DOG DAYS 記憶喪失の異世界人
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第1章 ガウル・ガレット・デ・ロワ
「ここがワシの城じゃ!どうだ、立派だろう?」
と自信満々に言うレオだったが、殆ど記憶も無くいため、凄いかどうかいまいちピンとこなかった。
あの後、近くの村からセルクルと言う鳥の乗り物を借り、城に向かうことになった。
乗れるかどうか不安ではあったが、結構賢い生き物で、不馴れな俺をカバーしてくれたお陰でそれほど問題も無く進めた。
「とりあえず、でかいな………」
「そうだろう!実はこの城はな………」
「なあゴドウィン………?」
「何だ………?」
「何で姫さんあんなにご機嫌なんだ?」
「俺にも分からん。それと閣下と呼べ」
城のうんちくを話始めたレオの話を聞きながらゴドウィンに質問した。
どうやらゴドウィンにもよく分からないらしい。
「何をしている。早く来い」
そんなレオに断る暇も無く、城の中を案内された俺だった………
「中はざっとこんな感じだな、分かったか?」
「無理」
大きなだけに色んな部屋もあった。途中人の紹介まで始めたものだから覚えられる訳も無い。
「ならば紹介した者達は………?」
「ゴドウィン以外アウト」
「はぁ………」
大きな溜め息を吐かれたがこればっかりは仕方が無いと思う。
「閣下、少し落ち着いて下さい、一体どうしたのですか!?」
「ゴドウィン、何を言っている、ワシはいつも通りではないか」
「い、いえ………先ず身元の分からない者を城に招く事から始まり、城の説明まで………どう考えてもいつもの閣下では無いです」
「これにはワシなりの考えがあってだ。お前を負かす、不可思議な力。フロニャ力とは違うこの力があれば、後に宣戦布告するビスコッティとの戦争も有利になるだろう」
「い、いやですが………」
「ワシの考えがおかしいか………?」
「いいえ、そんな事は………」
「あ、あのさ………」
「「何だ?」」
「取り敢えずそう言う話は本人が居ない所で話すべきだし、さっきから話しているフロニャ力ってなんだよ………」
「………先ずはこやつにこの世界の事を1から説明するべきだな………ビオレ、暫く面倒を見てやれ」
「かしこまりました」
そう言って出口近くから現れた紫水色の髪の女性。
いつからいたんだ………?
「ビオレはワシの側役をやっておるのだ、取り敢えず彼女からこの世界の説明を受けてからまた話をするとしよう、ではビオレ後は頼む。ワシは少し休む、ゴドウィンも休め」
「ハッ………」
「お任せ下さいませ」
そう言うとレオはそそくさと出ていってしまった。
「では書物室で教える事にしましょう」
対して俺はビオレさんに案内され、書物室へと移動した………
「彼が、異世界からの来訪者………」
最近になって新たに見た星詠み。
ミルヒオーレとその彼女が呼び出した勇者の運命を変える可能性のある人物。
この世界には無い特異な術を使い、奇跡を起こす。
………それで彼女達が救われるかどうか分からないが僅かな希望が出来た。
「もし、ワシの計画が失敗してもあやつの力があればあるいは………」
そう思いながらベットにへたり込んだ………
「さて、分かりましたか?」
「大雑把な事は。後文字はもっと時間が経たないと無理っス。こんなの見たこと無い………それにフニャ力にはいまいちピンとこないと言うか………」
「フロニャ力です!………あなたは記憶が無いので当然です、まあフロニャ力はこの世界の要となる力です。全ての国と町もフロニャ力が強い所に作るんです」
「へえ………凄いんだなフニャ力って。逆に力が抜けそうな名前なのに………」
「フロニャ力です、バカにしてます?」
「いいえ!」
懐から見えたナイフを見て即答した。
「さて………時間もまだありますし、どうしましょうか?」
「ならこの城に訓練所とかあります?俺の記憶、どうやら戦って思い出した方が効果あるみたいなので………」
「分かりました、ならご案内します」
そう言われ、俺はビオレさんについていった………
「おお………」
「ここが訓練所になります」
案内されたのは城と城の間にある中庭でたくさんの兵士が戦闘訓練していた。
「ここにいるのがガレット騎士団の兵士達です。………確か今の時間なら王子が………」
「王子?」
「何だ?もう終わりか?もっと根性みせろ!!ガレット騎士団の兵士か!!」
白い、レオに似た男の子が倒れている兵士の中央に立っていた。
その立ち姿に威厳を感じる。
「彼はガウル・ガレット・デ・ロワ。閣下の弟君におおせられます」
「へえ………閣下様の弟君ね………」
「………」
「本当にすいません、調子に乗りました」
ビオレさんマジ怖え………
「ほら、まだけものだまになって無いだろうが!立て!!まだやるぞ!!」
「そんなに元気なら俺とやらないか王子?」
「ん?誰だお前?」
「ちょ!?レイジ殿!!」
「ビオレ、コイツ誰だ?」
「閣下が連れてきた客人です。レイジ様と言います」
「そうか………お前強いのか?」
「さあ………?でもゴドウィンとも何とかやり合えたぜ」
「そうか………なら楽しめそうだな!!」
そう言うと両腕と両足に何かのエネルギーみたいなものを纏わせ、大きな爪を作るガウル。
「えっ!?あれ何ビオレさん?」
「あれがガウル様が使う紋章術、獅子王爪牙です。ああやって直接纏わせて戦うのです」
へえ………ゴドウィンは使わなかったからこれが初めて見るな………
「俺の記憶を取り戻すきっかけになればいいけど………」
そう呟きながら剣を構える………
『鞘での攻撃!?』
『何でこれをしなかったんでしょうね!!アスベルは普通にやっていたのに!!』
『くっ!?流石に接近戦は不利か………!!』
『逃がすか先輩!!』
「先輩………?」
「どうしましたレイジ様?」
「いや………あの、ビオレさん、ちょっと聞きたいんですけど、刀ってあります?」
「刀ですか………?」
「ええ、俺ってどうやら剣より刀を使っていたみたいで………」
「そうですか………確か刀なら………」
とそう呟きながら側にあった小屋の中に入るビオレさん。
そして出てきた時には少し汚れている刀を持っていた。
「すみません、私達の軍では刀を使う人はいないので、いつぞやにビスコッティのダルキリアン興に貰ったものなのですが、使える者が居なくてそのままになっていて………」
と申し訳なさそうに言うビオレさんだったが、何故かその刀から目が離せなかった。
「これは………」
手に取った瞬間分かった。
あの記憶の中にあった刀と似てる気がする………
「この刀の名前は………」
「飯綱」
「えっ!?はい、そうですけど………何故知っているのですか?」
「この刀が教えてくれた」
そう言って刀を抜くと、綺麗に透き通った刀身が現れた。
未だにこの刀は素晴らしい物だという事が分かる。
「どうでも良いからさっさと戦おうぜぜ!!俺はもっと熱く戦いてぇ!!」
「行くぞ飯綱!!」
刀をもう一度、鞘に戻し、抜刀の構えを取った。
「行くぜ!!………レイジ!!」
もの凄いスピードで真っ直ぐ突撃してくるガウル。
「爆雷斬り!!」
そのままエネルギーを纏った爪でレイジに襲いかかった。
「魔力強化………今度はあんなに無理やりじゃなく、静かに集中して………」
目を瞑り、冷静に集中するレイジ。
「はぁ!?バカか!!このままぶっ飛ばしてやる!!」
右手で思いっきり斬り裂こうとしたガウルだったが、それはいとも簡単に鞘で受け止められた。
「なっ!?俺の一撃をこうもあっさり………」
「それだけじゃない!!」
受け止めた後、素早く体を回転させ、その勢いのまま、抜刀してガウルを吹っ飛ばした。
「ぐっ!?くそ………あのやろ………って!?」
吹っ飛ばされながらもちゃんと着地したガウルだったが、前を見ると既にレイジの姿は無かった。
「何処に………」
「魔神連牙斬!!」
「後ろ!?」
ガウルが一瞬の内に目を離した内に風牙絶咬で後ろに周り込み、その場からガウル目掛けて魔神剣を連続で放った。
「くそっ!?いつの間に………」
何とか魔神剣を捌こうとするが、魔神剣の一撃一撃の重さに耐え切れず………
「うわあああああ!!」
もろに受けてしまった。
それと同時に爪も消え去る。
「終わりか王子様?」
「へん、まだまだ!!」
そう言って近くにあった槍を掴むガウル。
「獅子王爪牙!!」
今度は槍と自身の足にエネルギーを纏わせる。
「行くぜレイジ!!」
「ああ、来い!!」
突進する2人はぶつかり合い、戦いはクロスレンジで激化する………
「おらおらおら!!」
「くっ………」
やはり経験の差は大きいいのか、ガウルの槍捌きは凄かった。
格闘戦が一番だと思っていたが、そうでも無いみたいだ。
「これで!!」
鋭い突きを連続で繰り出すガウル。それを何とか刀と鞘で捌く。
「いつまで持つかな!!」
「いくら経験が無い俺だって、同じ攻撃なら………」
捌きながら突きを見極めようとするレイジ。そしてその一瞬のタイミングを見つけた。
「貰った、双衝!!」
突きを躱し、右肘でガウルを上に上げ、鞘で下に叩きつけた。
「ぐはっ!?」
「ガウル様!?」
飛び込もうとしたビオレをちょうど今来て、戦闘を見ていたゴドウィンが止めた。
「ゴドウィン様、何故!?」
「いいのだ。最近殿下は少し天狗気味でな。紋章術に頼る戦いを見直して欲しいと思っていた所だった………負けも良い経験になろう」
「くそっ………こんな筈じゃ………」
フラフラながら立ち上がるガウル。
一方レイジも魔力強化による身体の負担がピークに達していた。
「後一撃………後一撃で良い…………持ってくれよ………」
そう言って刀を再び鞘に戻す。
最初と同じ抜刀のポーズだ。
「まだだ、まだやれるんだ!!!」
そう言って最初と同じく、エネルギー四肢に纏うガウル。
「行くぞレイジ!!これが俺の本気………」
そう言うと頭上に大きなエネルギーの球体を発生させるガウル。
「殿下!?それはまだ完全に扱える技じゃ!?皆、殿下から離れろ、巻き込まれるぞ!!」
既に2人から離れていた兵士達だったがゴドウィンの叫びに反応し、更に離れる。
「ビオレ殿も早く!!」
「ですが、レイジ様は………」
「これが俺の本気だぜ、レイジ。逃げなくて良いのか?」
「まあ逃げたくても、魔力強化で身体は凄く重くてな………俺も後1振りで終わりだ………」
「そうか!!なら俺の大逆転勝利だな!!」
そう言って大声で笑うガウル。しかしレイジは顔色を変えずにただ構えを保ち続ける。
「圧倒的不利な状況だけど、諦めた訳じゃない。いいから来い、王子様」
「ガウルだ、ガ・ウ・ル!!王子様ってバカにしてるだろ!!」
「いや、事実だろ………」
「姉上も姫と呼ばれるのを嫌うのと同じだ!!俺も嫌なんだ!!」
「まあどっちでもいいけど………」
「何だよ全く………もういい、これで終わりだ!!」
そう言って巨大なエネルギー球をレイジに飛ばした。
「何故逃げないのです、レイジ様!?」
そんな中、未だにその場から動かない、レイジ。
徐々にエネルギー球はレイジに近づき………
「これで終わりだ!!」
それを見て勝利を確信したガウルだったが………
「葬刃!!」
稲妻の様なスピード抜刀が鞘から放たれ、エネルギー球を斬り裂いた。
「「「なっ!?」」」
そんなレイジにガウル、ゴドウィン、ビオレの3人が驚きの声を上げた。
「そしてこれが、葬刃連斬!!」
しかしレイジは稲妻の様な居合の後、一気に回転しながら踏み出し、その勢いそのままガウルを斬り裂いた。
「ガウル様!!」
「殿下!!」
声を上げる事無く、その場で崩れるように倒れるガウル。
そんなガウルに慌ててビオレとゴドウィンが近づいた。
「ちくしょう………駄目だ、動けねえや」
「ガウル様?」
「ゴドウィン、やっぱり俺より強い奴は一杯いるんだな………」
「当たり前です。いくらガウル殿下の力が強くても大技だけの戦闘の仕方では絶対に勝てませんぞ」
「そうだな………」
一方レイジは………
「動かない………」
「なんや、せっかく勝ったのにダウンかいな………」
「今なら私達でも勝てそうです~」
いつの間にか3人の女の子がいて、ウサギの様な長い耳の女の子に関しては漁夫の利を得るような事を言っている。
しかし、それが役に立つかは分からないが………
「こらジェノワーズ、この人はレオ姫の大事なお客様です。無礼の無いように」
「「「ええっ~」」」
おい、何だこの3バカ………
「ビオレさん、何ですかこいつら?」
「彼女達はジェノワーズと言う我らガレット騎士団の中でも指折りの騎士達です」
「ノワール・ヴィノカカオです、ノワでいいです」
「ジョーヌ・クラフティや、よろしゅうたのんます」
「ベール・ファーブルトンですぅ~」
「俺はレイジ、記憶喪失のクールガイだ」
「クールガイ?」
「クールゲイ?」
「ククルゲイ?」
「おい、ジョーヌとベール、お前ら2人、そこになおれ!ベールに関しては意味が分からないし」
「いやや~」
「変態~」
「何で!?」
「馴染でんな………レイジ」
「フラフラなのによくやります………」
「そう言わず回復してやれ、ボロボロのまま連れていけば閣下が怒るぞ………」
ゴドウィンにそう言われ、ビオレは慌ててレイジを回復させるのだった………
さて、あの後小休止した後、ビオレさんと共に再び王座へと向かう。
既に王座には姫さんが座っていた。
「さて、いつの間にかガウルとも戦ったみたいじゃの。ワシも見ておけば良かった」
「ああ、かなり強かったよ。おかげさんで体がボロボロだ」
「そうなのか?そうには見えないが………」
「魔力の過剰利用が原因だと思う。えっと………フニャ「フロニャ!」すいませんビオレさん………そのフロニャ力の恩恵で傷や体力はある程度元に戻ったけど、魔力の回復は無理みたいでどうしても時間がかからないと駄目みたいなんだ………」
「何だそれは?使い勝手悪いの………」
と期待外れの様な顔で言われてしまった。
何に期待したのか分からないがその反応は無いと思う。
「まあいい、取り敢えず今日は部屋でゆっくり休むとよい。お前には次の戦争に参加してもらう」
「戦争………?」
「ああ。ビスコッティとの戦争だ」
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