スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第十四話 虚空からの転生
第十四話 虚空からの転生
ゲートが来て暫くロンド=ベルはそん調査に専念することになった。
しかし何がわかったというと何もわからない。エクセリヲン以降出て来るものは何もなくこちらからも入ることはできなかったからだ。そのまま時間が過ぎていた。
「ううむ」
今回はドクーガ艦が調査にあたっていた。カットナルは顎に手を当てて考えていた。
「わからんな」
「わからんか」
「そうだ。あれはそもそも何だ?」
こうケルナグールに言葉を返した。
「エクセリヲン以降何も出て来んではないか」
「それは皆言っておるぞ」
ケルナグールはそう答えた。
「何かわからんのはわしも同じだ」
「わしだぞ」
カットナルも自分でそれを認める。
「訳がわからんのだが」
「ふむ。そうだな」
ブンドルも言う。
「このゲートについては私もわからない。情報も集まらないししな」
「情報か」
「多分だが」
カットナルとケルナグールはそれぞれ言う。
「またバルマーの兵器か何かではないのか?」
「バルマーか」
「うむ。これで通って来るとかな」
「その可能性は高いな」
ブンドルはケルナグールのその言葉に頷いた。
「だがそれについても根拠はまだないな」
「そうじゃな。何もな」
カットナルがそれに頷く。
「わかっておらぬな」
「試しに何か出て来たらわかるのじゃがのう」
「何かか」
「ではわし等が入ってみるか?」
カットナルはこう提案してきた。
「試しに」
「それもできない」
しかしブンドルはそれにも首を横に振った。
「今のとこと入ることもできないではないか」
「それもそうか」
「何かそれで思いきりヒマなんじゃが」
結局そういうことだった。三人は今の状況が退屈だったのだ。
「地球に言ってもな」
「地底の連中は大人しくしておるし」
「宇宙もこれだ」
ブンドルもそれについては同じであった。
「美しき戦いが行われていない。悲しいことだ」
「悲しいも何も」
「わしは暴れたいのだ」
「ケルナグール。貴殿も相変わらずだな」
「ふん、それで結構」
言われただけでショックを受けるケルナグールではない。というよりはブンドルの言葉でいちいち何か怒るようなことでは一緒にはいられない。
「宇宙怪獣でも何でも出て来ないものか」
「そのうち来るぞ」
カットナルは言葉を返した。
「その時を楽しみにしておれ」
「そうだな。それは間違いない」
ブンドルもそう見ていた。
「激しい戦いは近い」
「じゃが今ではないのか」
「御主はもう少し落ち着け」
「そうだ」
カットナルとブンドルがケルナグールをたしなめる。
「それか嫁さんと電話でもしておれ」
「そんなことは毎日しておるわ」
流石はケルナグールであった。
「朝と夜にな。かみさんとの約束じゃ」
「しかし」
ブンドルは甚だ不満そうな顔になった。
「何故だ。何故あれ程の美人が」
「妬くな妬くな」
ケルナグールは心から楽しそうな顔になっていた。
「わしの幸せをな」
「そもそも貴殿も政治家としての仕事はどうなったのだ?」
ブンドルはカットナルにも言った。
「国会には出てはいないようだが」
「こっちの方が忙しいのでな」
ということであった。
「特別休暇を貰っている」
「そうか。では私も論文の執筆を続けよう」
彼も彼で忙しかった。
「美しき戦いの合間にな」
こんな話をしていた。それを聞くヒイロ達五人は彼等の会話を黙って聞いていた。
まずデュオが言った。
「あの旦那方も相変わらずだな」
「そうだな」
それにトロワが頷く。
「いつも通りで何よりだ」
「それがいいのか」
ウーヒェイがそれに問う。
「あの三人は」
「いいのかね、あれで」
デュオはそれには懐疑的だった。
「いいのだ」
トロワはそれにも頷く。
「そうでなくてはコンデイションが維持できない。俺達もな」
「まあそうか」
「そうだな」
デュオもウーヒェイもそれに納得する。
「俺達もあのやり取り見てるとな」
「不思議といつもの気分になれる」
「やっぱり雰囲気ですよね」
カトルはそう捉えていた。
「雰囲気が大事なんですよ」
「その通りだ」
ヒイロも彼と同じ考えであった。
「ロンド=ベルの雰囲気はいい。俺は好きだ」
「おろっ、そうなのか」
「御前もなのか」
デュオとウーヒェイはそれにも応える。
「いい感じに精神的にコンデイションを維持できるからな」
「けれど最近あれですね」
カトルは言う。
「皆どんどん増えて」
「正直最近まで覚えるのが大変だった」
トロワの意外な苦労話だった。
「今度はSPTのメンバーも入ったしな」
「人が集まっている」
ヒイロはこう評する。
「それがどうなるかだな」
「ああ」
トロワが頷いた。
「今後にな」
そんな話をしながらゲートを調査していたがこの日も何もなかった。ロンド=ベルはゼダンに駐留して調査を続けているがやはり何も見つからないままであった。
だが次の日。ゲートから何かが出て来た。それは赤いマシンであった。
「ここか」
それに乗る一人の男が呟いた。
「ここが太陽系か。さて」
ゲートから出てそのまま外に出ようとする。だがその時だった。
「!?」
またゲートから何か出て来た。それは。
「あれは」
黒いマシンであった。堕天使の様な。その黒いマシンは赤いマシンに突進してきた。
「御前か」
「!?」
赤いマシンに乗る男は堕天使の言葉に目を瞠った。
「俺が。どうしたんだ!?」
「御前が俺になるのだ」
堕天使はそれに応えない。代わりにこう言うだけだった。
「だからこそここにいる」
「何を言っている」
赤いマシンの男には彼の言葉の意味はわからなかった。
「そもそも御前は」
「話す必要はない」
やはり答えようとはしない。
「それもいずれわかることだからな。だから」
「だから?」
「俺になれ」
また間合いを詰めてきた。
「今から」
「何を言っているんだ、だから」
「詳しく話す時間もない」
そのまま赤いマシンに攻撃を浴びせる。
「そして。御前しかいないのだ」
怯んだところで突進しぶつかった。すると赤いマシンと堕天使が融合したのだった。後には暗褐色の機体がそこにあった。中には薄紫の髪の少年がいた。
「俺は一体」
彼はまず自分が何者かを考えた。だが答えは出ない。
わかっているのは名前だけだった。それは。
「クォブレー=ゴードン」
それだけであった。他には何もわからない。
そこに何かがゲートから来た。見れば無数の小型マシンであった。
「敵か!?」
不意にそう思って攻撃を浴びせる。それが全てのはじまりであった。
攻撃を浴びせると向こうも反撃を返してきた。クォブレーはその攻撃をかわしながらまた攻撃を繰り出す。そうして戦いに入るのであった。
戦いの報告はすぐにロンド=ベルにも伝わった。彼等はゼダンから急いでゲートのところまで来たのであった。
「ゲートが開いたと思えば」
「やはりな」
彼等はそこにバルマーのマシンを見て言うのだった。
「バルマーか!」
「それを使ってまた地球に!」
「総員戦闘配置!」
シナプスから指示が下る。
「すぐに迎撃にあたれ。いいな!」
「了解。ですが艦長」
ヘイトがここで言う。
「どうした?」
「既に戦闘がはじまっていますが」
「そうですね」
アデルがそれに応える。
「何かいますよ」
「あれは何なんだ?」
シナプスが声をあげる。彼の知らないマシンであった。
「やけに暗い色のやつだな、おい」
「少なくとも連邦軍のものではないな」
バニングが述べる。
「あのマシンは」
「ザフトでもないわね」
タリアが言った。
「あんなマシンは」
「地球のどのマシンでもないみたいだね」
今度はユウナが言った。そういうことのデータに関しては彼は他者の追随を許さない。
「どうやら」
「じゃああれは」
「まさか」
「いや、どうも違うな」
真吾が皆に言うのだった。
「バルマーとも違うようだな」
「そうよね。だったら戦わないし」
レミーもそれに気付く。
「それはないみたいね」
「それじゃあ味方ってことかい?」
キリーはそう問うた。
「あの変わったマシンは」
「演技ということも考えられるが」
真吾は一応はそれも考えた。
「けれど困っているみたいだし」
「その困っている相手を助けるのがヒーローよね」
「まっ、後で騙されるのもそうだけれどな」
「騙されたらその時はその時だ」
真吾は言った。
「とりあえず助けよう。それでいいな」
「了解っ」
「それじゃあまあ」
まず最初に動いたのはゴーショーグンであった。皆それに続く。
戦いは敵の数がバルマーにしては少なく、また無人機ばかりだったので呆気なくカタがついた。アラドとゼオラはその中でクォブレーに近付く。
「あのさ」
「クォブレーさんですよね」
「ああ」
クォブレーもその二人に応える。
「そうだ。わかっているのはそれだけだ」
「それだけって」
「貴方は誰なんですか?」
「それがわからない」
思いも寄らぬ返事であった。
「俺自身にもな」
「記憶喪失なのか?」
「そうみたいね」
二人は彼の話を聞いてそう判断した。
「だとしたら厄介だな」
「そうね。ただ」
ゼオラはここでもう一つの可能性を危惧した。
「ひょっとしたら」
「ひょっとしたら。何かあんのか?」
「それは後でね」
アラドの方にだけ通信を入れて囁いた。
「いいわね」
「ああ、何かわからないけどわかったぜ」
そう返事を返した。
「それじゃあ後でな」
「ええ」
とりあえず話はここで中断した。そして戦いに戻る。クォブレーの戦闘はかなり素早くかつ的確であり非凡なものがあった。トウマもそれを見て唸る。
「凄いな、ありゃ」
「そうですね」
それにクスハが頷く。
「まるでニュータイプです」
「いや、あれは」
しかしそれにはブリットが言う。
「ニュータイプっていうよりは」
「違うの?」
「何か誰かに似ている」
彼はそう感じていたのだ。
「あのマシンも。何だろう」
「何かに?」
クスハはそれを聞いて目をしばたかせる。
「似てるかしら」
「俺の気のせいかも知れないけれど」
「似てる、か」
スレイはそれを聞いて呟いた。
「何かにだな」
「ええ。そう思いませんか?」
「気のせいかな」
スレイもクォブレーを見ながら呟く。
「あの動きは何処かで見たな」
「スレイさんも」
「気のせいじゃないですよね」
「多分な」
スレイはクスハにも答える。
「だが。何だあれは」
「素早いだけじゃない」
アイビスもそれを見ていた。
「独特の戦い方をしてるね」
「ええ。それだけじゃないわ」
ツグミは今クォブレーの戦いを見て何かを弾き出していた。
「あの動きを普通のマシンがしたら」
「どうなるんだ?」
「間違いなく壊れるわ」
そう結論を出していたのだった。
「あまりにも負担がかかって」
「そうなのか」
「アルテリオンやベガリオンでもあそこまでのスピードと運動を一度にやれば」
アルテリオンとベガリオンはその驚異的な機動力が武器である。それ以上の動きをしているのだ。それでどうにかならない方がおかしかった。
「只では済まないわよ」
「その通りだ」
スレイはその言葉を待っていたかのように告げた。
「それもあるし」
「あの動きはあたしでもね」
アイビスはクォブレーのパイロットとしての技量を見ていた。
「できはしないけれど」
「アイビスさんもですか」
ゼオラはそれを聞いて声をあげた。
「あの動きは無理ですか」
「瞬間的にはできるさ」
アイビスもスレイもパイロットとしての腕はかなりのものだ。超絶的であると言っていい。その二人をも凌駕していると他ならぬ彼女達が認めているのだ。
「それでもあそこまでいつもはね」
「何者なんだあいつ」
アラドはクォブレーに尋常ではないものを見ていた。
「だったら一体」
「何かあるな」
キョウスケはきっぱりとそれを言い切った。
「間違いなくな」
「スパイ・・・・・・おっとと」
エクセレンは今の言葉を慌てて引っ込めた。
「今のはなしね」
「あの、エクセレンさん」
ゼオラは今のエクセレンの言葉に突っ込みを入れた。
「それは。その」
「内緒ね、内緒」
「言ってしまったぞ」
「本人には聞こえていないですけれど」
ヒューゴとアクアはそれでも突っ込みを入れる。
「それでも。それは」
「とりあえずは置いておけ」
ヒューゴも怪しいものを感じていた。しかしそれは今はあえて置いておくというのだ。
「いいな」
「そうですね」
クスハが彼の言葉に頷いた。
「まずはバルマーの軍を退けてですね」
「それならお安い御用だぜ」
アラドは早速周りの敵を倒しだした。
「こんな奴等な」
「だがアラド」
ブリットも同じようにしながら彼に言う。
「数が多いからな。それは注意しよう」
「わかってますって。それにしても」
「それにしても?」
「ゼンガーさんは何時でもゼンガーさんなんですね」
見れば彼はその剣で戦い続けていた。ククルが横にいるその姿はさながら鬼神二人が戦場に舞っているようであった。圧倒的な強さであった。
「はあああああああああっ!」
「わらわの前に出るではないっ!」
二人だけでかなりの敵を倒している。その強さは見事なまでである。
「見ていたら」
「あの人は別だよ」
ブリットはそう言う。
「やっぱり凄いさ」
「そうですね」
「俺も」
トウマはその彼の戦いを見て燃えた。
「やってやるんだ!絶対にな!」
「そこの御前」
その彼にクォブレーから声がかかった。
「何だ?」
「名前は何でいうんだ」
「名前か」
「ああ。よかったら教えてくれ」
そうトウマに言う。
「いいか?」
「ああいいぜ」
トウマは彼を全く疑ってはいなかった。だから笑顔で答えるのであった。
「トウマだ」
「トウマか」
「ああ。トウマ=トオミネ」
フルネームも教える。
「宜しくな」
「ああ。俺はクォブレー」
彼もそれを受けて名乗った。あらためて。
「クォブレー=ゴードンだ」
「そうか。いい名前だな」
「そうなのか」
「少なくとも俺はそう思う」
彼は自分の感覚に素直に従って言うのだった。
「あんた他には何もわからないんだよな」
「ああ」
彼もそれを認める。
「今わかっているのは。それだけだ」
「じゃあ。今から探せばいいさ」
「探すのか」
「そうさ。自分が何かってな」
笑って彼に告げる。
「探せばいいだけさ。時間はあるんだしな」
「わかった」
あらためてその言葉に頷いた。
「じゃあそうしよう」
「ああ。じゃあここでの戦いもそろそろ終わりだしな」
もう敵はいなくなっていた。もう少しであった。
「後でゆっくり話そうぜ」
「わかった」
戦いは程なくして終わった。ロンド=ベルはクォブレーを収容してゼダンに戻った。そしてそこで詳しい検証と話をするのであった。
「予想通りかしらね」
最初に言ったのはセニアであった。
「やっぱりあそこからバルマーが出て来たわね」
「じゃああれはやっぱりバルマーのものなのかよ」
リュウセイはそう言った。
「だったらあそこからどんどん」
「可能性は高いな」
ライはクールな声でこう述べた。
「現にあのゲートから出て来たのだしな」
「問題はそれが何処につながっているかよ」
アヤはそこを問題視していた。
「バルマー本国とつながっていたら」
「笑い事では済まなくなる」
レビの言葉も杞憂ではなかった。
「バルマーの戦力はわかっていると思うが」
「ああ」
リュウセイはレビのその言葉に頷いた。
「マーグの艦隊みたいなのが幾つもあるんだったな」
「五つよ」
ヴィレッタが告げる。
「それぞれ七個艦隊を基本としてね」
「合計三十五個艦隊」
「洒落じゃ済まないわね」
ヤンロンとリューネも険しい顔を見せていた。
「あのラオデキア艦隊みたいなのがか」
マサキは顔を深刻にさせていた。
「随分てこずったってのによ」
「あの艦隊はまた特別だったのよ」
ヴィレッタはそう皆に説明する。マサキだけではなく。
「そうなのかよ」
「ええ。あの艦隊はね」
また皆に告げる。
「特別規模が大きかったのよ」
「それはどうしてだったのだ?」
リンが彼女に問う。
「あれだけの規模だったのは」
「ユーゼスの政治力故だったの」
それが答えであった。
「あいつのか」
「ええ。彼の政治力があれだけの戦力を集めていた」
それが理由であった。
「一個方面軍規模のものをね。ラオデキアだけではとてもああはならなかったわ」
「ラオデキアだけではか」
皆オリジナルのラオデキアのことを思い出していた。彼もかなりの強さだった。
「ええ。彼は生粋の軍人だったから」
ヴィレッタはそれをまた言う。
「あえてそこまでは手を回してはいなかったの」
「成程」
「だからユーゼスが」
「結局粛清されたけれどね」
「けれどよ」
甲児が問う。
「あんなのがまた来るっていうとよ」
「かなり辛いのは事実だな」
グン=ジェムも彼等のことは知っていた。
「面白いことにはなるだろうが」
「おいおっさん」
甲児はそのグン=ジェムに突っ込みを入れた。
「楽しいのかよ、それって」
「激しい戦いこそいいではないか」
彼の考えはこうであった。
「そうでないか?」
「いいねえ」
「最近ちと退屈だからな」
ジンとガナンが乗ってきた。
「そ、そうだ。だから」
そしてゴルも。
「また派手にやりたいってことさ」
最後にミンが言う。彼等は相変わらずであった。
「まあそれは俺もだけれどな」
甲児もそうである。
「やっぱり派手に格好よくな」
「何だかんだで甲児ってグン=ジェムさんと同じなのよね」
セニアはそんな彼を見て言う。
「困ったことねえ」
「困らないことにはあるような気がしますわ」
「・・・・・・今のはマジで何て言ったんだ?」
マサキはもうモニカの言葉がわからなかった。
「困ったってことじゃないの?」
ベッキーもあまりわからない感じだった。
「ある意味オンドゥルめいてきたわよね」
「それもわからないですよ」
ザッシュがオンドゥルという言葉に突っ込みを入れた。
「何が何なのか」
「それに関しては私が知っている」
ジノも変なことを知っていた。
「そちらの通訳もできるのだ」
「ジノさんって凄いんですね」
「大したことはない」
プレシアに褒められ上機嫌になって花を出していた。
「武人の嗜みだ」
「そうなのか?」
ファングはそうは思っていなかった。
「あれはまた別だと思うが」
「あたしも」
ロザリーも同じ見方であった。
「あれはねえ」
「わからんってどころやあらへんわ」
実はロドニーもオンドゥル語を知っているが。
「けれどこの姫さんの言葉は」
「まあね。あたしも今のはわからなかったよ」
シモーヌも同じであった。
「何が何なのか」
「どちらにしろあれよね」
ベッキーがまた言う。
「最近どうも言葉がね」
「わからなくなってきたっていうか」
「姫さんの通訳がいるようになってきたわね」
モニカの言葉も問題になっていた。しかしそれだけではなかったのだ。
「最近どうも補給もですよね」
デメクサが言ってきた。
「滞っているような」
「そうじゃな」
それはチェアンも感じていた。
「少し足りないぞ」
「使い過ぎではないのか?」
そう言うアハマドもかなり使っている。
「戦いが少ないとはいえ」
「いや、確かにその通りだ」
ヤンロンが言った。
「ゼダンには元々備蓄が少ない」
「そうだったんだ」
リューネは言われて気付いた。
「全然わからなかったけれど」
「言われてみればそうね」
テュッティも真顔で述べる。
「むしろアクシズに多くて」
「そうですね。アクシズは多いです」
エリスはそれを知っていた。
「やっぱりそちらに拠点を移すべきでは?」
「宇宙の拠点か」
ゲンナジーはそれを聞いて呟く。
「そうだな」
「ゲンちゃんもそう言ってるし」
ミオも同じ考えであった。
「それで行く?」
「けれどですね」
ザッシュが突っ込みを入れる。
「ここは他の設備も整っていますし」
「そうなんだよな」
マサキがそれを聞いてぼやく。
「ここが一番いいんだよな。整備だってな」
それは当然であった。ゼダンはティターンズが拠点とした一大軍事拠点である。ア=バオア=クーだけでなくルナツーまで置いておりその設備の充実は連邦軍の基地の中でも屈指だ。だから彼等も今ここにいるのだ。
「ここ以外にはなあ」
「一応補給を頼んでおく?」
シモーヌが提案してきた。
「グローバル艦長に頼んで」
「そうだな」
マサキはそれに頷いた。
「やっぱりそれだろ」
「わかったわ。じゃあそれでね」
「ああ」
こうして補給を頼むことになった。その間彼等は特に軍事行動をしないことになった。その間にもすることもあった。
「そう。問題はないのね」
「ああ」
アイビスはスレイの言葉を聞いていた。
「検査の結果は。何もなかった」
「ただの記憶喪失か」
「間違いないらしいぞ」
スレイはまたアイビスに告げる。
「赤木博士とサコンが調べた結果だ」
「スパイじゃないのか、あいつは」
「そうみたいね」
ツグミがそれに頷く。
「まずは一安心ね」
「そうだな。けれど」
それでも疑念は完全には消えていなかった。
「まだあるな」
「そうだ」
スレイもそこを指摘する。
「あの男の機体も。全て謎だ」
「あれは。一体何なんだ」
クォブレーの乗る機体だ。正体は依然不明のままだったのだ。
「見たこともない。けれど」
「何処かで見た」
「それはわからない」
三人はそれぞれ述べる。
「不思議なことにな」
「クォブレーだってそうだよ」
アイビスはクォブレーについても言及した。
「いきなり出て来て。何者だ?」
「スパイじゃないってわかっても」
「素性はわからないままだ」
ツグミもスレイも言う。そうなのだ。
「しかもゲートから来たんだよね」
「うむ」
スレイはまたアイビスに告げる。
「エクセリヲンと同じだ」
「考えたくはないけれどそれは」
「バルマーね」
ツグミは言いにくいことをあえて口にしてみせた。
「一番考えられるのは」
「というかそれしかないんだよ」
アイビスもはっきりと述べた。
「考えられるのはね」
「少なくとも宇宙怪獣ではない」
スレイはあえて当然のことを述べた。
「あれはな」
「バルマーっていったらエイジもそうだけれどね」
「エイジさんはまた別の系統だし」
「全く何もわからないままか」
「あれだろ?」
アイビスは二人に言った。
「今はあいつにはアラドとゼオラがついているんだったな」
「ええ、そうよ」
ツグミが答えた。
「内緒だけれど監視役も兼ねて」
「そうか、果たしてどうなるかな」
「まだ敵という可能性もある」
スレイもまた言いにくいことをあえて言う。
「まだ、な」
「それで済んだらいいかも知れないしね」
アイビスはふと悪い予感を感じた。
「それで済んだらって?」
「ああ。ひょっとしたらだよ」
アイビスはツグミに応えてその悪い予感を言うのだった。
「もっと。とんでもないことがあるかも知れないんだ」
「とんでもないことって」
「ガンエデンさ」
それであった。彼女達も戦った神である。
「あれと関わりがあるんじゃないかって思ってね」
「馬鹿な」
だがスレイはその可能性を否定した。
「ガンエデンは滅んだ。イルイも普通の女の子になった」
「それはそうだけれどね」
「それでまた復活する筈がない」
「だよね。考え過ぎか」
「そうだ。これ以上考えても煮詰まるだけだ」
スレイはそう結論付けた。
「ここは休もう。何処かに行くか」
「一杯やる?」
ツグミがこう提案してきた。
「ウイスキーあるし」
「いいね」
「そうだな」
二人もそれに乗ってきた。
「じゃあそれで」
「ブランデーもあるぞ」
スレイも酒を出してきた。
「あたしはこれさ」
アイビスもボトルを出してきた。
「ウォッカさ」
「強いのね、アイビスも」
「だから好きなんだよ」
楽しげに笑いながら述べる。
「飲むのはね。それじゃあ」
「うむ、三人でな」
「楽しくね」
三人はそのまま一杯やりだした。一杯どころではなかったが。とりあえず三人の絆は健在であった。
アラドとゼオラは。ずっとクォブレーを見ていた。
「やっぱりね」
「ああ」
そのうえで二人でこっそりと話をしていた。
「普段の生活にもおかしなところはないし」
「少食なだけだよな」
これはアラドの基準であった。
「あれだけしか食べないなんてな」
「あんたが食べ過ぎるの」
「あれっ、そうかな」
「そうかなってね」
ゼオラは怒った声になった。
「いつも丼で五杯じゃないの。甲児さん並に食べて」
「そうだったのか」
「そうよ」6
むくれた感じで言う。
「御飯を炊くのが大変なんだから」
「悪い悪い」
「それはそうとして」
話を戻しにかかってきた。
「クォブレーさんはまだ注意が必要ね」
「そうなるのか」
「ええ。まだね」
警戒する目になっていた。
「もう暫く見ておきましょう」
「ああ、わかった」
二人はそう話をした。こうしてクォブレーの参加と彼への監視が続けられた。だが話ははじまったばかりであった。それがどうなるのかもまだわかってはいなかった。
第十四話完
2007・10・6
ページ上へ戻る