ソードアート・オンライン~ニ人目の双剣使い~
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森と謎の少女と
それより何日か後……ん?何やってたかって?レベル上げだよ。描写は書いてもつまらないと思うよ?しいて言うなら、<<デス・ピエロ>>に囲まれてました。攻撃と敏捷は高いけど防御とHPが低いモンスターをずっとほふってました
というわけで今は二十ニ層のキリトとアスナの家に向かってます
到着するとちょうどキリトがアスナを肩車したところだった
「……お邪魔しました」
「ち、ちょっと」
言葉をかけてきたがしらん。あいつらといると砂糖を口からはきかねん
「リ、リン君」
キリトから降りたらしいアスナが肩を掴んできた
「ナニ?」
「何で片言なのかな?それより今から一緒に森に行かない?」
「俺は馬に蹴られる趣味はないんだが……」
「いやー。今から行くところでな、幽霊を見たって話があってさ。確かめに行くんだよ。リンも行かないか?」
「ほう……興味深いな」
この世界はプログラムでできている。よって幽霊なんて非科学的なものは出る余地はないんだが……まあ見間違いってこともあるが
「よし、行こうか」
「じゃあ、出発!」
アスナはまたキリトの上に乗っていた。キリトは苦笑している
「やめろ。こっちは恥ずかしいし、砂糖を吐きそうになる」
と言うといかにもしぶしぶといったかんじでアスナは降りてきた
十数分歩いたあとアスナがこんなことを言い出した
「大きい木だねえー。ねえ、この木、のぼれるのかなあ?」
「うーん……」
「システム的には不可能じゃない気がするけどなぁ……。試してみる?」
「ううん、それはまた今度の遊びテーマにしよう。……登ると言えばさあ」
「外周にあちこち、支柱みたいになって上層まで続いてるとこがあるじゃない。あれ……登ったらどうなるんだろうね」
「あ、俺やったことあるよ」
「ええー!?」
体を傾けキリトの顔を覗きこむっていうか、ピンク色の空気が厚くて会話に参加できない……
「なんで誘ってくれなかったのよ」
「まだそんなに仲良くなってなかった頃だってば」
「なによ、キリト君が避けてたんじゃない」
「ストップ!これ以上ピンク色の空気を出すな!息苦しくてかなわん!」
あ、顔真っ赤
「そういえばキリト。あの時は、俺、見てたぞ?」
「えっ?」
「手足をバタバタさせながら落ちていくのは傑作だったが……命は大切にしやがれ……」
「はい……」
そんな会話を交わしていると森はどんどん深くなっていった
「ね、その……うわさの場所って」
「ええと……そろそろだよ。もうあと何分かで着く」
「さっきの話。具体的には?」
「ええと、一週間くらい前、木工職人プレイヤーがこのへんに丸太を拾いに来たんだそうだ。この森で採取できる木材はけっこう質がいいらしくて、夢中で集めているうちに暗くなっちゃって……慌てて帰ろうと歩き始めたところで、ちょっと離れた木の陰に……ちらりと、白いものが」
アスナの顔色が……でも俺はキリトに先を促した
「モンスターかと思って慌てたけど、どうやらそうじゃない。人間、小さい女の子に見えたって言うんだな。長い、黒い髪に、白い服。ゆっくり、木立の向こうを歩いていく。モンスターでなきゃプレイヤーだ、そう思って視線を合わせたら……カーソルが、出ない」
「ひっ……」
「ほう……」
面白いじゃねえか
「そんな訳はない。そう思いながら、よしゃあいいのに近づいた。そのうえ声をかけた。そしたら女の子がぴたりと立ち止まって……こっちをゆっくり振り向こうと……」
「も、も、もう、や、やふっ……」
最後のは俺がアスナの口を押さえたから出た音だ。続きが聞きたいからね
「そこでその男は気がついた。女の子の、白い服が月明かりに照らされて、その向こう側の木が透けて見える」
「ーー!!」
叫ぼうとしたが俺の押さえられてて声が出せない……何か犯罪っぽいな。言っとくが同意の上だぞ。キリトと
「女の子が完全に振り向いたら終わりだ、そう思って男はそりゃあ走ったそうだ。ようやく遠くに村の明かりが見えてきて、ここまでくれば大丈夫、と立ち止まって……ひょいっと後ろを振り返ったら……」
「ーーーっ!?」
「誰もいなかったとさ。めでたしめでたし」
ここでアスナを解放してやる。すると今まで叫べなかった分とばかりに拳を振り上げ……そこで静止した
「き……キリト君、り……リン君、あそこ」
俺とキリトの視線がアスナの見ているものを捉える
「う、嘘だろおい……」
「ほう……」
さっきからこれしか言ってない気がするが……とりあえず女の子をじっとみるがカーソルがでない。というわけで近づこうとしたその時、ふらりと少女の体が地面に崩れ落ちた。どさり、という音が耳に届いてくる。おう……質量もあるんだ、と感心したがそれどころではないと気付いた
「あれは……」
目を細めるキリト
「幽霊なんかじゃないぞ!!」
と叫んで走り出したので俺もあとに続く
「ちょ、ちょっとキリト君、リン君!」
幽霊が嫌いなアスナは出遅れたが「もう!!」と言って着いてきた
倒れている少女をキリトが抱き起こしたので俺は少女を観察し始めた
「だ、大丈夫そうなの?」
「「うーん……」」
俺とキリトは首を傾げる。SAO内では人間の生理的活動はほとんど省略されているため呼吸を感じたり、バイタルをみたりはできない
「でもまあ、消滅してない……ってことは生きてる、ってことだよな。しかしこれは……相当妙だぞ……」
「妙って?」
アスナは気付いてないみたいなので俺から言った
「カーソルがでないんだ」
「あ……」
……まず確認しようぜ
「何かの、バグ、かな?」
「さもなくば、本当に幽霊とか?」
「ひっ……」
かなり少女に顔を近付けていたアスナは俺の言葉を受けて後ろに飛び退いた。そして尻餅をついた
「冗談だ。そんなのあり得ないから安心しろ」
「うう〜……」
涙目のアスナ……癒されるわ
「とりあえず、放ってはおけないわ。目を覚ませばいろいろ判ると思う。うちまで連れて帰ろう。……もちろん、リン君もね」
立ち上がってアスナは建設的なことを言った。そして、俺まで巻き込みやがった……。さて明日までに何回砂糖を吐くことになるのやら
アスナのベッドに少女を横にし、毛布をかけておいてキリトとアスナは向かいのベッドに。俺は椅子を持ってきてそこに座った
「まず一つだけ確かなのは、こうしてウチまで移動させられたからにはNPCじゃないよな」
「そう……だね」
NPCは存在座標を一定範囲内に固定されているためプレイヤーの意志で移動させることはできないのだ
「それに、何らかのクエストの開始イベントでもない。それなら、接触した時点でクエストログ窓が更新されるはずだしな。……てことは、この子はプレイヤーで、あそこで道に迷っていた……というのが一番あり得ると思う」
「まだ幽霊って可能性も……おう……わかったからその剣を下ろしてくれアスナ」
幽霊説を唱えた瞬間アスナが剣を出し首もとにあててきた。……正直剣が見えなかった……
「続けるぞ?クリスタルを持っていない、あるいは転移の方法を知らないとしたら、ログインしてから今までずっとフィールドに出ないで、<<はじまりの街>>にいたと思うんだ。なんでこんな所まで来たのかは判らないけど、はじまりの街にならこの子のことを知ってるプレイヤーが……ひょっとしたら親とか、保護者がいるんじゃないかな」
「うん。わたしもそう思う。こんな小さい子が一人でログインするなんて考えられないもん。家族が誰か一緒に来てるはず……無事だと、いいけど」
俺は、そうは思わない。一番可能性があるのはこの子の親がモンスターと相討ちになり死んでしまった場合。二十ニ層は比較的安全とはいえ森にはモンスターがでる。二つ目は親とここまで来てはぐれた場合。この二つ目はまずない。最初に目撃されたのはかなり前だ。それなのに探しに来ているプレイヤーと出会わなかったのは不自然だ。とここまで考えて不思議に思った。今は確証が持てないが少女がプログラムという可能性だ。それならば全て説明がつくがそれはあまりにも突拍子もない考えだろう
「ね、意識、戻るよね」
「ああ。まだ消えてないってことは、ナーヴギアとの間に信号のやり取りはあるんだ。睡眠状態に近いと思う。だから、きっとそのうち、目を覚ます……はずだよ」
キリトの言葉には願望の色があった
「十歳はいってないよな……。八歳くらいかな」
「そのくらいだね……。わたしが見た中ではダントツで最年少プレイヤーだよ」
「そうだな。前にビーストテイマーの女の子と知り合ったけど、それでも十三歳くらいだったからなぁ」
「ふうん、そんな可愛いお友達がいたんだ」
「小動物みたいで可愛いぞ?アスナ、聞いてくれよキリトのやつ……」
「勘違いされるから言うな!たまにメールのやり取りを……それだけで、何もないぞ!」
「どうだか。キリト君鈍いから」
顔を逸らすアスナ。苦笑いの俺
そうして時間は過ぎていく
あれから何種類かの新聞?っぽいものに目を通したが、少女を探している人は見つからなかった
「んじゃ、俺は帰るな」
といい立ち上がろうとしたが
「泊まっていけよ」
「泊まっていってね」
……アスナとキリトに呼び止められた
「いや……寝るところないし」
ベッドは二つ。一つは少女が寝ているアスナのベッド。もう一つはキリトのベッド。どこに寝ろと?
「俺のベッドで寝ればいいだろが」
「俺……そんな趣味はねえぞ」
「ええっ!?キリト君、実は……」
「なわけないだろ!!俺は椅子で寝るから俺のベッドを使えってことだよ」
「冗談だ。いいよ、俺が椅子で寝るから。幸いこの世界じゃ、椅子で寝ても体が痛くならないからね」
「わかった……じゃあ寝ようか」
居間の明かりを消しキリトとアスナは同じベッドに入っていった……えっとブラックコーヒーないかな?目をつむってしばらくして人が動く気配がして目をあけるとアスナが少女を抱きしめ「おやすみ。明日は、目が覚めるといいね……」と言っていた。俺は微笑むと本格的に眠りに落ちた
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