我が剣は愛する者の為に
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一刀の刀
俺は今、街を散策している。
華琳が俺を警備隊長に任命したので、その警邏も兼ねている。
部下が一人ついて来ていたのだが、ちょうど食い逃げ犯が逃げる所に居合わせた。
俺達は食い逃げ犯を捕まえ部下はそのまま連行しに城に戻った。
てなわけで、今は一人で街を歩いている。
「おや、関忠さんじゃないかい!」
通りかかった肉まん屋のおばちゃんに話しかけられる。
天の御使いである一刀がこの街に客将として、華琳に仕えるという事はすぐに街に広まった。
その影響か、俺の顔と名前も覚えられこうやってよく声をかけられる。
「ちょうど新作の肉まんができたんだよ。
食べていくかい?」
「おっ、いいね。
試食させてもらおうかな。」
蒸し器から出来立ての肉まんを受け取る。
一口食べて、噛み応えのある触感を感じた。
「これは・・・・・・メンマ?」
「よく分かったわね。
メンマを入れて触感を出してみたんだ。
どうだい?」
「うん、コリコリして触感は出ている。
味も上手く合わさっていて問題ないよ。」
「関忠さんお墨付きなら、問題ないね!
明日から店頭に並べるよ。
関忠さんも食べたかったら行っておくれ。」
その店から離れ、警邏を続ける。
さっき貰った肉まんを食べながら、鍛冶を専門とする店が多く集まる通りに入る。
実は警邏とは別に街を散策する理由がある。
それは一刀の刀。
そろそろ、木刀から卒業しても良い頃だと思っているので、こうして毎日この通りを歩く。
警邏も兼ねているので、あまり長い間この通りに留まる訳にはいかない。
なので、一日に一店。
職人と話し、俺が持っている刀を複製できるかどうか聞いて回っている。
今の所収穫なし。
作ってもらい俺が試しに手に取って、振ってみての感想だ。
刀のような軽量で薄い剣は作った事がないという職人が多かった。
実際、この時代は剣だけではなく戟も存在する。
刀のように薄い剣では、一撃受けただけで折れてしまう。
そこは持ち主の技量によるのだが。
と、ある店が視界に入った。
外見は手入れされてなく、見た限り店には見えない。
しかし、毎日鍛冶の店に訪ねているからか、その独特の鉄の匂いをその家から感じる事ができる。
まだ、開店していないかもしれない。
それでも俺は店の扉を開ける。
「ごめんください。」
中は薄暗く、埃臭い。
声を出して呼んでみても、反応が返ってこない
だが、店からは人の気配を感じるので、聞こえていないのだと判断してさっきよりも大きな声で呼ぶ。
「ごめんください!!」
「なんじゃ、騒々しい。」
鬱陶しいそうな顔をして、店の奥から一人の老人が出てきた。
「ちょっと作ってもらいたい剣がありまして。」
「他を当たれ。
儂の他にももっといい鍛冶師がおる。」
そう言って、奥に戻ろうとする。
「簡単には引き下がりませんよ。
この刀を複製できる職人を捜しているのですから。」
鞘から刀を抜いて、老人に見せると彼の眼の色が変わった。
「そ、その剣はッ!?」
持っていた道具を床に捨て、俺の刀に近づき注意深く観察している。
「えっと・・・・・」
「もっと良く見せてくれんか?」
「ど、どうぞ。」
刀を渡すと刀身を指で叩いたり、軽く振るなど細かい所まで見ている。
納得したのか刀を返してきた。
「この剣の複製を望んでいるのだな?」
「え、ええ。」
鞘に刀を収めながら答えた。
「それに興味が湧いた。
明日、またここに来なさい。」
それだけ言って、落ちている道具を拾い奥に戻っていく。
展開について行けず、数分の間その場に立ち尽くす。
「何か分からんが、上手くいったみたいだな。」
とりあえず納得して、俺は警邏に戻った。
次の日。
昨日と同じ時間に訪ねてみると、俺を待っていたのか老人が立っていた。
手には鍔の柄が大陸独特の形になった刀が握られている。
「これは・・・・」
「儂なりに作ってみた。」
「少しだけ振らせてもいいですか?」
「構わん。
だが、壊すなよ。」
刀を受け取り、抜刀。
二、三回素振りをして思った感想は。
(少し重いけど、今まで振ってきた中ではダントツに出来がいい。
これなら一刀も問題なく扱えるはずだ。)
鞘に刀を戻しながら俺は聞く。
「この刀・・「お主に授けるよ。」・・・・いいんですか!?」
俺が詰め寄るように聞いて、少し驚きながらも頷く。
「最初から渡すつもりだったからの。
珍しい剣を見せて貰ったから、その礼と思ってくれ。」
「お代は。」
「そんなものはいらん。
依頼される前に勝手に作ったんじゃからな。
さぁ、用が済んだら帰ってくれ。」
しっしっ、と虫を払うかのように手で払う。
深々と一礼して、俺はこの店を出て行った。
早速、俺は警邏何て仕事は放りだして、城に戻る。
今の時間だと自室で政務だな。
一刀の部屋に着くと、ノックなしで扉を開ける。
「うおっ!?
って、縁か。」
級に扉が開いて驚くが俺の顔を見て、何か納得した顔をする。
これは後で色々と聞かないとな。
そんな事は置いておいて。
「今から中庭に行くぞ。」
「修業か?
でも、華琳に頼まれている事が。」
「そんなの関係なし。
ほら、行くぞ。」
強引に腕を掴んで、無理矢理引っ張る。
そのまま中庭まで連れて行き、作って貰った刀を渡す。
「これは?」
「お前の刀だ。
この刀を基本に作って貰った。」
それを聞いて眼を見開き、ゆっくりと鞘から刀を抜く。
長さは俺のより少し短い。
両手で握って、俺と修行するかのように軽く振う。
若干のぎこちなさはあったが。
「初めて真剣を手にするから違和感はある筈だ。
それを徐々に慣らして、自分の腕のように扱えるようにしろよ。」
「う、うん・・・・」
歯切れの悪い返事に俺は少しだけため息を吐く。
こいつの考えている事は大体分かっている。
「怖いか。」
「ああ、怖い。
俺の手に人を殺せる道具がある事が。
そして、今実感した。
俺もいずれは人を殺すんだって。」
自分の気持ちを正直に話す一刀。
俺も最初はもの凄く怖かった。
一刀の気持ちはよく分かる。
前世の世界ではこんな事とは無縁の世界だから。
「お前はどんな覚悟で戦うつもりだ?」
「覚悟?
・・・・・・・俺は。」
少しだけ考えてから一刀は言葉を発する。
「出来る限り人を殺したくない。
これはびびっているとかじゃなくて、人が死ぬのはやっぱり悲しいから。
もちろん、戦わないといけないのなら戦う。
でも、出来る限り人は殺したくないし、死んで欲しくない。
この覚悟は甘いか?」
「チョコレートパフェより甘いな。」
「だよな。」
「でも、それでいいんだよお前は。
人を殺すのに慣れてはいけない。
その覚悟でお前はいいんだよ。」
「縁・・・・ありがとう。」
「よし!
早速修行するぞ。
まずは重い一撃をいなすところからだ。
上手く扱えないとその刀は一撃で折れてしまうからな。
某世紀末の病人も言っていただろう?
激流を制するのは静水。
お前の目指す剣は剛の剣じゃなく、柔の剣を目指す事になる。」
「あまり力は強くないし、そっちの方がマシっぽいな。」
「さぁ、行くぞ!」
「来い!!」
俺と一刀は心機一転の心もちで剣を握るが。
「盛り上がっている所を悪いわね。」
剣のように鋭い言葉が俺の背後から聞こえた。
ゆっくりと振り返ると、明らかに怒っている雰囲気を纏った華琳が立っていた。
「か、華琳?
どうした、てか何で怒っている?」
「自分の胸に手を当ててみなさい。」
なぜ怒っているのか分からない俺を見て、さらに不機嫌になっていく。
言われた通り俺達は胸に手を当てて考えて。
「「あっ。」」
「思い出したようね。
縁は警邏の途中、堂々とさぼり。
一刀は頼まれた政務を放棄。
二人して私を怒らせたいの?
だとしたら、とても効果が出ているわよ。」
ゴゴゴゴゴゴゴ!!!!、という擬音がぴったりくらいやばい殺気を感じる。
逃げた所で、いずれは華琳に捕まってしまう。
大人しく降参して、静かに地面に正座する。
俺に見習って、一刀も正座する。
「あら、立場は分かっているみたいね。
それに免じて、説教は一刻くらいは短くしてあげるわ。」
「ちなみにどれほどの時間、説教するおつもりですか?」
恐る恐る聞いてみると、物凄いいい笑顔のまま。
「そうね、日が暮れるまでは説教するから覚悟しなさい。」
今は太陽が真上で輝いている。
華琳の言葉を聞いて血の気が引いていくのが分かる。
おそらく、一刀も同じようになっているだろう。
その日、足が凄まじいくらいに足が痺れたのは言うまでもない。
その後にきつかったのは、痺れている足を胡蝶が執拗に攻め来た時は泣きそうになった。
結局、足の痺れは寝てもずっと続いて、その夜は寝る事ができなかった。
後書き
四月までは両作品の投稿が遅れます。
理由は、私に小説を書いてほしいと言われましたので、それの執筆に時間をかける必要があるからです。
ちなみに私は基本的な小説の書き方は知っています。
なのに治さないのは単に面倒・・・ゲフン。
両作品はこの書き方で進み、次回作からはちゃんとした書き方でいきます。
誤字脱字、意見や感想などを募集しています。
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