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SAO<風を操る剣士>

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第一部 --SAO<ソードアート・オンライン>編--
第五章 オレンジギルド
  第37話 黒の剣士

 
前書き
本当はもう少し早く更新するつもりが、間違ってデータを消してしまいこんな時間に……

※現在1話から順々に話の書き方を修正中です。
修正といっても話の内容を変えるわけではないのでそのまま読み進めても大丈夫です。
前書きに『■』←このマークがあれば修正完了で、『□』←このマークがある場合修正中、なければ修正前ということでよろしくお願いします。 

 



 シリカ、キリトと一緒に来た道を戻っている最中、俺はアルゴにメッセージを送り、《プネウマの花》について聞いていた。
『……そんな訳で、ピナが死んでないのに採取できたんだ。何か知らないか?』
『あ~、それはネ……前に話した時は、まだ採取した人がいないからそう言ったんだけド。実は五日前に採取に成功したプレイヤーがいたんダ。……でも死んでないで採取するには、条件がアルんダヨ』
『条件?』
『そウ。その条件っていうのは、使い魔の主人に対する高感度が高いことと、既婚者(きこんしゃ)…つまり結婚しているビーストテイマーじゃないとダメなんダ』
『……アルゴ、それどうやって分かったんだ? というか、その情報は流石にアルゴの説明でも……』
『ホントなんダヨ! 調べた方法は教えないけどネ! ……話を戻すケド、夫婦っていっても普通の夫婦じゃダメで、夫婦そろってその使い魔との高感度が高くないとダメなんダ。――多分、データの共通化の時に何かあるんじゃないかナ~、ってオイラは思ってル。……あと、何回だかまだ調べてないけど、死んでいても死んでなくても、取れる回数に制限があるらしいヨ』
 ……なるほどな。……それにまぁ使い魔とはいえ、このSAOで余り蘇生という事をさせたくないんだろうな、茅場の奴。

「そういう理由だったんですね」
「おわっ!!」
 俺がアルゴとのやり取りをし終えると、横からシリカが納得したように声をあげる。
 どうやら、俺らのやり取りを横から見てたらしい……まったく気付かなかった。

「……シリカ、見るんだったら声かけてくれよ」
「えっ!? あたし、シュウさんに声かけましたよね? そしたらシュウさん『ああ』って返事したじゃないですか……」
「……マジで?」
「俺もシュウが返事するの聞いたぞ」
 声をかけたてから俺が返事をした…と、驚いた顔で足を止めて言ってくるシリカに、キリトもシリカに同意してくる。
 ヤバイ、まったく記憶がない………多分、アルゴとのやり取りで頭がいっぱいで、無意識の内に返事したんだな。

「はぁ……シュウさんって、(たま)にそうやってすぐ忘れて、あたしに文句言う時ありますよね……」
「そんなことはないだろ……。それに今だって文句なんかじゃ……」
 ため息をつきながら言ってきたシリカに、いつもはそんなことないし、文句は言ったつもりもなかったので否定しようとしたら……シリカに『じー』っていう効果音が似合うくらいの、疑いの眼差しを向けられてしまった。

 ……そんなに俺って、話しを聞いてないこと多いのか? ……とりあえず、俺が悪いのも確かだし……。
「すいませんでした!」
 それはもう見事に頭を下げて謝った。……なんでこんな話の流れになったんだろう?

「べ、別に頭を下げなくても良いですよ! ……その、シュウさんが集中してる時に話しかける、あたしも悪いですから! ――ただ、それでもやっぱりあたしの話を優先して聞いて欲しいというか……その……ごめんなさい、ワガママ言って……」
 頭を下げなくても良いと言われたので、シリカが話している途中に顔を上げて話を聞いていると……シリカは最後らへんにはもう、顔を赤くして俯いていた。
 シリカの言葉は俺にとっては、とても嬉しいこと……なのだが、その……テレるというか恥かしいというか……なんか分からないけど、物凄く鼓動が速くなり、顔も熱くなる。

「そ、そうか。――な、なら今後気を付けるよ」
「あ、ありがとうございます。……お願いしますよ?」
「あ、ああ」
 俯きながら指を前で少しイジっていたシリカは、俺の言葉を聞いて顔を少し上げて、上目遣いで少し嬉し俺にお礼とお願いを言ってくる。
 ヤ、ヤベー……こ、これが本当に俺の妹……もとい妻なのか? か、可愛すぎだろ!

「……………あの~、もしかして俺のこと忘れてない……?」
 と、自分の嫁の可愛さに疑いすら抱いていたら……横から声がした。
 ……キリト……ごめん、忘れてた。
 
 でもこのまま肯定すると、バカップルだと思われかねない……というか、思われてる可能性がある。……これはどうにか誤魔化さないと!

「そ、そんなことは無いぞ! ……あ、そ、そうだシリカ。今は後ろを追ってきてる奴らもいないし、これから帰る途中にいるかもしれないから、今の内に髪を(むす)んどいたら?」
「え!? あ、そ、そうですね。そ、それなら歩きながらでも出来ますしね!」
「あ、ああ。そ、それじゃあ、行くか!」
「な!? ちょっ、シュウ! ……はぁ、まったく……」
 シリカの髪で誤魔化そうとして、シリカに話をいきなり振ったのだが……シリカはすぐに俺の考えが分かったのか話に乗っかり、歩き出す俺に付いてくる。
 その歩き出した俺の後ろで、ため息をつきながらも、少し遅れて俺の後ろを歩いてきてくれるキリト。……ゴメンな、キリト……。



==================



 それからモンスターに出くわさずに、さっきの小川の架け橋の所まで着く。
 そして、渡る途中…橋の真ん中くらいの所で俺たちは立ち止まり、俺も気付いていたが(シリカも)キリトが代表して声を出した。
「――そこで待ち伏せてる奴、出てこいよ」
 キリトがそう言った数秒後、橋の向こうの木の葉が動き、人が現れる。
 その人物とは、昨日《風見鶏亭》の酒場にいた――ロザリアだった。
 ……良かった。作戦は成功してたんだな。

 俺が作戦が本当に上手くいった事に少し安心していると、ロザリアは唇の片側を()り上げて笑った。
「アタシのハイディングを見破るなんて、なかなか高い索敵スキルね、剣士サン。――でも、さっきまでアナタはいなかったのに、今まで何所(どこ)にいたのかしら?」
 そしてキリトに話し終えると、俺とシリカの方に視線を移す。

「まぁ知らない奴がいるけど……その様子だと、首尾よく《プネウマの花》をゲットできたみたいね。おめでと、ケーコちゃんにシュウくん」
 そしてそこで言葉を区切り、再び唇をさっきのように上げて、
「じゃ、さっそくその花を渡してちょうだい」
 と、言ってきた。――すると、俺が何かを言うより先にキリトは前に進み出て、口を開く。

「そうは行かないな、ロザリアさん。いや――犯罪者(オレンジ)ギルド《タイタンズハンド》のリーダーさん、と言ったほうがいいかな」
 その言葉を聞き、ロザリアの(まゆ)がぴくりと跳ね上がり、唇から笑いが消える。

「へぇ、なんか突然現れたと思ったら、アタシの事を知っているみたいねぇ。――もしかして、その子たちの護衛でもしに来たの? それとも、わざわざ殺されに?」
「いいや、どっちでもないよ」
 『殺す』なんて単語が出ても、あくまで冷静にキリトは話す。
「俺もあんたを探してたのさ、それをこの二人に手伝って貰っただけだよ。ロザリアさん」
「……どういうことかしら?」


 ……このキリトたちの話し、長く続きそうだな。
「シリカ、今の内に武器を()えよう。円月輪(チャラム)じゃ、戦いにくいし…」
「そうですね」
 俺とシリカは、キリトとロザリアが話している内にウィンドウを出し、武器の装備をいつもの片手剣と短剣(ダガー)に換える。

 すると腰にあった円月輪(チャラム)が消えて、背中にずっしりとした重さの剣が現れた……のだが……。
「……シリカ、お前はどう思う」
「……やっぱり、シュウさんも感じたんですか」
 俺が《聞き耳》を上げていないと聞こえないくらいの声で聞く。……やっぱり、シリカもそうか。
 俺とシリカは、今思えばリズが強化をしてから、一度も剣を取り出していなかった。
 ……なので、今やっと気付いた――剣が重い!

 そりゃ持てないとかそんなことは無いけど、いつも感じていた重さに比べると重い。
 アクセサリーとか装備を全部渡して《筋力値》が少し下がって。しかも、強化で《重さ》を上げたからだな、これは。……これからはちゃんと、剣と他の装備は別々に強化しよう…。

 と、そんな事を考えている内に、ロザリアが右手を掲げて指先を素早く二度宙を(あお)ぐ。
 すると、ロザリアの後ろの方から九人ほど、カーソルの色がオレンジのプレイヤーが次々(つぎつぎ)と現れる。……ここで立ち止まってなかったら囲まれてたな。絶対。

「キリトさん、どうしますか? 力尽くなら手伝いますけど……」
 そう言って、シリカは腰にある短剣(ダガー)に手をかけて戦闘体制になる。ピナもシリカの頭の上から飛び、シリカの後ろに行ってサポートする気満々らしい。
 俺もシリカとピナを見習い、腰の剣に手を置いた。

 でもキリトは、
「いや……大丈夫だよ、シリカ。シリカ達が手を出すほどじゃない。……それに、シュウ達を待ってる間に準備もしたしね」
「へぇ。なら大丈夫か」
 手を出して大丈夫と言ってきたので、俺も返事を返して剣から手を離す。

 すると、俺たちの会話を聞いていたオレンジの一人が、何かぶつぶつ言い出した。
「キリトにシリカ……? あの格好に、盾なし片手剣……。それに《フェザーリドラ》の使い魔……。――《黒の剣士》と《竜使い》……?」
 そしてロザリアに、
「や、やばいよ、ロザリアさん。こいつ……《ビーター》の攻略組だ……。後ろの奴らも、多分相当レベル高い……」
 と、男が言う。その言葉に残りのメンバーの顔が、一様に強張(こわば)った。

 ロザリアも言葉を聞いてたっぷり数秒間、口をぽかんと開けてから、我に返ったように甲高い声で喚いた。
「こ、攻略組がこんなところをウロウロしてるわけないじゃない! どうせ、名前を(かた)ってびびらせようってコスプレ野朗に決まってる。それに――もし本当に《黒の剣士》だとしても、この人数でかかればたった一人くらい余裕だわよ!! 《竜使い》も最近じゃ攻略組じゃないって話しだし、《黒の剣士》ほどじゃないわ!!」
 へぇー、シリカが攻略組を今は抜けている事を知っているってことは、一応情報収集はちゃんとやってるんだな。

 そんな風に感心していると、そのロザリアの声に勢いづいたように、男たちは口々に同意を喚きながら、前に出ていたキリトに一斉に斬りかかる。まずはキリトから――って考えらしい。
 そしてその斬られているキリトはというと……まったく動かずにいた。
「オラァァァ!!」
「死ねやァァァ!!」
 そんな動かないキリトに向って、半円形に取り囲みながら男たちは次々ソードスキルを放つ。

 ……そんなに頑張っても無駄なんだけどなぁ。
 そう思いながら、俺とシリカはさっきの位置よりも少し後ろでキリトと男たちを見ていた。
 そして、攻撃を受けていても全然死なないキリトを見て、男たちは不思議そうに手を止めると、
「あんたら何やってんだ!! さっさと殺しな!!」
 苛立ちを含んだロザリアの命令を言われ、再び攻撃を再開する。

 でも、一向に状況は変わらないでいることに疑問を感じた一人が手を止め、
「お……おい、どうなってんだよコイツ……」
 異常なものを見るように顔を(ゆが)めながら、そう言いって一歩下がった。そして、それを呼び水になったかのように、残りの奴らも攻撃を中止し、距離を取る。

 しんとした沈黙(ちんもく)が周囲を(おお)い、その中央で静かにキリトが話し始める。
「――十秒あたり400ポイント、ってとこか。それがあんたら九人が俺に与えるダメージの総量だ。俺のレベルは78、ヒットポイントは14500ある。……さらに《戦闘時回復(バトルヒーリング)》スキルによる自動回復が十秒で600ポイント。……何時間攻撃しても俺は倒せないよ」
 その言葉を聞いて、男たちは愕然(がくぜん)としたように口を開け、立ちつくす。……やがて、サブリーダーらしき両手剣士が口を開き、
「そんなの……そんなのアリかよ……。ムチャクチャじゃねぇかよ……」
 (かす)れた声で、そんな事を言った。
 ……ホント、レベルが低いと何もでき無い事を思い知らされるよ……レベル上げがどんなに大事かってね。……まぁ、俺は今レベル82だから関係ないけどね。(シリカは79)

 というか……クリスマス以来キリトの奴、無茶なレベル上げしてないんだな。俺たちがクリスマスが終わってから《フィールドボス》と戦って無茶してるから、レベルの差が少し増えてるぞ。
 シリカもキリトより高いけど……多分俺も含めて、まだキリトには勝てないんだろうなぁ。クリスマスの時も、キリトが油断してくれてなかったら危なかったし……。


 そんな事を思いながら見ていたら、男達が全員こっちに向って走ってきた。
 ……まったく、キリトから逃げられるわけ…「シュウたち、(あと)は任せた。俺はロザリアを捕まえとく」…ない……
「へっ!?」
 今、ちょっと意味の分からない言葉が聞こえたぞ!?
「ちょっと!? キリトさん!?」
 シリカも俺と同じように驚いていた。……まぁ誰だって『用意していた』なんて言われて気楽に見ていたのに、それでいきなり振られたら、そりゃ驚くわ!

 そんな感じで驚いて動けないでいたら、男たちは二人ずつで俺とシリカの手を掴み、他の奴ら剣で俺たちに剣を向けてきた。
「こ、こいつらを助けたかったら、俺たちを見逃せ!」
 男の一人がキリトに向って、そう言った。

 そして、キリトに追い詰められていたロザリアが、
「ほ、ほら、助けに行かなくて良いの? あの二人死んじゃうわよ?」
 と言っていたので……『一人で大丈夫』って的なことを言っていたのに、俺とシリカに押し付けたキリトに向って、軽く冗談や遊びのつもりで(あと少し恨み)、
「うわぁー、殺される! た、助けてくれぇ、キリトォ!」
 と少し大きな声で叫んだ。

 すると、流石は我が妻……ちゃんとノリを合わせて、
「キャァー! た、助けて下さい、キリトさーん!」
 と、俺と同じくらいの声でキリトに助けを求める。

「ほ、ほら、助けを求めてるわよ!」
「そ、そうだぜ! 助けたかったら、さっさと俺たちを見逃せぇ!」
 すっかり俺たちの演技に引っかかった男たちとロザリアは、助かるかもしれないと嬉しそうに声の音量を上げて、調子に乗る。……でも、

「……はぁ、シュウ遊ぶなよ……。シリカもシュウのノリに乗っちゃダメだろ……」
 と冷静にツッコミを入れる。……ツッコミを受けたシリカは、噂を知ってるプレイヤーがいるのでキリトに妹モードで素直に謝った。
「あはは……ごめんなさい、キリトさん。――でも、お兄ちゃんと長い間一緒にいると、どうしてもこういうのに乗ってしまうようになってしまって」
「まったく……ほどほどにしとけよ…」
 ……二人とも、本人が目の前にいるのに少し酷いこと言ってません?

「……あ、遊び?」
 そして、そのキリトとシリカの話を聞いていたロザリアは、キリトに向って疑問を言う。それにキリトは少し笑いながら、
「そうだよ。……だって、多分だけど二人ともレベルは俺と同じくらいか、もしかしたら――俺より高いよ?」
「なっ!?」
 あーあ、バラしちゃったよ……。
 仕方ないので、『高いかもよ?』というキリトの言葉を聞いて、男たちが全員驚いている隙に――手を掴んでいる男二人の拘束(こうそく)を力任せに解く。
 《筋力値》の差の為か、0.5秒も使わずに解け――そのまま、二人の手首を掴み小川の方に向って上に投げる。
 ……オレンジを傷つけても俺はグリーンのままだしな。

 隣を見るとシリカも俺と同じ風に解き、俺のを見たのかシリカも小川の方に他の男二人を投げる。
 数秒経ち、男四人が声を上げながら落ち――水しぶきが跳ねる音が後から聞こえた。
 残りの男たちはその音で自分たちが何をされたのか分かったのか、剣を手放して全員逃げようとした……のだが、俺とシリカはまた両手で男を掴み、再び小川に向って投げる。

 俺とシリカが四人ずつ川に落とし、九人の最後の一人となった男は、逃げられないと分かったのか、自分の片手剣を拾い上げ俺の向かってソードスキルの攻撃を放ってきた。
 この攻撃、喰らっても別に問題は無いんだが……。流石に俺までキリトと同じことをしたらかわいそうだと思い、少し重く感じる《ヘビーハードネス》を抜く。

 そして、男の剣に少し力を入れて俺の剣をぶつける。するとこれも《筋力値》の差か――男の剣は大きく軌道がずれて、ソードスキルが止まる。
 しかも連続技を放とうとしたのか、硬直時間が長い。……なのでその隙に男の足を蹴り、転ばせた。
 その転んで横になった男に、すかさず(さや)にしまった俺の剣を背中からおろし、男の横になった背中に置く。
「うがぁぁっ!!」
 男は腰が曲がり、凄く苦しそうな声を上げて、地面を何度も叩きながら起き上がろうとしたり、剣を退()かそうとしても、一向に状況は変わらない。
 ……こいつ、スピード系なのか? HPも少しずつ減って行ってるし。……まぁ、コレくらいじゃ俺もオレンジにならないんだけど、死なれちゃ流石に俺もグリーンじゃいられないし、死なない程度で退かしてやろう……。

 と思っていたら、
「シュウ、もう良い。あとはあのゲートにこいつらを入れてくれ」
 と、《回廊結晶》で作られたゲートを指差し、キリトが俺に言ってきた。

 ……はいはい、分かりましたよ。

 その後、三人で男たち全員をゲートに入れて――それから三時間後にリズから『来て』と、一言メッセージが届いたので、装備を受け取った後お礼を言って、少し長く感じた一日が終わった。










 
 

 
後書き
これでこの章も終わりです。…ここまで長かったぁ。
これから先はもっと長いですが……。
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