ハイスクールD×D 万死ヲ刻ム者
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第八十一話 過去
今日の給仕が終わり、闇慈は自分の部屋でゆっくりしていたが気に掛けている事が頭から離れなかった。
【フランの力をどうやって抑えたのかと言う事を・・・】
闇慈はフランに直接聞く事を考えたが、それがフランに傷を負わせることになってしまっては尚更自分の心に傷を負ってしまうため、それは控えた。そして出した結論はレミリア本人に聞き出すことだった。
「良し・・・行こう!!」
闇慈は覚悟を決してレミリアの居る部屋に移動し、ドアの前で立ち止まるとノックをした。
「誰かしら?」
「レミリアお嬢様・・・アンジです。お話があります」
「・・・入りなさい」
「失礼します」
闇慈が入るとレミリアがまるで待っていたかのように、寝間着姿でイスに座っていた。そして闇慈はゆっくりとイスに腰掛ける。
「貴方が来たのは何となく分かるわ・・・フランの事でしょう?力を読み取れる貴方なら疑問に思わない方がおかしいわね」
「力を読み取る事を知っていながら、僕にフランの面倒を見させたのは何か裏があるのですか?お嬢様」
闇慈は少し目を細めながら、レミリアに聞いたが彼女は特に悪気はないように答えた。
「まさか。人手が足りないから貴方に面倒を見させた・・・それだけの話よ」
「そうですか・・・なら本題に入ります。貴女はどうやってフランの力を抑えたのですか?貴方もフランの力が自分の力より遥かに上の事は知っている筈です」
「勿論。知ってたわよ。・・・私はフランを495年間、地下の部屋で過ごさせていたわ」
「っ!?」
闇慈は一瞬、顔を驚愕させたがその理由を考え始めた。そして出した答えは・・・
「フランの命を狙う者・・・悪魔祓い(エクソシスト)などから守るためですか?」
「流石ね。フランの力はあまりに膨大なため、それを排除しようとしてきた者が大勢やってきたわ。でも・・・半分正解で半分不正解よ」
レミリアは過去の事を思い出したのか顔を歪める。闇慈はそれを見ると申し訳ないと言う心を抱いたが、今回ばかりは引き下がる訳には行かなかった。
「後は・・・フランの力を恐れたから・・・ですか?」
「そうね・・・そうと言って良いわ。当時の私はフランの『運命』を見て、フランに恐怖してしまった。自分の大切な妹でありながら・・・」
「お嬢様・・・」
「私はフランに『悪い奴らから守ってあげるから地下室で我慢して』と言い聞かせた。そして495年もの間、フランを外へは出さずに、幽閉してしまった・・・」
レミリアの言葉には一つ一つ、過去の後悔が現れているようだった。闇慈は真剣な表情でそれを聞いて行った。
「私達吸血鬼は紅い満月を見ると自分を制御できなくなってしまうの。そして紅い満月が昇った時に【博麗の巫女】・・・【博麗霊夢】がフランの静めてくれた。それからフランは外の世界に興味を持ったのよ」
レミリアは一通り話すと紅茶を口にして、溜め息を出す。
「これが私の過去・・・。そして私は力の制御なんかしてあげていないわ。私は・・・ただ逃げたのよ。運命に・・・恐怖に立ち向かう事も出来ずに・・・」
レミリアはその事に段々に苦虫を噛むような表情を浮かべ、軽くではあるが涙を流した。その顔は吸血鬼だと言う事を忘れてしまいそうな程の、一人の少女の顔だった。そして今までの罪悪感が彼女に襲い掛かり、その壁が壊れてしまったのだろう。闇慈はそれを懐に入れていたナプキンで優しく拭う。レミリアは少し赤面した後、元のカリスマ顔に戻った。
「それで・・・貴方は制御の事を聞きに来たのだけど・・・さしずめ、自分の力の制御に役立てるつもりだったのかしら?」
「違う・・・と言ったら嘘になります。僕はもう・・・あんな思いをしたくはない。そのためには少しでもヒントとなるものを探していたんです。でもやっぱり・・・こう言ったことは自分の力で見つけないといけないみたいですね。では失礼します、お嬢様」
闇慈はゆっくり席を立ち、ドアに向かったがここであることを思い出したのか振り返り、レミリアに向き合った。
「お嬢様。僕は未だに心を過去に囚われたままですが、一つだけ言えることがありますよ?例え貴女がやり方を間違っていたとしても、フランを想う心は変わらない。それは大切な事だと僕は考えます。そしてその心もフランは気付いている筈ですよ?何故なら・・・貴女のたった一人の妹なのですから」
闇慈はそれだけど言い残すと、部屋から出て行った。レミリアはフウと溜め息を付くと紅茶を再び口にして、空の月を眺める。
「たった16年しか生きていない人間にここまで励まされるなんて思ってもなかったわね。・・・黒神闇慈。貴方って本当に面白い奴よ。サーゼクス・・・貴方が羨ましいわ」
こうして闇慈の一日の給仕は終了した。
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