Fate/magic girl-錬鉄の弓兵と魔法少女-
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A's編
第六十八話 続く日常、綻びを生む傷
なのは達とシグナム達の戦いから数日後、本局の中を歩くクロノ、エイミィ、ユーノの三人の姿があった。
「三人がかりで出てきたけど大丈夫かな」
ちゃんとした理由があって三人で来たとはいえ
(現場戦力二名とサポート戦力一名がまとめて抜ける間になにもないといいが)
戦力が減る事にクロノは心配していた。
「まあ、モニタリングはアレックスに頼んできたし」
「なのはやフェイト達もいるからそんなに心配はないと思うけど」
「まあ、そうなんだが」
確かに心配のし過ぎなのかもしれないとクロノは内心で無理やり納得しようとするが、万が一の際の切り札がないためかやはり心の片隅に不安が残る。
「そういえば士郎って地球での活動のために協力関係を結んでるんだよね」
「ああ、そうだ」
ユーノがそんなクロノの心配そうな表情になにか気がついたのかそんな事を尋ねていた。
「じゃあ、地球の活動のためってことは」
「ああ、そうだ。
対等な協力関係であり管理地、海鳴での進入制限とその他の第97管理外世界内での戦闘は協力をして行うけど、それ以外の世界は魔術師の影響範囲外。
勝手な行動や転送は許可できない」
「なるほど。クロノ君が心配してるのは万が一の際に地球以外だと士郎君という戦力がないことか」
どこかからかったようなエイミィの言葉に少しムッとした表情をクロノは浮かべるが、ため息を吐き。
「そうだ。
なのは、フェイト、アルフ、ユーノと僕がいればあの仮面が現れたとしても数では同数だ。
そこに士郎がいれば言う事がない。
だが今回はなのは、フェイト、アルフの三人に他の世界だと士郎というバックアップもいない。
最悪、一対多という状況も考えられる」
「一対多だといくらなのはやフェイトでも勝ち目はないだろうしね」
「確かに士郎君なら一人で守護騎士四名とも戦えそうだし」
士郎の底の知れない強さと魔術の非常識さというのを近くにいて理解している故の反応だ。
とここで
「そういえば今回の事って闇の書の調査をすればいいんだよね?」
ようやく今回の本題に入る三人。
「ああ、今回会う二人はその辺に顔が利くから」
そんな事を話しながら辿りついた一室の前で足を止め、部屋に入る三人。
それを出迎えたのは寛いでいた二人の猫耳、尻尾付きの女性。
「リーゼ、久しぶりだ。
クロノだ」
グレアム提督の使い魔、リーゼ姉妹である。
一瞬、キョトンとした表情を浮かべる二人だがすぐに片方、ロッテの方が
「あ、クロ助 お久しぶりぶり」
寝そべったまま手を振る。
その様子にどこか安堵しつつ、首を傾げる。
「アリア、なにかあったのか?
飛び掛かってるぐらい覚悟していたんだが」
「ああ、ちょっと任務でね」
アリアの言葉に曖昧に頷きつつ、ロッテの意外な状態を眺める。
その横で
「リーゼアリア、お久し」
「ん、お久し」
アリアと挨拶をかわすエイミィ。
そこでエイミィの存在に気がついたロッテが身体を起こす。
「よ、エイミィ、お久し」
「ん、お久し」
四人の気軽な挨拶をエイミィの後ろで眺めていたユーノが
「なんかおいしそうなネズミっ子がいる。
どなた?」
満面の笑みでロッテに寄られる。
フェレットモードの時に猫に追われたトラウマか、その笑みが獲物を見つけた喜びのように見えて引き攣った表情を浮かべるユーノ。
もっとも本来の要件もあるのでクロノの言葉で全員がソファーに座る。
そして、さすがグレアム提督の使い魔ということか闇の書事件の事は、おおよその話は把握していた。
「それで今回の頼みというのは彼なんだ」
クロノ言葉と共に向けられる視線と
「食っていいの」
ロッテの待ってましたと言わんばかりの物騒な言葉。
フェレットの時の悪夢が蘇ったのか、ビクッと身体を振るわせるユーノ。
「ああ、作業が終わったら好きにしてくれ」
「な! おい、ちょっと待て」
さすがに本当に食べられたらたまらないと立ち上がるユーノ。
もっともそんなユーノの姿に笑っていたから
(さすがに冗談だよね)
と肩の力を抜くが
「彼の無限書庫での調べ物に協力してほしいんだ」
「「ふ~ん」」
クロノの言葉と共に新しいおもちゃを見つけたというような二人の視線に自然と喉が鳴っていた。
side 士郎
平穏な学校の昼休み。
携帯のカタログを見ている俺達五人。
今日の放課後、俺とフェイトの携帯を買いに行くためにその機種を選んでいるのだが
「やっぱりデザインが大事でしょう」
「操作性も大事だよ」
などなど、熱い議論を交している。
ちなみにこの携帯購入だが最初はフェイトだけの予定だったのだが、リンディさんから
「外出時の緊急の連絡のために必要だから持っていた方がいいわ。
料金は管理局持ちだから」
ということで俺の携帯も買う事になったのだ。
フェイトはなのは達の意見を聞きながらパンフレットを見ているが先ほどから同じページで一旦手が止まるところをみると気になるのがあったようだ。
アリサもフェイトの様子に気付いたようで
「フェイト、なにか気に入ったのがあった?」
「え、うん」
フェイトの差し出したパンフレットには黒を基調とした折りたたみ携帯。
フェイトのイメージによくあう携帯になのは達も楽しそうだ。
「フェイトのは決まったけど士郎のはどうするの?」
「特に拘りはないんだが」
「まあ、士郎君らしい気もするけどね」
「だね」
遠坂のように機械音痴というわけでもないが、魔術師の性とでもいうのかパソコンや携帯など使えれば特にどれでもよく、拘りはない。
強いて挙げれば壊れにくく、派手ではないシンプルなのが好みだ。
フェイトの携帯のデザインもシンプルでいいよな。
それにカラーに赤もあるし。
「フェイトの携帯ならシンプルだし、色違いでも」
「「「ちょっと待った!!」」」
うれしそうな顔をするフェイトと詰め寄って来るなのは、アリサ、すずかの三人。
三人の眼が怖い。
「士郎君、軽はずみな発言はいけないと思うの」
「なのはに同感だわ」
「うん。士郎君はもう少し考えて発言しようね」
えっと、つまりはフェイトと同じ携帯だと気に入らないと
「なら、どうしろと?」
「どうせなら私と同じ」
「すずかちゃん!?」
「すずか、なに抜け駆けしてんの!」
なかなかの策士だなすずか。
元いた世界でも似たようなやり取りをした記憶がある。
あの時のすずかのポジションは桜だったな。
こうして改めて意識するとどこか桜と似ている雰囲気があるか。
「士郎。
どうせなら全員違う機種の方が面白いでしょ。
好みはどうなの」
そして、これ以上ややこしくなる前にアリサが手を叩いて場を納める。
「好みか、特に拘りはないが、シンプルで丈夫なのが。
色は赤がいいが」
「OK、じゃあ、なのは、すずか、フェイト。
士郎の好みそうなのをパンフレットから探すわよ。
士郎もそれでいいわね」
「ああ」
この四人なら変なのを選んだりする心配もないので任せると頷く。
俺が頷くと同時に集まってパンフレットを見て議論を交す四人。
四人共真剣そのもので俺が好みそうなデザインの携帯を議論している。
そして四人一致で選ばれたのは最新機種というわけではないが防水などの耐久性に優れたワインレッドの折りたたみ携帯。
デザインもシンプルで俺に異論があるわけもない。
というわけで無事に俺とフェイトの携帯も決まったので放課後にリンディさんと合流して携帯ショップで携帯を購入する。
「ありがとうございます。リンディ母さん」
嬉しそうに買った携帯の袋をリンディさんから受け取り、なのは達の所に駆けていくフェイト。
こうして見るとフェイトとリンディさんもまだ少し硬さがあるようだが、確実に馴染んでいっているのがわかる。
そんなフェイトを見送りながらリンディさんから携帯を受け取る。
小学生だと契約に問題があるので契約はフェイトとあわせてリンディさんにお願いした。
「でどうですか?」
新しいフェイトの携帯電話に騒いでいるなのは達を見つめながら横に並んだリンディさんに話しかける。
「新しい情報はないわね。
槍の傷の件も同じよ」
「そうですか。
槍の件は深手というわけではありませんから市販薬と包帯で誤魔化せるでしょうからね」
治らない傷があるからなにかしら情報が出てくる事を期待したがやはり思い通りにはいかないか。
出血があったとしても知識があり、血液を手に入れる事が出来れば、輸血も可能だ。
現に俺が元いた世界で傷は塞がったが血が足りない時、輸血用血液を拝借して自分で行った事もある。
「ただあまり考えたい事ではないのだけど」
どこか申し訳なさそうにリンディさんが口を開いた。
「クロノの周囲にあったサーチャーを反応させず、センサーにも引っかからなかったことからこちらの事をよく知っている可能性があります」
「……内部ですか」
「可能性がないとは」
サーチャーの事などを知っている人間ならセンサーを抜ける事も可能か。
そんな事を考えていると
「士郎!」
俺の事を呼ぶアリサと自分たちで選んだ携帯が気になるのかそわそわしているなのは達。
話はここまでだな。
「あの仮面は闇の書が完成した後の事を知っているようでした。
内部で闇の書に詳しい者を調べてみて下さい。
参考情報程度ですが、では失礼します」
「ええ、ありがとう」
リンディさんに最後に確証はないが俺の知る情報を渡し、なのは達の所に向かう。
さて、これで何か出てくればいいが。
そう願わずにはいられなかった。
後書き
今週も無事更新。
今回でアニメ本編第七話辺りまでとようやく半分を超えました。
しかし、ここ最近サブタイトルが思いつかない。
いや、正しくは思いつくが前の話のサブタイトルと被ってしまうことが悩みの種。
サブタイトルって難しいな。
そしてストック量も減ってきて内心ひやひやですよ。
もしかしたら、そのうちサブタイトルが思いつかない時に読者の皆様にお知恵を借りる事もあると思いますが、その時はよろしくお願いします。
それでは来週またお会いしましょう。
ではでは
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