里は道の右手の先に見える建物を指差した。白い壁で赤がかったダークブラウンの三角の屋根の上には白い十字架がある。その建物を指差しての言葉だ。
「あれよね」
「あっ、そうだよ」
上城もそこだと言う。それはまさに教会だった。
「あそこの教会だよ」
「本当に見えてきたわね」
「言った通りになったね」
「そうね。それにしても」
教会の周りには木々があり白い壁で囲われている。その教会を見て樹里はこんなことを言った。
「奇麗な教会よね」
「そう思うよね」
「うん。本当に」
「中はもっと奇麗なんだ」
「中は?」
「お庭も教会の中もね」
そのだ。どちらもだというのだ。
「凄く奇麗なんだ」
「それだけお掃除されてるのね」
「神父さんがいつもお掃除してるからね」
だから奇麗だというのだ。つまり清潔な奇麗さがあるというのだ。
「だからなんだ」
「ううん。何かそれを聞くと」
「中に入りたいって思うよね」
「ええ」
その通りだとだ。樹里は笑顔で答えた。
「それじゃあね」
「うん、入ろう」
こうした話をしてだ。二人は教会の門を潜り中に入った。するとだった。
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