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Fate/magic girl-錬鉄の弓兵と魔法少女-

作者:セリカ
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A's編
  第六十九話 砂漠の戦い

 携帯を買った後、少しお茶をしてアリサとすずかはバイオリンのため別れてフェイトの家にお邪魔する。

 フェイトの家には先にリンディさんが帰っているはずだが気配がない。

「リンディさんは?」
「リンディ母さんは本局だよ。
 アースラの試験航行の話をしてたから」

 アースラが戻って来るのか。

 そういえば最近ユーノを見ないな。
 クロノやエイミィさんはちょくちょくこっちに帰ってきているが、クロノの頼まれごとを受けた以降ユーノを見た記憶がほとんどない。

「ユーノも最近本局から戻ってこないがなにをしてるんだ?」
「無限書庫っていうところで闇の書の調査だって聞いたけど」

 俺の疑問になのはが答えてくれるが新たな言葉が出てきたな。

「無限書庫?」
「うん。時空管理局本局内にある管理局が管理を受けている世界の書籍やデータが全て収められた超巨大データベースでそこなら闇の書の資料もあるかもって」

 そんなモノまであるのか。

 そしてフェイトの言葉で俺の頭に浮かぶ魔術関係の図書館といえば二つのみ。
 一つは時計塔の書庫で時計塔に所属さえしていれば閲覧制限はほとんどない。
 もっとも閲覧制限がない分、置いてある資料も基礎的なモノばかりだ。

 そしてもう一つが時計塔の地下深くにある図書館。
 一応図書館と呼んではいるが一言でいうなら魔物の巣だ。

 不用意に魔導書を触れようものなら本に取り込まれることだってあり、生命の保証がない。

「そこにユーノが調査に行ったと?」
「うん。スクライア一族は遺跡や古代史探索など過去の歴史の調査を本業とするから望むところだってユーノ君も言ってたよ」

 機会があれば見てみたいな。
 無事に帰ってこれる保証があるならという条件付きだが。

 時計塔の図書館の話をしたらなのは達がどんな反応するか少し気になるところではあるが、組織はないと言っているので聞くわけにはいかないか。

 そんなことを話していると

「たっだいま!」

 エイミィさんが返ってきたようだ。

 エイミィさんを出迎えて、買ってきた食材をなのはとフェイトとで冷蔵庫にしまっていく。

「艦長。もう本局に出かけちゃった?」
「うん。アースラの武装追加が済んだから試験航行だって」
「武装っていうとアルカンシェルか。あんな物騒な物を最後まで使わずに済めばいいんだけど」

 なにやらアースラに対闇の書用の武装でもつけるつもりらしい。

「クロノ君もいないですし、戻るまではエイミィさんが指揮代行だそうですよ」
「責任重大」
「アルフ、余りからかうものではないぞ」

 アルフを軽くたしなめておく。
 それにしても指揮官がエイミィさんか……アルフに注意しておいてなんだが、大丈夫なんだろうか?
 さすがに本局に人が取られ過ぎている気がする。
 地球なら俺も手を貸せるが、地球以外になるとそうもいかない。
 これで緊急時に対処ができるか、多少疑問だ。

「くっ! それもまた物騒な」

 そもそも自分で言ってる時点でまずいよな。
 それに

「こういうときのお約束ってあったよな」

 俺の言葉に漫画とかで見たことがあるのか

「こんな時に限って何か起きるっていうアレ?」
「うん。そう」

 なのはの言葉に頷く。

 勿論何も起きないほうがいいのだけど世の中思い通りにいかないんだよな。

「こ、怖いこと言わないでよ。
 士郎君、なのはちゃん」
「漫画とかならどんなタイミングで起きるもんだっけ?」
「えっと……エイミィさんが非常事態なんてそうそう起きるわけないっていった直後ぐらいのタイミングかな」

 俺となのはの言葉にエイミィさんが多少引き攣ったような顔をしているのでフォローしておいた方がいいだろう。

「まあ、漫画の話ですから」
「そ、そうだよね。
 いくらお約束でも漫画の話なんだから、非常事態がそうそう起きるわけが」

 エイミィさんのその言葉を待っていたと言わんばかりに警報が鳴り響く。
 ……本当にあるんだな。

「なったね」
「「「だね(だな)」」」

 フェイトのつぶやきに俺となのは、アルフが返事をする。

 マジですかっていう表情で固まりエイミィさんの手からカボチャが転がる。
 それをフローリングにぶつかる前に受け止めて、テーブルに置く。

「って落ち着いてる場合じゃないよ!!」

 慌てるエイミィさんについて行き全員でオペレータ室に入る。

「場所は文化レベルゼロ。人間は住んでない砂漠の世界だね」

 エイミィさんが操作するとすぐにシグナムとザフィーラが表示される。
 文化レベルゼロとなると遠慮なく戦う事はできる。
 だが地球ではない次元世界となると俺の関与はほとんど出来ない。
 それに

「結界を張れる局員の集合まで、最速で45分。む~、まずいなぁ」

 見つけたのはいいが対応まで時間がかかり、局員が集まるまで待っていたらシグナム達を逃す。

 そうなると誰かが足止めする必要があるか。

「エイミィ、私がいく」
「私もだ」

 フェイトとアルフか。
 相手がシグナムとザフィーラなら悪くないか。

「うん。お願い。
 なのはちゃんはバックスお願いね」
「はい」

 フェイトとアルフが転送ポートに向かうのを見送りながら、シグナム達を見つめる。

 闇の書を持っていないとなるとシャマルか、ヴィータが持っているのだろう。
 だが仮面の存在もある。
 はやてから全員がいなくなる可能性は低い。
 もし蒐集をするなら支援のシャマルではなく、ヴィータだろう。

「エイミィさん、闇の書を持ってるように見えない。
 恐らく闇の書を持っている本命がいるはずです。
 それとフェイト達の周辺の警戒を一層お願いします。
 あの仮面は前回クロノの周囲のサーチャーを突破してきた。
 なら今回も横から手を出してくる可能性があります」
「うん。わかった」

 恐らく仮面は間違いなくこちらの邪魔をしてくるだろう。

 あの仮面は俺達が知らないなにかを知っている。
 それを一刻も早く知る必要がある。
 それがはやてを救う鍵になるかもしれないのだから。




side ユーノ

 リーゼさん達は仕事らしく、無限書庫で一人で闇の書の調査を続ける。

 その中で優先度は低いが調べている事がある。

 それが魔術や魔術師の事、そして衛宮という名のこと。
 勿論、僕が独自で調べている事ではなく、リンディさん達からの依頼だ。

 調査結果は管理局ではなく、リンディさん達に個人的な報告。

 なんでもクロノ曰く

「士郎は強硬派が何かしない限り敵になる事はないと思ってる。
 だが、他に魔術師がいた場合はその保証がないから少しでも魔術師の事を知りたいんだ」

 とのこと。

 他の魔術師の調査に関しては前から考えていたらしい。

 きっかけはジュエルシード事件が終わり士郎から魔術師の事を聞いた事。

 その話の中で出てきた魔術師が目指すという根源。

 根源がアルハザードと同じモノかは置いておいて、仮に同じモノ、また近いモノとなると次元の狭間にある。
 そうなれば次元震の危険もある。

 そこで過去に何らかの魔術師の痕跡を見つけることが出来ないかという事。
 さらに魔術師は代々受け継がれていくという士郎の言葉から衛宮の名がどこかに無いか調べているのだ。

 今までの調査結果としたら魔術師の存在自体は過去にいたらしく僅かながら資料として出てきた。
 だけど

「本当に魔術師って秘密主義なんだね」

 時空管理局の無限書庫。
 確かに魔術師の事に触れると思われる書物はいくつか出てきた。
 でも肝心な使用する魔術などは出てこない。

 それが驚きと同時に感心してしまう。

 きっと士郎もまだ隠している事があるのだろう。

 それが仲間として少し寂しい気もする。
 いつかは話してくれるのだろうか。

 そんな事をふと考えながら、再び調査を始めた。




side フェイト

 強い。
 ミドルレンジもクロスレンジも圧倒されている。

 シグナムと戦い始めてまだそんなに時間が経ってはいない。
 それでも呼吸は大きく乱れてきている。

 大きな一撃を貰っていないけどいくつかの攻撃は防御を抜き、足に傷を負っている。
 だけどそれは大きな問題じゃない。

 砂漠での初めての戦い。
 暑さによる消耗も激しい。

 なんとかスピードで誤魔化してるけど、長期戦になれば不利になる。
 それでも諦めるわけにはいかない。

 バルディッシュを握り直し、踏み込む。

 私の踏み込みに合わせてシグナムも踏み込んでくる。
 だけど次の瞬間

「かはっ!」

 胸に奔る衝撃。
 私の胸から突き出る腕

「テスタロッサ」

 シグナムが私を呼ぶ声が聞こえるけど、体が思い通りに動かない。

 そして、体の中から抜け落ちていく喪失感の中で私はゆっくりと意識を手放した。




side 士郎

 フェイト達が出撃してから少ししてヴィータと闇の書が見つかったのでなのはが向かった。

 今のところ、フェイトの付近にも、なのはの付近にも仮面の姿はない。

 本音を言えばついて行きたかった。
 こんなところで見るだけではなく、守れるように傍にいたかった。

 だが管理局との関わりゆえについては行けない。

 今後なのは達が管理局に入る事を考えるならば俺自身も嘱託などで管理局に関わる事も考えた方がいいのかもしれない。

 そんな事を考えている中エイミィさんが操作するディスプレイが全部消えた。

 いきなりの出来ごとに一瞬呆然とするエイミィさんだが

「システムダウン!?
 違う、これ……」

 すぐに状況を把握しようと物凄い勢いで操作していく。

「やっぱりクラッキング」
「どうしたんですか?」
「外部からシステムに攻撃を受けたの。
 これじゃ、フェイトちゃん達の周りに設置したサーチャーが機能しないの!」

 それは非常にまずい。
 シグナム達の相手をしながら周囲に気にするほど余裕はあまりないだろう。
 さらにフェイトは戦い初めて結構な時間が経っている。
 疲労も高まり集中力も乱れ始めているだろう。

 そんな中で周囲警戒のために設置されたサーチャーが役に立たなくなった。
 奇襲を狙う相手からすれば絶好のタイミングだ。

「どうにかして映像とフェイトちゃん達と連絡を」

 エイミィさんが懸命に映像を復旧させようとするが、俺は何もできない。

 そんな中、ノイズの中で一瞬ながら何度か映像が回復する。
 その中でフェイトは仮面の男に抱かれ、胸から腕がつき出ていた。
 襲われたなのはの姿と重なる。

 もはや管理局に俺の正体をばらさないことなどどうでもいい。

 結果として俺が管理局に追われる事になったとしてもあいつは許せない。
 アレは俺の守る人を傷つけたのだから




side エイミィ

 クラッキングされたシステムを復旧させようとしている時、何か軋むような音と共に部屋の空気が変わった。

 振り向かなくてもわかる存在感と威圧感。

 この部屋にいるのは私と士郎君しかいないのだから誰が発したのかなど考えるまでもないこと。

 士郎君は歯を食いしばって、拳を握りしめて、ノイズの間にたまに表示されるぐったりとしたフェイトちゃんを抱きかかえる仮面の男に視線は向けられていた。
 その姿はまるで自分の衝動を抑えるようで

「士郎君?」
「はい?」

 私の呼びかけに食いしばっていた歯を緩めて、平然とこちらに顔を向ける。

「ううん、なんでもない。
 もうすぐアルフとなのはちゃんには通信が回復しそうだから。
 医療スタッフの要請も今してるから士郎君も本局いくでしょう」
「ええ、お願いします」
「ん。了解、それも申請しておくね」

 士郎君から返事にいつも通り明るく返事をして作業に戻るけど、うまく笑えてたかな。

 今回はちょっと自信ないかも。

 通信が回復したアルフにフェイトちゃんをお願いして、士郎君と一緒に皆の帰りの出迎えに本局に向かう。




side 士郎

 管理局の本局でなのは達の帰りを待つ。

 ちなみに本局に一緒に来たエイミィさんはリンディさんに今回の件を引き継ぐために席を外している。

 そんな中転送ポートから出てくるなのはとアルフ。
 フェイトもアルフの腕に抱えられている。

「アルフ、フェイトは?」
「怪我自体は大したことないよ。
 でもリンカーコアが奪われて意識を失ってる」
「そうか」

 とりあえずは静かに眠っているフェイトの姿に安堵し、頬を撫でる。
 そんなフェイトに付いている血の匂い。
 フェイトの血と、ゲイ・ボウについている血、仮面の血と同じ匂いと、知らない血の匂い。

 恐らく知らない血はシグナムのだろう。
 フェイトにあの仮面の血の匂いが僅かながらついているという事は傷は健在だろう。

 そんな考え事をしていたら

「アルフさん。医療スタッフの準備が出来たわ」
「はい。今連れていきます」

 呼びに来たリンディさんの声にアルフがフェイトを抱きかかえて走る。
 その後ろ姿を見送りながら

「なのは、怪我はないか?」

 無傷に見えるなのはにも確認をする。

「うん。私は全然。
 バインドされただけだし」

 元気に答えるなのはに安堵する。

 それにしても匂いというのは盲点だったな。
 しかし、この人数がいる管理局でうまく対象を探せればいいんだが、難しいだろうな。

 だがこの匂いを心に刻み込む。
 絶対に逃がさないために。


 そのあと一旦情報をまとめるためにアースラに俺達は移動する。
 フェイトにはプレシアが仕事を早退して付きそっているらしい。
 肝心なフェイトの状態はというと

「フェイトさんはリンカーコアに酷いダメージを受けているけど、命に別条はないそうよ」

 闇の書のリンカーコアの蒐集。
 なのはの時と同じだな。

「そういえばずっと思ってたんだけどさ、フェイトの傷がすぐ治っていたのがいつの間にかなくなってんだけど」

 アルフが不思議そうにそんな事を言う。
 フェイトの傷がすぐ治っていた?
 ああ、アヴァロンの効果か。

「あれは一時的なもので永久的なモノじゃないんだ」
「そうなのかい」

 確かにアヴァロンを使えばフェイトの傷も、リンカーコアも回復する可能性は高い。
 だがそれをすれば管理局が黙っていないだろう。

 ちなみにアースラの会議室に集まっているのは俺となのは、アルフ、クロノ、エイミィさん、リンディ提督、そしてグレアム提督の使い魔のリーゼアリアの八名。

 その中で管制システムを担当していたエイミィさんから改めて状況が説明される。

「二人が出動してしばらくして駐屯所の管制システムがクラッキングであらかたダウンしちゃって、それで指揮や連絡が取れなくてごめんね。
 私の責任だ」

 エイミィさんがだいぶ落ち込んでいるが、俺としては全然気にしていない。
 むしろ

「エイミィさんがいてくれたからこそ、システムの復旧も最短で済んで、フェイト達を回収できたんですから」

 エイミィさんのオペレータとしての実力があったからこそ可能な限り早く対応できたと思っている。

「士郎君の言うとおりよ。
 こうして仮面の男の映像もちゃんと残せたんだから」

 俺の言葉に賛同する様にリーゼアリアも頷いている。

「でもおかしいわね。
 あそこで使っているのは管理局で使っているのと同じシステムなのに」

 そう。
 そこが問題である。

 エイミィさん曰く、セキュリティの警報も防壁も全てすり抜けているとのこと。

「それだけすごい技術者がいるってことですか?」
「もしかしたら組織だってやってるのかもね」

 なのはとリーゼアリアがそんな会話を交わしているがクロノが仮面の接近に気がつけなかった件もある。
 組織だってにしろ、少人数にしろ、ここまで来ると内部の者が関わっている可能性はかなり高い。

 どちらにしろわからないことが多過ぎるから考えていてもはじまらないので動きだす。
 まずはアースラが航行可能となったので

「予定より少し早いですが、これより司令部をアースラに戻します」

 闇の書事件の司令部がアースラに戻されることになった。

 もっともフェイト達の生活などは今まで通りの部屋を使うらしい。

 そして、俺となのはは一旦各自の家に戻る事になった。 
 

 
後書き
今週も無事更新。

しかしもう夏バテなのか体がだるくてしょうがない・・・

最近は少しすずしいけど、このまま涼しくならないかなほんと

次回も来週更新予定です。

それではまた来週

ではでは 
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