ソードアート・オンライン~ニ人目の双剣使い~
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少女と家族
前書き
ギャグ半分、真面目半分です
アスナが暴走します。ご注意ください
次の日目が覚めると何やらハミングが聞こえた。不思議に思って目をあけると、少女が目を閉じたまま歌っていた
とりあえず少女に抱きついているアスナを起こそうとしたがどうやらもう起きているようだ。アスナはその顔に驚きの表情を張りつけキリトをたたき起こした
「……おはよう。どうかした?」
「早く、こっち来て!」
「歌ってる……!?」
アスナは軽く少女を揺すりながら呼び掛けた
「ね、起きて……。目を覚まして」
すると少女のまぶたが持ち上がり「あ……う……」と声を出した
「……よかった、目が覚めたのね。自分がどうなったか、解る?」
少女は少し考え、首を横に振った
「そう……。お名前は?言える?」
「……な……まえ……。わた……しの……なまえ……」
少女は首を傾げながら
「ゆ……い。ゆい。それが……なまえ……」
と名乗った
「ユイか。いい名だな……なんだよ」
俺がユイに微笑みながら言うとキリトとアスナが驚いたような顔をした……
「リン君……意外と子供好き?」
好きで悪いか。小さい子は純粋で可愛いからな……画面の前の人たちの中で、ロリコンとか思ったやつ……一歩前にでて歯ぁ食い縛れぇ!!
「まあ、いいや。わたしはアスナ。この人はキリト。で、あの人はリンよ」
「あ……うな。き……と。り……う」
……りう?……ニ文字なのに言えないの!?
「ね、ユイちゃん。どうして二十ニ層にいたの?どこかに、お父さんかお母さんはいないの?」
ユイはしばらく黙り込んだあと、首を左右に振った
「わかん……ない……。なん……にも、わかんない……」
ユイにミルクを与えると俺たちは部屋の隅に移動すると意見交換を始めた
「ね、キリト君。どう思う……?」
「記憶は……ないようだな。でも、それより……あの様子だと、精神に、ダメージが……」
……あり得ない。症状的には言語障害だろう。言語障害とは言語にかかわる機能の運動性または感覚性の障害により、言語による意思の疎通が妨げられた状態をさす。確かにストレスからの感覚麻痺ってことはあり得るが、ここはバーチャル世界。そんなことがあり得るわけがない。おそらく、データの欠損。それに対し何の訴えもしてこなかったことから考えるに、やはりユイは……
「どうしたの?リン君?」
「いや、何でもない」
今は言わない方がいいな。害を与えるようなことも無さそうだし、しばらく様子見ってとこか……っとさっきまで抱き合っていたキリトとアスナがユイの方に移動し始めたから俺も行くか。この時俺は知らなかった。あんなことになるなんて。今はユイの側によらなければよかったと……(笑
「やあ、ユイちゃん。……ユイって、呼んでいい?」
カップから顔を上げて頷く
「そうか。じゃあ、ユイも俺のこと、キリトって呼んでくれ」
「き……と」
「キリト、だよ。き、り、と」
「……」
「……きいと」
生糸……
「ちょっと難しかったかな。何でも、言いやすい呼び方でいいよ」
再びユイは考え始めた。やがてユイは顔をゆっくりあげると
「……パパ」
次いでアスナを見上げて、言う
「あうなは……ママ」
アスナは微笑みとともに頷く
「ママ!」
アスナはユイを抱いたまま涙をながし始めた。俺は微笑みながらそれを見ていたが次のユイの言葉で凍り付くことになった
「りうは……にい!」
…何ですと。にいって兄さんのことだよね?すると何かい?俺はアスナとキリトの……は?同年代の親なんかまっぴらごめんだ。……いや、現実世界の両親よりはずっとマシだな……だあ!何考えてるんだ俺は!?……
ちなみに5分くらい固まっていると、ユイの止めの一撃が
「ダメ……なの……?」
……想像して欲しい。純粋な十歳児それも美少女の部類に入る少女の涙目プラス上目遣い。……あなたは断れますか?
「いいよ。ユイ」
無理でしょう
ホットミルクを飲み、小さな丸パンを食べると、ユイは再び眠り始めた
「わたし……わたし……」
「ごめんね、わたし、どうしていいのか判んないよ」
「……この子が記憶を取り戻すまで、ずっとここで面倒みたいに思ってるんだろ?気持ちは……解るよ。俺もそうしたい。でもな……ジレンマだよな……。そうしたら当分攻略には戻れないし、そのぶんこの子が解放されるのも遅れる……」
「うん……それは、そうだね……」
「とりあえず、できることはしよう」
……無駄だな。もう俺はユイの正体について確信している
「まず、はじまりの街にこの子の親とか兄弟とかがいないか探しにいくんだ。これだけ目立つプレイヤーなら、少なくとも知ってる人間がいると思うし……」
「……」
「……?どうしたの?」
「な、なんでもないよ!!」
「どうせ、ユイと別れたくないとか思ってるんだろ?自分とキリトの子供のように思ってるんだろ。もう既に」
アスナは吹き出した
「……そうだけど……」
耳まで赤くなって言った
「そういえばリンはユイの兄貴だったよな?ってことは……」
こんどは俺が吹き出す番だった
「同年代の親なんか認めない!現実世界の両親よりはずっとマシだけど……」
ゴニョゴニョ言う俺は不意にアスナに引き寄せられ抱きしめられた
「何か……急にリン君が可愛く見えるようになってきた……」
アインクラッドで五本の指に入るほどの美人に抱きつかれてるとは嬉しいが……何か嫌だ!キリトに目で助けを求めると苦笑いして目を逸らされた。「パパ助けて」というとキリトは頭を抱えてゴロゴロし始めた。曰く鳥肌が立ったらしい。まあ当たり前か……
ついでに言うとアスナはママと呼ぶまで放してくれませんでした。たまに呼んでねとか言ってました……嬉しいのか、甚だ疑問である。精神的にキツい1日だった
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