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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第十六話 シークレット=ミッション

              第十六話 シークレット=ミッション
    「そうか」
男は司令室で報告を聞いていた。
「刻印は問題ないのだな」
「はい」
報告をする男が彼の言葉に頷いた。
「これで我々もまた」
「うむ、ではすぐに出撃準備にかかれ」
そう指示を出す。
「わかったな」
「はい、それでは」
「そしてだ」
男は指示を出した後でまた部下に問うた。
「マーグはどうしているか」
「マーグ司令ですか」
「そうだ。軍の補充が終わったと聞いているが」
「既に地球圏に近付いているようです」
「ふん」
男はその報告を聞いて顔を顰めさせた。
「元はと言えば反逆者の息子が。方面軍司令になるなぞと」
「ギシン家の当主ですので」
「それがどうしたっ」
男の声が荒いものになった。
「それでも反逆者の息子だぞ、あの男は」
「はい、それは」
部下は怯えた声でそれに応えた。
「帝の思し召しですので」
「帝か」
何故かその言葉には畏敬といったものはなかった。
「わかった」
「はい、それでは」
「あの男に好きにさせるつもりはない」
男はあらためて言った。
「それはわかっていろ」
「無論です。そして」
「鍵だ」
男は不意に鍵という言葉を出してきた。
「それを手に入れるぞ」
「はっ、それでは」
「俺も行く」
男は告げた。
「そしてあの男も連れて行くぞ」
「あの方もですか」
「当然だ。やるからには最後までやる」
それが男の考えであった。
「それだけだ。いいな」
「了解しました。そして」
「まだ何かあるのか?」
男は部下に問うた。
「先遣隊ですが」
「全滅したのだな」
何を今更といった口調であった。
「わかっている」
「左様ですか」
「所詮無人機にグラドスの兵だ」
男は特に気も留めていなかった。
「気にすることはないぞ」
「それでは」
「うむ。今度は主力だ」
「主力ですか」
「そして最後は」
「最後は」
男の言葉に顔を向ける。男は満足そうに言った。
「俺だ」
「御意。それでは」
「マーグだけにやらせるわけにはいかん」
マーグへの敵愾心が見える。それは危険な程であった。8
「何があってもな」
「わかりました」
「バルマーの正規軍が来れば何も恐れることはない」
自身の軍に対して絶対の自信を持っていた。
「所詮マーグの軍なぞ烏合の衆だ」
「そういえば」
部下もその言葉でふと気付いた。
「マーグ司令はまだああして混成軍を率いておられるのでしたな」
「愚かな話だ」
マーグを愚かと言い捨てる。しかしそこには劣等感もこもっていた。
「あの男らしいか」
「副官のロゼ様もまた」
「所詮は植民地の女だ」
ロゼに対しても言い捨てた。
「それ以外の何者でもないな」
「左様ですか」
「左様だと」
男はその言葉に不服を感じた。
「そうではないのか」
「いえ。その通りです」
そう答えることしか許されてはいなかった。
「所詮は殖民星の生まれです」
「俺とは違う」
今度は己の出自を誇示した。
「父上の為にも」
彼はそこに何か絶対の信仰を見ていた。その信仰のままに今戦場に向かうのだった。
ゼダンで補給を受けたロンド=ベル。今のところ新しい任務はなく主に哨戒に当たっていた。
「今日も何もなしだな」
「そうだな」
シローと凱が哨戒の帰り道でそんな話をしていた。
「ラクス」
シローは一緒にいたエターナルの艦橋に通信を入れた。
「じゃあそっちに戻るな」
「わかりました」
ラクスもそれに応える。
「では艦長」
「はい」
バルトフェルドが彼女に応える。
「収容準備を」
「わかりました。それでは」
こうしてシロー達が収容される。それも無事終わった。
シローはそのままエターナルの艦橋に向かった。サンダース達も一緒である。そこであれこれと話をしていた。
「何かさ」
ミケルがその中で言う。
「新しい戦力とか来ないのかな」
「それはないだろ」
カレンがそれを否定する。
「今は何処も戦力不足だしね」
「それもそうか」
「俺達だって合流組だしな」
サンダースが述べた。
「ヘンケン隊自体がな」
「そういえばそうだよね」
ミケルはあらためてそのことに頷く。
「そのせいでロンド=ベルも大所帯になったけれど」
「ここは元々そうだけれどね」
カレンはまた言う。
「まあそれは置いておいてさ」
「新しい戦力はなしなんだ」
「だから無理だろ」
カレンはミケルに告げた。
「何処も戦力不足なのに」
「それはロンド=ベルだってそうだけれど」
実際はそうなのだ。連戦での疲弊もあり戦力が少しでも必要なのだ。
「無理なのかなあ」
「諦めろ」
サンダースは素っ気無く言った。
「俺達は随分ましな方だ」
「そうなんだ」
「そうだろうな」
シローが口を開いた。
「俺達は戦艦も十一隻あって」
「マシンの数なんて半端じゃないよ」
カレンはそれについて言う。
「それを考えたら相当なものじゃないか」
「贅沢は言えないかあ」
「今でも充分贅沢だ」
サンダースの意見である。
「これ以上の贅沢はバチが当たるぞ」
「ちぇっ」
「ようこそ」
ここで艦橋に着いた。ラクスが彼等を出迎えてきた。
「お待ちしていました」
「今日も何もなしだったよ」
シローがそうラクスに告げた。
「ゲートのところもね」
「そうなのですか。ですが」
「あ、わかっている」
シローの顔が引き締まる。
「油断はできないな」
「全滅した部隊もあったそうですしね」
ダコスタが述べてきた。
「全滅!?」
「はい、特殊部隊が一つ」
ダコスタはまたシロー達に告げた。
「謎の敵に襲われ全滅したそうです」
「バルマーなのか!?」
「詳しいことはわかりませんが」
シローの問いに顔を曇らせる。
「その可能性は高いかと」
「そうか。何時の間にゲートを使ったんだ」
「ゲートじゃないかも知れないしね」
これはバルトフェルドの読みであった。
「ひょっとしたら」
「じゃあ普通に来た連中も」
「潜伏していたかも知れない」
その左目の光が鋭くなっていた。
「破壊工作か何かの目的でね」
「だとしたら納得がいきますね」
サンダースはバルトフェルドの言葉にその顔を険しくさせた。怖い顔がさらに怖くなっていた。
「特殊部隊の全滅は」
「そうだね」
それにカレンが頷く。
「まずは自分達と同じ奴等を叩くってのはセオリーの一つだしね」
「そうだな」
「それでさ」
サンダースがカレンの言葉に頷いたところでミケルがダコスタに問うた。
「生き残りはいるの?その特殊部隊に」
「今調査中です」
ダコスタはやや事務的に答えた。
「ですが。おそらくは」
「そうか」
シローも皆もそれを聞いて顔を暗くさせた。
「それがバルマーだったら仇を取りたいわね」
アイシャが言ってきた。
「絶対に」
「そうだな。けれど相手がどこにいるのかわからない」
バルトフェルドが少し困った顔でそう述べた。
「残念なことにね。その相手の素性すらも今は」
「明日はそちらの方面の哨戒ですね」
ラクスは何気なく述べた。
「それで宜しいでしょうか」
「明日の哨戒は誰だったかな」
シローはふとそれを問うた。
「確かSRXチームとレイアースだ」
「そうか。じゃあ彼等に伝えておこう」
「それに母艦はあの三隻」
オートザムとファーレン、チゼータの三国のものである。
「あと応援でバーチャロンチームもだったかな」
「わかった」
シローはそこまで聞いて頷いた。
「それじゃあ俺が言っておく」
「御願いできますか?」
ラクスがシローに声をかけてきた。
「何でしたら私が」
「いや、それはいいさ」
シローは穏やかに笑ってそれに返した。
「どっちにしろ大したことじゃないしな」
「そうですか。それでは」
ラクスはそこまで聞いてにこりと笑ってきた。そして。
「では任務も終わりましたしお食事でも」
「うっ」
それを聞いて皆顔が凍った。
「今回は」
「まさか」
「ひょっとして」
「ケバブなんかどうかな」
だがここでバルトフェルドが言ってきたのだった。
「アイシャの作った。絶品だよ」
「何だ」
「よかった」
シロー達は楽すの料理ではないと聞いてとりあえずは安心した。
「ケバブにはやっぱりあれだね」
「ヨーグルトソースだよね」
「流石だ、わかっているじゃないか」
バルトフェルドはカレンとミケルの言葉に満足そうに笑みを浮かべた。
「どうもねえ。それがわかっていない人が多くて」
「おい」
そう言った途端にモニターにカガリが姿を現わした。
「それは一体誰のことだ?」
「うん、それはね」
「御前のことに決まってるだろうが」
急にモニターが半分になってそのもう半分にシンが出て来た。
「そんなこともわからねえのかよ、このメスザル」
「何ィ、猿だとお!?」
またシンが言わなくていいことを言った。
「貴様!よりによって!」
「ケバブにはタバスコに決まってるだろうが!」
シンの意見であった。
「チリソースなんて邪道だ!」
「それは同意だけれどねえ」
バルトフェルドはそれは納得する。
「しかしタバスコというのもどうにも」
「御前みたいな味のわからない奴が国家元首かよ!」
「私はグルメだ!」
カガリはそう反論する。
「御前みたいにステラやマユの手料理だけで充分な奴とは!」
「ステラもマユも料理は天才的だ!」
完全にシンの主観による言葉だ。
「御前のガサツな料理と一緒にするな!」
「私だってな!」
二人はモニターで喧嘩をしていた。シロー達はそれを呆然として見ている。
「あいつ等どうやって喧嘩しているんだ?」
「乗っている船は違うのによくもまあ」
見ればカガリの背景はクサナギの艦橋だ。シンはミネルバである。二人はそこから互いをけなし合っているのだ。実に奇妙な光景であった。
「ちゃんと料理はできるぞ!」
「だったらいいんだけれどねえ」
「全くです」
そのカガリの後ろからユウナとキサカがぼやく。トダカも一緒だ。
「せめて女の子らしく育って欲しかったです」
「御前等!!」
カガリはその三人の方を振り向いて叫ぶ。
「せめてフォローはしろ!」
「いや、嘘はいけないし」
「そうです」
こんな時だけは正直な三人であった。
「ですからここは抑えてだね」
「もう少し国家元首としての」
「くっ」
それを出されては黙るしかないカガリであった。
「わかった」
「それでね、シン君」
「君もだね」
ユウナとトダカがシンにも注意する。
「もう少し大人になって」
「確かにカガリ様の料理はあれだが」
「まだ言うのね。それ」
タリアがシンの後ろで呆れていた。
「そんなにまずいの」
「少なくとも外見は」
アーサーがそうコメントする。
「かなりのものです」
「それでも食べられるのね」
「最近は」
「けれど酷いのは事実だろ?」
シンもシンで言う。
「あんなとんでもないものよお。そりゃクスハのジュースに比べたら」
「美味しいじゃないですか」
アズラエルが参戦してきた。
「僕はクスハ君のジュースをいつも楽しみにしているんですがね」
「あんた、本当に普通の人間なんだろうな」
シンはアズラエルにも突っ込みを入れた。
「前から凄い気になっていたんだが」
「普通ですが」
「そうか?」
カガリもそれには甚だ懐疑的であった。
「本当にニュータイプとかSEEDとかじゃないよな」
「いえ、全然」
少なくとも本人はそうコメントする。
「言っておきますが強化されてもいませんし超能力もありませんよ」
「そうなのか?」
「怪しいな」
カガリもシンもそれは信じてはいない。
「そういえばラクスさん」
「はい」
ラクスはにこやかにアズラエルに応える。
「また貴女の手料理を」
「喜んで」
「ううむ」
コーディネイターのバルトフェルドも今回ばかりは言葉がなかった。
「ひょっとしたら案外人が人を超えるっていうのは簡単かも知れないねえ」
「同感ですね」
シローが彼に答える。
「あの料理を好き好んで食べられるなんて」
「俺もあれだけは駄目だ」
凱が来ていた。真顔で述べる。
「サイボーグだった時でもな」
「そうなのですか、隊長」
ボルフォッグもいた。彼の言葉に顔を向ける。
「倒れた」
「私もです」
「おい、ロボットもって」
「何だよ、それ」
サンダースとミケルはそれに大いに驚く。
「どっちにしろあれは戦略兵器さ」
カレンもラクス細大の武器の脅威は知っていた。
「BF団だろうがマスターアジアだろうが倒せるだろうね」
「するとですね」
その言葉にダコスタが突っ込みを入れる。
「アズラエルさんとオルガ君達はガンダムファイター以上の超人になるんですが」
「かもね」
しかもカレンはそれを否定しない。
「ひょっとしたらね」
「ううむ。世の中は広い」
「そうだねえ」
バルトフェルドもそう言うしかない。
「全く以ってね」
「あとですね」
アズラエルはふらりと言う。
「援軍が来るそうですよ」
「援軍!?」
シローは援軍と聞いて声をあげた。
「もう何処にも余裕はなかったんじゃ」
「統合ですよ、所謂」
アズラエルは彼にそう説明する。
「第一特殊部隊との合流です」
「第一特殊部隊!?」
ユウナがそれを聞いて声をあげた。
「というとあれかな」
「そうですね」
キサカが彼に応える。
「クロガネにヒリュウ改の二隻の戦艦を主軸として構成されている」
「確か連邦軍の開発した特殊マシンばかり集まっていると聞いているけれど」
「そうなのか」
カガリはそれを聞いて声をあげる。
「そんな部隊があったのか」
「あったのかってねえカガリ」
ユウナはまた彼女の言葉に呆れた顔になる。補佐役も大変である。
「前に資料を渡したじゃない」
「そうだったか?」
そんなことは完全に忘れていた。
「覚えていないぞ」
「やれやれ。いつものことだけれど」
「困ったことです」
ユウナもトダカもこれには呆れる。当然キサカも。
「とにかくね。彼等も凄い戦力だよ」
ユウナはそうカガリに説明する。
「正直に言って有り難いよ。これからの戦いが楽になる」
「そうなのか。そんなに」
「これでカガリがもう少し大人しくなれば」
「おいっ」
これにはすぐに突っ込みを入れる。
「結局それかっ」
「おっとと、これは失言かな」
「いつも失言していません?」
アズラエルがユウナに突っ込みを入れる。
「何か」
「まあ気のせいです」
「しかし。第一特殊部隊が」
タリアもそれを聞いて真剣な顔になっていた。思案に耽る顔であった。
「大きいわね。本当に」
「そうですね」
それにアーサーが頷く。
「これで九一三番の奴が来ても怖くありません」
「前から気になっていたけれどアーサー」
「はい」
タリアは怪訝な顔でアーサーに声をかけた。彼もそれに応える。
「その九一三番の人って誰?随分怖がっているけれど」
「私の天敵ですよ」
彼は怯えた声で答える。
「それも恐ろしい」
「恐ろしいねえ」
タリアにはよくわからない話であった。
「確か仮面被ってサイドカーに乗っていたかしら」
「御存知なんですね」
「まあね」
ヤマが当たった。まさかと思ったのだが。
「彼ね。どういういきさつでそうなったのか知らないけれど」
「色々ありまして」
アーサーの顔が強張る。
「何かことあるごとにやられています」
「そういえば彼は二回死んでるのに」
「二回目は灰になっていましたよ。それなのに」
何故生きているのかと。忌々しげに言うアーサーであった。
「全く。世の中訳のわからない奴が多過ぎます」
「それはわかるわ」
タリアも今の言葉には納得した。
「BF団もそうだったしね」
「あの連中本当に壊滅したんでしょうか」
「そう思いたいわ」
これは皆が思う願望であった。
「またプラントを宇宙空間から攻撃されたらたまったものじゃないから」
「ですね」
また直系の怒鬼のことを思い出す。
「あの時は我が目を疑いましたよ」
「私もよ」
「また彼等の話なんですね」
アズラエルは黙ってその話を聞いていたがこうコメントしてきた。
「話が尽きませんねえ」
「それはアズラエルさんも同じじゃないですか?」
アーサーはこう彼に返してきた。
「あれでしたよね。そちらは」
「思い出したくもありません」
顔を強張らせての言葉であった。
「基地があっという間に崩壊でしたから」
「そうでしたね」
「何であんな奇人変人が来たのか」
彼は今でも納得していない。
「正直あれを見たらどんな人間でも普通に見えます」
「ですね」
タリアが彼の言葉に頷く。
「あれを見たらとても」
「何か世の中って広いんだな」
シンはしみじみとそれを感じていた。
「ステラみたいな可愛い娘もいればカガリみたいなのもいて」
「おい、またか」
またカガリが怒る。
「私は何なんだ」
「そんなに気にすることないから」
「そうです。さあカガリ様」
ユウナとキサカがそっと二人を後ろにやる。
「マユラ達が呼んでいますよ」
「ガンダムの整備で」
「ああ、わかった」
まだ何かと気に障っているがそれを収めることにした。
「じゃあな。すぐに戻るからな」
「すぐに戻らなくていいから」
「ささ、ごゆっくり」
二人はそのままカガリをトダカに渡して格納庫の方に案内させた。そうして残ったのはとりあえず話のできる面々であった。シンもメイリン達により格納庫に連れて行かれていた。
「騒がしいのがやっといなくなりましたね」
「それ言うとまた二人共来るわよ」
タリアはアーサーにそう返した。
「話が出たら来るんだから」
「そうでした、失礼」
「それでね」
何はともあれ話をする。それは合流する部隊についてであった。
「戦艦二隻が加入するのは大きいわね」
「そうですね。確かに」
ユウナはタリアのその言葉に頷いた。
「それもかなり」
「今の戦力でもかなり辛くなるのが予想されていたし」
タリアは言う。
「二隻も入ってくれるのが嬉しいわ」
「しかも強力なマシンとパイロットまで」
ユウナにとってはそこも有り難かった。
「嬉しい限りです」
「そろそろゼダンの設備も復旧していますしね」
アズラエルはそこも見ていた。
「彼等が入っても補給はいけます」
「いいことづくめですね」
アーサーは能天気にそう述べる。
「これでロンド=ベルはさらに強くなって」
「といきたいけれど」
「じゃあまた」
「油断は禁物よ」
タリアの言葉は厳しかった。
「いいわね」
「は、はい」
「まあそれでもね」
背筋を伸ばすアーサーだったがユウナはあえて楽天的に述べてみせた。
「仲間が増えるってのはやっぱり有り難いね」
「カガリ様が増えるかも知れませんが」
「シン君も」
「ねえ君達」
考えたくもないことを言うキサカとトダカにうんざりした顔を向けて述べる。
「不吉な未来は考えないでおこうね」
「そうですが」
「今までのパターンでいくと」
「流石にそれはないよ」
ユウナは殆ど自分に言い聞かせていた。
「多分ね」
「多分ですか」
「不確実でもね。あんなのがそうそういたら困るよ」
自分の国の国家元首をボロクソに言う。なおユウナとカガリは幼い頃から知っている仲である。
「そうじゃないかい?」
「ごもっともです」
「ではここは」
「そうだね。ブライト艦長やアムロ中佐が増えることを願おうか」
「ユウナさん」
流石に今の言葉にはタリアも呆れた。
「それは幾ら何でも贅沢では」
「何。願うのはただですから」
商業国家でもあるオーブ人らしい言葉であった。
「それはそれでいいではありませんか」
「はあ」
「ささ、タリア艦長も」
タリアにもそれを勧める。
「ここは願われて」
「わかりました。それでは私は」
それにつられて彼女も願うのであった。
「美少年が増えますように」
「そちらですか」
「はい」
案外彼女もロンド=ベルに染まっていた。にこりとした笑みがそれであった。
ロンド=ベルの面々がそんな話をしているその頃。ゼダンに二隻の戦艦が向かっていた。武骨な白い戦艦と流麗な赤い戦艦が。
「副長」
白い戦艦の艦橋で厳しい髭の老人が若い男に声をかけていた。
「ゼダンまでもうすぐだな」
「はい」
副長であるテツヤ=オノデラがそれに応える。彼はこの戦艦シロガネの副長である。応えると共に問うて来た艦長であるダイテツ=ミナセを見るのであった。
「あと少しです」
「そうか」
ダイテツはそれを聞いてまずは頷いた。
「あのロンド=ベルに合流するとはな」
「思いも寄りませんでしたが」
「だがこれも縁だ」
ダイテツはパイプを口にしてそう述べた。
「ならばそこで戦わせてもらおう」
「そうですね」
「レフィーナ艦長」
「はい」
モニターに赤い髪の美しい女が出て来た。
「それでいいな」
「私は是非共です」
ヒリュウ改の艦長であるレフィーナ=エンフィールドもそれで異存はなかった。
「あのロンド=ベルに入れるなんて夢みたいな話ですから」
「そうですな」
ヒリュウ改の副長であるショーン=ウェブリーがレフィーナの言葉に頷く。
「最初に話を聞いた時はまさかと思いました」
「全くです」
それにテツヤが応える。
「まさか我々が」
「だから縁なのだよ」
ダイテツはまたそれを言う。
「二隻の戦艦と二十機の特殊マシン」
「ええ」
「それが必要とされているということだ」
「それはやはり大きいですか」
「やっぱり大きいと思いますよ」
シロガネの艦橋にいる若い兵士が話に入ってきた。彼の名をエイタ=ナガタという。シロガネの艦橋クルーの一人である。
「我々もこれまでの戦いでかなりの戦果を挙げていますし」
「それもあるか」
「はい、そうかと」
またテツヤに答える。
「それに今は戦力を集中して敵にあたりたいそうですし」
「そうだな」
ダイテツは彼の話に頷く。
「今は少しでもな。戦力を集結させ来たるべき大きな戦いに備えるべきだ」
「大きな戦い。まさか」
「それは言うまでもないと思うが」
レフィーナにそう返す。
「あのバルマー、そして宇宙怪獣とな」
「だから彼等もまた」
「そうだ、いるのだ」
ダイテツは彼等という言葉に反応したのだった。
「この時の為にな」
「彼等にしてみれば復帰ですね」
ショーンはそう表現する。
「ロンド=ベルへの合流は」
「古巣というわけですね」
エイタはそう表現する。
「つまりは」
「そうだな。やはり縁か」
「この縁もまた何かの運命ですかな」
ショーンはふと運命論を出してみせた。
「若しかすると」
「かも知れん」
ダイテツもそれを肯定する。
「ひょっとすればな」
「そうですか」
「ではその運命に向かうとしよう」
ダイテツは話を締めて述べた。
「それでいいな」
「はい」
「それでは」
「待って下さい」
だがここでヒリュウの艦橋が騒がしくなった。
「どうしたのですか?」
「レーダーに反応です」
「十二時の方から」
ヒリュウの艦橋クルーであるラージュ=モントーヤとミズホ=サイキが言う。
「敵か!?」
「おそらくな」
ダイテツはテツヤの言葉に応える。
「この反応・・・・・・バルマーです」
「やはり」
ミズホの言葉に目を鋭くさせる。
「では総員出撃だ」
「はっ」
こうして戦闘に入る。すぐに二隻の戦艦は戦闘態勢に入りそこからマシンを出していく。すぐに二十機程のマシンが宇宙に姿を現わした。
「早速お出ましかよ」
黒人の青年ジャーダ=べネルディが悪態めいて述べる。
「相変わらず神出鬼没だな」
「わかってることは言わないの」
赤毛の女ガーネット=サンディがそれに突っ込みを入れる。
「これ位最初から予想していたでしょ?」
「まあな」
ジャーダもそれは否定しない。
「奴等のパターンだしな」
見れば彼等はヒュッケバインマークスリーに乗っていた。見ればジャーダのは青、ガーネットのそれは赤にそれぞれカラーリングされている。
「今更言うまでもねえってか」
「そういうことよ」
「動きもパターン通りです」
変わったシルエットのアーマードモジュールから声がした。紫の髪の少女がそこにいた。
「恐れることはないかと」
「わかったわ、ラトゥーニ」
ガーネットはその少女ラトゥーニの言葉に応えた。
「じゃあそういうことでね」
「はい、御願いします」
「よおシャイン」
ジャーダはガーネット、ラトゥーニと共に自分と小隊を組んでいる金髪の少女に声をかけた。見れば彼女はラトゥーニと色違いのマシンに乗っている。
「それでいいよな」
「はいっ」
この少女の声はラトゥーニのそれと比べてはきはきしていた。
「御願いします」
「わかった。じゃあまた一緒に突っ込むぜ」
「それでいいわね、シャイン」
ガーネットが彼女の名を呼ぶ。彼女の名はシャイン=ハウゼンという。
「はい」
「よし。じゃあ俺達はそれでいくぜ」
「わかった」
何か普通のものとは違うゲシュペンストマークツーから返答が来た。
「では私もな。それでいい」
「わかったぜ」
「それで」
金髪碧眼で気の強そうな女とインド人のような黒い肌と目の少女が彼の言葉に頷く。そしてもう一人も。
「御願いします」
「カチーナは上だ」
ギリアムは金髪の女カチーナ=タラスクに言う。紫のヒュッケバイン008Lに乗っている。
「わかった」
「ラーダは後方からだ」
「わかりました」
その黒い肌の少女ラーダ=バイラバンは頷く。砲撃用のジュッツバルトにいる。
「ラッセルはフォローだ」
「了解」
最後に戦闘機であるシュヴェール改に乗るラッセル=バーグマンが頷いた。
「私は下だ。それでいいな」
「じゃあさ」
黒人の威勢のよさそうな少女が右肩に砲のあるランドグリーブ=レイブンというマシンから仲間達に告げる。
「いつものフォーメーションでいくよ」
「ああ」
ラーズアングリフ=レイブンからまず返事が返って来た。
「わかった。じゃあそれでな」
「いいわねリオ、リョウト」
黒人の少女は次にヒュッケバイン二機に声をかけた。それぞれガンナーとボクサーになっている。
「それで」
「ええ」
「わかったよ」
リオ=メイロンとリョウト=ヒカワがその少女リルカーラ=ボーグナインに応えた。
「それでいきましょう」
「じゃあ僕がまた」
「行くか、リョウト」
ラーズアングリフのユウキ=ジェグナンがリョウトに声をかけてきた。
「社長の御命令でな」
「うん」
「いつも通りちゃきちゃき行くわよ」
カーラは陽気に告げる。
「敵が来たっていつもなんだから」
「そういえばいつもこんな感じだね」
リョウトはふと思い出したように述べる。
「バルマー戦役の頃から」
「もうすぐあの頃と完全に一緒になるのね」
リオは少し感慨深そうに述べた。
「ロンド=ベルに戻ってね」
「そうね」
カーラはリオのその言葉に頷く。
「あの頃と完全に一緒なのよねえ」
「クスハ達どうしてるかな」
リョウトはクスハ達を思い出した。
「元気にしてるかな」
「ああ、そうらしいぜ」
それにユウキが答える。
「それもかなりな」
「かなりなのね」
リオはそれを聞いて機嫌をよくさせた。
「それは何よりね」
「じゃあさ。早く合流して」
リョウトが告げる。
「また楽しくやろうよ」
「それならばだ」
オウカが皆に述べる。
「わかっているな」
「了解」
「敵を退けて」
「フォーメーションを堅持しろ」
オウカはまた皆に告げる。
「いつも通りだ。いいな」
「はい」
「それじゃあ」
一同動く。そうして二隻の戦艦を軸に迎撃態勢に入った。
「いいか」
ダイテツが一同に告げる。
「円陣で守れ」
「円陣ですか」
「そうだ。そうしてまずは守り切る」
そのつもりであった。
「暫くしたらロンド=ベルが援軍に来てくれるそうだ。それまでな」
「わかった」
アンジュルグに乗るラミア=ラヴレスがそれに頷いた。
「それまで守りますです」
「ラミア」
そのラミアのソウルゲインに乗るアクセル=アルマーが突っ込みを入れてきた。
「何でありますでしょうか」
「御前、変だぞ」
「変!?私が」
「ああ」
そう彼女に告げる。
「言葉の使い方がな」
「そうなのか」
「というか敬語になってないぞ」
彼はそこを指摘する。
「だからな。無理に使うより」
「わかった」
すぐにそれに答えて頷く。
「普通にだな」
「そう、それだ」
「全く」
ビルトラプターのカイ=キタムラは微妙な顔を浮かべていた。
「またおかしなことになっているな」
「まあまあ」
それにタクス=シングウジが言う。彼はジガンスクード=ドゥロに乗っている。
「それはいいっこなしってことでさ」
「仕事を優先させるのか」
「そういうこと。それがロンド=ベルなんだろ?」
「そして第一特殊部隊」
カーラも言う。
「気楽にね、気楽に」
「全く。どうにもこうにも」
カイはまだ言いたい感じであった。
「まあいい。仕事はしろ、いいな」
「わかってますって」
「お任せあれ」
タスクとカーラはそれでも相変わらずであった。
「いつも通りやるからさ」
「隊長も頑張ってよね」
「わかっている」
カイは真面目に答えた。
「それはな」
「では御願いします」
レフィーナも言う。
「五分持てばそれで来てくれるそうですから」
「あれっ、たった五分なの」
リオは意外といった顔を見せてきた。
「それだけで」
「いや、それって結構辛いよ」
心配性のリョウトは逆に考えていた。
「五分も持ち堪えないと、僕達だけで」
「だから円陣なのだ」
オウカはそれをまた告げる。
「わかったな」
「はい」
それに頷く。そうしてバルマー軍を迎え撃つのであった。
「対マシン砲撃だ!」
「はい!」
エイタがテツヤの言葉に応える。
「ではすぐに!」
「急げ!」
艦長にかわって告げる。
「敵は待ってはくれないからな!」
「了解!」
「だが落ち着け」
ダイテツは艦橋に座りながらそう指示を出す。彼は冷静であった。
「それはいいな」
「はい」
テツヤもそれはわかっている。実際に彼は冷静であった。
「だからこそ」
「うむ」
またダイテツは頷く。
「わかっていればいい。照準は的確にだ」
「はっ」
「落ち着いていきましょう」
レフィーナも落ち着いた様子であった。
「敵の数が多くても」
「防御はどうされますか」
ショーンがその彼女に問う。
「敵の攻撃には」
「それはあまり意識しなくていいです」
穏やかな顔で大胆なことを平気で告げる。
「こちらにはあまり来ませんから」
「そうなんですか!?」
今の言葉はミズホにとっては大胆と言うにもまだ有り余るものであった。
「そんなまた」
「私達はあくまで弾幕です」
しかし彼女はそれでも同じ様子であった。
「ですから」
「そうですか」
「マシンの援護に専念します」
そうしてまた言う。
「それでいいですね」
「はっ」
ラージが応えた。
「それではそのように」
「はい」
「来たわよ!」
ガーネットが叫んだ。
「うようよとあちこちから」
「それはもうわかってることだしな」
ジャーダは平気な顔を見せている。
「今更言いっこなしだぜ。なっ、ラトゥーニ」
「はい」
「シャインもな」
「わかっています」
二人はそれぞれジャーダの言葉に答えた。
「そういうことだ。ほら、いよいよだ」
話をしている間にさらに迫ってきていた。
「来たぜ来たぜ」
「照準はもういいわよ」
ガーネットは既に何機もまとめてロックオンしていた。それを知らせる音がコクピットの中で聞こえる。
「何時でもね」
「じゃあ撃つぜ!」
ジャーダが叫んだ。
「俺もな!」
「まずは正面から派手に!」
ガーネットがスラッシュリッパーを投げた。
「切り裂いてね!」
「おらおらっ!」
ジャーダはビームを乱射する。それで忽ち数機が消え去ったのであった。
これを合図として戦いになる。迫り来るバルマー軍は彼等の円陣の前に進めなくなっていた。
「何だ、こいつ等」
ユウキは攻撃を浴びせながら呟いた。
「あまり大したことはないな」
「まあ今は無人機ばかりだしね」
カーラが彼に応える。
「こんなもんでしょ」
「そうか」
ユウキはそれに納得するのであった。
「じゃあ余計に」
「どうするの?」
「派手にやるか!」
そう言って攻撃の速度を速くしてきた。
「撃墜数じゃ負けないぞ!」
「何言ってるのよ!」
それにカーラも乗ってきた。
「またあたしが勝つんだからね!」
「今度は俺が勝つ!」
だがユウキも負けてはいない。
「負けてたまるかよ!」
「こっちこそ!」
「あの、ちょっと二人共」
リョウトは熱くなる彼等に声をかけた。
「あまり熱くは」
「いいじゃない、別に」
それに応えるのはリオであった。
「どうせ戦いだし」
「だから戦いだから」
リョウトは彼女にも言う。
「軽率なことは」
「大丈夫よ」
リオの今の言葉は一見すると軽率なものであった。
「あの二人ならね」
「そうかなあ」
「それよりもリョウト」
今度はリオが彼に声をかけてきた。
「何?」
「私達も競争しない?」
にこりと笑ってこう提案してきたのだった。
「競争ってまさか」
「そう、そのまさか」
笑顔はそのままである。
「それでいいかしら」
「そんなのはやっぱり」
だがリョウトは渋る顔であった。
「よくはないよ」
「そんなこと言うから面白くないんじゃない」
「けれどさ」
二人は言い争いになりだした。
「結局は」
「こら、二人共」
オウカがそんな二人に声をかけてきた。
「あっ、はい」
「すいません中佐」
「わかっていたらだ」
そうしてまた二人に声をかける。
「そちらにも敵が集中している。的確に対処しろ」
「はい。それじゃあ」
リオはその敵達を見ながらすぐに動きだした。そうしてまたリョウトに声をかける。
「いい、リョウト」
「うん」
今度は彼も普通に言葉を返す。
「私が前に出るから」
「僕が支援だね」
「ええ、それで御願い」
ボクサーとガンナーの適正を見極めての判断であった。
「仕掛けていくわよ、ヒュッケバインの機動力でね」
「うん」
二人もそれで覚悟を決めた。戦いはさらに激しさを増し敵の攻撃はまるで台風のようであった。その中で二機のマシンが舞っていた。
「いいですか、ラウルさん」
「フィオナ!」
ミズホとラージがそれぞれヒリュウから指示を出していた。見ればそこには二機のエクサランスがある。
「そのまま前に」
「フィオナは左だ」
エクサランスのパイロットに指示を出していた。
「それでいけます」
「いいぞ、そのままだ」
「わかった」
「わかりました」
エクサランスのコクピットから返事が返る。そこには双子の兄弟がそれぞれ乗っていた。
「前か」
「左でしたら」
ラウル=グレーデンとフィオナ=グレーデン。二人はそれぞれのマシンを駆っていたのだった。二人はそれぞれ独特の動きで前と左の敵に攻撃を浴びせる。
「はい、その調子です!」
「いいぞ!」
ミズホとラージはまた言う。
「そうして倒していけば」
「いい。いい感じだ」
「わかった。しかしな」
「どうしたんですか?」
ミズホはラウルの言葉に目を止めた。
「レーダーには何も」
「いや、いるぞ」
彼は不意にこう言い出したのだった。
「バルマーの後ろに。何だ一体」
「艦長」
ラージはそれを聞いてレフィーナに声をかけた。
「バルマー軍の後方に何かいるようですが」
「バルマーの」
「はい。何か見て頂けますか」
「わかりました」
レフィーナもそれに頷く。そうしてレーダーの有効範囲と精度を最大限にしてみた。
すると何かが引っ掛かった。これは。
「何でしょう、これは」
彼女はすぐにショーンに問うた。
「やや小型のマシンがバルマー軍に近付いていますが」
「そうですな」
ショーンもレーダーを見ていた。そうして艦長に応える。
「間違いなくいます。ですが」
「バルマー軍に向かっていますね」
「少し。様子を見ますか」
それがショーンの判断であった。
「ここは」
「はい」
レフィーナもそれに頷いた。
「そのように。それでは」
「とりあえずはそのまま目の前のバルマー軍に集中してくれ」
ショーンはあらためて皆にそう指示を出した。
「それでいいか」
「了解」
ラウルが答えた。
「じゃあそういうことで」
「わかりました」
フィオナも続く。彼等は今のところはそのまま円陣で戦うのであった。
その謎のマシンは。遂にバルマー軍の後ろまで来ていた。
「さあて、やるわよ」
そこには赤い髪の女がいた。はっきりとわかる美女である。しかもかなりプロポーションがいい。
「敵討ちね」
「はいです」
コクピットに一緒にいる小さなロボットが彼女に応えた。
「セレーナさん、それで」
「一気にいくわよ」
その美女セレーナは一気に突っ込むつもりであった。実際にそうしてきた。
「相手が相手だしね」
「けれどセレーナさん」
「何、エルマ」
セレーナはエルマを名前で呼んだ。
「ここにはあのマシンは一機もいないようですね」
「そうね」
セレーナもそれに頷いた。
「いつも通りの部隊みたいね」
「じゃああれは一体何なんでしょう」
「さあ」
「さあって」
エルマはセレーナの答えがとぼけていたので呆れてしまった。
「無責任な」
「じゃあいきなり襲われてはいわかりましたってあるの?」
そうエルマに問い返す。
「それはないわよね」
「ええ、まあ」
エルマもそれは認める。
「普通はないですよね」
「そうよ。けれどバルマーなのには変わりないから」
「やるっていうことですね」
「さあ、覚悟なさい」
その流麗な目に剣呑なものが宿った。本気であった。
「バルマーには大きな借りができたから」
「敵、気付きました」
ここでエルマが告げる。
「何機か来ます」
「好都合ね」
それがセレーナの返事であった。
「やってやるわよ。さあ」
動きを止めず一気にその数機を屠った。ブーメランによって。
その攻撃は第一特殊部隊からも見えていた。テツヤがそれを見て言う。
「味方なのか?」
「少なくともバルマー軍を攻撃していますね」
エイタはそう答える。
「だとすると」
「いいかしら」
ここでそのセレーナから通信が入った。
「むっ!?」
「あのマシンからです」
「こちらセレーナ=レシタール」
「セレーナ=レシタール」
テツヤはその名前に眉を動かした。
「確か。第四特殊部隊のエキスパートの一人だったな」
「あら、知っていたの」
「ああ。だが第四特殊部隊は確か」
「・・・・・・そうよ」
不意にセレーナの声が曇った。
「全滅したわ。私以外はね」
「そうか。そうだったな」
「それでね。マシンを一機持って来たのだけれど」
「そのマシンですね」
エイタがセレーナに問うた。
「その赤いマシンですね」
「ええ。ASアレグリアス」
マシンの名を紹介した。
「覚えておいてね。いいわね」
「わかりました」
「それでレシタール少尉」
「セレーナでいいわ」
自分から言ってきた。
「何かしら」
「何故こちらに来たのか」
テツヤが知りたいのはそれであった。
「よかったら教えてくれるか」
「ロンド=ベルのところに行くつもりだったのだけれど」
「ゼダンにか」
「ええ。どうやら貴方達もそうみたいね」
「ああ」
テツヤはその問いに対してこくりと頷いた。
「そうだ。我々はこれからロンド=ベルに合流する」
「そのつもりなんですけれど」
「わかったわ」
セレーナはその言葉に頷いた。
「それじゃあ道は同じね。だったら」
「合流してくれるか」
「勿論」
明るい言葉を返してきたのであった。
「そういうことでね。じゃあ仕掛けるわよ」
「はいっ」
エイタが応えた。
「御願いします。こちらも大変ですから」
「わかったわ。あらっ」
ここでセレーナはまた声をあげた。
「どうしました?」
「何か来たわよ」
「あっ、そうですね」
エイタもレーダーを見て応える。
「ええと、これは」
「間に合った!」
レイアースから声がする。光がそこにいた。
「海ちゃん、風ちゃん、皆無事だぞ!」
「よかった、一時はどうなるかと思ったわ」
「本当です。皆さん御無事で何よりです」
レイアース達と三隻の戦艦であった。バーチャロン達も一緒である。
「よおおおっし!見事救援成功!」
「行くぞ」
ハッターとチーフがそれぞれ言う。
「じゃあ行くわよライちゃん」
「何時の間にその仇名に?」
ライデンはそうフェイに突っ込みを入れる。
「初耳だが」
「男は細かいことは気にしないの」
フェイはいつもの調子で述べる。
「いいわね、それで」
「よくわからないがわかった」
「ランティス、それじゃあ」
「うむ」
ランティスはプリメーラの言葉に頷いた。
「行くぞ」
「ええ」
「第一遊撃隊だったな」
チーフが通信を入れてきた。
「うむ」
ダイテツがそれに応える。
「そうだ」
「わかった」
お互い静かな様子でやり取りをする。
「話は聞いている。ロンド=ベルに合流するのだな」
「そうだ。だが今は」
「今から救援に向かう」
「おらおらっ!雑魚に用はないんだよっ!」
「どいてどいて」
言っている側からハッターとフェイがバルマー軍に派手な攻撃を浴びせていた。
「それでいいな」
「頼む」
それを背景にしてチーフとダイテツのやり取りが続けられる。
「それでな」
「敵の援軍ではないな」
ライデンはセレーナノアレグリアスを見て呟く。
「どうやら」
「連邦軍よ」
セレーナはそうライデンに返した。
「私も入れてもらうから」
「あれっ、貴女もなのか」
光はセレーナを見て言うのだった。
「第一特殊部隊の」
「それが違うのよ」
だがセレーナは光に笑って言葉を返した。
「別の部隊から来たのよ」
「別の部隊?」
何故かそれを聞いた光の頭に猫の耳が生えた。
「そうだったのか」
「詳しい話は後でね。それにしても」
「何だ?」
「貴女随分と可愛いわね」
「そ、そうか?」
言われて悪い気はしない光であった。
「何かそう言われると」
「将来は凄い美人になるわよ。ご両親と神様に感謝しなさい」
「わ、わかった」
「そちらの御二人もね」
海と風にも言う。
「声もいいしね」
「有り難う」
「有り難うございます」
海も風もにこりと笑って言葉を返す。
「何か美少女見ていたらやる気出て来たし。頑張るわよ」
「セレーナさんって女の子好きだったんですか」
「おかしいかしら」
そうエルマに問い返す。
「別にやましいことはないわよ」
「はあ」
「さあ、じゃあかかるわよ」
セレーナの動きは早い。一瞬だがレーダーから消えた。それを見てザズが言う。
「あのマシンかなりステルス機能が高いね」
「そんなにか」
「うん、今レーダーから消えたよ」
そうジェオに答える。
「動きも早いし。これは」
「頼りになりますね」
イーグルはそこまで聞いてにこりと笑った。
「有り難い新戦力ですね」
「そうじゃな」
それにアスカが頷く。
「戦艦も二隻は入る。楽しいことになってきおったわ」
「あの、アスカ様」
そのアスカにサンユンが問い掛ける。
「何じゃ?」
「楽しいといいますと」
「遊び相手が増えるではないか」
やはりそういうことであった。
「善き哉善き哉」
「そういう問題じゃないんですけれど」
「とにかくですな」
シャンアンがここで言う。
「戦力の充実は有り難いことですぞ」
「そら当然や」
タータの関西弁が聞こえてきた。
「ようさんおってくれるにこしたことはないわ」
「タータも寂しがり屋さんですし」
「姉様」
何故か姉に言われると弱いタータであった。
「うちは別にそういうことで言うてるわけやなくて」
「あら、隠さなくてもいいのよ」
やはりぼけられた。
「タータは優しい娘だっていうのはわかってるから」
「何か。ちゃう思うけど」
「さあさあ、優しく仲間を助けにハリアップだぜ!」
「ハッちゃん、言葉が変」
すぐにフェイから突込みが入る。
「モニカさんみたい」
「おいおい、俺はそんなに文法が変かよ!」
「そうだな、おかしい」
チーフも実に容赦がない。
「言葉の再教育も必要か」
「兄弟!それが心の友に言う言葉かよ!」
「それはそうとだ」
話が収まらないと見てライデンが収めにかかった。
「戦いに行くぞ。いいな」
「おっと、そうか。それなら!」
いきなり帽子を飛ばす。それで敵を切り裂いて彼等の戦線への参加としたのであった。
戦いは順調に進んでいた。第一特殊部隊の強さもさることながらやはり援軍の存在が大きかった。とりわけセレーナは一機でもかなりの戦力であった。
「もう貴方は私の虜」
さながら忍者の動きを見せて戦場を駆る。そうして次々と敵を屠っているのだった。
その圧倒的な強さもありバルマーを倒していく。だがここでセレーナの動きが突然止まるのであった。その理由は思わぬところにあった。
「あれっ!?」
「どうしたんだ一体」
皆それに気付く。そしていぶかしむのだった。
「セレーナさん」
エルマも彼女に声をかける。
「どうしたんですか、急に」
「来たわ」
セレーナはその目を鋭くさせて述べるのだった。
「あいつが」
「あいつ!?」
「一体何の話をしているんだ?」
今戦場にSRXチームが到着していた。リュウセイが話を聞いていぶかしんでいた。
「あいつだの何だのって」
「そもそもだ」
ライがここでセレーナに気付いた。
「あれはアレグリアス。どうしてここに」
「アレグリアスっていうとあれか」
リュウセイもアレグリアスのことは知っていた。ロボットマニアとして。
「第四特殊部隊の特別マシンだよな」
「そうだ。だがあの部隊は」
「全滅した筈よ」
アヤが述べてきた。
「謎の部隊の襲撃でね」
「それがどうしてここにいるんだ?」
レビはそれを聞いて目をしばたかせる。
「全滅した筈なんだろう?」
「生き残ったのは私だけなのよ」
セレーナはそうレビに答えた。
「それで今ここにいるのよ」
「そうだったのか」
「それはいいわよ」
だが彼女はそれにはこだわらないようであった。
「けれど。どうして」
「一体どうしたのだ」
ヴィレッタがセレーナのその様子にいぶかしむ。
「我々への合流の為に来たと思うが」
「あんた、よくそんなこと言えるわね」
セレーナは敵意を見せてきた。何とそれはヴィレッタに向けられていたのであった。
「私達の部隊を全滅させておいて」
「何っ!?」
ヴィレッタはそれを聞いて眉を顰めさせた。
「私がだと」
「知らないとは言わせないわよ!」
セレーナは怒りを露わにさせてヴィレッタに突っかかった。
「あんたが率いた赤いマシンの部隊に私の部隊は全滅させられたのよ!隊長も皆も!」
「赤いマシンだと」
ヴィレッタはそれを聞いてもわからなかった。
「何だ、それは」
「バルマーだと思うけれど」
「赤いマシンでバルマー。だとすると」
ヴィレッタはここで己の記憶を辿った。そして出た答えは。
「あれか。ゴラー=ゴレムか」
「ほら、やっぱり知ってるじゃない」
セレーナはそれを聞いてアレグリアスをヴィレッタのヒュッケバインに向けてきた。
「ここで会ったが百年目、覚悟しなさい!」
「おいおい、ちょっと待てよ」
だが二人の間にリュウセイが入ってきた。
「何でそうなるんだよ」
「こいつはバルマーよ!」
そうリュウセイに言い返す。
「そんなのと一緒にいるなんてとても」
「あのな、ええと」
「セレーナよ」
セレーナはリュウセイにも名乗った。
「覚えておいてね」
「ああ。セレーナさんよ」
「ええ」
二人はそのまま話に入った。
「確かにヴィレッタ隊長は元々バルマーだぜ」
「ほら、見なさい」
「だから話は聞いてくれって」
そうセレーナに告げる。R-1をアレグリアスの前にやって。
「けれど俺達の仲間だ。それもずっと」
「ずっと騙されていたっていうの!?」
「だから違うんだよ。俺達とずっと一緒にいたんだよ」
セレーナに言う。
「それでどうしてバルマーの軍を率いるんだよ。無理だろ、そんなの」
「そうですよね」
エルマはリュウセイのその言葉に頷いた。
「セレーナさん、リュウセイさんは嘘を仰ってはいませんよ」
「けれど」
「リュウセイは嘘は言わないわよ」
ここでアヤも言うのだった。
「それにヴィレッタ隊長は前の戦いからずっと私達と一緒だったし」
「それじゃあ」
「顔は同じだったのか」
レビがそれをセレーナに問う。
「ええ、そうだけれど」
「それでは。若しかすると」
「心当たりがあるのか」
「ああ、ある」
レビはライに答えた。
「おそらくそれはクローンだな」
「そういえばバルマーはクローン技術も発達していたな」
ライには心当たりがあった。
「ユーゼス=ゴッツォが使っていたラオデキア=ジュデッカ=ゴッツォのクローン達が」
「それだ。おそらくセレーナが会ったのは」
「じゃあ。あんたは」
「ええ。私には全く覚えがないわ」
ヴィレッタはそうセレーナに告げた。
「第四特殊部隊のことは聞いていたけれど」
「何よそれ」
自分で自分に激しく脱力するセレーナであった。
「全然関係ない人に怒るなんて。御免なさい」
「まあ。クローンなら仕方ねえんじゃねえの?」
リュウセイはそう述べてセレーナを慰める。
「あまり気にしても仕方ねえぜ」
「はあ」
「そういうことよ。だからね」
アヤは明るい声をかけた。
「ロンド=ベルに入るのよね」
「ええ」
その気持ちは変わらない。だから答えることができた。
「そうだけれど」
「じゃあ御願いね」
にこりとした明るい笑みでセレーナに言う。百万ドルの笑みで。
「私はアヤ=コバヤシ」
次に自分の名前を名乗った。
「宜しくね」
「ええ。私はセレーナ=レシタール」
セレーナも名乗った。
「セレーナって呼んで」
「ええ。じゃあセレーナ」
その微笑みでまた言うアヤであった。
「私はアヤでね」
「宜しくね」
「まあ何はともあれこれでまた仲間が入ったな」
「そうだな」
ライはリュウセイの言葉に頷いた。
「それじゃあもうかなり減ってるけれどな」
「行くわよ」
アヤが全体の統率を行う。SRXチームもヴィレッタのサポートを受けて戦場に参加するのだった。
戦いはSRXチームの参戦が決定打となり終わった。これといったダメージもなく第一特殊部隊はあっさりとロンド=ベルに参加することになったのであった。
「何か参加してみるとな」
ジャーダはゼダンの格納庫で言う。既にそこには二隻の戦艦がある。
「意外と穏やかな舞台だな」
「そうね」
それにカチーナが頷く。
「もっと殺伐してるかと思ったけれど」
「変な人間も多いしな」
見れば人間かどうかすら怪しい者もいるのに気付く。誰とは言わないが。
「とりあえずBF団の奴等はいないな」
「あれ、あんた達もあいつ等知ってるのかよ」
ディアッカがそれを聞いてジャーダ達に声をかけてきた。
「ああ、一回やりあったことがあるぜ」
「素晴らしきヒッツカラルドとね」
「ああ、あいつか」
ムウはヒッツカラルドと聞いて顔を曇らせた。
「俺のところはマスク=ザ=レッドだったがお互い大変だったんだな」
「大変なんてものかよ」
ジャーダは真剣な顔で言う。
「あんな化け物が来たせいでよ。基地のマシンが全滅したんだ」
「ああ、そっちもかよ」
ムウにもよくわかる話であった。
「まあそうなるんだろうな」
「指をな、叩くだけで」
それで衝撃波を出して何もかもを両断するのがヒッツカラルドなのだ。
「それで終わりだった。次から次に好き放題ぶっ壊されてよ」
「で、基地は修復不可能か」
「ああ。あっという間だった」
そう話す。
「何が何かわからないうちにな」
「逃げるので精一杯だったわ」
ラトゥーニも言う。
「国際エキスパートが来るまでは」
「まあ助かっただけでもましだぜ」
ディアッカが真剣な顔で述べる。
「こっちも宇宙空間からいきなり怒鬼に攻撃受けたしな」
「あれは我が目を疑いましたね」
「全くだ」
ニコルとイザークがディアッカの言葉に続く。
「あいつ等に比べれば俺達なんてちっぽけな存在だ」
「そういうものじゃないと思うがね」
ラミアがそれに突っ込みを入れる。
「まあそれは置いておいてだ」
「ああ」
話が戻った。
「これから宜しく頼むよ。予定外のメンバーもいるけれど」
「宜しくね」
そのセレーナが笑顔で挨拶をする。
「これから長い付き合いになるけれど」
「宜しく御願いします」
キラがセレーナに挨拶を返す。
「これからも」
「ええ。それでね」
セレーナはキラに言葉をかけてからヴィレッタに顔を向けるのであった。今度はフレンドリーな態度であった。
「あの時は御免なさいね。あまりにも似ていたから」
「それはいい」
そうしたことにこだわるヴィレッタではない。
「だが」
「どうしたの?」
「それ程私に似ていたのか」
それについて問うのだった。
「そのバルマーの兵士は」
「そうね。仮面だったけれど」
それでもわかるものはわかるというのだ。
「雰囲気とかね。けれど」
「けれど?」
「少し向こうの方が機械的だったわね」
それがセレーナの受けた印象であった。
「どういうわけか」
「そうか」
ヴィレッタはそれを聞いて静かに頷いた。
「わかった。機械的なのだな」
「ええ、そうよ」
「では間違いないか」
セレーナの話をそこまで聞いてまた呟いた。
「あの男が来るか」
「あの男!?」
レビがそれを聞いて声をあげた。
「それは誰なのだ?」
「ハザル=ゴッツォだ」
ヴィレッタは忌まわしげにその名前を出した。
「来るな。あの男が」
「確かあいつは」
レビはバルマーにいた頃の記憶を辿りながら言った。
「外宇宙方面軍司令官だったな」
「そうだ。そしてバルマー人以外を人とは思ってはいない」
「何かあれだな、それって」
勝平はそれを聞いて言う。
「典型的な悪役ってやつだな」
「単純だがその通りだな」
宇宙太は彼のその言葉に頷いた。
「残念ながら結構いるタイプだ」
「そうね。ブッチャーとはまた違って」
恵子はかつての戦いで葬った宿敵を思い出していた。
「ああした奴は何処にでもいるみたいね」
「より危険だ」
だがヴィレッタはこう三人に告げた。
「より!?」
「そうだ。ブッチャーにはこれといって知性がなかったな」
「ああ」
「それはそうだな」
勝平も宇宙太もそれはわかっていた。
「だがハザルには高い知性がある」
「バルマー人だからですか」
「そうだ。しかも」
恵子に応える形で述べ続ける。
「部下達も同じだ。自分達以外を人間とは思っていない。一般市民も文化も容赦なく攻撃し破壊する」
「グラドスもいる」
エイジが暗い顔をして言ってきた。
「ハザル=ゴッツォの下にグラドス人がいるんだ。それも覚えておいて欲しい」
「最悪の上司に最悪の部下ってわけかよ」
デビットは忌々しげに言い捨てた。
「どうやらバルマーの中でも外宇宙方面軍ってのは最悪らしいな」
「その通りさ」
レッシィが彼に応える。
「あたし達辺境方面軍よりもまだ酷いよ」
「ああ、そういえばあんた達もバルマー軍にいたんだっけ」
「そうさ」
シモーヌに答える。
「ポセイダルもバルマー出身だからね。まあ地位はグラドスの方が高かったけれどね」
「その通りだ」
ギャブレーも言う。
「彼等は気位が高い。それも悪い意味で」
「つまりは。何処までも最悪な相手ってわけかよ」
ジョナサンは忌々しげに言い捨てた。他の者達と同じく。
「ご立派なことで」
「しかし。だとすると」
クインシィは冷静に言う。
「彼等から一般市民や文化を守る戦いにもなるな」
「そうだね。彼等は本当にやってくるから」
ダバがそのクインシィに答える。
「今後はそうした戦いもあるだろうね」
「嫌な話ね」
アムは露骨に嫌悪感を見せていた。
「この宇宙だってコロニーが一杯あるし。そこを攻撃されたら」
「いや、それは結構簡単だぜ」
だがネックスはこう考えていた。
「簡単?」
「ティターンズと一緒じゃねえか」
今彼等がいるゼダンを本拠地にしていたあの彼等である。
「一般市民を狙うんならよ。それなら」
「あの連中と戦うのと一緒か」
「そういうことさ」
ネックスはヒビキにも答えた。
「別に深刻過ぎるのもよくねえぜ。ある程度は簡単に考えていこうぜ」
「そうね」
シルビーは今の彼の言葉に頷いた。
「それなら」
「では決まりだな」
金竜が話を纏めて言う。
「これからは一般市民を守ってこれまで通りの戦いをする。いいな」
「ああ」
最初にダッカーが頷いた。
「それでいいぜ」
「へっ、俺は違うぜ」
しかし一人だけ違うのがいた。言うまでもなくバサラである。
「熱気バサラ」
カチーナが彼の名を呟く。
「あんた、まさかあれをやるのかよ」
「おう!俺にはこれがあらあ!」
すぐにギターを何処からともなく出してきて叫ぶ。
「グラドスなんだか何だか知らねえが!俺の歌でどいつもこいつも黙らせてやるぜ!」
「こいつの一番凄いところはそれを実行させるところだ」
宙がそのカチーナ達に説明する。
「こいつにはこいつのやり方がある。それは覚えておいてくれ」
「わかりました」
シャインが彼の言葉に頷く。
「それではそのように」
「しかし」
ジノがここで急に出て来た。
「ラトゥーニ嬢にフィオナ嬢、そしてシャイン姫」
花を手にして言う。
「花が揃っていて何よりだ」
「気品のある人ね」
「そうか?」
ラージはフィオナの言葉に首を傾げる。
「ロリコンにしか見えないが」
「それは言わない方がいいぞ」
ラウルが彼に突っ込みを入れる。
「本当のことだと思うからな」
「そうでしょうか」
ミズホが彼の言葉に突っ込みを入れる。
「私はそうは」
「おお、ここにも花が」
ところがジノはミズホを見ても声をあげるのだった。
「可憐な花が一輪。実に素晴らしい」
「・・・・・・そうみたいですね」
「そういうことだ」
ラージはミズホにも言う。ジノのロリコンがすぐにばれてしまった。
皆あれこれ話していると。そこに急報が入って来た。
「皆、すぐに出撃だ」
「どうしたんですか!?」
一同ダイテツの言葉に顔を向ける。
「敵襲だ。場所はプラント」
「プラント!?」
「まさか」
皆さっきの言葉を思い出して血相を変える。特にザフトの面々は。
「そうだ。どうやら一般居住区及び食糧生産用プラントに向かっているようだ」
「くそっ、奴等だな!」
シンはそれを聞いてすぐに察した。
「グラドスの奴等か!」
「こうしてはいられない」
アスランも言う。
「皆、すぐに行こう」
「ええ、わかったわ」
セレーナが答える。
「皆でね。それでバルマーの奴等を止めるわよ」
「了解」
「それじゃあすぐに」
全員出撃に向かう。その動きは迅速だった。
全艦出撃する。しかも全速力で。
「急ぐのよ!」
タリアが叫ぶ。
「少しでも遅れたらそれで」
「わかっていますよ」
アーサーも真剣な顔で応える。
「家族がいますから、あそこには」
「私もよ」
自分の息子のことを思い出すタリアであった。
「早く戻らないと。本当に」
「父さん!母さん!マユ!」
シンもまた。家族のことを気にかけていた。
「俺は皆を守る為に。だから」
「ああ」
レイが彼の心を受ける。
「わかっている。だが今は」
「焦るなか」
「そうだ」
そうシンに告げる。
「辿り着いてから戦え。いいな」
「わかった」
その程度の分別はもう身に着けていた。彼もまた成長していたのだ。
「よし、じゃあ」
「行こう」
ロンド=ベルはすぐに全軍を以ってプラントへ向かった。最悪の事態を避ける為に。

第十六話完

2007・10・19 
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