ソードアート・オンライン~ニ人目の双剣使い~
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絆
「クライン!!」
十拳剣は刀。今回のメンバーで刀が使えるのはクラインしかいない
「おう!!」
それに応え俺が投げた十拳剣をクラインはしっかり掴む。そして
「はぁ!!」
再び尻尾を受けとめる。何度となる衝撃に剣を落としそうになるが、こらえる
「いっけぇ!!」
後衛組+青龍の支援を受けたクラインが尻尾に向かって突進する。そして、鞘にしっかりと収まった十拳剣の柄に手をかけ、一気に振り切った。その一撃は今までの鈍い音とは違った音を立てた。何かが斬れる音。そして重い物が落ちる音。そして、何かが砕ける音。その三つが一瞬で発生した
「それで、どうするんだ!?リン!!尻尾は斬れたが十拳剣が砕けちまったが……」
「尻尾を斬り裂いてみろ!!」
八俣大蛇の目に浮かんだ明らかな怒りの炎。クラインに向けられた怒りの視線。それは視線だけではなく、尻尾による攻撃という形で放たれた
「ぐ……」
「リン!!」
クラインに放たれた尻尾を前に回り込んだ俺が受けとめる。あまり身構えて無かったということもあり、今までよりも強烈な負荷がかかる
「クライン!!早く尻尾を開いてみろ!!」
バキッと嫌な音が手の中から発生した。度重なる重圧にとうとう剣の方が耐えられなくなって罅が入る
「クライン、まだか!?」
「これか!?……これは……剣!?」
クラインがそう声をあげたその時だった
澄んだ音を立てて剣が折れた。それにより、止まっていた尻尾がこっちに向かってくる
「万事休す……か……」
俺の体は剣が折れた時の反動で崩れている。横に飛ぶ余裕などない
その時目の前に小さな影が入り込んできた。そして、何かが砕ける音
「……今度は……私が守るって……言った……でしょ?」
「ミユ……」
当たると思っていた八俣大蛇の尻尾はミユが自身の体を使って止めていた。俺は、一度目を閉じる。今までの疲れも手の痺れも消えていくような気がした。破裂音が聞こえたので目を開けるとミユはそこにはいなかった
「クライン……」
「ああ……」
クラインの投げた剣。天叢雲剣をしっかりと受けとめる。玄武、レオン。そしてミユが繋いでくれた道。必ず完走してみせる
尻尾を斬ったことにより八俣大蛇の動きが変わった。尻尾を叩きつける動きをやめ、首をたわめる
「何か来るぞ!!」
そして首のうちの一つが地面スレスレまで降りてきて、炎の帯を放った
「くっ……」
全員が効果範囲外まで下がろうと走ったが白虎が足をもつれさせ転んでしまう
「ウォォォ!!」
その前に走り込む黒い影。エギルだ。エギルは白虎の前に仁王立ちになると能力を発動させる
炎がエギルに当たるがダメージはない。やがて効果時間も終わったらしく炎は消える
だが、前述した通り首は八つだ。効果範囲内にまだプレイヤーがいることを確認した八俣大蛇は続けて炎の帯を放とうとした
「ホォームランンン!!」
そう放とうとしたのだが、上からの打撃により口を強制的に閉じることになった。逃げ場を失ったエネルギーはどうなるのか。その答えは口内での爆発という形で表された。その原因を作ったライアはドヤ顔で能力を使い戻ってくる。ドヤ顔が現われたり消えたりするのは正直うざい。後でライアを殴ることを決め、前に走る。八俣大蛇は口の中に発生したダメージに悶えている。その隙に八俣大蛇の下まで行き
「一つ目ッ!!」
今までの固さが嘘だったかのように一つの首を断ち切った。それにより八俣大蛇は悶えるのを止めこちらを睨んでくる。そして咆哮
「うるさい……だろうがぁ!!」
クラインの居合い斬り、青龍の拳、ユージーンの袈裟斬りが同時に先ほどライアが攻撃した頭に突き刺さる。これにはさすがにダメージが入ったようで尻尾を振るって払いのけようとする
「ふっ……!!」
それはかなわなかった。短い吐息とともに放たれたシオンの矢が八俣大蛇の目に突き刺さり目測を誤った八俣大蛇の尻尾は空振りに終わった。クラインたちはもう一度斬りつけるとその反動を利用してこちらに戻ってくる
「エギル!!」
「おうよ!!」
放たれたブレスをエギルの影に隠れてやり過ごすと俺は跳んだ。自身にかかる重力をほぼ0にして地面をおもいっきり蹴った俺は弾丸の様に飛び出し
「二つ目!!そして、三つ目!!」
通りすがりに二つ目の首を斬り落とした。そして、向こう側の壁を蹴ると振り向きざまに三つ目の首を斬った。そして、戻ってきた俺をシオンが魔法を使って受けとめる
だが八俣大蛇がその瞬間を見逃すわけが無く尻尾を叩きつけてくる
「セイッ!!」
その尻尾をキリトが二本の剣をクロスして受けとめる。だがそれは、俺が能力をフルに使っていたからこそ受けとめることができていたのだ。いくら筋力値が俺より高いビルドを採用しているキリトでも絶対に受けとめることはできない。だからその尻尾はわずかに動きを阻害されただけで、俺たち三人をたたきつぶすはずだった
「ウラァァ!!」
「ふん!!」
だが、それはキリト一人だったときの話。それが複数人だとしたら話は変わってくる。キリトが尻尾を止めたその僅かに止めた時間を使い、ユージーンの大剣と青龍の拳が尻尾に打撃を与える。なんらかの魔法を使っていたのかユージーンの大剣にまとわりついていた風がさらに圧縮されていた
「キリトッ!!」
「おう!!」
三人が全力で弾くと少し浮き上がる尻尾。その隙にキリトは右手の剣でユージーンの大剣の上を掠めるように払う。キリトの剣は魔法や能力を断つ。つまり、能力により圧縮されていた空気が解放された。さて、圧力がかかっているものに、いきなり一ヶ所に圧力が少ない場所が発生したらどうなるか?皆さんも経験したことがあるだろう。炭酸飲料の入ったペットボトルを振ってしまい、それを開けたことが。これはその威力を増幅させたものに過ぎない。ただ、それが水蒸気爆発並みの倍率でしかも一面にすべて集中されていただけだなのだ
「いっけぇ!!」
その威力は凄まじいもので八俣大蛇の巨体をわずかながらも後退させるほどのものだった。だが、作用には必ず反作用がある。八俣大蛇を後退させるレベルの攻撃に対する反作用だ。それをまともに受けたユージーンが凄まじい勢いで吹き飛ぶのは道理。地面に叩きつけられたユージーンのHPは消失し、アバターが砕け散る
ユージーンが命懸けで作ってくれたこの隙を無駄にするわけにはいかない
「ウラァァァ!!」
俺は気合いとともに飛び上がり四本目の首を断つ
続いて近くにあった五本目の首を斬る
すると八俣大蛇の動きが変わった。今までは単発的に尻尾かブレスを撃つだけだったのだが、今度は残った首三つが一斉にブレスをチャージしはじめたのだ
「あれはヤバイって!!」
嫌な予感が走る。それは誰もが一緒だったようだ。咄嗟にシオンが矢を放ち二つの首のモーションを停止させることに成功する
だが残りの一つがこれまでの放射型のブレスでは無く球型の単発型のブレスを撃ってきた。大きさは直径三メートルほど。大した大きさも無いはずなのだが、俺の本能があれは危険だと警鐘を鳴らす。そういうのはバカにはできないので、全力で後ろに下がる
着弾。そして爆発。音までもが消し飛んだような爆発が着弾地点を中心に発生。俺と同じく下がっていたキリトとシオン、そしてクラインは無事だったが動きの遅いエギル、ちょうど攻撃をしようとしてい遅れた朱雀、深くまで斬り込んでいた青龍、自慢のテレポートを失敗して地面に埋まったライアが一瞬で蒸発した
あれが三発も放たれようとしていたのか、と思うとゾッとする
続いて飛んできた八本の尻尾をかわすと同時に俺とキリトとクラインは走りだす。どうやら八俣大蛇は俺が一番危険だと判断したらしく俺をしつこくねらってくる
確かにそれは正しい。俺が持っているのが二本の(・・)剣じゃ無ければ
「行けっ!キリト!!」
そう、俺とキリトは持っていた武器を交換していたのだ。キリトは期待通り首を一つ刈ってくれる。怒った八俣大蛇がキリトの方へ残った頭二つを向けブレスを撃とうとする
だが
「うぉりゃぁぁぁ!!」
奇声を上げて跳んだクラインはまず一つの頭を居合いで斬る。それにより頭の向きが変わる。その反動でもう一つの頭の前に行った。その瞬間八俣大蛇は球型のブレスを放った
それのうちの一つは変な場所へ着弾。もちろん、誰も効果範囲内にいなかったため、ダメージはゼロ。問題はもう一つ。クラインに直撃しクラインはもちろん放った八俣大蛇の頭も吹き飛んだのだ
「決めろ、リン!!」
「当たり前だ!!」
キリトがこちらに投げてきた天叢雲剣を両手に持った剣で上に弾く。すると天叢雲剣は回転しながら上へ。俺は両手の剣を捨てると天叢雲剣を追って跳ぶ。途中八俣大蛇の体を足場に八俣大蛇の遥か上へ。そして飛んでいる天叢雲剣をしっかり掴み、残った首ごと八俣大蛇を断ち切った。すると凄まじい閃光と破砕音とともに八俣大蛇は砕け散った
「終わった……か」
「そう……みたいだな」
「うん……」
全員がその場で座り込む。今まで感じていなかった痛みや痺れが一気に手足に襲い掛かってきて立っていられなかったのだ
しばらくそのままでいると八俣大蛇がいた場所の向こうから足音が響いてきた
「まさか……本当にクリアするとはな」
「……」
こちらをいまいましげに見てくる親父に負けないよう俺は睨み付ける
「約束は守ってもらうぞ」
「わかっている……。おまえは……勘当だ」
「わかってるさ」
「まあ、手切れ金ぐらいはくれてやる。あとは身の回りの物だな。それで暮らせ。お前みたいな男でも私の息子だ。死なれるのは目覚めが悪い。世間体も悪いしな」
そう言うと親父はログアウトして言った
「リン……」
「大丈夫だ。ただ縛りが消えただけだ」
「これからどうするの?」
「ブラブラ気の赴くままに行くのも悪くない」
「そう……」
シオンは何か言いたそうに口をモゴモゴさせたり、顔を赤くしたり悲しそうな顔になったりしている
「じゃあ……戻ろうぜ。現実の世界へ」
そして、俺たちはその場から消えて行った
後日、俺が放浪するものだと思っていたキリトの家で居候することになるのだが、それはまだキリトには知る由はなかった
後書き
蕾姫「AMO編終了!」
リン「よし!」
蕾姫「さて、番外編に行くよ〜」
リン「ところで……」
蕾姫「何?」
リン「あとがきに書くことが無くなった来たんだが……」
蕾姫「……」
リン「……」
蕾姫「……何を書いて欲しいか聞いていいですか?」
リン「読者の意見を書く……とか?」
蕾姫「来ないよ……」
感想、その他お待ちしています。リンやミユらに聞きたいことがあったらどうぞお気軽に。好きな人は?とかでもいいですよ(笑)
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