| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十五話 血の狼煙

              第十五話 血の狼煙
アクシズに補給物資を頼むことになったロンド=ベル。ところがここで問題が生じていた。
「アクシズでは無理なのですか」
「済まない」
ミスマルがシナプスとブライトに謝罪していた。
「知っての通りアクシズは前線基地の一つだ」
「はい」
「あそこの物資は置いておきたいのだ。戦略上の判断でな」
「わかりました。しかし」
ブライトがモニターのミスマルに言う。
「それでは我々が」
「物資が足りないのですが」
「それでだ」
ここでミスマルは言う。
「月から送らせてもらいたい」
「月からですか」
「そうだ。ギガノスが倒れ月は安全になった」
そういういきさつがあった。
「だからだ。月の物資をゼダンまで送りたいのだがどうかね」
「そうですね」
シナプスは少し考えてから述べた。
「それでしたら」
「ではすぐにでも御願いします」
「うむ、それではすぐに出発させる」
ミスマルはそうブライトにも告げた。
「明日にでもそちらに到着すると思う」
「わかりました。それでは」
「あとだ」
彼は言葉を付け加えてきた。
「そちらの生産施設は復旧していないのか」
「もう暫くかかりそうです」
今度は大文字が述べた。
「今復旧作業中ですが」
「そうか。それが終わればそちらも困らないのだがな」
「ええ、確かに」
大文字はミスマルのその言葉に頷いた。
「そうなるかと」
「そしてだ」
ミスマルはさらに言葉を付け加えてきた。
「ゲートについてだが」
「ゲートですか」
「遂にバルマーが姿を現わしたようだな」
やはりそこに言及してきた。
「はい、その通りです」
シナプスが答える。
「同時に一人のパイロットを保護しました」
「クォブレー=ゴードンだったか」
その名はミスマルも聞いていた。
「褐色のマシンに乗っているそうだな」
「その通りです」
シナプスはまた答える。
「今だその素性はわかりませんがどうやらスパイではないようです」
「そうか。まずは安心といったところだな」
「はい」
ミスマルの言葉に頷く。
「とりあえずのところは」
「わかった。しかし油断はできない」
ここでミスマルは軍人としての厳しい顔になっていた。
「まだ気をつけておいてくれ」
「はい、そちらはもう」
ミサトが答える。
「二人つけていますので」
「うむ、頼むぞ」
「了解しました」
「今のところは静かだな」
ミスマルはあらためて述べた。
「もっともそれが崩れようとしているが」
「閣下はゲートについてどうお考えですか?」
ヘンケンが尋ねてきた。
「あのゲートは」
「おそらくバルマーのものだな」
「やはり」
「最初からおかしいと思っていたが。今回の件でな」
「ではあそこからバルマーの軍勢が」
「その可能性は高い」
それが彼の結論であった。
「常に監視を怠ってはならない」
「はい、それでは」
「暫く君達にはあの方面で頑張ってもらいたい。必要とあらば、そしてその方法がわかればの話だが」
「どうされよと」
またシナプスが問う。
「あのゲートを破壊してくれ」
そういうことであった。
「いいな」
「了解」
「それでは」
「ではな。ユリカ」
最後に予定調和のようにユリカに声をかけてきた。
「無理をするんじゃないぞ。お父さんはな、お父さんはな」
「安心して下さい、お父様」
だが当のユリカはいつものように能天気であった。
「私は大丈夫ですから」
「しかしだな、ロンド=ベルは最前線だ」
また言う。
「だから。御前に何かあればお父さんは」
「皆さんがおられますし」
ユリカは仲間を信頼していた。
「何もありませんから」
「だったらいいのだがね。やっぱり」
「私に似てる方もおられますし」
「こほん」
ナタルがその後ろで咳払いをした。
「むっ、バジルール少佐」
「閣下」
ナタルは堅苦しい動作と声でミスマルに声をかけてきた。
「ミスマル艦長は立派な方ですので。御安心を」
「そうなのか」
まだ心配なのがはっきりとわかる。
「それならばいいのだがな」
「はい。ですから」
「それはそうとだ」
ミスマルは元の顔に戻ってナタルに声をかけてきた。
「貴官の兄上だが」
「兄が。どうかしましたか?」
ナタルの顔が急に曇ってきた。
「今度結婚するそうだ」
「えっ!?」
ナタルはそれを聞いて目を点にさせた。
「今何と」
「だから結婚するのだ」
ミスマルはまた彼女に告げる。
「お相手はだな。かなり奇麗な方で」
「それは本当ですか」
それを聞いてもまだ信じられないといった顔であった。
「兄が。あの兄が」
「何か不思議なのか?」
ブライトがナタルに問う。
「私と大して変わらない歳の筈だが、バジルール中佐は」
「それはそうですが」
ナタルの兄も軍人だ。階級は中佐だ。
「それでも。あのいい加減な兄が」
「おいおい、バジルール少佐」
アムロが驚きを隠せないナタルに苦笑する。
「それでも結婚はできるぞ」
「はあ」
「だからそれは関係ないんじゃないかな」
「私はもっと若くして結婚したしな」
ブライトが言う。
「それでもう二人の子持ちだ。アムロ」
「おっと、俺はまだそこまで歳を取っちゃいないぞ」
苦笑いのままだった。最近ブライトにしきりに言われているのだ。
「生憎だがな」
「いや、しかしな」
それでもブライトは言う。
「結婚していると何かとだな」
「とにかくです」
ナタルはムキになった顔でミスマルに言う。
「兄に伝えておいて下さい」
「何をだね、ユリカ」
ここでミスマルはぼけてしまった。
「そもそも御前にはお兄さんは」
「あの、お父様」
ここでそのユリカ本人が言う。
「私は何も」
「むっ!?」
「申し上げているのは私です」
ナタルなのである。
「ですから」
「す、済まない」
慌てて言葉を引っ込めて訂正する。
「声が似ていたのでな。つい」
「お父様も間違えましたね」
ユリカは何かやけに楽しそうであった。
「皆さん間違えるんですよね」
「似ているというものではないな」
ミスマルもそれを言う。
「同じにしか聞こえない」
「私もです」
ナタル本人もそれを認める。
「どうにもこうにも。しかし」
ナタルは強引に話を戻してきた。
「あの兄が。よく結婚なぞ」
「そんなに不思議かね」
「正直信じられません」
ナタルははっきりと言い切った。
「あの浮気者でいい加減な兄が」
「おいおい少佐」
「ちょっとナタル」
アムロとミサトが顔を引き攣らせてナタルに声をかける。
「幾ら何でもそれは」
「確かに噂の多い人だけれどお兄さんなんだし」
「相手もよくはいと言ったものです」
それでもナタルは言う。
「どうしてそうなったのか」
「うむ、それがな」
ミスマルはあらためて畏まって述べる。
「相手は絶世の美女だ」
「絶世の」
「しかもガンダムファイター並の戦闘力だ」
「ガンダムファイター!?」
「また極端な」
どうやら相当な人物のようである。
「だから浮気は出来ない。安心してくれ」
「だといいのですが」
しかしそれでもナタルは安心してはいなかった。
「兄ですから」
「そういえばだ」
ミスマルはナタルのその言葉で気付いた。
「君のお兄さんは何度乗艦が撃沈されても」
「はい、生きています」
語る顔がかなり忌々しげであった。
「残念なことに」
「残念とはまた」
「尋常じゃないな」
ブライトとアムロはそれを聞いて思わず呟いた。
「殺しても死にません」
妹の言葉ではなかった。
「それは私が保障します」
「そうか。ではまだ騒動は続くな」
「兄の女好きは病気です」
さらに言う。
「我が兄ながら。嘆かわしい」
「だからかしら」
ミサトはそれを聞いて気付いた。
「ナタルの生真面目さは」
「そうみたいだな」
それにアムロが頷く。
「どうにもこうにも」
「しかし。結婚したというのはいいことです」
笑顔になった。ナタルの笑顔は可愛いので評判だ。
「それは心から祝福します」
「そうか。それは何よりだ」
「次は妹さんの番ね」
ミサトが余計なことを言う。
「どうかしら、そこんとこは」
「なっ」
その言葉に顔を真っ赤にさせる。
「わ、私は別に」
「それでキースとは何処までいったの?」
「何処までって」
「ベッドまでいった?」
「それはまだですっ」
ムキになって言い切ってきた。
「キスまでです。ベッドまでってそんな」
「やれやれ」
リツコはそこまで聞いてまた呆れてしまった。
「少佐」
「何でしょうか」
「また自分で言ってるわよ」
「あっ」
言われてやっと気付く。
「しまった・・・・・・」
「こんな簡単に引っ掛かるなんてねえ」
ミサトも呆れた顔になっていた。
「ナタルはちょっとそういうところ気をつけなさい」
「うう・・・・・・」
何も言えない。自爆そのものだったから。
「それはそうとです」
ブライトが話を戻してきた。
「今のところ補給路は安全なのですね」
「一応敵はいない」
ミスマルもそれは認める。
「大丈夫だと思うが」
「ですがゲートのことがあります」
シナプスがここで述べる。
「警戒は必要かと」
「そうだな。何かあった時は頼む」
「わかりました」
ブライトとシナプスが答える。
「それではそのように」
「お任せ下さい」
「わかった。それではだ」
ミスマルはあらためて一同に告げた。
「宜しく頼むぞ」
「了解」
こうして月から補給が為されることになった。とりあえずはロンド=ベルにとってはよいことであった。しかし。トラブルは付き物である。
「おい、出たってさ」
バーニィが皆に告げる。
「やっぱり」
「そうですか」
シーブックがそれに応える。
「予想はしていましたけれど」
「何だ、冷静なんだな」
「ですから予想していましたから」
またバーニィに応える。
「来るだろうって」
「バーニィももうスタンバイできてるでしょ?」
クリスがバーニィに問うてきた。
「ザクは」
「ああ、もう何時でもいけるぜ」
その通りであった。その証拠に顔が笑っていた。
「じゃあ行くか」
「ええ。総員出撃ね」
「シーブックもね」
セシリーがシーブックに声をかける。
「予想していたんなら」
「ああ。帰ったらパンを焼いてくれないか?」
「パンを?」
「そうさ。食料も来るんだろう?」
そうセシリーに問う。
「だったらさ。当然小麦も来るんだし」
「ええ、わかったわ」
セシリーはシーブックの言葉ににこりと笑って頷いた。
「それじゃあ帰ったらね」
「じゃあ行くか」
セシリーのパンと聞いて俄然元気を出した。
「わかった」
クォブレーが応えた。
「それじゃあな」
「じゃあクォブレーさん」
そこにアラドとゼオラが来る。
「一緒に」
「行きましょう」
「一緒にか」
「当然ですよ」
アラドは笑顔を作って彼に述べる。
「俺達一緒の小隊なんですから」
「そういうことです」
ゼオラも笑顔を作っている。
「チームプレイですから」
「ささ、ですから」
「あ、ああ」
クォブレーは少し怪訝な顔を浮かべて二人の言葉に頷く。
「わかった。それじゃあな」
「じゃあ一緒に」
「出撃ですね」
「それにしてもな」
シローはそんな彼等をみて首を少し傾げさせていた。
「あまり演技が上手くないんだな」
「アラド君とゼオラちゃんのこと?」
「ああ」
アイナの言葉に頷く。
「はっきりわかるよ、俺でも」
「ふふふ、そうね」
アイナはそんな二人を見て笑っていた。
「私にもわかるわ、それは」
「正直あの二人には」
そのうえでまた言う。
「ああした任務はどうかな」
「そうかもね。けれど」
そのうえでクォブレーを見ていた。
「彼等のあの雰囲気にクォブレー君も馴れてきたみたいよ」
「馴れて?」
「ええ。そこからロンド=ベルにも」
こうも言う。
「馴れてきたんじゃないかしら」
「そうかな」
シローはアイナの言葉を聞いてからまたクォブレーを見た。彼の目からはそうは見えない。
「俺はそうは思わないけれどな」
「それでも。わかったことがあるわ」
「それは何だい?」
「少なくとも彼はバルマーのスパイじゃないわ」
アイナはそれは感じ取っていた。
「それはね。わかるわよね」
「ああ、それは一応」
シローもそれなりに鋭い。だからこそそれは感じ取っていた。
「わかる、俺にも」
「わかってくれていたらいいわ。だから」
「信頼していいんだな」
「それは今からの戦いでもわかるわ」
穏やかな笑みと共に述べた。
「彼を見ていればね」
「よし、じゃあ後ろは安心して行くか」
「シローの後ろはいつも大丈夫よ」
アイナはその笑みでまた述べた。
「それは何故なんだ?」
「だって、いつも私がいるから」
そういうことであった。
「だからよ」
「そうか。それじゃあ」
「任せてね。それで二人で」
「ああ、戦おう」
二人は二人でそのムードの仲にいた。そうして互いを気遣いながら戦いに向かうのであった。
補給部隊はゲート付近で敵の攻撃を受けていた。そこにいたのはやはりバルマーのマシン達であった。
「やっぱりそうかよ」
「予想通りとはいえね」
「何かありきたりに思えるよ」
サンダースとカレン、ミゲルはそれぞれ述べる。
「それで艦長」
シローはヘンケンに尋ねた。
「これからどうしますか?」
「まずは総員補給部隊の方に向かう」
彼は救援を優先させることにしたのだ。
「そして彼等を保護して」
「そこから敵の迎撃ですね」
「うむ、そうしよう」
そうシローに告げた。
「それでいいな」
「わかりました。じゃあ今から」
「向かうぞ。総員それでいいな」
「了解」
「勿論です」
皆それに頷く。
「それじゃあ」
「ただしだ」
ここでヘンケンはまた言う。
「敵と一緒に味方まで撃つことはないようにな」
「そんなのいるのかよ」
「いるじゃないか」
「そうそう」
カレンとミゲルはサンダースに突っ込みを入れる。
「それも三人もね」
「どうしたものやら」
「ああ、わかった」
サンダースもそこまで聞いて理解した。そして彼等を見る。彼等を見ているのはサンダースだけではない。当人達もそれに気付いていた。
「何だよ、俺達かよ」
「不服だね、それって」
「心外だ」
オルガ、クロト、シャニである。ここでも問題児扱いされる三人であった。
「仕方ないだろ」
そんな彼等にエレドアが言う。
「あんた達は今までが今までだしな」
「おいおい、戦争だぜ」
オルガは当然わかっていなかった。
「派手にやらないと駄目だろうが」
「そうだよ」
クロトも勿論である。
「抹殺しまくらないとね」
「消す」
そうなれば最後の一人もわかっていないのも当然であった。
「それだけだ」
「全く。仕方のない奴等だ」
ヘンケンは口ではこう言うが特に困った様子はなかった。
「どうしたものか」
「ロウ=ギュール大尉」
ナタルはその中でロウに指示を出す。
「彼等と共に敵に突っ込んでくれ」
「了解。やっぱりそうなりますか」
「このままでは補給部隊にも被害が出る」
三人が補給部隊を巻き添えにして戦うことはもう予想していたのだ。
「だからだ。いいな」
「了解。けれどそれじゃあ」
「どうした?」
「部隊を二つに分けたらどうですか?」
「二つにか」
「そうですよ」
ロウはさらに提案するのであった。
「補給部隊の護衛と敵に向かって行くので。どうですか?」
「ううむ」
「そうだな」
それに頷いたのはヘンケンであった。
「言われればその方がいいな」
「ですね。じゃあ決まりです」
「バルキリーを中心とした高速機動部隊は補給部隊の護衛だ」
彼はすぐに指示を変えた。
「他は敵部隊に突入だ、いいな」
「了解っ」
「じゃあ早速」
皆それを受けて動きはじめる。動けばかなり早かった。
すぐにバルキリー達が補給部隊のところに来た。そうして群がりだしていた敵を素早く撃墜していく。
その中で。ミレーヌが敵の攻撃を受けていた。
「おい、ガルド」
それを見てすぐにイサムが相棒に声をかける。
「お姫様が危ないぜ」
「わかっている」
ガルドもそれに頷く。そうして二人でミレーヌの援護に向かった。
「あんまりお姫様を狙うってのは感心しねえぜ」
イサムはそう言いながらバルマーのマシンを次々と撃墜していく。相変わらず見事な動きを戦場において見せていた。
「違うか!?」
「その通りだ」
ガルドもその言葉に頷く。
「しかしだ」
「どうした?」
「ミレーヌだが」
ここでミレーヌの動きに注目した。
「いい動きだな」
「んっ!?そういえばそうだな」
イサムも言われてそれに気付く。見ればミレーヌは周りを完全に囲まれていたのにダメージ一つ受けてはいない。それどころか四方八方から浴びせられる攻撃を華麗な動きでかわしていたのである。まるで熟練のパイロットの様な動きで。
「それもかなりな」
「最初からそうだったな」
ガルドはミレーヌと合流した時のことを思い出して言った。
「見事なものだった」
「ミレーヌちゃんは運動神経いいぜ」
イサムはガルドにこう述べる。
「それも抜群にな。車の運転だって大したものだ」
「いや」
だがガルドはそれを聞いてもまだ言う。
「それだけではないな」
「どういうことだよ、それって」
「あれは。通常の人間の動きではない」
「何っ!?」
イサムはそれを聞いて声をあげた。敵を倒しながら。
「ミレーヌちゃんも普通じゃないっていうのかよ」
「ある意味バサラもだが」
バサラがまともではないのはもう言うまでもなかった。
「だが。彼女もまた」
「そういえばそうだな」
イサムは今も敵の攻撃をかわすミレーヌを見てガルドの言葉に応えた。
「あの動きは。ちょっとな」
「ゼントラーディかメルトランディの動きだ」
こう評した。
「あれはな」
「じゃああれか?」
イサムはそれを聞いて言う。
「御前とかレトラーデと同じか。ミリアとも」
「そうなる」
「言われてみればよ」
イサムはふと気付いた。
「ミレーヌちゃんの顔とか雰囲気な」
「ああ」
「ミリアに似ていないか?何処となく」
こう言うのだった。
「まあ姪御さんか何かだったからそれも当然なんだろうけれどな」
「そうだな。しかし」
ガルドはさらに言う。
「それ以上のものも感じる」
「もっと濃いってか」
イサムはそれを聞いて言葉を返した。
「ミレーヌちゃんとミリアは」
「俺はそう感じるが。どうかな」
「けれどよ。あの二人はまだあれだね」
イサムはまた言う。
「あんな大きな子供出来る程歳食っちゃいねえぜ」
「それは俺もわかっている」
「まあ姪御さんってことだ」
これで納得することにした。
「あのセンスもな」
「そうだな。では俺も」
「おお、そうだそうだ」
今のガルドの言葉ではたと気付いた。
「御前も真面目に参戦しろ。いいな」
「既にやっている」
その通りだ。彼も周りの敵を次々に撃墜しているのだ。
「御前よりもな」
「御前はいつも一言余計なんだよ」
「御前が言わせるからだ」
「ったくよお、無口なわりにはいつも一言多いな。まあいいさ」
話をキリのいいところで止めた。
「どんどん倒すぜ。いいな」
「うむ」
彼等はミレーヌを見事救出した。バルマー軍は次々に撃墜されていく。だがその中に見慣れないマシンがあることにも気付く者がいた。
「あのマシンは」
エイジは彼等と戦いながら声をあげた。
「グラドスの」
「どうしたんだ、エイジ君」
ガムリンが彼に声をかけてきた。
「あまり動かないでいると狙われるぞ」
「そうじゃありません、あれは」
「あれは?」
「グラドスのSPTです」
そうガムリンに述べるのであった。
「SPT!?というと」
「はい、僕やデビット達の乗っているレイズナーと同じものです」
「何っ、じゃあすると」
「はい、グラドス軍も来ました」
ガムリンに対して語る。
「遂に。つまり彼等はバルマー外宇宙方面軍」
「兄さんの軍じゃないんだ」
タケルもそれを聞いて言う。
「ということは」
「はい、バルマー軍の中でも最低最悪の軍です」
エイジは忌々しげにそう告げた。
「一般市民さえ平気で攻撃する。そうした連中です」
「とんでもない奴等だな」
金龍はそれを聞いて顔を顰めさせる。生粋の軍人でありパイロットである彼がそれを聞いて顔を顰めない筈もなかった。
「そうです。その中核の一つがあのグラドス軍」
「だったらすぐに撃墜しないと」
フィジカはそれを聞いて動く。
「大変なことになるぞ」
「だが落ち着け」
金龍はその彼に対して言った。
「かえって焦っても何にもならん」
「すいません、隊長」
「いい。それよりもだエイジ」
あらためてエイジに問う。
「あの連中は手強いか」
「機動力に注意して下さい」
エイジはそう金龍に告げた。
「僕のレイズナー程じゃないですがSPTはかなりの機動力、とりわけ瞬発力を持っています」
「わかった」
金龍はその言葉に頷いた。
「ではな。やり方がある」
「どうするんですか?」
「奴等を集めろ」
金龍はガムリン達にそう告げた。
「そしてフォーメーションで叩くぞ」
「ダイアモンドフォースのですか」
「いいな」
あらためてガムリン達に問う。
「あれを使うぞ」
「はい」
「わかりました」
ガムリンとフィジカがそれに頷く。同じ小隊にいる柿崎はこの時は少し離れた。
「じゃあ俺はフォローってことで」
「悪いな」
金龍はその柿崎にも声をかける。
「一条大尉と組んでおいてくれ」
「了解、いや」
ここで柿崎はふと思いついた。
「俺が囮になりますよ」
「頼めるか」
「いいですよ。同じ小隊だし」
「済まないな。では頼む」
「了解。それじゃあ」
早速動きはじめた。柿崎に誘われて颯爽十機程度が集まった。
「よし、今だ!」
金龍はその集まってきたSPTを見て早速動いた。
「行くぞガムリン、フィジカ!」
「了解!」
「行きます!」
二人もすぐ動く。そうしてきりもみ回転を仕掛けながらその十機に突入し派手に攻撃を乱射する。
次に変形してガウォーク、バトロイドと次々に形を変えてミサイルにガンポッドを乱射する。僅か三機で十機を取り囲んでの攻撃だが密集している為彼等はその攻撃をとてもかわせなかった。
金龍の作戦勝ちであった。こうして彼はその言葉通りSPTを屠ったのであった。
「こういうやり方でいけばいいな」
「はい」
エイジは金龍に対して頷いた。
「御願いします」
「しかし」
ここでショウが言う。
「一般市民さえ無差別に攻撃するというのならとんでもない話だよな」
「そうよねえ」
それにチャムも頷く。
「相手だけ狙うんじゃないって」
「それがグラドスなんです」
エイジは俯いてそう述べた。
「彼等はバルマーの直系で自分達が高貴な存在と思っていますから」
「おいおい、待てよ」
それにトッドが突っ込みを入れる。
「バルマーの直系つっても結局は下にいるんだろ?」
「はい」
「じゃあ何でそれで威張れるんだよ」
「嫌な話だけれどな」
ニーがそのトッドに説明する。
「そうした方が威張るものだ、人間というのは」
「んっ、待てよ」
ここでトッドも気付いた。
「あれか。軍隊で階級をかさに着るのと同じかよ」
「まあそういうところだ」
ニーはそう答えた。
「それでわかったな」
「ああ。何かすげえ嫌な奴等だな」
その感情を抱くのは実に簡単なことであった。
「グラドスか。覚えておくぜ」
「それじゃあさ、トッド」
ここでキーンが彼に声をかける。
「何だよ」
「頼むわよ、今日も」
「どんどん叩き落してくれってことか」
「聖戦士じゃない」
都合のいい言葉ではあった。
「期待してるんだから」
「そういう御前さんだってそうだろ?」
トッドはキーンに言い返した。
「かなり強くなってるじゃねえか」
「それでもトッドには負けるわよ」
意外とお世辞も上手いキーンであった。
「だからね」
「ちっ、仕方がねえな」
そしてトッドもそれに乗る。
「じゃあ。やってやるか」
「SPTはモビルスーツに近いです」
エイジがまた忠告する。
「それを考えたら」
「じゃあ楽勝ってわけだ」
それがトッドの答えであった。
「ビーム兵器なんてよ。オーラバトラーには」
「そうよね」
リムルが頷く。
「けれど。下手に受けたら」
「下手に受けなければいいんだよ」
ここでもトッドはわかりやすかった。
「それだけさ」
「じゃあトッドさん、ここは」
エイジはここではもうトッドに任せることにした。
「御願いしますね」
「ああ」
トッドは果敢にグラドス軍に突っ込んだ。そうして右に左にオーラ斬りを放つ。それだけでグラドス軍は次々とその数を減らしていった。
「幾ら動きが早くたってなあ」
トッドはグラドス軍のSPTを切り裂きながら言う。
「こっちはもっと早いんだよ!覚えておきな!」
「やるじゃない、トッド」
チャムはそんなトッドを見て声をあげる。
「じゃあさ、ショウ」
「俺もなのか」
「当たり前でしょ、元祖聖戦士なんだから」
そういうことになっていた。
「だからここでもね」
「わかったよ。それじゃあ」
困ったような笑みを浮かべてから頷いた。まずはウィングキャリパーに変形して敵陣に一直線に突き進むのであった。
「行くぞ」
「いっけえええええええ!」
チャムがコクピットの中で叫ぶ。
「必殺のオーラ斬りだあ!」
「はあああああああっ!」
まとめて敵を両断した。それはトッドのそれに匹敵する威力であった。
ショウ達の前にはSPTも敵ではなかった。彼等の他のメンバーの活躍もあり補給部隊は無事助け出されロンド=ベルはまずはそれは確保した。しかし敵はまだ戦場に残っていたのであった。
援軍も来た。だが今度は無人機ばかりであった。
「相変わらずの戦法か」
ギャブレーはそれを見て呟く。
「数で押す。それがバルマーか」
「だったらギャブレー君」
横からレッシィが言う。
「こっちもいつものやり方だな」
「その通りだ」
ギャブレーの返事は決まっていた。
「一気に倒す。それだけだ」
「ダバ!」
アムがダバに声をかける。
「あれやっちゃって!」
「よし!」
ダバはそれに頷く。そうしてバスターランチャーを構えるのだった。
「これで一気に!」
「そうよ、このまま!」
エリスが横で言う。
「撃っていいから!」
「よし!」
援軍に来たメガロート達に対してバスターランチャーを放つ。それで数機まとめて粉砕するのだった。
それを合図に敵の援軍にも攻撃を浴びせる。その中にはクォヴレーもいた。
「バルマーはやはり数で来るのか」
彼もまたバルマーとの戦いの中でわかってきたものがあった。それは彼等との戦いにおいてはかなり重要なことであった。数なのだ。
「なら」
それならばやり方があった。彼はそれに移った。
「受けろ」
ベルグバウを動かす。そうして攻撃に移る。
「エメト=アッシャーーーーーーッ!」
敵を小隊単位で狙ってきた。その狙いは的確で見事に敵を小隊単位で蹴散らした。彼はここで非凡な才能も仲間達に見せていた。
「凄いわね」
「ああ」
アラドはゼオラの言葉に頷いていた。二人はそのクォヴレーの後ろにいる。
「これだけの戦闘力があるなんて」
「それに動きもいいぜ」
見ればバルマーの攻撃を全てかわしている。それはアラド達に匹敵する程であった。
「天才ってやつか?」
「そうかも」
今度はゼオラがアラドの言葉に頷いた。
「前の戦闘でも凄かったけれど」
「そういえばよ」
「何?」
「やっぱり誰かに似てるんだよな」
アラドは首を捻りながら述べた。
「あの動きも戦い方も」
「そうね。誰かしら」
だがどうしても思い出せない。
「あのクールさと激しさは」
「どっかで見たことあるんだけれどな」
「わからないわね。そういえば」
「何だ?」
ここでアラドはゼオラに問うた。
「いえ。どうやらクォヴレーさん本当にバルマーとは関係ないみたいね」
「ああ、それはな」
それはアラドもわかった。
「SPTにも迷わずに攻撃してるし」
「確かにな」
見ればその通りだった。グラドスのSPTを今両断していた。
「けれど素性はまだわからないわね」
「何処の誰かな」
「じゃあ。まだ見ておく必要があるわね」
そうアラドに告げる。
「それでいいわね」
「俺こういうのって好きじゃないんだけれどな」
リュウセイは困った顔で述べる。
「どうにも」
「私だってそうよ」
実はそれはゼオラも同じである。
「けれど。仕方ないじゃない」
「そうか」
「そうよ」
ゼオラはまた言う。
「だからね。いいわね」
「わかったよ。それじゃあ」
「ええ。そちらも続けましょう」
アラドとゼオラはクォヴレーのフォローをしながら彼を見ていた。その間に戦いは終わり無事補給物資がゼダンに届くことになったのであった。
まずはこれでよしであった。ゼダンのロンド=ベルもほっと胸を撫で下ろした。
「さっ、セシリー」
シーブックはゼダンに戻るとすぐにセシリーに声をかけた。
「パンを焼いて欲しいな」
「わかってるわ」
セシリーはにこりと笑って彼に答えた。
「それじゃあすぐにね」
「ああ、頼むよ」
「俺も一緒にな」
「私もね」
ここでビルギットとアンナマリーも入って来た。
「たっぷり焼いてくれよ」
「美味しいパンをね」
「ちょっと二人共」
シーブックは二人もやって来たので困惑した顔になった。
「俺がセシリーと一緒にって考えてたのに」
「いいじゃない、これも」
だが当のセシリーが笑ってこう言ってきた。
「皆で食べるのも」
「それもそうか」
シーブックもその言葉で考え直した。
「じゃあそれで」
「ええ。少し待ってね」
セシリーは早速準備に入った。
「かなり多めに焼くから」
「じゃあそれまでは皆で楽しくやろうぜ」
ビルギットがこう提案してきた。
「それでいいな」
「賛成」
「それじゃあそれで」
皆も乗ってきた。何だかんだでいつもの面々が揃う。アラドとゼオラもいた。そしてもう一人もその場に連れて来ていたのであった。
「俺もか」
「だってクォヴレーさんも」
「そうですよ」
アラドとゼオラは彼の両手を掴んで連れて来ていた。
「セシリーさんのパンは最高ですから」
「それに焼けるまで時間がありますし」
「パンか」
クォヴレーはその単語に反応を見せてきた。
「ここでもパンを食べるんだな」
「お米もありますよ」
「まあ今日はパンで」
「わかった」
クォヴレーは二人のその言葉に頷いた。
「それじゃあ。俺も入れてくれ」
「どうぞ」
皆が笑顔で彼に言う。こうして彼は皆の中に入った。
その彼にアイビスが声をかけてきた。
「なあ」
「何だ?」
そのアイビスに顔を向ける。表情を変えずに。
「あんた、何が好きなんだ?」
「何が?」
「だから食べ物だよ」
そうクォヴレーに言う。
「何が好きなんだ、そちらは」
「そうだな」
何故かここで考え込む顔になるのであった。
「何だろうな」
「何だろうっておい」
これはアイビスも予想していなかった。
「ないってわけはないだろ、幾ら何でも」
「そうなのか?」
それでもクォヴレーの調子は相変わらずであった。
「そうなのかっておい」
「まあまあ」
そこにツグミが入る。
「じゃあクォヴレー君も食べてみたらいいわ」
「何を食べればいいんだ?」
「例えばこれ」
たまたま側にあったアキトのラーメンを出す。
「食べてみたらいいわ」
「わかった」
その言葉に頷き丼を手に取る。そうして食べてみると。
「これは」
「どうかしら」
「何と言えばいいのかわからない」
こう言うのだった。
「これは」
「美味しいっていうのよ」
にこりと笑って彼に告げた。
「それはね」
「そうなのか」
「これも食べるといいぞ」
今度はディアッカの作った炒飯を出す。アイビスが出していた。
「どうだ?」
「これも美味しいというのか」
「あとこれもどうだ?」
スレイは自分の側にあったクリスのサンドイッチを差し出した。クォヴレーはそれも手に取って口に入れるのであった。
「いいな」
これにもいい評価を下した。
「美味しい」
「それが美味しいっていうのよ」
ツグミはにこりと笑って彼に述べる。
「わかってくれたわね」
「ああ、いいものだな」
クォヴレーは微かにだが笑った。
「美味しいというのは」
「それじゃあクォヴレー君」
出てはいけない人間が出て来た。
「これなんかどう!?」
「げっ」
「まずい」
皆彼女を見て声をあげた。
「私が作ったジュースだけれど」
クスハであった。彼女は自分の作ったジュースを差し出していた。
「どうぞ」
「私も」
悪いことというものは実によく続くものである。ミナキは自分のお握りを差し出していた。
「召し上がれ」
「わかった」
「わかったってちょっと」
「あの、クォヴレーさん」
アラドとゼオラが慌ててクォヴレーを止める。
「もういいんじゃないかな」
「そうよね、そうよ」
ゼオラがかなり焦っていた。
「満腹しましたよね。ですから」
「いや」
しかしクォヴレーは何もわかってはいなかった。
「まだだ。エネルギー補給は万全ではない」
「よかった。それじゃあ」
「どうぞ」
二人はここぞとばかりに差し出す。クォヴレーもそれを受け取る。
「では」
口に入れる。すると。
「・・・・・・・・・」
倒れた。予想通りであった。
「やっぱりなあ」
トウマは怯えた顔で倒れ伏したクォヴレーを見ていた。
「そうなっちまったか」
「おい、担架だ担架」
アイビスが周りに言う。
「このまま放っておくわけにはいかないぞ」
「しかしよお」
ここでトウマは首を傾げて言う。
「何でアズラエルさんとか例の三人はこれ食っても平気なんだ?それどころか」
「美味しそうにねえ」
エクセレンも言う。
「食べちゃってるけれど」
「味覚が違うようだ」
キョウスケが述べた。
「彼等はな」
「そうなんだ」
「味覚だ」
皆それに納得する。
「それに身体の頑丈さが違う」
アズラエルもあの三人もそうであるらしい。
「だから平気なのだ」
「ということはつまり」
アクアはそれを聞いて述べる。
「議長も普通の人じゃないってことね」
「何か納得」
やけに納得できる話であった。アズラエルならば。
「道理で尋常じゃない人だと思っていたら」
「そういうことだったのね」
「しかしよ」
トウマは大きな謎について気付いた。
「GGGの連中ですら倒れるクスハやミナキの料理を食べて平気なんてどういうことなんだ?」
「そうだな」
ヒューゴが彼の言葉に頷く。
「普通では有り得ない」
「いや、有り得ないってものじゃ」
「ロボットよりも身体が頑丈なんて」
アラドとゼオラがそれに突っ込みを入れる。
「どういうことなんだよ」
「あの三人も。そういえば」
もう一人の超人に気付いた。
「バサラさんも」
「あの人たちどうなってるのよ」
「何気にうちって超人が多いな」
マサキもそれに気付いた。
「BF団と変わらねえんじゃねえのか?」
「お兄ちゃん、それはちょっと」
プレセアが兄に囁く。
「人間じゃない人ばかりになるわよ」
「それもそうか。しかしよお」
それでもマサキは言わずにはいられなかった。
「ここまでとんでもねえのばかり揃っていたらよ」
「そういえばシュウ様も毒は全然効かなかったわ」
サフィーネはそのことを思い出した。
「どんな毒も」
「あいつも訳わかんねえとこがあるからな」
マサキは自分のライバルをボロクソに言った。
「まあそれもありだろうな」
「世の中奇人変人が多いわね」
ミリアリアは言葉を失っていた。
「何か」
「そうだね」
トールが彼女の言葉に頷く。
「どうにも」
「それはそうとクォヴレーは大丈夫なのか?」
サイは彼を心配していた。
「あれだけの劇物を一気に流し込んで」
「危ないんじゃないかな」
カズイはそう見ていた。
「ラクスさんは平気だったけれど」
ここにも超人がいたのだった。
「まあ大丈夫だと思っておこう」
バルトフェルドはかなり強引に場を収めにかかった。
「運がよければ彼も助かる」
「運がよければ、ですか」
ダコスタがそれに突っ込みを入れる。
「またそれは」
「人間一番肝心なのはそれさ」
バルトフェルドの人生哲学であった。
「そもそも運がいいからこの世に生まれたんだしね」
「はあ」
「じゃあアンディ」
アイシャがバルトフェルドに囁きかけてきた。
「私達も運がよかったから」
「こうして巡り合えたのさ」
「皆さん御安心下さい」
ここでラクスが言う。
「クォヴレーさんは私がこの身にかえて看護致しますので」
「これはいよいよ」154
「駄目かも知れないわね」
皆ラクスの清らかな笑みを見て覚悟を決めた。何気に今生命の危機に立っているクォヴレーであった。

第十五話完

2007・10・10
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧