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ソードアート・オンライン~ニ人目の双剣使い~

作者:蕾姫
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地獄の長虫と新たな仲間

地獄の長虫と新たな仲間

サクヤたちと別れた俺たちは、再びアルンを目指すために街道をさらに北へ。そして、しばらく歩くと目の前に村があった。そろそろリアルの時間も遅いし落ちるかという話になり、その村に入った

「……おかしい」

「どうしたの?」

「この村に人がいない」

「時間も時間だし、全員家の中に入ってるんじゃないか?まあ、宿屋には誰かいるだろ」

嫌な予感がする。目の前で罠を張って待ち受けているモンスターがいるような

「じゃあ、宿屋に行こうか」

リーファの言葉にキリトは一つうなずくと並んで歩いていく。二人は安全圏に入ったからか、完全に安心しているが、俺は周囲を警戒しながら二人の後をついていく

「宿屋っと。ここだな」

「今日は疲れた〜」

キリトが扉に手を伸ばしたとたん、状況が一気に変化した。扉が消え、家が消え、村が消えた。そして、新たに姿を現したのはモンスター

「ッ!!下がれ!!」

いきなりのことで呆然としていたキリトとリーファだったが、俺の言葉で我に返り後ろに飛ぼうとした。だが蹴るための足場は既に無かった。キリトとリーファの足元にはおそらくそのモンスターの口であろう空洞が空いていたのだ。キリトとリーファはなすすべもなくそこに落ちて行った。俺は手を伸ばすが、待ちあわなかった。あとに残ったのは俺と巨大なモンスターのみ

「くそーーー!!」

俺は地面を殴りつける。どうやらダメージが入ったようでモンスターが叫び声を上げる。それと同時に開こうとしていた俺の足元が再び沈黙する。改めてそのモンスターを見る。カーソルが現れた。そこに書かれていた名前は<<ヨルムンガルド>>。北欧神話で神々と戦った巨大な蛇の名前を冠していた

「ギャァァァァァ!」

<<ヨルムンガルド>>は自身の上にいる俺が鬱陶しかったらしくしっぽを叩きつけてくるが俺はそれをかわして翅を広げ、普通の地面に降り立つ

「俺の友に手を出したんだ」

腰に吊ってある剣を抜く

「覚悟はできているんだろうな」

俺はいつものように構える

「ギャァァァァァ!」

それに応えるかのように吠える<<ヨルムンガルド>>。それが開始の合図だった

「はぁぁぁぁぁ!」

<<ヨルムンガルド>>は図体がでかい分動きがのろい。先制を取ったのは俺だった。俺は<<ヨルムンガルド>>に向かって駆けた。そして右手を引きおもいっきり体をひねる。SAO内ではかなりお世話になったあの技。一撃必殺の<<ヴォーパル・ストライク>>を放つ。狙いは一番近い蛇の体。<<ヴォーパル・ストライク>>は狙い違わず当たった。だが、あっさり弾かれる

「なぁ!?ッ!!」

弾かれたことによる反動で一瞬動きが止まってしまう。それを好機とみたらしく<<ヨルムンガルド>>はしっぽを横凪ぎに一閃した。間一髪反応でき、衝撃を弱めるためおもいっきり後ろに下がりながら、剣でガードする。だがその一撃は重すぎたのか、おもいっきり吹き飛ばされ、木を数本叩き折りそして壁に叩きつけられた

「ゲホッ……っ」

もちろんペインアブソーバで痛みは無いが衝撃は感じる。その衝撃により肺の中の空気が吐き出され咳き込んでしまう。HPを確認すると約三割がきれいに消えていた。ついで剣の耐久度を見ると受ける前と後ではかなり減っていてあと三合しかもたないことがわかった

「こんなに分の悪い戦いは久しぶりだな」

俺の背中に冷たい汗が流れる。その緊張感が俺を冷静にした。そして、改めて<<ヨルムンガルド>>を倒すための算段を考え始めた。だが、<<ヨルムンガルド>>は待ってはくれない。いつの間にかそばに寄って来たらしく、上からしっぽを叩きつけてくるが俺はそれを体を横にしてかわす。だが、俺には<<ヨルムンガルド>>の顔が笑ったような気がした。俺は本能のままに横に全力で跳ぶ。すると俺が直前までいた場所に何かが着弾した。それはさっきまで俺が立っていた地面を溶かし、穴を開ける。<<ヨルムンガルド>>の顔を見ると大きく口を開けたままの格好だった。あそこから発射されたのは決定だろう

「冗談キツいって!」

体制を立て直すと再び構える

「ギャァァァァァ!」

当たらなかったことに怒ったのか俺を狙ってむちゃくちゃにしっぽを地面に叩きつける。ほとんどかわすが、足場がだんだん悪化してきて当たりそうになってくる。そしてとうとう足を取られたたらを踏んでしまう。そこに振り下ろされるしっぽ。俺はそれを剣で軌道を変えどうにかしてかわす

「あと二回……か」

そう。剣の耐久はあと二回の攻撃、もしくは二回の防御に使用すると0になってしまうのだ

「しょうがない……分の悪い賭けは好きじゃないが……」

「ギャァァァァァ!」

再び横凪ぎにしっぽを払う。それを俺は下にしゃがんでかわす

「やらなきゃならんからな」

と啖呵を切ったものの不確定要素(<<ヨルムンガルド>>の攻撃パターン等)が多すぎて負けるだろうとは思う。でも、どこかの武偵は言った。楽観論で考え悲観論で行動せよ、と。……変な電波を受信したんだが……

「よっと」

俺は再び<<ヨルムンガルド>>の上に上がる。そこにしっぽを振り下ろしてくるわけだが、それを全てかわす。そしてかわすたびに<<ヨルムンガルド>>のHPは削られていく。距離が近くなったからか、新たに噛み付きをするようになった。だが当たらない。巨体になるとそれに比例して死角も増える。俺はそこにうまく逃げ込み、<<ヨルムンガルド>>の攻撃をかわしていた

「ギャァァァァァ!」

当たらない上に自身にダメージがくるためかなり怒っている。まあ、HPが減ってきたからなんだが……

<<ヨルムンガルド>>のHPが三割を切った瞬間、俺は動いた。全力で地面を蹴り翅をはためかせ加速。そのまま、俺に噛み付こうとした<<ヨルムンガルド>>の額に全力で叩きつける。今度は弾かれず額を貫通。<<ヨルムンガルド>>は悲鳴を上げ、HPを0にし体をわずかにくねらせた後、砕け散ろうとした。その時俺は見た。上空から多数の火矢が降ってくるのを

「くっ……」

俺はそれが当たらない位置へと退避する。もちろんHPが0になっていた<<ヨルムンガルド>>は火矢に関係なく爆散する。すると俺の後ろから歓声が上がった。俺が後ろを見るとサラマンダーの五人組がこちらに走ってくるところだった

「いやー、さすがリーダー。<<ヨルムンガルド>>を火矢でとどめ!お手柄でしたね」

「そうだろ?さて、そこのインプ。倒したのは俺なんだからドロップ品はもちろん全部もらっていいよな?あんたは自分の命を俺たちに守ってもらったっていう恩があるんだからよ」

……驚き呆れて言葉も出ない。頭に蛆が湧いてるんじゃないだろうか

「……彼は一人で<<ヨルムンガルド>>を倒してた……」

「黙ってなさいよ!あなたの借金、取り立てるわよ!」

「……」

その少女は"ごめんなさい"といった感じで頭を下げた。それ以外の男三人と女一人は<<ヨルムンガルド>>のドロップ品であるレアアイテムが欲しいようだ。俺は<<ヨルムンガルド>>のドロップ品を一瞥する。その中には片手剣である<<フルンティング>>という名の剣があった。おそらく古代級武器だろう

「ほら、早く渡しなさいよ!盗もうとは思わないことね。この人数から逃げられるわけないんだから!」

ちなみに今しゃべっている女の武器は両手槍。男三人はそれぞれ片手剣、両手槌、杖だ。リーダーと呼ばれていたのは杖持ち。まあ、メイジだろうな。最後の少女も杖。彼女もメイジだろうな

「あなたたちが攻撃する前に終わっていましたが……」

とりあえず、丁寧に言ってみる。キレかけだが

「つべこべ言わずに渡しなさい!」

ブチッと人間には必ずある切れてはいけないものが切れたような音がした。俗に言う堪忍袋の尾だ

「いいだろう……」

俺は<<ヨルムンガルド>>のドロップアイテムである<<フルンティング>>を実体化させ腰に吊る。そして、剣を抜いた

「その薄汚い根性に裁きをくれてやる」

今回は手加減を一切しない。二本の剣を装備し、膨大な殺気を放つ俺。もちろん、ゲームなので伝わるわけはないが

「やるというのか?バカだな。俺たちはサラマンダーでは結構上の方のパーティーだ。しかも俺たちは五人、お前は一人。負けるわけがねぇ」

「御託はいい。さっさとかかってこい」

目の前の四人を斬ることができれば、それでいい。体にたたき込んでやる。実力差というやつを

「はぁぁぁぁぁぁ!」

俺の挑発にしびれを切らしたのか両手槌を持った男と片手剣を持った男が突っ込んでくる。その後ろを追随するのは両手槍の女。さらにうしろから、メイジの男と少女が詠唱に入る。一応俺は自分の現在のステータスを確認する。HPは残り五割、MPはMAX、左手の片手剣の耐久度は残り一割、<<フルンティング>>はMAXだ

距離は多少あるし、一応回復魔法を発動する。一番低位だけど。するとHPが一割回復した

「まあ、十分だな」

そう言って、俺は右手の中の<<フルンティング>>を軽く一振り。重さはちょうどいい。思わず微笑んでしまった

「ニヤニヤしてんじゃねぇよ!!」

片手剣による上方からの叩きつけ。……トリッキーな戦いとすばやそが特徴なのに上からしたにただ振り下ろすだけの攻撃はナンセンスだ。とりあえず、並んで走ってきた両手槌のやつとは逆に潜り込む。後ろから走り込んできた両手槍のやつは斜め後ろに下がって回避する。的が小さい相手には一人ずつ攻撃した方がいいってのを知らないのか?

「はっ!!」

バランスを崩した両手槍の女を先ずは<<フルンティング>>で斬る。ついで、両手槌のやつも左手の剣で斬る。二人のHPは瞬時に0に。残った片手剣のやつは驚愕したような表情にシフト。向こうにいたリーダーも驚きのあまり魔法の詠唱を失敗。少女は驚愕しながらも魔法を完成させ、火矢を放ってくる。おそらく単体誘導型であろう火矢は当然俺を狙ったものだ。俺は残った片手剣の男を蹴り上げ、火矢と俺の間に配置する。片手剣の男は当然襲われた火矢に振り向こうとするが、当然無視すらわけもなく<<フルンティング>>で容赦なくたたき斬る

俺はそのまま、メイジ組の元に歩いていく。二人とも戦意が喪失したのか、呪文を詠唱する様子がない

「さて……」

俺がそう呟くと男はビクッとし少女は目を閉じる

「な、何でもやる!何でもやるから、見逃してくれ!」

何をするかと思えば命乞いだった。ちょうどいい

「なら、彼女を解放してやれ」

「えっ……」

少女は驚いて閉じていた目を見開く

「どうして……?」

「まあ、勝者の気まぐれってやつかな」

「わ、わかった!わかったから見逃してくれ!」

「ちなみに、彼女をちゃんと解放しないと現実からもバーチャルからも追い詰めるからな」

そう俺が言うと男はいきなり顔を嫌悪感に満ちたように変えた

「ちなみに、言質は取ったから」

俺は<<ヨルムンガルド>>のドロップ品の一つである録音テープを取り出した

「……くそっ」

「ほら、さっさと行け」

そう俺が手でそいつを追い払う。すると男はサラマンダー領の方に消えた。残っていた赤い炎はしばらくすると消えた

「何で……助けてくれたの?」

「あいつらの物言いが気に入らなかっただけだ。別にお前のためじゃない」

何だか少女を見ていることができなくなり、横を向く。すると少女はクスッと笑った

「本当だぞ?」

「……ありがとう……」

そういって笑顔を見せてくれた

「あなた……名前は?」

「そういえば名乗ってなかったな。俺はリンだ」

「リン……私は、ミユ。よろしく」

「ああ、よろしくな」

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後書き
蕾姫「ヒロイン……にしようか考え中。無口な少女、ミユです!」

ミユ「よろしく……」

蕾姫「気が付いたら書いていましたwイメージはタバサ的な。元々作者はクーデレが好きなのです」

リン「おいおい……」

蕾姫「今回の用語。ヨルムンガルドは北欧神話に出てくるミズガルズ蛇の別称です。ラグナレクではロキに従い神々と戦いました。ちなみにトールと相討ちになったようです。フルンティング(Hrunting) は古代イングランドの叙事詩『ベオウルフ』に登場する剣で、古より伝来する名剣で、長い柄を持ち、刀身は血をすするごとに堅固となるという。その剣は強い力を宿しており、それを使って失敗する事がなかったという伝承をもつ剣です」(一部Wikiから抜粋)

リン「危ない剣だな……」

蕾姫「次回はミユを初めとする名前が出て来なかったキャラと剣の解説かな?」

リン「次回もよろしくな」
 
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