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IS《インフィニット・ストラトス》~星を見ぬ者~

作者:白さん
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第十一話『新隊長』

響く金属音、飛び散る火花。模擬戦場の地上では、スウェンとシュハイクによる斬劇が行われていた。


「どうした、それで終わりではあるまい!」

「ちっ!」


シュベルトゲベールでシュハイクの“クロコディール”を防ぐ。だが、刃の回転しているクロコディールの勢いは凄まじく、とても抑えきれるものではなかった。

辛くもシュハイクから距離を離しシュベルトゲーベルを構えなおす。


「面白い武器だろう? このクロコディール、ようは巨大なチェーンソーみたいなものだ」

「悪趣味ですね」

「ぐっ!……あ、悪趣味とか言われるのは予想外だ……だが攻撃性だけは高いぞ!!」

「!? ぐあぁああ!!」


スウェンはシュハイクにより吹き飛ばされ、壁へと激突する。直ぐに体勢を立て直し、眼前を見るとシュハイクは直ぐそこまで来ていた。


「速いな……!」


左肩のユニットに搭載された“マイダスメッサー”を引き抜き、ビームの刃を発生させ


「これでどうだ!」


手元から離れたマイダスメッサーは勢いのある回転をつけながらシュハイクに向かうが、直進的な軌道から容易にかわされる。すると、シュハイクは不適に笑みを浮かべるとクロコディールを真っ二つに分け、二刀流へとなる。


「!?」


右手からの斬撃をシュベルトゲーベルで防ぐが、左手に持たれたクロコディールは防げず


「ぐああぁあああ!!」


クロコディールの回転刃がスウェンの身体を切り裂き、回転された刃により連続でダメージを受け、シールドゲージが急激に減少する。


(一瞬でもいい、隙をつくれれば……)


そしてスウェンはクロコディールの刀身を左腕と身体で押さえ


「ッ……!!」


刀身と身体に密着させ


「ぐうっ!!」


クロコディールの回転する刃を無理やり止める。


「……まさか、そんな方法で止めるとは無茶苦茶な奴だな、お前は。だが、楽しかったよスウェン、もうこれで――」


「まだ……勝負はついてませんよ?」

「何……ッ!?」


シュハイクは背後から迫ってきたものに反応できず、右腕に持っていたクロコディールを弾き飛ばされる。飛来してきたものの正体、それは先程スウェンが投擲したマイダスメッサーだ。

スウェンは左腕の武装“パンツァーアイゼン”のアンカー射出する。打ち出されるアンカーは左腕のクロコディールに直撃し、弾き飛ばされる。今のシュハイクは両手の武器が無い、スウェンはこのタイミングを逃さず、シュベルトゲーベルを握りなおし


「でええぇぇやぁぁ!!!!」


今まさにシュハイクの身体をシュベルトゲーベルで切り裂こうとしたが


「ちっ……」


その時ストライクのシールドゲージが0へとなった。


「……俺の、負けですね」

「ああ、そうだな」


二人は構えを解き、ISを解除する。


「スウェン、ありがとう。本当に楽しかった、最後のあれには少し驚かされたぞ?」

「まあこればかりは隊長が俺に注意を向けていたからよかったのですが、結局俺は負けましたから」


シュハイクは後ろを向き


「くくく……調子に乗るなよ? 少年。私から勝利を奪おうなんて10年早い」

「意外と近いんですね」

「……そうかもな。それじゃ、後は任せたぞスウェン“隊長”?」

「了解しました」


シュハイクは手をひらひらさせながら、模擬戦場を出て行った。すると


「スウェン中尉!」

「ラウラか」


慌しく走ってきたラウラ。スウェンの前まで行くと


「どうした、ラウラ?」

「先程シュハイク隊長に会ったのですが、隊長に任命されるというのは本当ですか!?」

「ああ」


その言葉にラウラは笑顔になり敬礼する。


「おめでとうございます!」

「「「おめでとうございます!!」」」

「?」


突然大勢の声が聞こえたので、上の閲覧席を見ると“シュバルツェ・ハーゼ”の隊員達が居た。


「先程の戦い見てました!」

「シュハイク隊長とあそこまで戦うなんて凄いですよ!」

「今度自分に訓練よろしくお願いします!」

「その次に自分にも!」


部隊の皆からそのような言葉を受け、スウェンは不思議な感覚に包まれる。


(何だ……この感覚は……)


「スウェン隊長」


ラウラの後ろからクラリッサがスウェンに声を掛ける。


「先程の戦いお見事でした。これからスウェン中尉の隊長就任を祝って、パーティでもしようと思っています」

「副隊長、別に俺は……」

「却下です、あなたは遠慮し過ぎなんですよ。これくらいの事は受けてください」

「……了解した」

「それでは、黒ウサギ隊! 今日は盛り上がるぞ!!」

「「「おおおーー!!」」」

「おい……」




/※/





「はぁ……明日も訓練があるというのに」


スウェンは隊舎にて、自分の部屋へと向かう最中だ。先程のパーティは騒ぎすぎた、主にスウェン以外が。


「正直疲れたが……悪くないな。ああいうのも」


祝い事をしてもらったのは子供のとき以来だ、そう思いながら自分の部屋へと入ると。


「……」


スウェンのベッドの上に、布団の中に包まってもぞもぞ何かが動いている。


「くんくん、これがスーくんのベッドか~ふふふ……」


何処かで聞いたことがある声、スウェンは直ぐに思い出しそれに声を掛ける。


「何故そこにあんたが居る」

「むむっ! その声は!」


布団を跳ね除け中から


「じゃ~ん! 久しぶり、スーくん! 元気にしてた~? 勿論してたよね~!」

「篠ノ之 束……何故あんたがここに? ここの警備とロックは固い筈なのだが……」


束は「ちっちっち」と一指し指を左右に振り


「スーくんが地球のどこに居ようが、この束さんには直ぐにわかってしまうのだ! どう? 凄いでしょ!」

「いや、質問に答え――」

「そういえばこの部隊の隊長になったんだってね! 凄いね! おめでとう! 君があの草むらで突然現れた時から目をつけていた時から気にはなっていたけど、まさかここまで上り詰めるなんてね!」


「だから話を……」


スウェンはあるワンフレーズが気になった。


「今あの草むらと言ったな」

「そうだよ、私はグレーデュント夫妻のストライカーシステムに興味があって、監視衛星を使ってあの人達行動をずっと見てたんだ。それで、ふとあそこの草むらに衛星を向けたら、突然君が現れたんだ!」

「!?」

「あそこの地点を調べたけど何も反応が出なくて、何故君があそこに急に現れたのか、この私の
頭脳を使っても解らなかった。それから君に興味が沸いたんだよ。どうやってあそこに現れたの!? どんな機械使ったの!?」

「……俺にはわからない。何故あそこに居たのか」

「ふ~ん……ウソはついてないみたいだね。けどいいや、実際君が突然現れたのは何かしらの原因が起きたのは確かだから、少しづつ解明していこう!」

「篠ノ之 束、一つ質問していいか?」

「もう! 束でいいのに! どうせだったらぷりてぃ束さんで――」

「断る」


束は頬を膨らませ


「むー。それで? 質問って?」

「俺があの草むらに現れたとき、他に誰か居たか?」

「ううん、どこ見渡してもスーくん一人だったよ」

「……そうか」

「あんまりラボを空けておくのはダメだから。あ! 困ったときがあったらいつでも言ってね!」


束はポケットから電話番号らしきものが書いてあるメモ用紙を取り出し、スウェンに手渡す。


「この束さんは何時でもスーくんの味方だからね! それじゃ!」


そう言い窓の外へ束は飛んでいった。残されたスウェンは数秒間固まったものの、ため息一つの後布団などを整理してベッドの上に倒れこむ。


「……あの女性はいなかった、か」


スターゲイザーのコックピットに一緒にいた女性。彼女はもしかしたら自分とは違って地球圏に帰れたのだろう、徐々に眠くなっていき、薄れ行く意識の中でそう願った。



 
 

 
後書き
シュハイクのISシュバルツェア・ヴォルケはオリジナルのISとなります。

総合評価が400を越え、お気に入りが120を越えました。読んでくださった方、この作品をお気に入りにしてくださった方、本当にありがとうございます。 
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