スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇
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第十三話 ゲート
第十三話 ゲート
「ふん、やっとか」
巨大な戦艦の司令室において男は報告を受けていた。
「ようやく準備が整ったのだな」
「はい」
報告する部下はそれに応えた。
「遅れて申し訳ありません」
「全くだ。この責任は取ってもらうぞ」
「はっ」
部下は恐縮して頭を垂れる。
「それは」
「前線に行け」
男はそう部下に告げた。
「わかったな」
「はっ、それでは」
「そしてだ」
男はさらに言うのだった。
「イングラムだったか」
「あの者が。どうかされましたか?」
「まだ行方はわからないのか」
どうやらイングラムのことを知っているようであった。あえて名前を出していた。
「何処にいるのか」
「はい、全く」
部下は首を横に振って答える。
「何処にいるのかさえ」
「死んだのか?」
男はそれを聞いてこう呟いた。
「やはり。あの時で」
「普通に考えればそうです」
部下はこうも述べた。
「やはり。ガンエデンとの戦いの中で」
「そうだな。しかしだ」
だが男は言うのだった。
「イングラム=プリスケンだ。万が一ということもある」
「生きていると」
「そうだ。あのアストラナガンも」
声に憎悪がこもっていた。
「存在しているかも知れぬ。探し出せ」
「はっ、ではそちらも」
「門が開き次第まずは斥候を送れ」
そのうえで指示を出した。
「いいな、すぐにだ」
「ではゴラー=ゴレムの中から出させます」
「うむ、それからだ」
男は言った。
「本軍が動くのはな。既にマーグも動いているだろう」
「そのようです」
部下はそちらについても報告した。184
「既に地球に向かっておられるとか」
「目障りな」
男はその報告を聞いて露骨に嫌悪感を示してみせた。
「裏切り者の息子が。父上の引き立てて司令官になれたというのに」
「ですが閣下」
「何だっ」
部下の言葉に荒々しく声を向けた。
「マーグ司令もまた強い念を持っておられます」
「それがどうしたっ」
声がさらに荒々しくなる。どうにも傲慢さが感じられる声であった。
「ですから宰相も引き立てられたのではないでしょうか」
「貴様、俺に異を唱えるのか」
声に不機嫌さが見る見るうちに増していく。
「兵士の分際でっ」
「いえ、それは」
部下は怯える声でそれを否定した。
「そのようなことはありません」
「まことか?」
「はい」
怯える声のまままた否定してみせた。
「ですから。また」
「ふん、まあいい」
とりあえずは矛を収めたのであった。
「では。すぐに送れ」
「わかりました」
話が斥候に戻っていた。
「いいな。それから俺も行く」
「はっ」
何かが動こうとしていた。地球からは見えないところで。それが大きなうねりになろうとしていたのだった。
宇宙に出たロンド=ベル。ラビアン=ローズで新たな仲間が合流していた。
「三人ねえ」
「ここに来て」
「エイジ君のレイズナーがあったわよね」
エマリーは皆に対して説明していた。
「ええ」
「あれが何か?」
「あれをもとに三機試作で開発したのよ」
「そうだったんですか」
エイジはエマリーからそう告げられて声をあげた。
「そうなの。その結果面白いものができたわ」
「どんなのですか?」
「まずはね」
エマリーはエイジの言葉を受けて話はじめた。
「まずはバランス重視のドトール」
「はい」
「そして格闘戦重視のベイブルに後方支援用のバルディね」
「全部揃えたんですか」
「そういうこと。パイロットもね」
見ればもうそこには新たなSPTのパイロット達がいた。二人の若者に一人の少女である。
「シモーヌ=ルフランよ」
まずは少女が名乗った。
「デビット=ラザフォードだ」
「ロアン=デミトリッヒです」
続いて二人の若者が。それぞれ名乗ったのであった。
「これから宜しくね」
「まさかロンド=ベルに入るなんて思わなかったけれどな」
「御願いします」
「こちらこそ宜しく」
アムロが一同を代表して挨拶をする。三人はアムロの顔を見るとその表情を一変させた。
「おい、本物だぜ」
「ええ」
「そうですね」
デビットの声にシモーヌとロアンが声をあげる。
「連邦軍の白い流星」
「まさか本当にいるなんて」
「おいおい、俺は伝説なのかい?」
「いや、あんまり凄いっていうんで」
「ねえ」
デビットとシモーヌはそうアムロに答えた。
「やっぱりロンド=ベルっていったら」
「アムロ=レイ中佐ですから」
「何か俺は自分で思っているより有名みたいだな」
「ははは、そうだな」
アムロの言葉にブライトが笑う。
「御前は何かと目立つからな」
「しかもブライト=ノア大佐までいますよ」
今度はロアンが言う。
「ロンド=ベルの名艦長」
「ええ」
「しかもロンド=ベルきっての苦労人」
「私はそれなのか」
デビットの言葉に苦笑いを浮かべる。
「はい、個性派揃いのロンド=ベルを上手く纏めている」
「名艦長ですよね」
「ううむ、私も有名になっているようだな」
「ははは、そうだな」
アムロはそのブライトに顔を向けて笑った。
「御前も結構目立つしな」
「自覚はないんだがな」
二十代にしてはやけに老けた仕草を二人は見せていた。そこがまた目立つのだが二人には今一つ実感がないようであった。
「それでね」
エマリーはまたロンド=ベルの一面に声をかけた。
「彼等はエイジ君と一緒にいてもらうわ」
「僕とですか」
「そう、同じSPTのパイロットとしてね」
「あんたがあのバルマーから来たパイロットか」
最初にエイジに声をかけたのはデビットだった。
「うん、そうだけれど」
「成程ね。あまり強そうには見えないわ」
「ちょっとデビット」
シモーヌが彼を注意する。
「いきなり初対面の人に何よ」
「いや、本当によ」
それでも彼は言うのだった。
「何か線が細いっていうかな。まあバルマーだからって特に何も思わないけれどな」
「へえ、そりゃまた何でだい?」
チャックが彼に問う。
「いや、そんなのロンド=ベルじゃ普通だって聞いたからさ」
それがデビットの答えだった。
「それに」
「それに?」
今度はボーマンが声をあげた。
「地球にはもっととんでもないのがいたしな」
「またあいつ等かよ」
ムウはそれを聞いてそのとんでもないのが何なのかすぐにわかった。
「何処でも暴れてやがったんだな」
「俺のところに来たのは命の鐘の十常侍だ」
「またすげえのが来たな、おい」
これには流石にロウも言う。
「大丈夫じゃ・・・・・・なかったよな」
「何か訳がわからないままに基地が破壊されちまったよ」
何処も同じだった。十傑集の前では普通の兵器では太刀打ちできない。
「あいつが鐘を鳴らしてな。命の鐘の響きなり!とか叫んで」
「あっという間だったわ」
「気付いた時にはもう」
シモーヌもロアンも言う。
「完全に破壊されて」
「それで僕達ずっとテストパイロットしていました」
「君達も大変だったんだね」
ユウナにとっては他人事ではなかった。
「自分達の基地がそんな目に遭って」
「ええ、まあ」
ロアンがそのユウナに答える。
「そういえばオーブも一度」
「施設の一割が完全に破壊されたよ」
オーブの雑務のほぼ一切を取り仕切るユウナにとっては思い出したくもないことであった。
「たった一人にね。白昼の残月に」
「そうでしたね。それで」
「正直ねえ。ザフトより損害が出たんだ」
「本当ですか!?」
「残念ですが本当です」
キサカが沈痛な顔で答えてきた。
「あの時のことは思い出したくも」
「そうですか」
「大変だったんだ、オーブも」
「そうなんだよな、あの変態共はよ」
デビットは忌々しげに言う。
「コーディネイターとかそんなの全然気にならねえ位だ」
「俺達でもあんなことできるかっ!」
「おいおい、ありゃそもそも人間かどうかすりゃ怪しいだろうが」
イザークとディアッカがすぐに突っ込みを入れる。
「何処の世界にあんな忍者がいる!」
「あんた等宇宙から生身で攻撃出せるか?」
「まさか」
「そんなことができるのは」
「そういうことだ」
イザークはそうでビット達三人に告げる。
「あれと比べたら何者もな」
「普通人だぜ。単に生まれた星が違うだけだ」
「そうよね」
「その通りです」
シモーヌとロアンはディアッカのその言葉に頷く。
「俺も結構バルマーの連中には偏見あった口だけれどな」
デビットはそう言いながらエイジを見る。
「エイジだったな」
「うん」
エイジはその彼に応えた。
「まあ宜しくな。これから頼むぜ」
「うん、わかったよ。けれど」
「けれど。何かあるのか?」
「僕もあんなことはできないから」
「だからわかってるわよ」
シモーヌが思わず吹き出して言うのだった。
「というかあんなのできる人いないって」
「できたらそもそも何なんだろうねえ」
ユウナはそれについても考える。
「何もないところから針出すし」
「あれは本当に謎です」
ユウナも言う。残月に散々やられたからだ。
「そもそもだぜ」
デビットはさらに言う。
「世の中マスターアジアってのもいるしな」
「シュバルツ=ブルーダーも」
「ああ、あの人達」
エイジも当然彼等のことは知っている。
「俺はあんたがこっちで戦ってくれるのならそれでいいさ。そういうことだ」
「有り難う」
「別に素手で使徒倒したりしないだろ?」
「まさか」
これも既に伝説となっていた。
「僕ができるのはSPTに乗るだけだけれど」
「だったらいいさ。そういうことだ」
「そう。じゃあ」
「あとね」
ここでまたエマリーがエイジに言う。
「はい、何か」
「エイジ君にもプレゼントがあるわ」
そう言ってにこりと笑ってきたのだった。
「プレゼント?何がですか?」
「新型機よ。レイズナーあったわよね」
「ええ」
「それを新たに開発させてもらったの」
「レイズナーをですか」
これにはエイジも驚きを隠せなかった。
「もう」
「アナハイムの技術陣も頑張ったから」
「それでも」
「まあ一度見てみて」
まだ驚きを隠せないエイジに言う。
「凄いから」
「それで。名前は」
「レイズナーマークツー」
エマリーはそのSPTの名を口にした。
「それがこれからの貴方の乗る機体よ」
「レイズナーマークツー」
「これからの戦いはさらに激しくなるだろうしな」
後ろからヘンケンが言う。
「新たな機体は心強いな」
「はい」
「あと空いたレイズナーと改良型もあるけれど」
エマリーはさらに言う。
「どうしようかしら」
「それはこの二人が乗るといいんじゃない?」
シモーヌはデビットとロアンを指し示して言った。
「あたしのドトールはもうレイズナー並の性能があるしね」
「そうね。それじゃあ」
「よし、レイズナーチームだな」
「わかりました」
二人も乗り気であった。こうしてレイズナーチームが結成されたのであった。
新たにSPTのチームも結成された。ロンド=ベルはまずはラビアン=ローズに集結していた。そこでまずは宇宙全体の情報収集を行うのであった。
「あまり動きはないわね」
マリューは一通り資料を見て述べた。
「今のところは」
「そうだな」
彼女の言葉にアムロが頷く。
「宇宙は比較的穏やかか」
「ですがそれもすぐに、ですね」
ここでミサトが言う。
「おそらくもうバルマーが」
「それだ」
グローバルはそこを指摘する。
「彼等のことだ。間も無くな」
「そうですね」
それにブライトが頷く。
「頃合いだと思います」
「だとするとあれか」
アムロが続く。
「今俺達が宇宙に出たのは」
「僥倖となるかも知れない」
グローバルの言葉はやけに現実味を帯びたものであった。8
「仕掛けてくるとすれば今にもな」
「今にも」
「じゃあすぐにでも」
「戦闘態勢を整えておこう」
グローバルはそう皆に告げた。
「いいわ」
「わかりました」
「それでは」
こうして彼等は宇宙にあがってすぐに戦闘態勢に入った。そうして備えをしていると次の日に彼等のところに報告が入ってきた。
「もうかよ」
ナオトはそれを聞いてシニカルに言った。
「早いだろうとは思ったけれどな」
「それで場所は何処なの?」
「ゼダンとアクシズの中間らしいわ」
ミカがアキラに告げる。
「そうか、何か微妙なところだな」
「じゃあすぐにそこに向かうんだね」
「そうだ」
ケンジはすぐにナミダに言った。
「わかったな」
「了解っ」
「じゃあすぐにでも」
「また兄さんと」
タケルはその中で顔を引き締めさせていた。
「今度こそ。今度こそだ」
「タケル」
ケンジはそのタケルにも声をかけた。
「わかっていると思うが」
「はい」
それがわからない程分別のないタケルではなかった。
「わかってます。焦りはしません」
「頼むぞ、そこは」
「けれど兄さんは絶対に」
「ああ、頑張れ」
今度は暖かい声をかけた。
「御前の望むようにな」
「すいません、いつも」
「いいってことさ」
甲児が笑って彼に言った。
「甲児・・・・・・」
「御前には随分助けてもらってるしな」
「そうだわさ」
ボスも言う。
「おいらの次に活躍してるわよん」
「どっちかっていうよりもボスよりもずっと」
「だよなあ」
「こらっ、御前等が言うんじゃないだわさ」
ボスは後ろで言うヌケとムチャに突っ込みを入れた。
「あっ、すいやせん」
「けれどボス最近はずっと」
「マリンスペイザーにばかり乗っているだわさね」
それは自分でも認める。
「かなり寂しいだわさ」
「ボロットが懐かしいでやんす」
「全く」
「御前等あれがいいのかよ」
ナオトはそれを聞いて三人に突っ込んだ。
「何処がなんだ?」
「あれはあれで役に立つでやんすよ」
「そうそう、意外と」
ヌケとムチャはそうナオトに説明する。
「修理費も安いし」
「自爆してもコストはかからない」
「それっていいのかしら」
ミカはその説明を聞いても今一つ以上に納得できなかった。
「何か違うような」
「そうだよね」
マコトも同じ意見であった。
「補給装置とかは確かに魅力だけれど」
「修理装置もあったよね」
ナミダはかなりいい加減な記憶を辿った。
「確か」
「おお、知っているだわさな」
しかも正解だった。ナミダは自分で自分の言葉に驚いていた。
「正解だったんだ」
「そう、ボロットはただ単に戦うマシンではないだわさ」
どうもそうらしい。ボスの言葉によると。
「ハンドルで操れてトイレもある」
「実に過ごし易いでやんすよ」
「乗り心地も最高」
「言われてみれば凄いな」
「そうですね」
ケンジもタケルもそれは認めた。
「残念なことに今は殆どスペイザーだわさ」
「これも全部大介さんの為」
「大介さんの為なら」
「それは当たり前じゃねえか」
甲児が三人に突っ込みを入れる。
「大介さんはマジンガーチームの長男だぜ。皆で盛り立てないと」
「おいおい甲児君」
その長男が甲児に突っ込みを入れる。
「僕はただ歳を取っているだけなんだが」
「いやいや、それでもやっぱり大介さんは」
それでも大介を立てる甲児であった。
「頑張ってもらわないと」
「そうなのか」
「そういうことです。同じマジンガーチームですから」
鉄也も言う。
「活躍してもらわないと」
「そうか。それじゃあ今までよりも頑張らせてもらうよ」
大介はまだいささか謙遜したまま言うのであった。
「それでいいかな」
「ああ、頼むぜ」
甲児が応える。
「じゃあ俺も」
「俺もいるぞ、甲児君」
三人はいい意味でライバル関係を燃やしていた。
「それを忘れないでくれよ」
「わかってるって鉄也さん」
当然ながら甲児もその中にいた。朗らかに応える。
「それじゃあ行くか」
「よしっ」
「マジンガーチームも出撃だ」
彼等だけではなかった。他の面々も出撃する。そうしてそのアクシズとゼダンの間に到着したのであった。
「ここか」
「はい」
クローディアがグローバルに答える。
「ここにエネルギー反応がありました」
「エネルギー反応か」
「そうです」
また答える。
「まだ。何も現われていませんが」
「しかしエネルギー反応はさらに強まっています」
未沙も報告する。
「それもかなり」
「間違いなく何かあるな」
「重力震反応です」
今度はキムが報告した。
「重力震反応!?」
「何者かが転移してくるようです」
「何か!?まさか」
グローバルはそれを聞いてあるものを思い出した。
「バルマーの母艦か」
「あの巨大戦艦でしょうか」
クローディアが言う。
「まさか」
「可能性は高いな」
グローバルもそれを警戒していた。
「だとすれば」
「はい」
クローディアはその言葉に頷く。
「ここに全軍で来たのには意味がありました」
「そうだな。総員戦闘配置」
グローバルは指示を出した。
「すぐに迎撃できるようにしておけ。いいな」
「了解っ」
「わかりました」
皆出撃して備える。それが終わった直後であった。
「反応が大き過ぎます!」
今度はトーレスが言う。
「何っ!?バルマーのあの戦艦よりもか」
「ずっとです!」
そうブライトに返す。
「機動兵器や戦艦クラスではありません!反応直径はおよそ三十キロメートル!」
「三十だと!?」
アムロはそれを聞いて顔を顰めさせた。
「だとするとスペースコロニー並だな」
「全員出していてよかったか」
ブライトは腕を組んで呟いた。
「やはり」
「そうだな」
アムロがそれに頷く。
「あの巨大戦艦以上だとするとな」
「実体化します」
今度はルリが報告する。
「前方に」
「巨大構造物の反応です!」
メグミが言う。
「バルマーの巨大戦艦とはまた違う反応です」
「何だ!?敵じゃねえのか?」
「さて、どうなんでしょう」
ハルカの言葉にヒカルが言う。
「どのみち大変な状況みたいですけれど」
「大変な目にあって大変身」
「・・・・・・イズミ、本当に段々ネタが無理矢理になってきてるぜ」
ハルカは脱力しながらも言う。だがその間にも前方でのエネルギー反応は増してきていた。
「何だあれは」
ブライトは前方に実体化してきたものを見て言う。
「まさかとは思うが」
「巨大なリング!?」
カツはそう見た。
「ひょっとして」
「ゲートみたいにも見えるわね」
ケーラはそう評した。
「見たところ人工物のようだが」
「妙だな」
アムロとブライトは続けて言った。
「カルネアデス計画であんなものが造られているという話は聞いていない」
「そうだな」
アムロはブライトのその言葉に頷いた。
「少なくとも地球の物ではなさそうだな」
「だとすれば一体」
「あれは何なんだ?」
カツとケーラにはわからなかった。その間にもそのリングは実体化してきた。
「巨大構造物の中央に高エネルギー反応!」
今度はサエグサが報告してきた。
「かなりのものです!」
「各機警戒しろ!」
ブライトはそれを受けてすぐに指示を出した。
「わかったな!」
「了解!」
アムロをはじめとして皆頷く。サエグサは続いて報告する。
「境界面が隆起、中から何かが出てきます!」
「あれは・・・・・・」
「まさか」
ここにいるかなりの者がそれが何か知っていた。それは。
水色の三角形をした巨大な戦艦が艦首から姿を現わしてきた。ゆっくりとだが確実に。それは何と。
「ヱクセリヲン!」
アムロがその艦の名を言った。
「間違いない!」
「しかし!」
それにブライトが応える。
「あの艦は雷王星宙域で沈んだはずだ!」
「ああ」
アムロもブライトのその言葉に頷く。それは彼もよく知っていた。
「STMCと共にブラックホールの中へ」
「そ、それが何故こんな所に!?」
カツは頭が混乱していた。
「どうして」
「トーレス」
ブライトは冷静だった。トーレスに声をかけた。
「識別は!?」
「ま、間違いありません!」
だがトーレスは。まさいささか狼狽していた。
「SDF艦隊第零番旗艦ヱクセリヲンです!」
「艦長!」
今度はサエグサが言う。
「ヱクセリヲンから通信が!」
「!!」
「こちらはヱクセリヲン」
聞き覚えのある声であった。
「応答せよ。こちらはヱクセリヲン艦長タシロタツミ」
「間違いない」
「やはり」
ブライトは今己の考えが正しいことを知った。
「間違いないな」
「ああ」
それにアムロが応える。
「しかしこれは。どういうことだ」
「わからない。しかしだ」
アムロに応えて言う。
「どうやら。こちらでも大変なことになりそうだな」
「そうだな。だがまずは」
アムロはここで言った。
「エクセリヲント合流しよう」
「そうだな。まずは」
彼等はとりあえずエクセリヲンと合流してまずはラビアンローズに戻った。そうしてそこで詳しい話に入るのであった。
「というか何が何だか」
トールはラビアンローズに戻るとすぐにこうぼやいた。
「エクセリヲンってあの戦いで沈んだ筈なのに」
「そう、それ」
カズイもそれに相槌を打つ。
「トールみたいにね」
「俺は生きていたんだって」
トールはそう主張する。
「あの時は脱出して」
「あの時は本当に死んだと思ったわよ」
ミリアリアが横から言う。
「心配したんだから」
「御免御免。けれどエクセリヲンは違うだろう?」
「そうだな」
やっとサイが真面目に話をしだした。
「宇宙怪獣との戦いでブラックホールとなった筈なんだが」
「じゃあよお」
ディアッカはあることに気付いた。
「あの宇宙怪獣も実は死んでねえってことか?」
「おい、そりゃマジで洒落にならねえぞ」
それを聞いてジュドーが声をあげる。
「またあんな数を相手にするのかよ」
「そういえばジュドー君達はあの戦いに参加していましたね」
ニコルはふとそこに気付いた。
「かなりの激戦だったそうですが」
「激戦なんてものじゃなかったわよ」
エルがそう言う。
「次から次に出て来て」
「そんなにか」
イザークも今一つ実感が湧かなかった。
「数が多いとは聞いていたが」
「多いなんてものじゃなくてよ」
「そうそう」
ビーチャとモンドが彼に説明する。
「それこそ宇宙が見えねえんだよ」
「大変だったんだからさ」
「で、そんなのが来るんだね」
トールはふとした感じで言う。
「・・・・・・大変なんてもんじゃないよな」
「いや、普通に死ぬから」
イーノが彼に突っ込みを入れた。
「実際に死ぬかと思ったし」
「またトール死ぬのか」
「俺だけじゃないぞ、それって」
トールはカズイに突っ込みを入れる。
「皆死ぬじゃないか、それだと」
「そうか」
「そうかじゃないだろ。宇宙怪獣なんて本当に来たら」
「けれど何時かは絶対に来るわよ」
ミリアリアはさりげなく誰も見たくない現実を口にした。
「間違いなく」
「だからそれは言わない約束でしょ」
ルーが突っ込みを入れる。
「考えたくないし」
「けれどミリィの言う通りだな」
サイは理知的に述べる。
「宇宙怪獣が太陽系に迫っているのは事実だしな」
「じゃあ倒すだけだ」
シンは相変わらず強気だった。
「それだけだ。簡単なことだ」
「確かにそうですね」
フィリスはシンのその言葉に頷いた。
「彼等の場合は倒さないと私達が滅んでしまいますし」
「生きるか死ぬか」
エルフィもそれを言う。
「それだけね」
「だとしたら確かに簡単だね」
ジャックは二人の言葉を聞いてこう述べた。
「戦うしかないんだから」
「それでだ」
ミゲルはここで問うた。
「あのゲートから宇宙怪獣は実際に来そうなのか?」
「来ると考えた方がいいが」
アスランはあえて最悪の仮定を出した。
「実際はどうなのか」
「じゃああんた行ってね」
フレイはさりげなく酷いことを言う。
「いざという時は」
「俺一人でか?」
「まさか」
流石にそれはなかった。
「皆と一緒よ、その時は」
「ならいいが」
「そうじゃなかったらあんたでも辛いでしょ?」
「否定はしない」
真面目に告げる。
「億単位の数だっていうから」
「億、か」
さしものハイネの顔も曇る。
「尋常じゃないな」
「バルマーでもそんなに多くないですよね」
シホが呟く。
「今までそんな数の相手と戦ったことは」
「あったら怖いぞ」
カガリがシホに突っ込みを入れる。
「精々万単位にして欲しいものだ」
「ところがそうはいかないんだ」
コウがカガリに告げた。
「本当にそれだけの数が来るから」
「覚悟はしておいて」
クェスも言う。
「大変なのはね」
「あとバルマーもいるし」
キラは彼等のことも考えていた。
「大変な戦いになるね、宇宙でも」
「いや、諸君」
あれこれと話す若者達のところにそのタシロが来た。
「艦長」
「本当にタシロ艦長ですね」
「他の誰に見えるんだい?」
まだ驚きを隠せない彼等に笑って言葉を返した。
「私は私だ。ちゃんと生きているぞ」
「そうですよね」
「けれど」
「それに宇宙海獣達もいない」
「いないんですか」
「そうだ」
そう彼等に告げる。
「あの爆発で全部消えてしまっている」
「じゃあどうしてエクセリヲンが」
「ここに」
「それが私にもよくわからないのだ」
タシロは首を捻ってこう述べた。
「あの時確かに死んだと思ったのだがな」
「そりゃそうですよね」
チャックがそれを聞いて言う。
「ブラックホールになったんですから」
「だがこうして生きている」
それはもう確かなことだった。だからこそ余計に不思議なのだ。
「それはわかるな」
「ええ」
「よく」
皆もそれに頷く。
「そして私は連邦軍に復帰することが決定した」
「連邦軍にですか」
「そうだ。ガンバスターやブリタイ艦隊と同じく太陽系外周の防衛任務につく」
ノリコ達は今そちらにいる。だからロンド=ベルにはいないのだ。これはこれでかなり過酷な任務であった。しかも孤独である。だがそれでもノリコ、カズミ、ユングの三人は笑顔で任務に就いているのである。
「今からな」
「そうですか」
「じゃあまたお別れですね」
「おいおい、といってもだ」
悲しそうな顔になった若者達に対して言う。
「一生の別れではないぞ」
「けれど」
「また会おう」
笑顔で彼等に告げるタシロであった。
「いいな」
「わかりました。それじゃあ」
「それでだ」
タシロはまた言った。
「あのゲートだが」
「あれですね」
ここでキラの目が動いた。
「あれは何なんでしょう」
「出入り口みたいですけれど」
「そうよね」
アサギとマユラはそう見ていた。
「だとしたら誰があそこに置いたの?」
ジュリはそこを言う。
「そうだ。それが問題だ」
カガリもそこを指摘する。
「誰なんだ。あれをここに持って来たのは」
「バルマーの奴等じゃないの?」
ルナマリアはただ単に勘で言っただけだった。
「あいつ等だったらやりそうじゃない」
「そうだな」
それにレイが頷く。
「一番考えられるのはそれか」
「だったらかなり危険じゃない」
メイリンはバルマーと聞いて言う。
「あそこからバルマーの奴等が一杯来たら」
「じゃあ片っ端から叩き潰してやる」
シンはもう戦闘態勢に入っていた。
「バルマーの奴等が来るんならな」
「それはそれでいいけれどさ」
プルがその彼に突っ込みを入れる。
「あれがあるとバルマーがどんどん来るんでしょ」
「壊さないと駄目じゃないのか?」
プルツーも続く。
「それだと」
「そうだね。そうしないと無駄な被害が出るね」
キラは二人のその言葉に頷いた。
「やっぱり」196
「そうだな。何はともあれ今は調べよう」
コウが言った。
「まずはあのゲートを」
「じゃあまだ当分宇宙での戦いはなしか」
バーニィはコウのその言葉を聞いて呟いた。
「それよりもやっぱり」
「まずは調査ね」
クリスが告げた。
「それから動いた方がいいわ」
「そういうことだ。では諸君そのようにな」
「了解」
「わかりました」
皆タシロの言葉に頷く。タシロは帰って来たがそれと共に大きな謎もやって来た。皆そのことに頭を悩めるようになったのであった。
第十三話完
2007・10・2
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