スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇
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第百四十九話 コロニーレーザー
第百四十九話 コロニーレーザー
ネオ=ジオンが敗れ解散したという話はティターンズにも伝わっていた。ジャミトフはそれを受けてバスクだけでなくシロッコも集めて話をしていた。
「遂に我等だけになったな」
「はい」
シロッコがジャミトフに答える。
「我がティターンズと」
「あのロンド=ベルだけに」
バスクも言った。三人は今ジャミトフの執務室の椅子にそれぞれ三人座っていた。
「そうだ、あのロンド=ベルとの最後の戦いの時が来た」
「その通りです」
またバスクが述べた。
「いよいよ戦いの時です」
「そうだ。それを考えると」
ジャミトフは二人に述べる。
「レクイエムを失ったのは大きかったな」
「残念ですが」
「ジブリールも生きていれば」
バスクはシロッコと違い顔を顰めさせていた。シロッコは至って涼しい顔をしている。
「あの男はあれが限界だったのでしょう」
シロッコはその顔でそう述べる。
「所詮は」
「所詮は、か」
「そこそこ使える男ではありましたが」
シロッコはまた述べた。
「やはりあれ位があの男のやれることだったのです」
「惜しい駒だったな」
ジャミトフはそう評した。
「ブルーコスモスの勢力も」
「ブルーコスモスの勢力はその残りを全てゼダンの門に集結させました」
バスクが答える。
「かなりの損害でしたがそれも回復させました」
「そうか」
「はい。今尚我が軍は連邦軍に匹敵するものがあります」
「しかし切り札がない」
「いえ、あります」
バスクはまた言った。
「我等にはあれが」
「あれか」
「はい、あれを前面に出しましょう」
バスクはそう提案してきた。
「そしてロンド=ベルを」
「できるのだな」
「いえ、閣下」
バスクは語気を強めて言ってきた。
「我等も後がありません。ですから」
「やり遂げるしかないか。なら」
「はい。ここはやはり」
「では私もジュピトリスを出撃させます」
シロッコが述べてきた。
「それで宜しいでしょうか」
「出るのだな」
「はい」
シロッコは答えた。
「おそらくロンド=ベルも出るでしょう。ですから」
「よし、ならば出るがいい」
ジャミトフはシロッコにも述べた。
「よいな」
「わかりました」
「何ならばコロニーレーザーで吹き飛ばしてもよい」
ジャミトフはこうも言った。
「よいな」
「はっ」
こうしてティターンズはゼダンの門からコロニーレーザーを出してきた。そのことはロンド=ベルにもすぐに伝わったのであった。
「今度はコロニーレーザーか」
アムロはそれを聞いて呟いた。
「またしても、というところですね」
カミーユがそれに続いて述べる。
「レクイエムに続いて」
「今度は楽なんじゃねえの?」
ジュドーがふと言った。
「前のレクイエムに比べたらよ」
「いや、それはどうかな」
シーブックがそれに懐疑的な言葉を述べてきた。
「レクイエムは部隊を狙うのには不向きだったけれどコロニーレーザーは」
「そうだな」
その言葉にコウが頷く。
「コロニーレーザーは敵を狙うのにも敵している。だから」
「下手をしたら僕達もってことですね」
ウッソが言う。
「そうだ。だからここは」
「コロニーレーザーに向かうということですね」
カミーユはアムロの言葉に問うてきた。
「そうですね」
「そうだ。どちらにしろこのまま放ってはおけない」
アムロの考えは決まった。
「どう思う?ブライト」
「その通りだ」
ブライトもアムロの考えに賛同してきた。
「ロンド=ベルだけではない。スペースノイド全体を人質に取られていることにもなる」
「それでは決まりだな」
「攻略だ」
ブライトははっきりと告げた。
「わかったな」
「よし、では次はティターンズだ」
アムロが他の者に告げる。
「それでいいな」
「了解」
「それじゃあ」
こうしてロンド=ベルはコロニーレーザーに向かうことになった。コロニーはゼダンの門の遥か前方に出て来ていた。周りにはティターンズの大軍が展開していた。
「へっへっへ、来やがったぜ」
ヤザンはロンド=ベルの姿を見て言う。彼はいつものハンビラビに乗っていた。
「予想通りだな」
「そうだね。けれど速いね」
ライラもそこにいる。見ればティターンズの主立ったパイロット達はもうそこにいた。
「思ったよりね」
「速くても遅くても変わりはない」
ジェリドは述べる。
「あいつ等を倒すことはな」
「威勢がいいもんだな、相変わらず」
ヤザンが彼に声をかける。
「戦えればいいってわけか」
「御前とは違う」
しかしジェリドはそうヤザンに返す。
「俺はカミーユさえ倒せればそれでいい」
「そうかよ」
「そうだ、カミーユ」
前方にいるロンド=ベルを見据える。そこにはゼータツーもいた。
「いるな。感じるぞ」
「むっ」
カミーユはジェリドの気を察した。直感で読み取る。
「ジェリド・・・・・・それだけじゃない」
「ほほう」
ジュピトリスもいた。そこにシロッコがいた。
「カミーユ=ビダンか。いるな」
「シロッコ様」
後ろに控えるサラが彼に声をかける。
「カミーユ=ビダンもいるのですか」
「そうだ。しかし私は今回は出ない」
「出撃されないのですか」
「サラに任せよう」
そう告げた。
「期待していいか」
「お任せ下さい」
サラはシロッコに言った。
「ここは是非共」
「わかった。では出るがいい」
サラに顔を向けて述べる。
「手柄を待っているぞ」
「はい」
サラも出撃する。ジュピトリスは後方にいる。隣にはドゴスギアもいる。バスクだけでなくジャマイカンも一緒であった。彼は自分の艦からわざわざバスクのところに来ていたのであった。
「閣下、ロンド=ベルが動いてきました」
彼はバスクにそう声をかける。
「正面から来ます」
「引かぬつもりか」
「はい、おそらくは」
「ならばよい。十分だ」
バスクは言った。
「十分だけ持ち堪えるのだ」
「十分ですか」
「そうだ、待っていれば時が来る」
また言う。
「そしてコロニーレーザーで」
「一挙に、ですか」
「貴官も自分の艦に戻れ」
バスクはジャマイカンに告げる。
「いいな」
「わかりました」
ティターンズも迎撃態勢に入る。こうしてロンド=ベルとティターンズは戦闘に入ったのであった。
「カミーユ!」
ジェリドは真っ先にカミーユに向かう。その乗機はやはりジ=オであった。
「今度こそ御前を!」
「ジェリド!やはりここでも!」
「御前さえ倒せば俺は!」
ジェリドはビームライフルを放ちながらカミーユに言う。
「壁を越えられるんだ!」
「それは御前の勝手な思い込みだ!」
カミーユはジェリドのその攻撃をかわす。そして反撃に転じた。
「そんな思い込みは消し去ってやる!」
「御前に消されるつもりはない!」
ジェリドはそのカミーユのビームをかわす。かわしながら今度はビームサーベルを抜いてきた。
「逆に俺が御前を!」
「やらせるか!」
ジェリドのビームサーベルを受け止める。
「俺は戦うんだ!御前みたいな奴の業を消す為に!」
「業だと!」
「そうだ!」
カミーユは叫ぶ。
「人の業!それがわかったからだ!」
「人の業だと!」
「御前はまだわからないのか!」
カミーユはジェリドに攻撃を仕掛ける。しかしジェリドもそれを受ける。
「自分自身を取り囲んでいるものが!」
「わかったらどうだというのだ!」
ジェリドは遮二無二繰り出されるカミーユの攻撃をビームサーベルで全て受けている。受けながら応える。
「俺は御前を!」
「わからないならわからせてやる!」
カミーユはまた叫ぶ。
「ここでな!」
「ならここで倒す!」
カミーユに向かって体当たりを仕掛ける。
「くっ!」
「俺自身の為にな!」
二人は激しい戦いに入る。その横ではエマとカツがレコア、サラと戦っていた。
「レコア、まだわからないのね」
「わかっていてもわかっていなくてもいいのよ」
レコアはそうエマに述べる。
「私の居場所はもう一つしかないのだから」
「そう」
エマは目を伏せてそれに応える。
「戻るつもりもないのね」
「戻れないわ。そう言えばわかるかしら」
「わかるわ」
エマはそうレコアに返した。
「私も女だから」
「有り難う」
レコアはエマのその言葉に礼を述べてきた。
「けれど。だから」
「そう。そこにいるのね」
「因果なものね。こうしてまた敵味方になって」
「仕方ないわ。けれど」
そのうえでエマはレコアに言う。
「遠慮はしないわ。これは戦いだから」
「ええ、こっちもよ」
レコアも彼女に言葉を返す。
「行くわよ」
パラス=アテネの大型ミサイルを放つ。エマはそれをビームライフルで撃ち落とす。
「さあ、行くわよ!」
二人の戦いがはじまる。その横ではカツとサラが戦っていた。
「サラ、まだ君は!」
カツはサラに攻撃を仕掛ける。しかしそれはサラに何なくかわされた。
「ビームライフルなら!」
「かわせるっていうのか!」
「見えるわ」
サラはそうカツに返す。
「だから!」
反撃を仕掛ける。今度はカツがかわした。
「僕にだって見える!」
そのうえで言葉も返す。
「だから君にも!」
「勝てるっていうの!?」
「そうだ!これで!」
今度はインコムを放つ。それでサラの動きを止めようとする。
「やらせない!」
「それはこっちが!」
サラはそのインコムから放たれるビームを放つ。ファンネルに匹敵する攻撃だったがかわしたのだ。
「言う言葉よ!」
「サラ!君もティターンズのことはわかっているんじゃないのかい!」
攻撃をかわされたカツは咄嗟にサラに問うた。
「それなのにどうして!」
「それでもよ!」
サラはそう返す。
「私はパプテマス様の側にいるわ!何があってもね!」
「君は騙されている!」
そうサラに言う。
「早く目を覚ますんだ!」
「目を覚ましてはいるわ」
これがサラの返答であった。
「パプテマス様は私を騙してはいないわ!だから!」
「くっ、どうしてわからないんだ!」
「わかっていないのは貴方よ!」
またカツに攻撃を仕掛ける。
「一方的な見方ばかりで!」
「それは君の方だ!」
カツはそれはわからなかった。
「どうして!そこまで!」
「男にはわからないわ!」
今度はこう述べる。
「女のことはね!」
ニュータイプやそうした問題ではなかった。二人は今男と女、相反するものを見て言い合っていた。それはコロニーの前でも同じであった。
ウッソとカテジナがそこで戦っていた。カテジナは執拗なまでにウッソに攻撃を浴びせる。
「ここで!本当に!」
「カテジナさん!このコロニーレーザーが何に使われるのかわかってるんですか!」
ウッソはカテジナにそう問う。
「わかっているなら!」
「面白いじゃない」
しかしカテジナはウッソに対して凄みのある笑みで応えてきた。
「えっ」
「コロニーで宇宙の人の命を全て握る。いいことだわ」
「馬鹿な、そんなことをしたら」
「世界は汚れきっているわ、ウッソ」
カテジナはそう彼に告げる。
「それはわかるでしょう?今までのことで」
「いえ、わかりません」
「何ですって!?」
「汚れていても綺麗なものも一杯ある!だから!」
「何時の間にそこまで小賢しく!」
カテジナはその言葉に激昂してきた。
「小賢しい子供はいらないわよ!」
ビームライフルを乱射する。それでウッソを仕留めようとする。
「そんな子は!」
「貴女はまだ!」
二人の戦いも続く。その横ではオデロとトマーシュがクロノクルやファラに阻まれて前に進めなくなってしまっていた。オデロはこの状況につい舌打ちをする。
「チッ、まずいぜこれは」
「そうだな。このままだと」
トマーシュもそれに応える。
「コロニーのエネルギーが充填していってるわ」
ジュンコはコロニーの中を見ていた。既にかなりの光が集まっている。
「このままだと」
「誰かいないか!?」
オリファーが手の空いている者を探す。
「このままだと」
「駄目よ、皆それぞれの相手を前にしているわ」
マーベットが彼に答える。
「残念だけれど誰も」
「嬉しいねえ」
ファラが彼等を見て不気味な笑みを浮かべていた。
「こんなに死にたいのがいて」
ザンネックキャノンを放つ。それを見てオリファーが叫ぶ。
「散れ!」
皆それを受けて慌てて散開する。それまでいた場所が光に貫かれた。
「危ないなんてものじゃねえぜ、おい」
ビルギットはその光を見て言った。
「しかも時間がないなんてよ」
「いえ、あるわ」
しかしここでアンナマリーが言う。
「あるのかよ」
「ええ、ジュドー」
彼女はジュドーに声をかけた。
「いける?」
「コロニーをハイメガキャノンでぶっ放せっていうんだな?」
「そうよ。できるかしら」
「フルパワーなら何とかな」
そう彼女に答える。
「やってみせるぜ」
「じゃあお願いするわ。ハイメガキャノンなら」
「お願いします、ジュドーさん」
ウッソも彼に声をかける。
「僕は今は」
「ウッソ、気を抜くんじゃねえぞ」
ジュドーはそうウッソに告げる。
「相手が洒落にならねえんだら余計にな」
「はい」
ウッソはそれに頷く。彼は何とかカテジナの相手をしているといった状況であった。
ジュドーはコロニーに向かう。その穴はハマーンが埋めていた。
「ここは通しはせん!」
ファンネルを全て放つ。それは死の花びらであった。
Gフォートレスになりコロニーに向かう。そこに来るとすぐに変形に入る。
間も無く時間であった。バスクはドゴス=ギアの艦橋で時間を見ていた。
「後何分か!」
「二分です!」
参謀の一人が告げる。
「あと二分で発射可能です!」
「よし、勝ったぞ!」
バスクはそれを聞いて叫ぶ。
「我がティターンズの勝利だ!」
「むっ」
しかしシロッコは違うものを感じていた。その頭脳にあるものが煌いた。
「来たな」
「どうしました、シロッコ様」
部下の一人が呟いた彼に問う。
「急に」
「この戦い、失敗するな」
彼はそうその部下に告げた。
「おそらく」
「何故ですか?」
「来たからだ」
そう部下に述べる。
「ニュータイプがな。剣を持って」
「剣を」
「だがそうはさせん」
シロッコは言う。
「まだティターンズには負けてもらっては困る。いいか」
そのうえで指示を出す。
「砲撃だ。コロニー前方を狙え」
「砲撃ですか」
「そうだ、そこにダブルゼータが来る」
彼は告げる。
「それを狙え。いいな」
「わかりました」
部下達はそれに頷く。そして攻撃をそこに向けようとする。
しかしそこにまた一人来た。それはプルとプルツーであった。
「行くよ、プルツー!」
「わかってる!」
プルツーは彼女に応える。二人のキュベレイはジュピトリスに攻撃を仕掛けてきた。
ファンネルを同時に放つ。それでジュピトリスの動きを止める。
「振り切れるか!?」
「難しいです」
ジュピトリスの艦長がシロッコに応える。
「敵の攻撃が予想以上に激しく」
「そうか」
「残念ですがこのままだと」
「厄介なことだ」
シロッコは普段の落ち着いた様子をかなぐり捨てて顔を歪めさせる。
「だがジュピトリスを失っては元も子もない」
「はい」
「防げ。いいな」
「わかりました」
仕方なくここは二人からジュピトリスを守ることにした。その間も時間が過ぎる。
「あと一分だな」
ジャマイカンはまた時間が過ぎたのを見て笑う。
「いよいよだ。これで我々は」
「はあ」
部下は浮かない顔で彼に応える。彼の部下であることが嫌なのだ。
「勝てるぞ。いいな」
「わかりました。ですが」
「ですが。何だ?」
「コロニー周辺でも激しい戦いが行われています」
彼はそう告げる。
「それがどうした」
「守りきれるかどうか」
「馬鹿者!」
ジャマイカンは弱気になっている彼を一喝した。
「最早勝利は決まっておる!何を怖気付いているか!」
「しかしですね」
「しかしも何もない!臆病風に吹かれたか!」
部下を睨み据えてきた。
「ならば戦場から去れ!いいな!」
「はあ」
そのヒステリーじみた様子に何も言えなかった。その間にジュドーはハイメガキャノンを放とうと構えに入っていた。もうすぐであった。
「これで終わらせてやるぜ!」
「ウッソ、来るわよ!」
ジュンコがそれを見てウッソに声をかける。
「退いて!いいわね!」
「は、はい!」
ウッソはそれに応える。すぐにカテジナを振り切って戦場を後にする。
「ウッソ!逃がしはしないわ!」
だがカテジナはそれを追おうとする。しかしウッソはもう彼女を振り切り戦場を後にしたのであった。
オデロやマーベット達もだ。何とかクロノクルもファも振り切って戦場を離れた。
ジュドーがハイメガキャノンを放った。渾身の光がコロニーを撃った。
「何っ、コロニーをだと!」
「閣下、大変です!」
参謀の一人がバスクに告げる。
「コロニーが!」
「撃つことができんのか!」
「それどころではありません!」
彼はそう告げる。
「コロニーが攻撃を受けました!」
「わかっておる!だからこそだ!」
「一撃で破壊されました!」
「馬鹿な!」
「いえ、事実です」
そう報告してきた。
「ダブルゼータのハイメガキャノンにより。最早使用不可能です」
「爆発は?」
「それはありませんでしたが。エネルギーが拡散されましたので」
「そうか」
「ですが最早コロニーレーザーは使いものになりません」
これは覆せなかった。
「どうされますか?」
「コロニーが使えなくてはどうしようもないわ」
吐き捨てるようにして述べた。
「全軍撤退だ。いいな」
「はっ」
「それでは閣下」
シロッコがここでモニターに現われた。
「後詰は私が務めましょう」
「いいのか、シロッコ」
「はい」
シロッコは表情を変えずそれに応える。
「火急ですから」
「わかった。では任せるぞ」
「はい」
シロッコはモニターから消えた。バスクはそれを見届けてから忌々しげに言い捨てた。
「フン、何の魂胆かはわからんがな」
「しかし閣下」
「わかっておる」
そう部下に返す。
「どちらにしろこちらにはいいことだ。撤退するぞ」
「了解」
バスクは速やかに兵を退けさせた。ロンド=ベルはシロッコの後詰もあり彼等を深追いすることなく戦場に立っているだけであった。戦いはこれで終わったのであった。
「危機一髪だったな」
ジュドーが動かなくなったコロニーを見て言う。
「どうなるかって思ったけれどな」
「全くだ」
それにオリファーが応える。
「運がよかったせいもあるな」
「そうね。コロニーが爆発しなかったから」
マーベットが彼に言葉に頷く。
「何はともあれよかったわ」
「けれどこのままティターンズを放ってはおけないのはわかったわ」
「そうですね」
ウッソはジュンコの言葉に頷く。
「彼等がいる限り宇宙の平和は完全には戻りません」
「まあ一旦戻ろうぜ」
オデロがここで言う。
「落ち着いて話をしてな」
「そうだな」
トマーシュがそれに頷く。
「ここはな」
「よし、全員帰還だ」
オリファーが指示を出してきた。
「それでいいな」
「了解」
こうしてロンド=ベルは一旦母艦に戻った。そこで今後について話すのであった。
「おかげで助かった」
ミスマル司令がラー=カイラムのモニターに姿を現わしていた。そうしてブライトと話をしている。
「これでまた一つ危機が去ったな」
「ええ、ですが」
「うむ、わかっている」
ミスマルはブライトの言葉に応えてきた。
「このままティターンズを放置しておくことはできない」
「それでは」
「対ティターンズ最後の作戦だ」
彼は言った。
「メール=シュトローム作戦。それを君達に任せたい」
「メール=シュトローム作戦」
「宇宙の渦、ですか」
「そうだ」
ミスマルはクワトロに答えた。
「ゼダンの門にいるティターンズに攻撃を仕掛けてもらいたい。いいか」
「わかりました」
「まずは整備と補給を整えてからだな」
「はい」
「月を使ってくれ」
ブライトに言う。
「月の基地をな。いや」
だがここで考えを少し変えてきた。
「アクシズはどうかな」
「アクシズですか」
「そうだ。あそこにはかなりの軍事基地があったな。物資もある」
ふとそれを思い出したのだ。思い出せばかなりのものがあるのがわかった。
「使わない手はないか」
「名案ですね」
アムロがそれに賛成してきた。
「月に向かうのより近いですし」
「そうだな。ではそこに行ってくれ」
「了解しました」
まずはそれに応える。
「それではそのように」
「うむ。できれば連邦軍も参加させたいのだが」
「原種ですか」
「そうだ。最近姿を見せないがな」
顔を曇らせつつ述べる。
「何か企んでいるようだ。それに各勢力の残党もいる」
「まだまだ敵は多いということですね」
「残念だがな。それは認めるしかない」
認めなくてはならないことだった。わかっているからこその言葉であった。
「そのうえで君達に頼みたいのだ。いいな」
「わかりました。それでは」
「うむ」
こうしてロンド=ベルはアクシズに戻ることになった。その途中であった。
「なあミネバ」
「どうしたのじゃ?」
ミネバはディアッカに応えていた。
「もうザビ家って公王でも総帥でもないんだよな」
「そうだが」
そう彼に答える。
「ネオ=ジオンもない。だからな」
「じゃあよ。その喋り方はどうかな」
「喋り方か」
「ああ。堅苦しい気がしてな」
「ううむ」
「少しずつ変えていかない?」
ヒメも言ってきた。
「ミネバちゃんも普通の女の子になろうよ」
「普通の女の子にか」
「全くだぜ」
シンも言う。
「さもないとハマーンみたいなおっかねえおばさんになっちまうぜ」
「待て」
後ろからドスの効いた凄みのある女の声がしてきた。
「誰がおっかないのだ?」
「決まってるだろ。あの年増さ」
「ちょっとシン」
キラが横からこっそりと注意する。
「今は」
「ああしたふうになったら駄目だからな。ありゃ絶対三十代後半だぜ」
「その三十代後半の名前は何というのだ?」
「何言ってるんだ、あのハマーンが・・・・・・って」
「また死にたいらしいな」
後ろからシンの頭を鷲掴みにしてきた。ミシミシと不気味な音が鳴る。
「来るがいい」
「あ、あわわ・・・・・・」
頭を掴まれたまま何処かへ連行されていく。皆汗を垂らしてそれを見送ることだけしかできなかった。
「そ、それでだ」
イザークが必死に話を戻してきた。
「喋り方だったな」
「は、はい」
シホがやけに生真面目な顔でそれに相槌を打つ。
「それです。その」
「普通に話せばいいさ」
勇が穏やかな声で述べてきた。
「普通にね」
「普通にか」
「アカリやクマゾーみたいに話すんだよ」
ヒメはわかりやすく言ってきた。
「それでどう?」
「そうだな」
「違うぜ、そこは」
ディアッカが笑いながら言ってきた。
「そうね、でいいぜ」
「うむ・・・・・・じゃなくて」
言葉を選びながら言う。
「そうね・・・・・・これでいいかしら」
「そうそう、それそれ」
キラがにこりと笑って述べる。
「その感じでいいと思うよ。少しずつね」
「うん。じゃあ」
「何かこうして見るとミネバさんも普通の女の子なんですね」
「そうだな」
シンが帰って来た。全身生傷だらけになっている。
「また随分やられたな」
ナンガがそれを見て言う。
「よく生きているもんだな」
「俺はそう簡単には死なないんだよ」
シンは彼にそう返す。
「それでもよ」
「とりあえず後で医務室行って来い」
ラッセが忠告する。
「いいな」
「ああ。えらい目に遭ったぜ」
「自業自得だ」
クインシィの声は冷たい。
「女に歳の話はするな」
「ちぇっ、俺が悪いのかよ」
「それにハマーンは怖くないわよ」
ミネバが言ってきた。
「とても優しいから」
「絶対嘘だ」
今半殺しにされたからそれはすぐに否定した。
「そんな筈がねえ」
「御前が悪いよ、今のは」
今度はディアッカに言われた。
「あんなこと言ったら唯じゃ済まないに決まってるだろ」
「ちぇっ」
「それにあんたナタルさんにも言ってたわよね」
ルーが突っ込んできた。
「それでこの前」
「拳受けてたじゃない」
イーノが言う。
「正拳突き」
「あれも死ぬかと思ったぜ」
それでも懲りてはいない。
「まともに顔に入ったからよ」
「あの時何言ったっけ」
「お局様だったかしら」
モンドにエルが答える。
「春日の局とか何とか」
「そりゃ怒るよ」
「全くだぜ。御前が悪いぜ」
ビーチャは今はナタルについていた。
「ナタルさんあれで可愛いところあるのによ」
「可愛いか」
「可愛いよね」
「そうだよな」
プルとプルツーも言う。
「俺にとっちゃおっかない人だけれどな」
「だからシンが変なこと言うからだよ」
キラが彼に忠告する。
「変なこと言うから」
「やれやれだ。まあいいさ」
しかしここで言った。
「憂さ晴らしだ。今日も飲むぜ」
「また?好きねえ」
セシリーはそれを聞いて呆れ顔であった。
「毎日じゃない」
「好きなんだよ、酒が」
「やれやれ。御前にも困ったものだ」
「カガリが言ってもねえ」
「フレイ、君も」
アスランがフレイに突っ込みを入れる。
「最近かなり」
「何かこんなに美味しいって思わなかったのよ」
フレイはアスランにそう返す。
「ビールが」
「そういえばフレイはアイルランド系だったな」
レイがそこを指摘してきた。
「だからか」
「そういや俺もビール好きだな」
ディアッカが言ってきた。ちなみに彼は元々のルーツはドイツだ。
「特に黒が」
「僕は日本酒、かなあ」
「俺は焼酎だな」
キラとシンはそれぞれ好みが違っていた。
「シンは何でもじゃないのか?」
アスランはそうシンに言う。
「あまり飲み過ぎは」
「身体に悪いか」
「それもあるが御前酒癖悪いからだ」
シンに告げる。
「それを何とかしないと」
「まあ堅苦しい話は抜きにしようぜ」
ジュドーが彼等の間に入ってきた。
「また楽しくな」
「私は駄目かしら」
「ミネバちゃんはね。まだ中学校にも入ってないから」
リィナが笑ってそう言う。
「我慢して」
「わかったわ。それじゃあ」
「ティターンズとの決戦への景気付けだぜ。皆ガンガンやるぜ!」
「よし!」
皆ジュドーの言葉に応える。彼等はこうして派手な宴に入った。ロンド=ベルの士気は連戦の中にあってもかなり高いと言えるものであった。
第百四十九話完
2007・3・6
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