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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──

作者:なべさん
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SAO
~絶望と悲哀の小夜曲~
  巨人のツル

 ──なんか、妙なことになったなぁ……

 店を出て、転移門広場目指して足を進めながら、あたしは内心で首を捻っていた。

 隣でのんびりと歩く紅衣の少年には、あたしは決してあんなことやこんなことみたいな印象は持っていない──

はずだ。

 しかしそれでいて、あたしはその初対面の少年とこうして並んで歩いている。なんとこれから遠いフロアまで出かけて、パーティーを組んで狩りまですることになっている。これではまるで──まるでデー……

ゲェッホンエェッホン!

 そこで思考を無理やり堰き止める。こんなことはかつて一度もなかった。それなりに仲のいい男性プレイヤーは何人かいるけれど、二人きりで出かけるのはなんだかんだと理由をつけて回避してきた。

そう……怖かったのだ。特定の男性と、一歩踏み込んだ関係になるのが怖かった……。

そうなるなら、まずあたしからちゃんと好きになった人と、ずっとそう思っていたはずだった。

 なのに気付くとこの妙な少年と──。これは一体どういうことなのか。

まさかあたしは、隠れたショタコンだったのであろうか。

 あたしの秘めたる葛藤に気付く風もなく、レンはゲート広場の入り口に食べ物の屋台を見つけるといそいそと駆け寄っていった。やがて振り向いたその口には、でっかい骨付き肉が咥えられている。

「りうねーはんも食う?」

………内心で思いっきり脱力する。悩んでいるのが馬鹿らしくなり、あたしは大声で答えた。

「食う!」

 かりっと熱せられた骨付き肉──ただし何の肉かは不明──を齧り終わる頃には、三十一層北にある噂の村に辿り着くことができた。

 フィールドのモンスターはさして問題ではなかった。

その自信満々の口調と、超高レベルの特殊武器から攻略組であることを滲ませる少年は、《巨人達の森》の名の通りに出てくる一体一体がやたらとでかい亜人型巨人モンスターを見向きもせずに、バッタバッタと両断していく。

それはもう戦闘というより、ただの一方的な虐殺に近い。

ほんの少しモンスターに同情してしまったくらいだ。

「さてと………村長さんの家はどこかな~」

レンの声に、転移門もない小さな村を見渡すと、アメリカの先住民を思わせる服装のNPC達の向こうに、ひときわ豪華な──と言っても限度はあるが──家が見えた。

「あれじゃない?」

「あれだねえ」

互いに顔を見詰め合い頷きあい、歩き出す。

───数分後

人だかりに囲まれていた。出ることはできない。

予想たがわずあたし達は白髭豊かなNPCを発見し、話を聞くことに成功したのだが、いざ村長が話し始めるとあれよあれよと言う間に村人NPCが集まってきてしまったのだ。

その内容は全て誰それが被害にあったと言うのだから、そのクエストボスの巨大さと強さが伺える。

その全ての話を村人達が満足いくまで話し終え、人だかりが散った頃には村はすっかり宵闇の光に包まれていた。

へとへとに消耗して村長の家から転がり出る。一つ一つの幹の直径が十メートルは下らない樹々に青紫色の光が当たり、なんとも荘厳な情景を織り成していたが──

「………まさかフラグ立てでこんなに時間かかるとは思わなかったー」

「うん………。どうする?」

明日出直す?と言う意味を省略して、二人して顔を見合す。

「うーん。でもここまで来たんだし、せっかくだから行っちゃわない?そのツルってあれでしょ?」

指差す方向を見ると、意外と村から近い位置に天高くニョロニョロと伸びる立派なツルが見えた。ただアインクラッドの構造上、どんな高い地形でも絶対にその高さは百メートルを超えることはない。

登ることはそれほど苦労しないだろうと思われる。そう登るだけならば。

「そうね、行っちゃおうか。最低でも日付変わる前には戻ってきたいよね」

「うん」

無邪気な笑顔を浮かべたレンの頭を思わずガシガシと撫でて、あたしも笑顔を浮かべる。

なんだか──自分がみるみるショタコン化していくような気がする…………。

あたしはぶんぶんと頭を振って妙な気分をリセットし、さわさわと宵闇の風に揺れる柔らかい草を踏みしめながら歩き始めた。










「でっかいねえ~」

「でっかいなあ~」

二人して高くそびえるツルを見上げながら、揃って言った。

首が痛くなってきた。

遠くから見ると、一本のツルに見えたそれは、近くで見ると数千本のツタが合わさってできたらしいことがよく解かった。そのバカでかい幹から交互に広い葉が生えている。

しばらく二人で見上げた後、あたしは軽くため息をついいて一番低いところに生えている葉に向けて歩き出そうとした。

しかし、そんなあたしのエプロンのすそを引っ張る小さな手が一つ。

ん?と振り向くと、再びあたしの行動の意味がわからないという顔をしたレンがいた。

「どこ行くの?リズねーちゃん」

「へ?どこにって、あそこに……」

あたしが葉っぱを指差すと、紅衣の少年はますます訳が解からないように可愛らしく首を傾げる。

「何でリズねーちゃんは、わざわざ遠回りするの?」

「遠回りって?」

そこでレンは、右手で天を指差した。指差す先はもちろん頂上。

「あそこに行くんだよね?」

「………?そうだよ」

今度は、首を傾げるのはあたしの番だった。何言ってんの、この子。

そんなことを考えていると、目の前ににゅっと手が突き出された。レンを見ると無言で相変わらず笑顔を浮かべている。手を取れと言うことらしい。

「………………???」

よく解からないうちに、その手を取る。

少年はにっこりと笑い、一瞬身をかがめたような気がした。

気がした、と言うのは、少年の体が掻き消えたように消えたからだ。

跳躍したのか、と頭が理解したのはかなり後になってからだ。

とにもかくにも、少年は勢いよく跳躍したのだ。………手を繋いでいたあたしとともに。

「いっッ……!いィやああぁぁァァァ!!!!」

割と本気な自分の悲鳴をどこか他人事のように聞きながら、レンとあたしは絶叫(あたしの)の尾を引きながら飛ぶ。

天高い位置にあった、天頂の特別大きい葉は見る見るうちに近づいてきて───

あたし達は天頂の葉っぱの端っこに着地した。

まだ呆然としているあたしの前で、侵入者を排除すべく二メートル近いイモムシが毒々しい黄色の体を蠢かした。 
 

 
後書き
なべさん「始まりました!そーどあーとがき☆おんらいん!」
レン「はい、始まりましたー(棒)」
なべさん「タイトル変えたぞぉー!!(エコー)」
レン「えっ?…………のおぉぉー!本当だぁぁぁ!」
なべさん「なっはっはー♪」
レン「どして?」
なべさん「んー、何となく?」
レン「……………………………………………………」
ドシュッ☆
なべさん「ぬぐおあぁぁぁぁ!目ぐぁぁぁー!!!なんかこの展開久し振りだー!!」
レン「はい、題名は変わってしまいましたが、お便り、感想を送ってきてくださいねー♪」
──To be continued── 
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