久遠の神話
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第三十八話 神父その三
礼拝堂、上城の予想通り奇麗に掃除されているその礼拝堂、十字架の主がいるその場所に入るとだ。そこには神父の服を来た男がいた。その彼は。
二人に背を向けていた。そのうえで祈りを捧げていた。その彼にだ。
上城がだ。こう声をかけた。
「あの」
「誰でしょうか」
「僕です」
上城はまずはこう言った。
「上城大樹です」
「上城君ですね」
「大石善道神父ですよね」
「はい」
その通りだとだ。神父は祈りから立ち上がって上城に答えた。
そのうえで振り向くと長身で精悍な真面目な顔の男がいた。その髪は黒い。
黒く細い感じであり奇麗に整えられている。耳が見える位の長さだ。
顔は眉は薄めでやや上になっている。一重の目はしっかりとした感じだ。
細長い顔の顎は尖っておらずしっかりとした形だ。鼻の形も確かだ。背は一八〇をやや越えている感じで身体つきも確かで格闘家の様だ。神父の服の上からもわかる。
その彼がだ。上城を見て微笑んでこう言ってきたのだった。
「お久しぶりです」
「そうですね。本当に」
「今は確か高校生でしたね」
「はい、そうです」
その通りだとだ。上城も答える。
「何年ぶりでしょうか」
「そこまで経っていますね」
「本当に」
「大きくなられましたね」
神父らしくだ。大石は穏やかで優しい声で上城に言ってくる。そしてだった。
樹里に気付いてだ。こう言うのだった。
「彼女は」
「はい、ええと」
「交際相手になりますか」
「それはですね」
困ったはにかみの笑みになってだ。上城は言うのだった。
「何といいますか」
「ははは、ちょっと言えないですか」
「すいません、こうしたことは」
「それならいいです」
大石もだ。笑ってそれはいいとした。
そのうえでだ。こう言うのだった。
「ではお友達ということで」
「それで、ですか」
「今は宜しいでしょうか」
「私もその方が」
樹里もここで大石に述べた。
「お話が進むでしょうし」
「お友達といって範囲は広いですからね」
わかっているという感じでだ。大石は樹里にも答えた。
「それではですね」
「はい、それでお願いします」
こうした挨拶からだ。あらためてだった。
上城と樹里は大石と話をしようとした。だがここでだった。
礼拝堂に何かが出て来た。それはというと。
あの怪物だった。深い叡智を持った怪物は上城だけでなくだ。
大石に対してもだ。こう言ったのだった。
「また出会いがあったわね」
「貴方ですか」
そのスフィンクスを見てだ。大石は至って冷静に返した。
「礼拝堂にも入ることができたのですか」
「キリスト教ね」
「礼拝堂は主がおられる場所です。魔ならば」
「私は。いえ怪物達は誰もが」
「魔ではないというのですね」
「そうよ。私達は善でもなければ悪でもないわ」
そうした観念とはだ。怪物達は別の存在だというのだ。
「言うなればね」
「剣士と戦う存在ですか」
「剣士同士の戦いを添える存在よ」
それが彼等、怪物達だというのだ。
「それに過ぎないわ」
「だからですか。貴女も今こうして」
「そうよ。そもそもキリスト教とは別の存在だから」
それ故にだというのだ。
ページ上へ戻る