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スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

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第百五十話 ティターンズ強襲

             第百五十話 ティターンズ強襲

ロンド=ベルの十代組のかなりの面々が宴会をしていた。彼等はアクシズの中で派手に飲んでいた。
「おい、飲んでるか?」
シンが皆に声をかける。
「皆飲めよ、もっと」
「飲んでるわよ」
ミリアリアはワインのボトルをラッパ飲みしながらそれに応える。
「安心しなさい」
「何かミリィもお酒強くなったよな」
トールがその横でふと言う。
「ここに入ってから」
「皆そうだね」
サイがそれに応える。
「僕なんてここに入るまでは全然飲まなかったよ」
「俺も」
カズイも言う。
「それがこんなに飲むんだからな。人ってわからないよね」
「全くだ」
イザークはウイスキーをストレートであおっている。
「ロンド=ベルに入るだけでも信じられん話だ」
「そうですよね」
シホも同じウイスキーを飲んでいるが彼女は氷を入れている。
「何か信じられないですよ」
「けれど本当の話なんだよな」
ディアッカは好物の黒ビールであった。
「それもこれもな」
「そうですよね」
ニコルがその言葉に頷く。
「僕なんかまさか助かるなんて思いませんでしたし」
「運命なんだよ、それが」
レッシィがそれに対して言う。
「ここに来るのもね」
「運命、かあ」
アムがそれを聞いてふと呟く。
「あんたも元々敵だったしね」
「そういやそうだったらしいな」
ビーチャがそこで気付いた。
「レッシィさんって最初十三人衆だったんだよな」
「道理で腕が立つ筈だよ」
ドモンも言う。
「敵じゃなくてよかったよ」
「私も十三人衆だったのだぞ」
「そうだったの」
エルはギャブレーの言葉に応えるがあまり真剣な感じのないものであった。
「何か意外」
「私は意外なのか」
「だってギャブレーさんって」
ルーがここで彼に対して言う。
「何処か抜けてるから」
「憎めないんですよ」
イーノはやんわりとした言葉であった。
「相手にいても」
「褒め言葉なのかな」
「少なくともギャブレーさんは嫌われてないですよ」
シンジも一緒にいる。彼は何故かどぶろくを飲んでいる。
「何て言うか」
「何処かの馬鹿と違ってなよなよしていないから」
アスカの言葉はシンジにも向けられているものであった。
「それがいいのよ」
「いいのか」
「そういうこと」
アスカは答える。答えながらブランデーを飲んでいる。
「それにしても効くわね、ブランデーって」
「ソファーの上で胡坐かくのはどうなんだよ」
デュオは彼女にそう突っ込みを入れる。彼はバーボンである。
「いいものじゃないぜ」
「えっ!?」
「それが女か」
ウーヒェイはラオチューを飲んでいる。
「いいとは言えないな」
見れば彼等の周りには酒以外にも色々と食べ物がある。チーズやソーセージに点心があちこちにある。それを食べながらの話であった。
「しかも見えている」
トロワはぽつりと言った。
「ワンピースのせいか」
「言うなら早く言いなさいよ」
アスカは彼の言葉にバツの悪い顔を見せる。
「見せるものじゃないんだから」
「誰も御前のお子様パンツなんか見たくもねえよ」
シンがまたアスカに突っかかる。
「白ばっかりでよ。面白くとも何ともねえ」
「見たのね、シン」
「御前が見せたんじゃねえか」
そうアスカに返す。
「何言ってんだよ」
「黙りなさい!やっぱりあんた!」
「何だってんだよ、俺が!」
「変態よ!このスケベ!」
「御前には興味がねえっつてんだろ!」
売り言葉に借り言葉で返す。彼が悪いのであるが。
「胸もねえしよ!」
「何ですって!」
「実際ねえだろうが!悔しかったらもうちょっと成長しやがれ!」
「やっぱりあんた死になさい!」
「死ぬのは御前だ!」
「何かいつもこのパターンですよね」
カトルは困った顔で勃発した二人の喧嘩を見ていた。
「アスカさんもシン君も」
「いつものことだ」
しかしヒイロの言葉は動じない。
「気にすることはない」
「しかし喧嘩のネタが尽きないわね」
ルナマリアは呆れ顔で二人の喧嘩を見ている。
「シンも」
「あいつは特別だよ」
「そうそう」
ケーンとタップは食べるのに忙しいようである。
「困ったものだな」
ライトは粋に飲んでいる。三人は三人でかなり食べて飲んでいる。
「そういうのは」
「まあ慣れだ慣れ」
「それよりもライトも食えよ」
ケーンとタップは相変わらず食べている。その横ではカミーユが静かに飲んでいる。
「どうかしたんですか?」
そんな彼にシーブックが声をかけてきた。見ればカミーユはあまり酔ってはいない。
「いや、これからのことを考えてな」
彼はそうシーブックに返す。
「大変だろう?ティターンズとの戦いは」
「敵の数ですか」
「数だけじゃない」
カミーユはそれだけを問題にしているのではなかった。
「あいつ等をここで完全に倒さないと」
「また同じですか」
「そうだ。特にシロッコ」
彼はシロッコの名前を出してきた。
「あいつはいちゃいけないんだ。だから」
「カミーユ」
フォウが気遣う顔で声をかけてきた。
「あまり思い詰めないでね」
「ああ、それはわかってるさ」
答えはするがその答えは今一つ切れのないものであった。
「とにかく今は明るい気持ちでね」
ファも言う。
「いいわね」
「ああ。そうさせてもらうよ」
「しかしなあ」
ジュドーがシンを見て言った。
「あいつもよくやるよ」
「喧嘩ばかりな。全く」
トッドは呆れた顔でビールを口に入れる。
「俺でもあそこまで突っかかったりはしなかったな」
「ショウも最初凄かったけれどね」
チャムは笑ってそうショウに声をかける。
「随分大人しくなったじゃない」
「からかうなよ、チャム」
「けれどシンもここに来て随分変わったわ」
マーベルはくすりと笑ってそう述べる。
「かなりね」
「そうですね」
ダバがマーベルのその言葉に頷く。
「最初はもっと凄かったですから」
「ええ」
「それが随分」
「ここの環境がよかったのかしら」
リムルはふと言う。
「やっぱり」
「そうなんだろうな」
ニーが彼女の言葉に頷く。
「だからあいつも」
「あれで喧嘩さえしなかったらね」
キーンはそれが不満であった。
「頼りになるエースなのに」
「何、心配することはないさ」
ガラリアは楽観的であった。
「喧嘩する程仲がいいっていうじゃないか」
「そういうものか」
「そうさ」
笑いながらバーンに返す。
「あれも付き合いのうちさ」
「そうなのか」
「というかバーンさんって」
ふとバーニィは気付いた。
「今まであまり人付き合いとかしなかったのかな」
「そうみたいね」
クリスがそれに頷く。
「何か言葉聞いてると」
「美味いぜ、これ」
「ああ」
オルガとクロトはラクスの作った得体の知れないものを上機嫌で食べていた。シャニはユリカの戦略兵器のようなカクテルをゴクゴクと飲んでいる。
「・・・・・・いける」
「見てアキト」
ユリカがそんな彼等を見て上機嫌でアキトに言う。
「やっぱり私料理の天才みたい。あんなに喜んで食べてくれるんだから」
「そうですね」
ラクスもにこにこと笑っていた。
「作ったかいがありました」
「マジでどうなってるんだ、あいつ等」
豹馬は彼等を見て驚きを隠せない。
「あんなもん食って死なねえのかよ」
「大丈夫みてえだな」
甲児がそれに応える。
「信じられねえけれどよ」
「クスハちゃんのも食べてるわよ」
ちづるも彼等の食事を見ていた。
「凄いわね。しかも食べる量が半端じゃないわ」
「死なないのかしら」
さやかもそれが不思議であった。
「だとしたら凄い丈夫なんだけれど」
「頑丈なのは事実だろうな」
霧生が言う。
「だからあの戦いでも無傷で生き残っていたし」
「それ考えると凄いのね」
メルトランディのミスティもこれには絶句気味であった。
「人間とは思えないわ」
「彼等多分特別ですよ」
レトラーデがそう突っ込みを入れる。
「だってミリアさんもクスハさんの料理は避けるし」
「危険なものからは逃げないといけないわ」
それがミリアの返事であった。
「そうじゃないと何時か死ぬわよ」
「あれは危険物なのかよ」
「では御前が食べてみろ」
ガルドがぽつりとイサムに告げる。
「俺は遠慮する」
「それは俺もだよ。あんなもん食ったらよ」
「しっかし本当に手当たり次第に食ってるな」
ダッカーは三人の食いっぷりに思わず感嘆の言葉を漏らす。
「どうしたもんだよ」
「底なしってやつですね」
フィジカがそう述べる。
「あれは」
「底なしねえ。そんなレベルでもねえぜ、あれは」
ネックスは呆れた顔で見ている。
「シルビーは酒だけだけれどよ」
「私でもラクスさんのお酒は駄目よ」
これは流石に逃げる。
「あれメタノール入ってるみたいだし」
「カクテルに入れないだろ、そんなの」
ヒビキがその言葉に顔を顰めさせる。
「幾ら何でも」
「いえ、あれは」
「間違いありません」
カールとウェルナーが答える。
「あの感じは紛れもなくメタノールであります」
そしてダンも。彼等は決して近寄ろうとはしない。
「よし、あれには近寄るな」
金龍がそう言い伝える。
「いいな」
「了解」
ガムリンが青い顔で答える。
「まあこれでも飲んでろ」
フォッカーがさりげなくウイスキーを皆に差し入れる。
「いいな」
「すいません、少佐」
「恩に着ます」
マックスと柿崎がそれに礼を述べる。
「いいってことさ。なあユウナさん」
「いえ、俺ですけれど」
輝がそれに応える。
「ユウナさんはあっちで」
アズラエルと一緒にカガリにプロレス技を仕掛けられていた。白い下着姿のカガリのキャメルクラッチがユウナを責めていた。アズラエルは延髄斬りを浴びて気絶している。
「死んでます」
「悪い、間違えた」
「似てるからねえ」
ミンがそんな彼等を見て笑う。
「輝とユウナの旦那は」
「ですね」
輝自身もそれを認める。
「何か他人の気がしません」
「そういうのがいるってのはいいもんだ」
グン=ジェムがそう告げる。
「なあ皆」
「全くだ」
ジンがそれに会心の笑みで頷く。彼等もかなりワイルドに食べている。
「俺はそういうのがいないけれどな」
「お、おでも」
いないのもいる。
「しかしまあ何だね」
ムウは彼等の横で一緒に食べていた。
「大所帯だから何か濃い顔触れが揃ってるな」
「そうですね」
彼に応えるフィリスは何か巨大な太った雀を抱いている。
「それは何だ?」
マイヨが怪訝な顔で彼女に問う。
「見たこともないが」
「雀ですよ」
エルフィがそう答える。
「それが何か」
「いや、絶対に違う」
シローがそれを否定する。
「そんな雀は地球圏にはいない」
「ジオンでもよ」
アイナも言う。
「そんな雀は」
「これデボスズメっていうんですよ」
「デボスズメ」
ノリスがジャックの言葉に顔を顰めさせる。
「それは一体」
「愛玩動物の品種改良でできたものさ」
バルトフェルドがそう告げる。
「偶然にね。まあ確かに凄い外見だけれどね」
「凄いなんてものじゃないわね」
エマが絶句していた。
「これって」
「今度から彼等もロンド=ベルに参加しますので」
「また凄いメンバーの参加ね」
カナンも言葉もない。フィリスの言葉に唖然としている。
「それはまた」
「だがそれでもいい」
しかしクインシィはそれを受け入れてきた。
「メンバーは多い方が面白いからな」
「そうだな」
それにシラーも同意する。
「ここまで来ればな」
「まあ俺も賑やかな方がいいぜ」
「ジョナサンも変わったな」
彼の言葉を聞いて勇は言う。
「丸くなったよ」
「そうか。俺はそんなつもりがないがな」
バーボンを片手に言葉を返す。
「けれど変わったかもな」
「それならそれでいい。しかし」
勇はここで周りを見回す。
「皆大分飲んでるな」
「そう?」
ヒメはどちらかというと食べている。
「そうは思わないけれど」
「そういえば」
ふとヒギンズは気付いた。
「タケル達はいないな」
「あいつはこういうとこにはあまり来んやろ」
十三が答える。
「ナイーブでごわす」
「無理強いはしないのがこういう場で大切なことです」
大作と小介も述べる。
「けれど」
しかしめぐみは不満そうな顔をしていた。
「皆いないのはあれね」
「仕方ない」
だが一平はそう返す。
「あいつもあいつで思うところがあるからな」
「俺達は俺達。そういうことだな」
健一は達観したものを持っていた。しかし日吉は少し違っていた。
「けれど。寂しいな」
「仕方ないでごわす」
しかしそれを大次郎が宥める。彼等は彼等で集まっていた。
「こればかりは」
「後で差し入れでもしてやるか」
サンシローは彼を気遣って言った。
「ここはな」
「それがいいな」
リーがそれに賛成して頷いてきた、
「そうですね。ここはオーソドックスに」
「じゃあ俺が」
ブンタとヤマガタケも述べる。彼等も彼等なりに気遣っていた。
「いや、御前は止めておけ」
「何でだよ、ピート」
「ここはあれだ」
ピートは笑って言う。
「年配者に任せよう」
「じゃあナタルさんなんか・・・・・・ぐわあっ!」
「おっと、済まない」
ナタルの左ストレートがシンの顔を直撃した。
「あの光の戦士の変身ポーズの練習をしていた。つい前を見忘れていた」
「あがが・・・・・・」
「絶対嘘だな」
キースはそれを聞いて呟く。
「あの拳は」
「しかしシンもなあ」
ボーマンは仰向けに倒れているシンを見て言う。
「いつもいつも口が滑るからなあ」
「生きてるか?」
スティングはシンを見ていた。
「あのストレートは聞いただろ」
「瞳孔開いてるぜ」
アウルが応えてきた。
「これは」
「死んだかな」
「シン、生きてる」
しかしステラは言う。
「息はある」
「ナタルさんも容赦ねえな」
「つうかあいつが悪い」
スティングとアウルの言葉は容赦がない。
「毎度毎度」
「よく自爆するな、確かに」
「全くだぜ。まあいいさ」
アウルは言った。
「生きてるんならな」
「そうだな。それじゃあ」
「飲みなおすぜ、スティング」
「ああ」
彼等はまた飲みだした。宴はそのまま続き気付けば皆その場に雑魚寝になっていた。ナタルに拳を浴びたシンは当のナタルがいなくなった後も飲み続けその場に崩れ落ちていた。ふと目を覚ますと毛布の中にトランクス一枚でいた。そしてその左右には。
白いブラとショーツのステラが左にいる。右にはピンクのブラとショーツのフレイがいた。
「・・・・・・おい」
シンはフレイが隣にいるのに気付いて声をあげた。
「これは一体どういうことなんだよ?」
「んっ!?」
その声にフレイも目を覚ます。目を覚ますと頭に激痛が走る。
「痛つつ・・・・・・」
「おい、フレイ」
そんな彼女にシンがまた声をかける。
「どうして御前がここにいるんだよ」
「えっ!?どうしてって」
さしものフレイもいつもの元気はない。二日酔いで弱っているのだ。
「何で私こんな格好であんたの横で寝てるの?」
「それは俺が聞きたいよ」
「しかも腕枕で」
気付けばそうなっていた。シンは二人を抱え込む形になって寝ていたのだ。
「どういうことよ」
「ステラは・・・・・・寝てるか」
シンはステラを見て気付いた。
「わからない。しかしな」
「しかし?」
「すぐに離れた方がいいだろ」
「それはそうね」
痛む頭でその言葉に頷く。
「すぐにも」
「何が何なのか今だにわからないけれどな」
彼は言う。
「しかし。相変わらず頭が痛いていうか」
シンも頭を押さえる。彼も二日酔いだった。
「とにかくいらん誤解受けるからな」
「ええ」
「しかし、フレイ」
シンはここで自分の横にいるフレイの身体を見た。
「御前プロポーションいいんだな」
「ありがと。ただ」
「ただ?」
「何もなかったわよね」
フレイはそれを気にしていた。
「私達何も」
「俺も御前も下着は着けてるぞ」
シンはこう答えてきた。
「だからな」
「だといいけれどね」
フレイはそれに応えて言う。
「とにかく。変な誤解を受けるから」
「今更って気もするけれどな」
シンはここで周りを見た。見れば皆銘々滅茶苦茶な格好で酔い潰れている。さながら陸上戦の後のようである。カガリなぞはブラを半分はだけさせてソファーの背もたれのところで海老反りになって寝ている。
「まあとにかく離れてな」
「わかったわ」
フレイはそれを受けてそっと身を離す。そして側にある服を着た。
「これでね」
「ああ」
「とにかくシャワーを浴びてくるは」
「いや、ここは」
しかしシンはここで言った。
「サウナとかの方がいいな」
「サウナなの」
「酒を抜いた方がいい」
彼は言う。
「御前今凄い顔になってるぞ」
「そんなに?」
「ああ。とにかく凄い」
その言葉は本当だった。顔はむくみ瞼は腫れている。目の下にはドス黒いクマまである。髪も乱れあの美人のフレイの姿は何処にもなかった。
「だからだ。いいな」
「わかったわ」
フレイはシンの言葉に頷いた。そうして服を着てその場を後にする。
「やれやれ。じゃあ後で俺も」
シンはそのままステラを抱いて寝たが後でそれを皆に見つかって少しした騒ぎとなった。フレイはフレイで着たのがフィリスの赤服だったので暫く服を交換する羽目になった。酒の後には騒動もあった。後で皆サウナや風呂で酒をクリアーさせ復活したのはお昼近くになってからであった。
アクシズでの時計が夕刻になった頃であった。不意に警報が鳴った。
「ティターンズ!?」
「そうだ」
一同にアムロが答える。
「どうやらこちらに攻撃を仕掛けてきたようだな」
「こっちにですか」
「不思議じゃないだろ?」
そう帰還してきていたタケルに返す。
「彼等だって必死なんだからな」
「いえ、哨戒の時は見なかったので」
タケルが怪訝な顔をしていた理由はそれであった。
「まさかと思いました」
「彼等も馬鹿ではない」
クワトロがタケルに対して述べる。
「それをかいくぐったのだろう。だがそれはもういい」
話を変えさせてきた。
「今はティターンズへの迎撃だ。いいな」
「はい」
タケルはクワトロのその言葉に頷く。
「それじゃあ」
「はい、総員出撃よ」
マリューが応える。彼女は全然酔いは残っていなかった。
「いいわね」
「了解」
こうして酒から復活したロンド=ベルはすぐに出撃した。彼等がアクシズから出た時にはティターンズは既に目と鼻の先にまでいた。
「よいか!」
ジャマイカンが部下達に対して激を飛ばしていた。
「何としてもアクシズを陥落させよ!よいな!」
「勝手なことを言っているな」
それをアレクサンドリアの艦橋にいるガディは苦い顔で聞いていた。
「アクシズがそう簡単に陥落できるものか」
「いや、大丈夫だよ」
しかしそれにファラが答える。
「このザンネックがあればね」
「グリフォン少佐か」
「皆その首断ち切ってあげるからね」
「好きにすればいい」
ガディは彼女にそう告げた。
「だが。あまり派手なことはするなよ」
「わかったよ。それじゃあね」
「ううむ」
ガディはそんな彼女を見て呻いた。
「まずいか?狂気がさらに」
「気をつけておいた方がいいな」
ドレルがそれに答える。
「あのままでは味方も撃ちかねない」
「そうか。やはりな」
「私がフォローに回りましょうか」
「いや」
ザビーネのその申し出は退けた。
「それには及ばん。むしろ貴官等にはそれぞれの部隊の指揮にあたってくれ」
「わかった、それではな」
「了解」
二人はそれに頷く。そうしてモニターから消えた。
「さて。どう攻めるかだな」
「全軍突撃だ!」
その横でジャマイカンが勝手な指示を出していた。
「数では負けてはおらぬ!行くのだ!」
「何度負けてもあれか」
ガディはジャマイカンが叫ぶのを聞いて舌打ちした。
「懲りない男だ。何を見ているのか」
「いや、それでも」
しかしクロノクルがここで言う。
「今が好機。それならば」
「攻めるべきだというのか」
「それが目的ですし」
そうガディに述べる。
「それならば乗るのも宜しいかと」
「ふむ。それもそうか」
その少ししゃくれた顎に右手を当てて述べる。
「ならば我が部隊も攻撃に入る」
「はっ」
「グリフォン少佐はキャノンで砲撃だ。いいな」
「わかったよ」
狂気を漂わせる笑みで頷く。こうして彼等はアクシズへの攻撃に入った。
木星の勢力やクロスボーンの軍をメインにするティターンズは正面からアクシズに攻撃を仕掛けてきた。それを見てカットナルが言う。
「妙じゃな」
「どうしたのだ、カットナル」
それにブンドルが問う。
「いや、敵の顔触れだ」
「顔触れ?そういえばだ」
ケルナグールがその言葉に気付く。
「ジェリド=メサやヤザン=ゲーブルといった者達がおらんな」
ティターンズの誇るエース達が今はいないのだ。かわりにザンスカールやクロスボーンの将兵達が大勢展開していた。
「珍しいこともあるものじゃな」
「考えられることは幾つかある」
ブンドルはここで述べてきた。
「まずは内部分裂」
「それは有り得るな」
カットナルはその言葉に頷く。
「ティターンズも寄り合い所帯になっておるからな」
「そして別の作戦への準備」
「それはないのう」
ケルナグールはそれを否定する。
「最早奴等の相手はわし等だけじゃ。それでどうして」
「若しくは彼等の力を必要としない作戦を用意してきている」
「ならば何だ?」
カットナルはそれに問う。
「その作戦は」
「調べてみる必要があるな」
ブンドルは言った。
「早急にな」
「まずは守りに徹するか」
「フン、軟弱な」
ケルナグールはカットナルの言葉を一蹴した。
「やはりここは攻撃あるのみよ!全軍総攻撃だ!」
「貴様はそれしか言えんのか!」
「いや」
しかしブンドルはここでその目を光らせてきた。
「わかったぞ」
「わかった!?」
「何がだ、ブンドル」
「あれだ」
こう言ってモニターのスイッチを入れた。そこにはザンネックが映っていた。
「あのモビルスーツだ」
「あれか」
「あれで何を」
「おそらくかなり大掛かりな攻撃を仕掛けてくるつもりだ」
「アクシズにか」
「そうだ」
そう二人に答える。
「それを防ぐ為には今は積極的に攻撃を仕掛けるべきだ」
「ほれ見ろ」
ケルナグールはここでカットナルにしてやったりといった顔を見せてきた。
「わしの言った通りではないか」
「たまたまであろう」
「たまたまでもじゃ」
ケルナグールはさらに言い返す。
「わしの言う通りじゃ。違うか?」
「うぬう」
「では決まりじゃ。全軍攻撃開始!」
「あのモビルスーツだが」
ブンドルはそこに注視していた。
「さて、どうしたものか」
「放っておくわけにもいくまい」
冷静に戻ったカットナルが言う。その手にはトランキライザーがある。
「誰を行かせるかだが」
「僕が行きます」
ウッソが志願してきた。
「ほう、少年」
ブンドルは彼の姿を見て声をあげた。
「勇敢だな。しかしいいのだな」
「構いません」
ウッソはブンドルに答える。
「誰か行かなくちゃいけないんですから。だったら僕が」
「よし、わかった」
ブンドルはその言葉を受けた。
「なら行くのだ。いいな」
「はい」
「しかしだ」
だがブンドルはここで付け加えてきた。
「何か」
「あのモビルスーツはザンネックだったか」
ふとモビルスーツについて述べてきた。
「ええ、そうですけれど」
「遠距離射撃が主体だ。ならば」
彼は言う。
「バスターがいいのだが」
「バスターですか」
「V2ガンダムは換装が用意だった筈だ。すぐに換装し給え」
「わかりました」
ウッソはその言葉に頷いた。
「その間の足止めだが」
「俺が行く」
「俺もだ」
オデロとトマーシュが名乗りをあげてきた。
「君達がか」
「ああウッソ、その間は任せろ」
「あのザンネックは俺達が止める」
「オデロ、トマーシュ」
「ふむ、ならば決まりだな」
ブンドルは二人の言葉を聞いて断を下した。
「では君達に任せる。いいな」
「おう」
「じゃあな、ウッソ」
「うん、僕もすぐ行くから」
「互いを気遣いながら戦場を駆ける少年達」
ブンドルはふと言う。
「その友情こそが」
薔薇を掲げ、そして。
「美しい・・・・・・」
「有り難うございます」
「むっ」
ウッソに有り難うと言われ思わず声をあげる。
「僕、必ずファラさんを止めてきますので」
「わかった。では期待しているぞ」
「はいっ」
ウッソは換装に向かった。オデロとトマーシュが足止めに向かう。ブンドルはそれを見届けながら上機嫌で笑っていた。
「見事だ」
彼は言う。
「あれだけの立派な少年は見たことがない。将来が楽しみだ」
「確かにな」
カットナルがその言葉に同意して頷く。
「御主に礼を述べるのだからな」
「何が言いたい」
「普通はあそこでスルーするからな」
「ケルナグール、貴殿とあの少年を一緒にするな」
「無論一緒にはせんわ。そもそもだ」
ケルナグールも話に入ってきた。三人でそれぞれ言い合う。
「御主も最近パターンを考えてみよ」
「様式美だ」
しかしこう言って聞こうとはしない。
「私には私の流儀があるのだ。干渉しないでもらいたい」
「別に干渉はせんがな」
カットナルは言う。
「しかしもう少しバリエーションが豊富でもいいのではないのか」
「全くだ」
そんな話をしながら三人も戦いに向かっていた。既にティターンズのモビルスーツと激しい戦いに入っている。
「そら、左だ!」
ケルナグールが叫ぶ。
「左に火力を集中させよ!旋回しながらだ!」
作戦指揮自体はまともである。彼等もまた真面目に戦っていた。
アンナマリーはザビーネと戦っている。ダギ=イルスでザビーネのベルガ=ギロスに攻撃を浴びせる。
「これで!」
「何のっ!」
ビームサーベルを自身のビームサーベルで受け止めた。
「まだまだ甘いな!」
「くっ!」
「しかしだ」
だがザビーネは言う。
「アンナマリー=ブルージュ、変わったな」
「もう貴方のことは考えなくなったから」
アンナマリーはそうザビーネに返す。
「それだけよ」
「それだけか」
「ええ」
また答える。
「今の私の居場所はロンド=ベル」
そのうえでまた言う。
「貴方のところでもクロスボーン=バンガードでもない!」
「私の今の居場所はティターンズ」
ザビーネはそれに応える形で述べる。
「ならばそのティターンズの為に戦ってみせる!」
「そう、それなら!」
「容赦はしないぞ」
彼はアンナマリーを見据えていた。
「いいな」
「こちらこそ!」
二人は死闘に入った。その周りでも激しい戦いが行われティターンズはドレルとガディが実質的な指揮にあたっていた。
「ええい、何をしておるか!」
ジャマイカンはその中で一人喚いていた。
「数はこちらの方が上なのだぞ!それで何故勝てぬ!」
「まとまって動け!」
ドレルはジャマイカンの言葉を遮るようにして指示を出していた。
「敵の質はこちらより遥かに上だ!それを忘れるな!」
「はい!」
「ちっ」
ガディはその中で一人舌打ちしていた。
「将の質が違い過ぎるか」
ジャマイカンとロンド=ベルの指揮官達を見ての言葉であった。
「太陽とすっぽんだな」
「すっぽんですか」
「そうだ。今回も負けだ」
彼はそれをもう見抜いていた。
「後はどれだけ損害を少なくするかだけだ」
「ですが艦長」
部下達がガディに言う。
「もうすぐザンネックが攻撃を仕掛けます」
「ザンネックキャノンならばアクシズにもダメージを」
「上手くいくとは思えん」
しかしガディはそう返すのだった。
「ファラ=グリフォン、あの女は」
「何か」
「狂っている。そんな女に作戦を任せるとはな」
彼はファラの異常性を見ていた。そしてその異常性は不幸にして現われることとなったのであった。
オデロとトマーシュはファラに向かう。しかしその二人の前にファラ直属のモビルスーツ部隊が現われた。
「ここは行かせん!」
「どけよ!」
オデロはその彼等に攻撃を仕掛ける。
「御前等の相手をしている暇はないんだ!」
「オデロ、御前は右に行け!」
トマーシュはそうオデロに言う。
「俺は左だ!まずはこいつ等を退けるぞ!」
「ちっ、足止めに来たのに足止めされるのかよ!」
「仕方ない!まずはこいつ等だ!」
「忌々しいがわかった!」
その言葉に従うしかなかった。二人は今いる敵に向かっていた。
ファラは笑っていた。笑いながらアクシズを見据えていた。
「今その首」
ザンネックキャノンを構える。
「断ち切ってやるよ!」
攻撃を放とうとする。しかしそのキャノン砲が突如として吹き飛ばされてしまった。
「誰だい、邪魔をするのは!」
「ファラさん!」
ウッソが戦場に現われた。既にバスターへの換装を終えている。
「やらせません!」
「あの坊やかい」
ファラは彼の姿を認めて言う。
「いいところで出会ったねえ」
そう言って目を細める。目には酷薄な光が宿っている。
「覚悟はいいね」
「だから来たんです」
そうファラに返す。
「やらせない!皆は!」
「どいつもこいつも首を断ち切ってやるよ!」
ファラは叫ぶ。
「このザンネックでね!」
別のキャノンを取り出してきた。それでウッソを狙う。
「死ぬんだよ!」
「僕は死なない!」
ウッソは左に動きそれをかわしながら叫ぶ。
「この戦いを何があっても終わらせるんだ!」
「小賢しいんだよ、その言葉が!」
二人は砲撃戦に入った。これによりアクシズへの攻撃はなくなった。それを最初に気付いたのはガディであった。
「これまでだな」
彼は言う。
「ファラ=グリフォン、やはりな」
「どうされますか?」
「撤退だ」
そう部下に告げる。
「アクシズの破壊は不可能になった。これ以上の戦いは損害を無駄に増やすだけだ」
「わかりました。それでは」
「さて、問題は」
ここで忌々しげな顔を見せる。
「あいつだが」
「ダニンガン少佐は既に後方におられます」
「どうしたのだ?」
「ヒステリーで前後不覚になりまして。それで」
「好都合といったところか」
それを聞いて憮然としながら述べた。
「なら話は早い。撤退だ」
「はい」
「そうか、撤退か」
ザビーネとドレルはそれを聞いてすぐに動いた。ザビーネはアンナマリーに対して言う。
「また会おう」
「下がるというのか」
「そうだ、決着は必ずつける」
彼は言う。
「それまで預けておく」
そう言って戦場を去る。モビルスーツ部隊はそのザビーネとドレルの指揮の下戦場を離脱する。ファラも部下達に連れられる形で戦場を離脱しようとしていた。
「覚えておくんだね、坊や」
ウッソに対して言葉をかける。
「今度会った時こそその首貰うよ」
最後にこう言い残して。彼女も戦場を離脱するのであった。
ロンド=ベルはアクシズを守り抜いた。これで次の作戦に移ることが可能になった。
「メール=シュトローム作戦だ」
シナプスは戦いを終えて集まった面々に対して告げる。
「ゼダンの門攻略作戦の名称が決まった」
「メール=シュトロームですか」
カミーユがその言葉を復唱する。
「つまり」
「宇宙の渦」
クワトロも言う。
「そこで戦いか」
「そうだ」
ブライトは彼に頷く。
「ゼダンの門に攻撃を浴びせる。グリプスの宇宙の渦での戦いとなるからだ」
「わかった。それでは」
「うむ。すぐに作戦準備に取り掛かる」
「ゼダンの門か」
それを聞いてハマーンが考える顔を見せてきた。
「どうしたの、ハマーン」
「うむ、少し考えるところがある」
ハマーンはそうマリューに返したうえで述べてきた。
「ゼダンの門は堅固だ。あれはかつてのア=バオア=クーだ」
「ああ」
これはあまりにも有名であった。ティターンズはサイドスリーであるジオン共和国と友好関係にある。このことからティターンズの正体はジオンであるとさえ言われている程である。ティターンズは彼等からア=バオア=クーを譲り受けそれをグリプスに移転させてルナツーと共に一大軍事拠点としているのである。地球を追われたティターンズが今まで強大な軍事力を持っていたのは木星の資源とこのゼダンによるものだったのだ。
「あれを破壊するのに一つ考えがある」
「考えが」
「そうだ。アクシズをぶつける」
ハマーンは言った。
「要はあれを無力化させればいいのだろう。どうだ?」
「いや、残念だけれどそれは無理なんだ」
しかしここでユウナが言ってきた。
「何故だ?」
「あれは攻略した後で連邦の軍事基地にするつもりなんだ」
彼はそうハマーンに述べてきた。
「それでね。破壊するのはちょっとね」
「そうなのか」
「アイディアとしては面白いけれどね。それで」
「わかった」
そういう理由であれば仕方がない。ハマーンも納得した。
「仕方ないな。それでは」
「うん」
「ではこのまま戦力をゼダンに向けるのですね」
「そうなるわね」
マリューにタリアが答えた。
「また洒落にならない戦いになるな」
そう語るフォッカーの顔は案外明るい。
「武器はたんまりと欲しいものだな」
「既にアクシズに多量の物資が送られようとしている」
グローバルが言う。
「その補給を受け次第だ」
「よし、それじゃあ」
「次の出撃がメール=シュトローム作戦の発動になる」
ブライトは今度はジュドーに述べた。
「わかったな」
「よし、しかしよ」
ジュドーはここでふと気付いたことがあった。
「どうした?」
「いやさ」
そのうえで彼は言う。
「あれだよな。アクシズをゼダンにぶつけたらさ」
「ああ」
「破片が飛び散ってえらいことになるよな」
彼はそれについて述べる。
「やっぱり」
「大変なんてものじゃないな」
ショウがそれに応える。
「だからさ、ハマーンさんよ」
「止めろということだな」
「やっぱりな。それは」
「わかった。もうそれは退けてある」
「了解。まあ確かに面白いか」
ジュドーもそれは認めた。
「そういうやり方もな」
「そうだな。しかしな」
トッドがここで言う。
「敵がやって来たらって思うとぞっとするな」
「それはな。ちょっと考えたくはないな」
「だろ?それだけは勘弁して欲しいぜ」
トッドは笑いながら述べる。
「コロニー落としとかもな」
「それですけれど」
「ああ」
エイジが前に出て来た。
「そういう作戦を好む者達がバルマーにはいます」
「ユーゼスみたいなの?」
アヤがそれに問う。
「あんな感じで?」
「いえ、彼とはまた違います」
しかし彼はそれを否定する。
「バルマー外宇宙方面軍司令官であるハザル=ゴッツォと彼の指揮下にあるグラドス軍です」
「グラドス」
「ええ」
エイジは答える。
「グラドスは元々バルマーの殖民惑星でして。かなり地位が高いのです」
そう皆に説明する。
「ペンタゴナと同じ立場ですが地位はより上で」
「それは聞いたことがあるね」
レッシィがここで答える。
「同じ十二支族の一つだったね」
「ええ、そうです」
エイジは彼女にも答えた。
「ですがグラドスの方が優遇されているのです、ポセイダル家よりも」
「理由は?」
ダバはその優遇の理由を尋ねた。
「どうして彼等が」
「それは僕にもわかりません。ですがグラドス人達はそれを鼻にかけているのです」
「嫌な奴等みたいだな」
マサキはそれを聞いて顔を顰めさせた。
「話を聞くとよ」
「少なくとも評判はよくないです」
エイジもそれを認める。
「何故ならハザルと彼等は一般市民を巻き込んだ戦いを平気で行うからです。だから」
「そういうわけか」
「はい」
ブライトに対して答える。
「非道な行いも多いです。彼等はそうした作戦も多く使ってきました」
「つくづくバルマー帝国ってのはとんでもない国だね」
万丈はそれを聞いて述べた。
「前の戦いのユーゼスといい。しかし」
言葉を続ける。
「そのグラドスってのはどうも非道さではユーゼスより上みたいだね」
「ええ、確かに」
エイジはその言葉にも頷く。
「かなりのものです」
「やっぱりね。救いがないね」
それを聞いたうえでまた言った。
「そんなのだと」
「他の星の文化も破壊しますし」
「何だ、そりゃあよ」
忍はそれを聞いてさらに顔を顰めさせた。
「シャピロでもそんなことしねえぞ。最低じゃねえか」
「全くだね」
沙羅もそれに同意する。
「何処の悪党だよ、そりゃ」
「けれどそんな連中が相手だとさ」
「大変なことになるな」
亮は雅人に言う。
「一般市民や施設を守らなくてはならなくなる。そしてそこに兵を割かれ隙を与える」
「だからっつってもな」
忍はまた言った。
「一般市民を守らねえなんてのは論外だからな」
「その通りだ、藤原」
アランはその言葉を聞いて納得したように頷いた。
「一般市民を守ることが我々の使命なのだからな」
「言うまでもねえだろ。わかったぜ」
忍はその言葉を聞いたうえで述べる。
「そのハザルって野郎もグラドスの奴等もぶっ潰すべき悪党だぜ」
「はい」
それに答えるエイジの顔は晴れないものがあった。
「その通りです」
「では各員それぞれ整備や点検に入れ」
シナプスが言う。
「これまで連戦だったからな。それに今度は大掛かりな戦いだ」
「ええ」
「わかってますよ」
彼等はそれに答える。そのうえでそれぞれの愛機に戻るのであった。
整備班も一緒である。アストナージは忙しい状況に追い込まれていっていた。
「全くよお」
彼は右に左を歩き回りながら言う。
「何でこんなに忙しいのかね」
「だからこそですよ」
そんな彼にセランが声をかける。
「楽しいじゃないですか」
「その言葉、後悔することになるぜ」
「それだったらもうとっくにしてますよ」
セランはにこりと笑ってアストナージに返した。
「だってロンド=ベルは色々なマシンがありますから」
「そうだよなあ」
キャオがそれに応える。
「ヘビーメタルだけじゃねえしな」
「他にも一杯ありますから」
「やりがいがあるというものです」
ギャリソンがにこりと笑って述べる。
「おかげでワックスがけが楽しくてなりません」
「ワックスがけねえ」
アストナージはここで目の前のニューガンダムを見た。それは山のように聳え立っていた。
「そういやあまりしてねえな」
「そぷですね」
セランは今度はアストナージに同意してきた。
「どういうわけか」
「そういやよ」
アストナージはふと気付いたようにまた口を開いた。
「あれどうしてあるんだ?」
「あれ?」
「ほら、あれだよ」
指差した方には三つのモビルスーツがあった。
ジオンのザクにガンタンク、ザクタンクであった。彼はそれを指差して言うのであった。
「どうしてここにあるんだ?」
「あれですか」
「そうだよ。気付いたらあるんだけれどよ」
「あれ俺が集めたんですよ」
そこにバーニィがやって来て述べた。
「御前がか」
「はい、アクシズで手に入れまして」
「ザクはわかるけれどよ」
アストナージは後の二つも見ていた。
「ガンタンクなんて今頃よくあったな」
「ええ、おかげで驚きましたよ」
バーニィはにこにこと笑いながら述べてきた。
「ザクタンクだって。凄いですよね」
「あれっ、懐かしいね」
そこにハヤトがやって来て言う。
「ガンタンクじゃないか」
「はい、アクシズにあったんで」
バーニィは彼にも声をかける。
「それで貰ったんです」
「これ動かすのが大変だったんだよ」
「そうなんですか」
「だってあれだろ」
彼は言葉を続ける。
「下がキャタピラだからさ。やっぱり」
「それがいいんですよ」
だがバーニィはそう主張する。
「あのアンバランスさが」
「そうかもな」
アストナージもそれに同意して頷く。
「確かに発想は面白いよな」
「でしょ?だから」
「しかしだ」
だがアストナージはここで釘を差してきた。
「まさかこれで戦場に出ないよな」
「駄目ですか?」
「幾ら何でも無理だぞ」
そうバーニィに言う。
「ガンタンクじゃティターンズを相手にするのはな」
「ですか」
「御前はザクⅢに乗ってろ」
こう言い返す。
「ザクが好きなんだろ?」
「ええ、まあ」
これは変わらない。バーニィにとってザクは絶対のものなのだから。
「じゃあいいじゃないか、それで」
「旧ザクやクワトロ大尉のザクとかは」
「本当に好きなんだな」
ハヤトもそれを聞いて目を丸くさせる。
「いや、感心したよ」
「有り難うございます」
「ハヤトさん、甘やかさないで下さいよ」
しかしアストナージがここでまた言う。
「こいつは単なるマニアなんですから」
「マニアでもそこまで情熱を入れているのはいいよ」
それでもハヤトはバーニィを肯定する。
「いや、本当に」
「ですかね」
「とにかくアストナージさん」
バーニィは言う。
「ザクⅢの整備は是非協力させて下さいね」
「ああ、それはな」
彼としても願ったりな話であった。断る理由はない。
「頼むぜ」
「はいっ」
こうして整備は進められていく。ロンド=ベルはいよいよティターンズとの最後の戦いに向かおうとしていた。

第百五十話完

2007・3・11


 
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