DOG DAYS 記憶喪失の異世界人
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第2章 戦争?
あれから1週間が経った。
あの後、すっかり城のみんなとも馴染み、記憶が無いながらも問題無く生活している。
俺もフニャ……ゴホン、フロニャ力を使う為にガウルやあの3バカに協力してもらい、試してみたのだが、どうしても俺には合わないらしく、未だに使えずにいた。
もう一人の将軍、バナード曰く、『魔力があるため、フロニャ力の恩威を得ずらいのでは無いか』との事。
………ガウルはともかく大笑いしたジョーヌとベールはその場で拳骨を落としておいた。
そして戦争当日………
「これよりビスコッティ共和国へ侵攻を開始する」
と俺の入る余地も無く、勝手に話は進んでいき、今俺はその戦地にいるのだが………
「何このアスレチック?」
戦闘と言うより、何かの競技の様な感じだった。
上には実況もおり、近くの兵士の話だとどうやら得点と競い合うらしかった。
話には聞いていたが、流石にド肝を抜かれた。
「これが戦争か………」
もっともあの研究所みたいな血泥みな戦場も嫌なのだが………
「研究所………?」
何の事だ………一体俺は何を思い出した?
「何だ緊張しているのか………?」
「いや、何か思い出しそうになってな………」
「そうか………まあ初陣でもある、気楽にやっていけばいいさ」
「いや、それで良いのかよ?ゴドウィンしか居ないんだぜ?ガウルやジェノワーズは連れてきて無いし、バナードは解説に行っちゃうし………」
「何、貴様もいるのだ、問題無い」
「レオ、お前な………」
「貴様の小言もこれで終わりだ。それにワシの事は閣下と呼べと何度言えば分かる!!」
「いやだよ、レオみたいな女の子を閣下みたいな髭面男に使うような言い方なんて。………どうしても駄目って言うのなら俺はガレットを出ていくぜ」
「うっ………」
レオはなぜだか俺を手放したく無いらしく、出ていくと言えば渋るのだ。
………それが俺が好きとかそう言う色恋沙汰では無いのは態度を見れば分かるのだが、何故そこまで執着するのかがイマイチ納得出来なかった。
戦力で言えばゴドウィンにバナード、ガウルに3バカ。それにレオ自身も相当な使い手だ。
いくらこの世界に無い魔力を使える俺をそこまで必要だとは思えない。
………まあここで出て行けと言われれば俺は野垂れ死ぬだけなのだが。
「わ、分かった。レオで良い。………しかし!!そこまで生意気な事を言ったのなら貢献してもらうからな!!」
「分かってる。魔力も大分回復してるし問題無い。、まあ見てろよ」
そう言って俺は白いロングコートをなびかせ、部隊の最前線ヘ向かった………
「花火綺麗だな………」
もうお祭りの様な雰囲気の中、戦?は始まった。
アスレチックなステージを何とか攻略し、進む進む。
しかしうんてい中にボールが飛んできたり、矢が飛んできたりすのはありなのか?
何とかクリアしたと思ったら今度は大勢の敵兵士。
「覚悟!!」
「おっと!」
向かってきた相手兵士を回転して躱し、その背中に鞘を打ち込む。
「うぐっ!?」
うめき声を上げて気絶する兵士。その後、可愛い丸い生き物になった。
これ以外にも頭や背中に触れる“タッチアウト”もあるらしいのだが、どうしてもそれだとこっちが隙をつかれそうなので、取り敢えずちゃんと攻撃するようにしている。
「これがけものだまね………じゃあやっぱりあの爪の長い奴も人だったんだよな………?」
そんな事を思いながら先を見る。
もう既に次の水上アスレチックを超えて相手の陣地で戦っている兵士がいる。
「さて、俺もうかうかしてられないな………」
魔力はまだ殆ど使わずに進めている。先にはビスコッティの騎士団が待ち受けているらしい。
できるだけ使わずに進みたいが………
「エリミオ!そっちはどうだ!!」
「大丈夫です、まだ耐えられます!!」
「皆、ここを抜かれれば本陣まで一気に詰められてしまう!!耐えきるぞ!!」
ビスコッティ騎士団、ロランの激が更に味方騎士団達の防御を厚くした。
「くそっ!?固い!!」
「まだ抜かれんよ!!」
自身の槍で敵の攻撃を受け止めたロランは直ぐに反撃して敵を吹っ飛ばした。
そんな光景を遠くから見ていた俺。
「ああ………あの人無茶苦茶強そうだな………」
「レイジ殿!!あれは相手のビスコッティの騎士団長、ロランマルティノッジ殿です!!」
「騎士団長!?通りで強い訳だ………」
「レイジ殿、ですがあそこを通過しないと先には………」
「ですよね………」
と直ぐ近くにいる兵士に苦笑いしながら言った。
レオにデカイ口を吐いた以上、それなりにやらないとマジで追い出されるかもしれないし………
「そう言えばレオは………?さっきまでは本陣にいるって聞いてたけど………」
「閣下なら別ルートで進んでおります。敵最終防衛ラインまで迫ったのですが、親衛隊の隊長といきなり現れた勇者と乱戦状態になっている様です」
「別ルートあるの!?それにいつの間に抜かれた!?それに勇者!?勝てる見込み無さそうじゃん………因みにレオが負けたら戦終わり?」
「それは無いですけど………閣下を失えば私達の士気は落ち、そのまま押されてしまうでしょうな………まあ負ける姿は思い浮かびませんが!!」
と大きな声で言う兵士。
レオを信頼するのはいいが………
「逆に言えばレオ頼りって事だよな………」
そんな事を話している間にも兵士達は騎士団長に討ち取られている。
ゴドウィンはさっき、大勢の兵士に囲まれて身動き取れて無かったし、助けるには俺が行くしか無いよな………
「これ以上、好き勝手にさせる訳にはいかないか………さて、気張るか!!」
魔力で身体強化し、俺は騎士団に真っ直ぐ突っ込んで行った………
「ロラン隊長!!前方に向かってる敵影あり、1つです!!」
「どんな者が現れても変わらん、死守するぞ!!」
そんな激が飛ばされた後、その右にいた騎士団の兵士が吹っ飛ばされた。
「エミリオ!!………くっ、誰だ!?」
「えっと………名乗るんだよなこの場合………俺はレイジ。レオに拾われ、その恩を返すために協力している記憶喪失の紳士だ!!」
「いや、そこまで言わなくても………」
「えっ!?要らないの!?だったらそう言えよ!!受け狙いで紳士とか口走ちゃったじゃないか!!」
「いや、私に言われても………」
「くそ、騎士団長恐るべし!!」
「いや、私のせいなのか………?」
こうしてレイジとロランとの戦いが始まった………
「魔神剣!!」
「なっ!?」
いきなり放たれた斬撃に驚く、ロラン。
槍で防ぎきったが、表情は驚いたままだ。
「どうしたんだそんな豆鉄砲を受けた鳩みたいな顔して?」
「どんな顔だ?………それより君はどうやって紋章砲を!?紋章陣無しで!!」
「今のは紋章砲?じゃ無いし。むしろそれ何だっけ?ビオレさんに聞いたんだけどな………あの人の声、結構心地よくてついウトウトと………まあとにかく何故か分かんないけど俺にフロニャ力は扱え無くてな。仕方が無いから魔力で戦わせてもらってるだけさ!!」
「魔力!?」
ロランが驚いてる合間に刀を鞘に戻し、鞘で殴りかかるレイジ。
「何故刀を収める!!」
「それが俺の戦い方でね!!」
その後鞘を上手く使い、格闘戦に持ち込むレイジ。
「くっ!?やりづらい………」
「槍で両手が防がれてると戦いづらいよな!!」
何とか槍で大きなダメージを負わずに済んでいるロランだったが、小刻みに繰り出すレイジの攻撃に防戦一方になっている。
「やっぱ耐えるな、騎士団長様よ!!」
「君こそ何故、大技を使わない?これでは平行線なのは君も分かっているだろう?私を足止めするのが目的か?」
「………ならご期待に答えるとするか!!」
そう言ったレイジはその場からバックステップで2歩離れ、抜刀の構えをする。
「来るか!」
「行くぜ、騎士団長!!喪刃!!」
ガウルに放った稲妻の様な居合い斬りがロランを襲う。
「障壁陣!」
しかしその斬撃もロランの障壁によって、ロランに届くことは無く、障壁を破壊するだけで終わった。
「だが終わりじゃない!!喪刃連斬!!」
ガウルの時と同じように、すかさず追撃に出るレイジ。
………だが、
「一撃で終わるとは思っていないよ」
二連撃も予測され、防がれてしまった。
「もうやだこの人………初心者相手に何マジになってんだが………」
「こんなにも戦えて初心者な訳が無いだろう………」
「いや、そうでもないのだロラン」
そう言って現れたのはゴドウィン。
先ほど敵に囲まれていたが蹴散らした様だ。
「さて、この者は私が相手をする。レイジ、お前は閣下の援護へと向かえ」
「えっ………ゴドウィン、あんた行けよ」
「いや、私だと逆に怒鳴られそうでな………」
「いや、絶対俺もそうだろ………」
なんてったって家の姫さんはプライド高そうだもん。
いくら不利な状況でも『ワシ一人でやる!!手を出した者はワシ直々に八つ裂きにするぞ!!』とか言いそうだしな………
「いいから行け!!」
と大きな怒鳴り声が響き、従うしかなくなった………
「いやぁ、来なきゃ良かった………」
大きな蟻地獄の様なステージ、そこでレオは戦っていたのだが、そこは既に地獄絵図状態だった。
吹き荒れる炎に降り注ぐ隕石。
「何、あの姫様天変地異起こすの?」
蟻地獄のステージの真ん中で笑いながら事の様子を見ている姫様。
まさに魔王もビックリな感じだ。
「そんでもってあそこでいい動きしてるのが親衛隊隊長と勇者か………」
そう呟きながら緑の髪の女の子と金髪の男の子。
2人はレオの攻撃を一生懸命攻撃を避けていた。
「ワハハハハハハ!!」
「いやぁ、楽しそうだなレオ………俺、帰ろうかな………」
そんな事を思っているとレオは止めを刺すつもりなのか大きな紋章陣が現れた。
「嘘だろ!?馬鹿じゃねえの!?」
「大・爆・破ー!!」
その掛け声と共に大きな大爆発が蟻地獄のステージに巻き起こった。
「このアホ閣下!!味方ごと巻き添えか!!」
「おおレイジ、無事じゃったか。………って誰がアホだ!!」
上から叫ぶ様に言った俺。そんな俺に向かって斧をぶん投げてきやがった。
「危なっ!?」
それを何とかジャンプして躱す。
「何すんだこのアホ姫!!」
「………貴様、ワシにアホアホ言ったのは貴様が初めてだ………ワシの戦斧の錆にしてくれる………」
流石にアホアホ言いすぎたのか、もの凄い殺気を込めて斧をこちらに向けてくるレオ。
「えっ!?そんなんで怒るの………?むしろ俺が説教する場面なんだけど………」
「レイジ覚悟せよ………」
「それは………」
「こっちのセリフだ!!」
そう言って空から降ってきているのはさっきの親衛隊長と勇者の2人。
どうやら爆発に巻き込まれる前に空へ飛んでいた様だ。
「だけどどうするんだ?あのままじゃレオの的だぞ」
俺の思った通り、さっきまで俺に対して殺気を放っていたレオもすっかりあの2人に集中している。
「さて、どうする………」
「さっさと………行けー!!」
「ええっー!?」
そう思ってると思いっきり蹴っ飛ばされた勇者の少年が猛スピードで落ちてきた。
そしてぶつかる寸前で、一回転し、その勢いそのままでレオにぶつかっていった。
「ふん」
レオはその攻撃を普通に受け止め、弾き返した。
「だけど………」
「まだ!!」
いつの間にか地面に着地していた親衛隊隊長と勇者の二人はレオを挟み撃ちで攻撃した。
その攻撃を受け止めるレオだったが、受け止めた戦斧と盾が耐え切れなくなり………
「なっ!?」
どちらの武器も破壊されてしまった。
「「貰った!!」」
それを待っていた様な流れる2人の攻撃。
その攻撃は俺が咄嗟に動いて助けに入る前にレオの鎧を粉々に打ち砕いた。
「おおーっ!?」
そのレオの姿は短パンと谷間が見える服露出度の多い服に。
「ふむ、チビと垂れ耳相手と侮ったか………これでもまだ戦えるがこれ以上は両国民にちとサービスが強すぎるか………」
そんな事を言いながらセクシーポーズを取るレオ。
「勇者!!もっと攻撃を!!むしろ全部ひっぺがグガッ!?」
「アホ、少し黙っておれ………」
拳でぶん殴られ、黙らせられてしまった。
「レオ閣下、それでは………」
「ああ、降参じゃ」
そんなレオの気の抜けた一言で戦況は一気に変わったのだった………
「勇者よ、親衛隊長の助けがあったとはいえ、ワシに一撃与えた事は褒めてやろう。だが今後も同じような活躍が出来ると思うなよ!」
そう言ってさっき撮影班から借りたマイクを勇者に渡すレオ。
「何だ最後の言葉、負け惜しみみたいだったぞ」
「うるさい、………まあ油断していたとは言え負けたのは事実か」
「おっ、何だ素直じゃんか。薄着になると素直になるのか?」
「たわけ」
「うごっ!?」
不意に腹を殴られ、変な声を上げてしまった。
「………ったく直ぐに手を出すんだからよ」
「ふん、貴様が変態なのがいけないのだ」
「男なら反応しないわけが無い!」
「いや、何故そこは強気なのだ………」
と呆れながら言うレオ。
「まあそれはともかく、いつまでもその格好は止めた方が良いよな」
そう言ってレイジは自分で来ていた白いコートをレオに渡した。
「いつまでもその格好でいるとただの裸女だと思われるぞ」
「………貴様のその一言が無ければいい男だったのだがな」
「残念ながら俺はこういう男さ」
「記憶が戻っていくことに悪くなっているような気がするな………このまま記憶が戻らないように………」
「すいません、流石にそれは勘弁………」
「あの………もう話していいのかな………?」
そんな感じでレオと漫才じみた会話をしていると困った顔をした勇者がポツンと立っていた。
と、言うより周り撮影班もどうすればいいか戸惑っている様な感じだ。
「ああ、悪い悪い。勝利の咆哮でも何でも喋ってくれ」
「それなんて無茶振り………でも、怖かったけど楽しかったです、姫様!!またよろしくお願いします!!」
「閣下!」
「!?ハイ閣下!!」
「ワシも楽しかったぞ」
そんなレオの返事にとっても良い笑顔になる少年。
しかし………
「だから閣下はゴドウィンみたいなヒゲ親父が合う呼び方で、レオの様な女の子は………」
「やかましい」
「うごっ!?」
そう言って今度は蹴りを入れるレオ。
しかしそれだけでなく、勇者に尻尾で親衛隊長の女の子にマイクを渡せと合図を送った。
「撮影班、垂れ耳に寄れ、いい絵が撮れるぞ」
「レオ?」
そんな指示があり、俺も含め皆が親衛隊長に注目した。
「あっ………えっと………」
マイクを受け取り何かを話そうと瞬間、一斉に着ている服が引き裂かれた。
素っ裸になる親衛隊長。その場の誰もが固まった。
「あっ………うあっ………ああああああ!!」
そんな叫びの中、あの最後の攻撃のビジョンが流れる。
どうやら2人で挟み撃ちに交差した際、勇者の棒が親衛隊長の服に当たっていた様だった。
「おおおおおおおおおおおお!!!!」
男の兵士達から大きな歓声が聞こえる。
「ハハハハハハハ!!」
「………レオ、お前結構性格悪いな」
「ふん、負けたのだしこれくらいはいいだろう。しかしお前はあんまり嬉しそうじゃないな」
「俺はレオやビオレさん位大きい方が嬉しいかな………それに幼女を見て興奮する性癖は無グハッ!?」
「幼女じゃない!!私は14歳だ!!成長期なんだ!!」
マイクを投げられ、見事に顔面に当たった。
「このアホが………ほら貴様も退場するぞ………」
こうしてレイジはレオに引きずられる様にして戦場を退場したのだった………
因みに、この戦はビスコッティの勝利に終わった。
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