ソードアート・オンライン~ニ人目の双剣使い~
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はじまりの街と軍
前書き
遅くなりました……orz
次の日の昼食ごろ、目を覚ましたユイ。辛いもの好きだということを発見した日の午後。俺たちははじまりの街に行くことにした
なおユイのメニューの仕様は俺の推測を裏付けるものになったとだけ言っておこう
「わあー
ユイが顔を輝かせ、両手を広げて自分の体……より正確に言えば、淡いピンクのセーターを見ていた。すっかり装いを変えたユイは満面の笑みでセーターの生地に頬をこすりつけたりスカートのすそを引っ張ったりしている……うん、可愛いな
「さ、じゃあお出かけしようね」
「うん。パパ、だっこ」
「うん。パパ、おんぶ……冗談だから、頭を壁に打ち付けるのはやめろキリト……」
上はユイ、下は俺だ。キリトをパパと呼ぶとキリトが悶えるから面白い。キリトはユイの体を横だきに抱えあげた
「後で、にいも」
……勘弁してくれ……
「アスナ、リン、一応、すぐ武装できるように準備しといてくれ。街からは出ないつもりだけど……あそこは<<軍>>のテリトリーだからな……」
「ん……。気を抜かないほうがいいね」
「当たり前だ」
アスナも俺も気を引き締める
第一層<<はじまりの街>>はアインクラッド最大の都市だ。冒険に必要な機能は他のどの街よりも充実しているが、ここにはハイレベルプレイヤーは知りうる限りいない。理由としては<<軍>>の専横や、あの日のことを思い出すからだろう。全てが終わり、そして始まったあの日を……正直俺はその状況を喜んでいた。これで解放された。俺は自由だ、と。確かに自由にはなれた。でも、気付いた。気づいてしまったんだ。それでは逃げているだけだと。向き合わなければ本当には解放されないんだと。教えてくれたのは隣にいる男なのだが……しばらく男、キリトを見ていると首を傾げられた。何でもないといいながら誤魔化すために答えのわかっている質問をユイにした
「ユイ、見覚えのある建物とか、あるか?」
「うー……」
とユイは難しい顔でしばらく街並みを眺めていたが、やがて首を振った
「わかんない……」
「まあ、はじまりの街はおそろしく広いからな」
キリトはユイの頭を撫でながら言った。……こうしてみると本当の親子みたいだな
「あちこち歩いてればそのうち何か思い出すかもしれないさ。とりあえず、中央広場に行ってみようぜ」
「そうだね」
と俺たちは歩きだした
「ねえ、キリト君とリン君」
広場を歩いていると唐突にアスナが話しかけてきた
「「ん?」」
「ここって今何人くらいいるんだっけ?」
「ヒッキープラス<<軍>>合わせるとニ千ぐらいじゃないか?」
「ヒッキーって……」
苦笑いのアスナ
「人影があまりないことが気になってるのか?」
「うん」
「そう言われると……。マーケットのほうに集まってるのかな?」
「じゃあ、行ってみるか」
しかし、広場から大通りに入って市場エリアにさしかかっても木の下に座り込んだ男とNPC商人しか見えなかった。その唯一のプレイヤーにアスナが話し掛けた
「あの、すみません」
「なんだよ」
「あの……この近くで、訊ね人の窓口になってるような場所、ありません?」
むっ……アスナを見る目がいやらしい……
「なんだ、あんたよそ者か」
「え、ええ。あの……この子の保護者を探してるんですけど……」
今は俺の腕の中に移ってまどろんでいるユイを指し示すアスナ。すると銀さんに似た死んだ魚のような目をした男は多少目を丸くした
「……迷子かよ。珍しいな。……東七区の川辺リの教会に、ガキのプレイヤーがいっぱい集まって住んでるから、行ってみな」
「あ、ありがとう」
というわけでとりあえず教会に行ってみることにしたがキリトが街路樹になっている黄色い果実を狙っていたが、俺は首根っこをつかんで引きずった「あ、ああ……うまそうなのに……」……知るか!
東七区について川沿いに歩くと道の右手に広がる一際高い尖塔を見つけた。だからそこに向かって歩きだそうとするのだが
「ち、ちょっと待って」
「ん?どうしたの?」
「あ、ううん……。その……もし、あそこでユイちゃんの保護者が見つかったら、ユイちゃんを……置いてくるんだよね……?」
「……」
ためらうのも無理はない。アスナは本当の子供のように考えていたのだろう
「別れたくないのは俺らも一緒さ」
なっ?とばかりにこっちを見てくるので俺は頷く。例え俺の予想通りだとしても、本当の家族のように思っているから……
「会えなくなるわけじゃない。ユイが記憶を取り戻したら、きっとまた訪ねてきてくれるさ」
「ん……。そうだね」
アスナは小さくうなずくと、ユイに頬をすりよせ歩きだした。俺らもそれに続き歩きだした
「あのー、どなたかいらっしゃいませんかー?」
アスナの声が誰もいない教会の一室に響きわたるが、誰も出てくる様子はない
「誰もいないのかな……?」
「いや、人がいるよ。右の部屋に三人、左に四人……」
「二階にも何人かな」
「……索敵スキルって、壁の向こうの人数まで解るの?」
「熟練度九百八十からだけどな。便利だからアスナも上げろよ」
「いやよ、修行が地味すぎて発狂しちゃうわよ」
「不意討ちを防ぐためにすごく役立つんだがな……」
「それはわかってるんだけどね。……それはそうと、何で隠れてるのかな……」
とアスナは入り口で止めていた足を内部にまで進めた
「あの、すみません、人を探してるんですが!」
「……<<軍>>の人じゃ、ないんですか?」
右手のドアがわずかに開き、おそるおそるといった感じで言った
「違いますよ。上の層から来たんです」
やがてドアが開くと黒縁の大きな眼鏡をかけ簡素な濃紺のプレーンドレスを身にまとい小さな短剣を持った女性プレイヤーが姿を現した
「ほんとに……軍の徴税隊じゃないんですね……?」
アスナは微笑むとうなずいて
「ええ、私たちは人を探していて、今日上から来たばかりなんです。軍とは何の関係もないですよ」
「上から!?ってことは本物の剣士なのかよ!?」
甲高い声とともにわらわらと数人の少年少女たちがでてきた
「こら、あんたたち、部屋に隠れてなさいって言ったじゃない」
しかし、誰も従わない
「なんだよ、剣の一本も持ってないじゃん。ねえあんた、上から来たんだろ?武器くらい持ってないのかよ?」
「い、いや、ないことはないけど」
キリトはいきなりの言葉で焦っている。その隙に俺は本題に入るとしよう
「あの……」
……何て呼べばいいのかわからない……。その考えを読み取ったのか女性は口を開いた
「あっ、すみません、名前も言わずに。私はサーシャです」
「俺はリン。こっちのやつがキリト。彼女はアスナだ」
「で、この子が、ユイです」
とアスナが割り込んできた
結果としてユイの親はわからなかった。俺としては当然だと思っていた。アスナはどこかほっとしたような表情をしていた。話題は、サーシャのことに移り、軍のことに移ろうとした。そしてタイミングよくといったら変になるが数人の子供たちが勢いよく入ってきた
「先生!サーシャ先生!大変だ!!」
「こら、お客様に失礼じゃないの!」
「それどころじゃないよ!!ギン兄ィたちが、軍のやつらに捕まっちゃったよ!!」
「場所は!?」
「東五区の道具屋裏の空き地。軍が十人くらいで通路をブロックしてる。コッタだけが逃げられたんだ」
「わかった、すぐ行くわ。……すみませんが……」
俺らのほうに向き直り軽く頭を下げようとした。が俺はそれを止めると
「俺も行く」
「ですが……」
俺はキリトたちに目配せをするとキリトとアスナは大きくうなずいた
「私たちにもお手伝いさせてください。少しでも人数が多いほうがいいはずです」
「ありがとう、お気持ちに甘えさせていただきます。それじゃ、すみませんけど走ります!」
しばらく走ると細い路地を塞ぐ灰緑と黒鉄色のプレイヤーの一団がいた。躊躇せずに走り込んだサーシャをみてにやりと笑った
「おっ、保母さんの登場だぜ」
「……子供たちを反してください」
「人聞きの悪いこと言うなって。すぐに返してやるよ、ちょっと社会常識ってもんを教えてやったらな」
「そうそう。市民には納税の義務があるからな」
わははは、と男たちが甲高い笑い声をあげる。
「ギン!ケイン!ミナ!!そこにいるの!?」
「先生!先生……助けて!」
「納税の義務……とか言ったか?」
今まで見守っていたが我慢できなくなったので俺は口を出した
「ん?おうそうだよ。市民の義務だよなぁ」
「じゃあ、その金はちゃんと俺たち市民のために使われてるんだよな?」
「も、もちろん。当たり前だろ?ちゃんと攻略のために使ってるに決まってんだろ」
「ふーん……じゃあ、市民の権利を使わせてもらおうかな……知る権利に基づいてその使用明細の開示をお願いしよう」
相手は対応を考えている。その隙に俺はキリトとアスナに口をあまり動かさず言った
「合図したら跳べ」
「「了解」」
「そ、そうだなぁ……そういうことは本部に……」
「今!」
俺が合図をするとキリトとアスナが地面を蹴って跳躍した。トップクラスの筋力と敏捷力により軽々軍を飛び越えた。軍の連中は俺に意識を集中していたため反応ができなかった
「て……てめぇ……何だお前は!!<<軍>>の任務を妨害すんのか!!」
「弱いやつから搾取するのが<<軍>>の任務か?落ちたものだな」
「てめえ……許さねえ……」
と俺に近い軍のメンバー五人ほどが剣を抜いた。全く使われていない剣の全く重みのない輝き
「お前たちは全く戦闘を経験してないだろ」
「……そんなわけないだろ」
間があったな……
「剣に全く重みがない。足が甘い。……しょうがない。少し稽古をつけてやる」
といいつつ俺は腰から剣を二本抜き出す
「サーシャさん、ちょっと下がっててもらえますか?」
「はっ、はい」
二振りの剣を見て呆然としていたサーシャさんを下がらせる。そして同じく固まっていた軍のメンバーの方に向き直り
「ついてこいよ?」
剣を突き出した。双剣突撃技<<ダブルサーキュラー>>だ。もちろんここは街の中であり犯罪防止コード圏内なのでプレイヤー自身にダメージはない。だがソードスキルによるノックバックとコード発動時のシステムカラーの発光と衝撃は発生する。つまり……
「ぐあっ……やめっ」
二つの剣閃が煌めき一番近くにいた男性プレイヤーに直撃した瞬間、男はしりもちをつき恐怖に顔を引きつらせることになった
「双剣……ユニークスキル……ひっ」
後ろに控えていたプレイヤーからも悲鳴じみた声が漏れる……ってか有名になったもんだ……
「なっ、何ビビってんだ!相手は一人。こっちは五人だぞ!数で押せばユニークスキル使いだって……」
「そっ、そうだ!何ビビってんだか……よ、よし行くぞお前ら」
……面倒くさい……
「せっかく人がチャンスを上げたというのに……教訓一、引き際を考えないと……」
俺は一番最初に声を上げたプレイヤーの前に移動し
「痛い目を見ますよ?」
剣を振り下ろし、攻撃を開始した。初撃は四連続ソードスキル<<バーチカル・スクエア>>。四つとも見事に直撃した。倒れ戦闘不能になったので次のプレイヤーに向かった
「教訓ニ、一対多の場合は隣の人を常に視界にいれ、カバーし合うこと。あなたたちはバラバラになりすぎ。全くフォーメーションが組めていません」
次のプレイヤーを単発重攻撃<<ヴォーパル・ストライク>>を当てる。近くにいた別のプレイヤーを巻き込み吹き飛ぶ。最後のプレイヤーはガタガタ震えて命乞いをしていたがかまわず剣をつきだした
「教訓三、どんなに弱くても、どんなに自分が優位であっても……」
最後の一撃、片手剣で最も早い技<<ムーン・ソルト>>
「決して油断するな」
下から上に走る剣閃が最後のプレイヤーを吹き飛ばした
後書き
蕾姫「二週間でPV一万突破!!」
リン「それって多いのか?」
蕾姫「わからん……でも初心者の小説では多いんじゃない?」
リン「読者の皆さん。読んでくれてありがとう。そしてこれからもよろしくな」
蕾姫「最近忙しいから次、いつになるかわからないけど……目指せ一週間以内!!ではーノシ」
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