スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇
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第百五十一話 アクアの決別
第百五十一話 アクアの決別
最後の整備と補給を終えアクシズを発つロンド=ベル。ゼダンの門に向かいながらカイ達はアムロやブライトを交えて話をしていた。
「しかし戻って来るとは思わなかったよ」
アムロが彼等に告げる。
「まさかロンド=ベルにな」
「意外だってか」
カイがそれに返す。
「俺達が今ここにいるのが」
「そうだな」
ブライトがそれに応えて言う。
「そもそも皆こうしてここにいること自体がだ。凄い話だ」
「とんでもない戦いでしたからね」
セイラはくすりと笑って述べた。彼等はコーヒーとクッキーを楽しみながら話をしている。
「それで生き残るだけでも」
「一年戦争からもう八年か」
スレッガーがふとそれを言って笑う。
「俺とリュウはあまり変わっちゃいないがな」
「そうだな」
リュウは笑ってその言葉に頷く。
「まさか御前とまた一緒になるなんてな」
アムロの方を見て笑う。
「あの頃のアムロとは全然違うな」
「よして下さいよ」
アムロはその言葉に思わず苦笑いを浮かべた。
「俺だってあれから色々とあったんですから」
「おかげで私もアムロも今じゃロンド=ベルの御守り役だからな」
「御守り役ですか」
ハヤトがその言葉に笑った。
「それはまた」
「いや、本当にな」
しかしブライトはそれに言う。
「おかげで最近歳を取ったものだ」
「また大袈裟な」
「立場もあるしな」
アムロはそれにも言及する。
「俺も中佐だしな。ブライトは大佐だし」
「責任感は出て来ているわね」
セイラはアムロをこう評してきた。
「あの頃の甘ったれはもうないわね」
「だから止めて下さいって」
アムロはセイラにも言う。
「何か恥ずかしいですよ」
「ふふふ、御免なさい」
「しかしゼダンの門か」
リュウがふと思い出したように声をあげる。
「またあそこで戦うなんてな」
「ア=バオア=クーですからね」
ハヤトも言う。
「やっぱり。感慨がありますね」
「ああ、あの時はどうなるかって思う位激しい戦いだったからな」
「今度もそうなる」
ブライトは真剣な顔で答えた。
「既にティターンズは木星からも戦力を集結させている」
「何時の間に」
「我々がネオ=ジオンと戦っている間にだ」
ブライトはそう皆に告げる。
「兵力を集結させていた。木星の全ての戦力もな」
「じゃああそこにいるのはかなりの数だな」
アムロは腕を組んで述べた。
「ティターンズの全軍か」
「そうだ」
ブライトはあらためて頷く。
「サイド3からの戦力も集まってきている。これは」
「あの戦い以上ですね」
ハヤトがそこまで聞いて言った。
「そうなると」
「そうだ。いいな」
皆を見回す。
「用意は」
「何言ってんですか」
しかしスレッガーはその言葉に笑ってみせた。
「いつものことじゃないですか。なあ」
「その通り」
リュウがそれに頷く。
「何時でもいいですよ」
「そのつもりで来たしな」
「俺達もいいですよ」
カイとハヤトも言う。
「私もです」
セイラも同じであった。
「ですから」
「ホワイトベースのクルーは健在か」
ブライトはそれが少し嬉しかった。
「何かあの頃に戻ったみたいだな」
「ハヤト、フラウは元気か?」
「ああ、昨日電話で話したけれどね」
ハヤトはその言葉に顔を綻ばせる。
「元気なものだったよ。フラウの為にも」
「そうだな」
アムロはその言葉に頷く。
「ブライトもな」
「そういえば長い間家に帰っていないな」
ブライトはそのことを思い出して思わず苦笑いを浮かべた。
「どうしたものだか」
「生きていれば帰れるさ。だからな」
「ああ、絶対にな。作戦を成功させる」
「ああ」
「ところでアムロ」
カイが彼に声をかけてきた。
「何だ?」
「御前チェーンとはどうなんだ?」
「どうなんだって」
それには口を詰まらせた。
「何が言いたいんだよ、カイ」
「いや、何も」
とぼけてはみせるが真意は別にある。
「ただな」
「ちぇっ、何もないよ」
口ではそれを否定する。
「チェーンとはな」
「じゃあそうしとくぜ。それによ」
「今度は何だよ」
「御前葛城三佐とも仲良くないか?」
「それは前からだな」
スレッガーもそれを言ってきた。
「あと最近じゃマリュー艦長とも仲いいよな」
「気が合うんですよ」
アムロはそう説明する。
「それでまあ話をしたりはします」
「それだけかしら」
しかしセイラがここで意地悪なことを言う。
「それだけだったらいいけれど」
「セイラさんまで」
「アムロも変わったよな」
ハヤトはそのことを楽しむ感じであった。
「相変わらず機械いじりは好きみたいだけれどな」
「俺は別に変わったつもりはないんだけれどな」
自分ではそう言う。
「ただ。やっぱり歳は取ったな」
「頼りにされてるのはあるな」
リュウがそう彼に告げる。
「ロンド=ベルの白い流星か」
「そう言われてますけれどね」
「今度も頼むぞ」
ブライトはアムロにそう声をかける。
「何だかんだで御前とは気心が知れているからな」
「ああ、こちらこそ頼む」
アムロもそれに返す。
「決戦だからな」
「艦長」
ここでサエグサが部屋に入って来てブライトに告げる。
「もう暫くしたらティターンズの予想防衛ラインです」
「そうか、遂にだな」
「はい、艦橋にお願いします」
「わかった。では行く」
「俺達もだな」
スレッガーが言った。
「ここでな」
「了解」
「それじゃあ」
「じゃあアムロ」
ハヤトがアムロに声をかけた。皆立ち上がりそれぞれのモビルスーツに向かおうとしていた。
「頼むぞ」
「わかった」
アムロはしっかりとした声でそれに答えた。その顔はエースの顔であった。
ロンド=ベルが戦闘配置に着きマシンの出撃を進めていると早速レーダーに反応があった。
「来ましたね」
ナタルがヘンケンに告げる。
「ああ、早速だな」
ヘンケンはそれに応えてモニターを見る。
「これが敵の防衛ラインか」
「はい」
そこには縦深に配備されたモビルスーツと戦艦があった。見ただけでロンド=ベルの五倍はいる。
「いきなり大勢で来たな」
「兵力の集中配備ですね」
ナタルはそうヘンケンに答えた。
「それを考えると当然かと」
「そうだな。では我々も全軍で向かうか」
「ええ」
ナタルはその言葉に頷く。
「それでは」
「そうだ。全軍発進」
ヘンケンは告げた。
「敵の防衛ラインを突破する。いいな」
「わかりました」
ロンド=ベルはそのまま攻撃に入る。その中にはアクアもいた。
「ねえアクア」
同じ小隊にいるエクセレンが彼女に声をかけてきた。
「あっ、はい」
「いつも通りね。あたし達は後方からキョウスケ達の援護でいきましょう」
「わかりました。それでは」
「うん、けれどねえ」
「何か」
「キョウスケもヒューゴも。やりにくいわよね」
エクセレンは軽い苦笑いを浮かべてアクアに言ってきた。
「どう、そこらへん」
「まあヒューゴは」
キョウスケのことには言及しないがヒューゴには言う。
「ああいう性格ですから」
「キョウスケもあれなのよ」
エクセレンは言う。
「無愛想だから。困っちゃうわ」
「はあ」
「けれどヒューゴ君って可愛いところあるじゃない」
「そうでしょうか」
それには賛成していないという顔を見せてきた。
「捻くれてるし素直じゃないし」
「それがいいのよ」
エクセレンは笑いながらそう述べる。
「男の子って感じでね。お姉さんそういうの好きよ」
「そういえば私ってヒューゴより三つも上なんですよ」
自分でそれを言う。
「けれど何か。声で」
「アクアって声可愛いからね」
それで定評がある。容姿と声がアンバランスだとロンド=ベルでも評判なのだ。
「ヒューゴの声は落ち着いているし」
「何か声だけだと年下に見られたり」
「あら、それは私もよ」
エクセレンの声もかなり明るくはっきりしたものである。
「キョウスケの声がクールだから」
「そうですよね、キョウスケさんって」
「私の声はねえ。高いから」
「私も」
「アクアはそれに声可愛いから」
「可愛いでしょうか」
「うん、凄くね」
エクセレンもそれを言ってきた。
「その声とスタイルなら誰も放っておかないでしょう」
「いえ、それは」
だがこの問いには答えはもどかしいものでしかなかった。
「私実は」
「あら、男の子と付き合ったことないの」
「家が厳しかったですから」
代々軍人の名家の出身である。この辺りはナタルと一緒である。ちなみにヒューゴは二十歳ながら下からの叩き上げである。実戦で功を挙げて今ロンド=ベルにいるのだ。
「それで」
「士官学校の時は?」
「ずっと勉強と研究でした」
そう答える。
「ですから全然」
「あら、それじゃあ駄目よ」
エクセレンはそう彼女に述べる。
「お姉さんなんだから。年下の男の子には教えてあげないとね」
「あの、それって」
エクセレンのその言葉に怪訝な顔を見せる。
「私は別に」
「うふふ、隠さなくてもわかるわ」
アクアをからかうようにして言葉を続ける。
「貴女のことはね。何でも」
「あの、エクセレンさん」
「大丈夫よ」
言おうとしたらかわされてこう言われた。
「彼もそうした経験ないみたいだしね」
「あいつ・・・・・・いえヒューゴもですか」
「そうよ。だから二人で少しずつね」
「私別にそんなことは」
「言わない言わない」
しかしその言葉は遮らせてしまった。
「本音はわかってるんだから」
「本音って別に」
顔を少し赤くさせてきた。
「私はそんなことは」
「来たわよ」
また言葉を遮られてしまった。
「えっ」
「敵よ、いいわね」
「わかりました」
見ればモニターにもうティターンズのモビルスーツが映っていた。ロンド=ベルを包み込むようにして彼等に襲い掛かってきた。
「それじゃあ」
「いつも通りね」
「はい、ロックオン」
早速数機をロックオンした。
「先に仕掛けます」
「了解。じゃあ私も」
二人はそれぞれ攻撃に入った。そのまま激しい戦いに入る。
アクアは最初の攻撃で数機撃墜した。そのままヒューゴに通信を入れる。
「そっちはどうなの?」
「問題ない」
ぶっきらぼうな返事が返ってきた。
「気にするな」
「そう、大丈夫みたいね」
「ティターンズが相手なら問題はない」
ヒューゴはこう答える。
「動きのパターンはわかっている。ならば」
「それはどうかな」
しかしここで低く太い男の声がした。
「むっ」
ヒューゴはその声に反応を見せてきた。
「その声は」
「ヒューゴ、久し振りだな」
アルベロの声だった。そして」
「アクア、どうやら生きていたようね」
「隊長」
「先生」
二人はそれぞれ反応を見せてきた。
「やはり生きていたのか」
「何時俺が死んだと言った?」
アルベロはヒューゴにこう言葉を返した。
「地球を出てから木星に言っていたのだ。久し振りの実戦だ」
「木星に。何の為に」
「この機体の為よ」
ミッテはそうアクアに答えた。
「この機体の為!?」
「ええ。このメディクス=ロクスの為にね」
彼女は言う。
「この中にあるAI1は私の全て。その進化を進める為に」
「木星の力を集めたっていうんですか」
「そうよ。それによりこのメディクスはさらに強くなったわ」
妖しく笑って述べる。
「その力。今貴女達にも見せてあげるわ」
「そういうことだ」
アルベロも言う。
「行くぞ、ヒューゴ」
「隊長、貴方に聞きたいことがある」
「何だ?」
「オルガ達のことだ」
彼はそれをアルベロに問うてきた。
「貴方は知っていた筈だ。あの三人に投与していた薬のことを」
「あれか」
「あれはミッテ博士が開発したものだったな」
「そうよ」
そのミッテ本人が答えてきた。
「その通りよ。私が特別に開発したものよ」
「何故あんなものを開発した」
ヒューゴは怒りを含ませた声でミッテに問う。
「あの薬の副作用は。貴女も知っていた筈だ」
「ええ、勿論」
ミッテはそれも認めた。
「それだけじゃないわ」
「何!?」
「彼等は今貴方達と一緒にいるわね」
「それがどうしたっ」
「聞きなさい。そしてステラ達も」
「そうだ。だからそれがどうした」
「だから聞きなさい。彼女達のことも」
「まさか」
アクアはミッテの思わせぶりの口調から察した。顔が青くなる。
「先生、貴女は」
「そうよ、彼女達をああしたふうに改造したのも私よ」
「そんな、何てことを!」
「オルガ達を何だと思っている!」
「実験材料ね」
素っ気無く答える。その言葉には一抹の人間らしさもなかった。
「それだけよ。どうかしたの?」
「ステラ達は死ぬところだったんですよ!」
「あの薬の副作用を知っていて開発したというのか!」
「だからそれがどうかしたのかしら」
ミッテの言葉の調子は相変わらずであった。
「その程度のことで」
「その程度って」
「あんたは。それでも人間なのか」
「所詮は孤児や死刑囚」
これは事実であった。ステラ達三人は孤児であり後の三人は死刑囚である。六人共何の身寄りもない者達だ。彼等は言うならば何があってもおかしくはないのだ。
「AI1の糧になるべき存在だったのよ」
「ということはあの薬は」
「ステラ達の改造は」
「そうよ、あくまで実験」
平然とした調子で述べる。
「それだけよ」
「ふざけるな!あいつ等はあんたの道具じゃない!」
「そんなことをしてまで!」
「だからどうしたと言ってるのよ」
それでもミッテは変わらない。言葉の調子もまた。
「何を騒いでいるのかしら」
「くっ、駄目だ」
ヒューゴはその言葉の前に舌打ちするしかなかった。
「この女は」
「先生、貴女という人は」
「それは誰も同じことよ」
ミッテはさらにい言う。
「何っ!?」
「誰もが私のこのAI1の前に跪く」
狂気を含ませた声で言う。
「貴方達もまた」
「貴様かぁっ!」
そこにシンがやって来た。
「むっ!?」
「貴様がステラを!なら貴様から先に!」
既に目から光がなくなっていた。覚醒していた。覚醒したその状態でメディクスに襲い掛かる。だがそれはアルベロの動きの前に防がれてしまった。
「甘いな」
「なっ、俺の攻撃を!」
デスティニーの巨大なビームをかわした。
「かわしたっていうのか!」
「シン、落ち着いて!」
その彼にアクアが声をかける。
「アクアさん」
「ここは私達に任せて」
「けれどこいつは!」
「俺達が何があっても倒す・・・・・・!」
ヒューゴも言った。
「だから。安心しろ、いいな」
「・・・・・・わかりました」
シンは苦い顔でそれに頷いた。
「じゃあお願いします」
「シン君、安心して」
アクアも彼に言う。
「先生は私が止めるわ。何があっても」
「お願いします」
「隊長、もう俺は迷わない」
ヒューゴはアルベロに対して言った。
「この戦いであんたを倒す。何があってもな!」
「面白い。なら来い!」
アルベロもそれを受けて言う。
「御前がどれだけ強くなったのか見てやる!」
「先生、私も」
アクアもミッテと対峙していた。
「迷いません。貴女を止めてみせます!」
「貴女は優秀な生徒だったけれど残念ね」
それがミッテの返事であった。
「それなら覚悟しなさい」
「私だって!」
アクアが最初にメディクスに攻撃を仕掛ける。
「負けはしない!」
「アルベロ、来ました」
「わかっている」
彼はアクアの攻撃を見抜いていた。そのパターンも。
「そう来るなら・・・・・・むっ」
「一人とは思わないことだ!」
そこにヒューゴが来た。
「俺もいることを忘れるな!」
「くっ、彼もいたのね」
ヒューゴの攻撃を受けてミッテの整った顔が歪む。
「忘れていたわ。何てこと」
「安心しろ」
しかしここでアルベロが彼女に言う。
「俺がこれに乗っている限りはな」
「いえ、AI1が」
しかしミッテはそこに別のものを見ていた。
「もっと戦わないと成長しないから。だから」
「戦いたいのか」
「ええ。この戦い」
思い詰めたような声で述べる。
「この戦いでそれを」
「ヒューゴ、動きを合わせて!」
アクアがヒューゴに声をかける。
「一人では無理でも二人なら!」
「いいんだな、アクア」
ヒューゴは彼女に声をかける。
「俺についてこれるんだな」
「私もパイロットよ」
アクアは真剣な顔でそう言葉を返す。
「だから」
「わかった。じゃあフォローを頼む」
彼は前に出ながらアクアに声をかけた。
「わかったな」
「ええ」
二人は絶妙のコンビネーションでメディクスに攻撃を浴びせていく。四人の戦いもまた熾烈なものであった。
戦場全体に爆発の光が放たれていた。ロンド=ベルはティターンズに激しい攻撃を浴びせていたのだ。
それは戦場全域に及んでいた。シナプスもアルビオンを前に出していた。
「外すなよ。撃て!」
主砲を放たせる。それで敵のサチワヌを沈めた。
「敵艦一隻撃沈です」
ジャクリーンが報告する。
「ですがまだ敵は」
「わかっている。次の攻撃用意だ」
「はい」
パサロフがそれに頷く。
「モビルスーツ部隊は敵のモビルスーツへの攻撃に専念しろ」
シナプスはまた指示を出す。
「迂闊に前には出るな。いいな」
「了解」
彼等は戦艦と共に動いていた。それはフレイも同じであった。
「フレイ、左!」
「わかったわ!」
アークエンジェルからミリアリアの言葉を受ける。素早くアークエンジェルの左に行きそこに迫る数機のバーザムに攻撃を浴びせる。
「動きが丸わかりなのよ!」
そう言いながらの攻撃であった。その言葉にあるものを感じたのはサイであった。
「今の言葉」
「どうしたの?サイ」
カズイがそれに問う。
「いや、何かニュータイプみたいだなって」
「覚醒してるんじゃないの?」
トールがそれを聞いて述べる。
「フレイはさ」
「そうなのかな」
「あら、別に不思議じゃないでしょ」
首を傾げるサイにマリューが言った。
「だって。宇宙にいれば」
「そうですか」
「そうよ。サイ君も何か変わったし」
「僕は別にニュータイプじゃないですよ」
「頭の切れがよくなってるわ」
彼にこう声をかけて笑う。
「何かね。皆も」
「そうですかね。っと」
トールはここで操縦を駆使して敵艦の攻撃をかわした。
「ほら、トール君だってね」
「少なくとも慣れてはいます」
ミリアリアはこう述べる。
「凄い戦いの連続でしたから」
「俺一回船降りたのにすぐだったし」
カズイは少しぼやく。
「あげくにはティターンズとかが相手だし」
「ふふふ、運命ってわからないものね」
「そうですよ。昨日だって」
「言わないでおこうよ、カズイ」
サイがここで言う。
「昨日のことは」
「けれどさ、サイ」
トールが口を挟む。
「昨日は幾ら何でもあんまりだろ」
「そうね」
ミリアリアも憮然としながら頷く。
「全くあの二人は」
「またシン君とカガリちゃんかしら」
「シンとフレイです」
ミリアリアがマリューに答える。
「あの二人が酔って喧嘩して」
「あらあら」
「大変だったんですよ」
「何でシンはあんなに喧嘩が多いんだよ」
トールがぼやく。
「カガリといいアスカといい」
「言わなくていいことばかり言うしね」
カズイも不満たらたらであった。
「全く」
「キラはあんなことないのになあ」
サイはその点はキラを信頼していた。
「それなのにあいつは」
「彼はまだ子供なのよ」
マリューはくすりと笑ってシンを評してきた。
「だからね。どうしても」
「じゃあフレイもなんですね」
メイリンがミネルバのモニターから出て来た。
「昨日本当に大変だったんですから」
「貴女も関わっていたのね」
「関わらせられたんです」
メイリンもミリアリアと同じ顔で言う。
「似たような声なのにステラちゃんと彼女全然違うから」
「声・・・・・・確かにそっくりね」
マリューはそれに頷く。
「そうですよ。それなのに」
「それを言うとメイリンだってなあ」
「ねえ」
トールとミリアリアは艦橋でひそひそと言い合う。
「僕も勇と声似てるし」
「艦長も」
サイもカズイも囁く。
「それにしても喧嘩の原因は?」
「気がついたらです」
いつも通りであった。
「それで」
「そうだったの。お決まりね」
「はい。それでフレイは」
「こっちにいるわ。アークエンジェルの護衛よ」
「そうなんですか。できればですね」
「どうしたの?」
ここでやっと話が本題に入った。
「こっちにも一機回せますか?」
「ミネルバに?」
「いえ、エターナルにです」
メイリンは言う。
「あっちに敵のモビルスーツの大群が向かっていて。こっちは手が一杯で」
「そう。それじゃあ」
「艦長」
フレイが通信を入れてきた。
「アークエンジェルは私一人で充分です。ですから」
「わかったわ。じゃあカガリちゃん」
「ああ」
カガリがモニターに出て来た。
「お願いできるかしら」
「わかった。じゃあ」
「はい」
「わかりました」
オーブの三人娘がそれに応える。
「行くぞ」
四人がすぐにエターナルに向かう。これでエターナルは何とか助かったのであった。
クサナギもクサナギでかなり大変であった。ユウナがあちこちに攻撃を受ける艦において何とか踏み止まっていた。
「消火班急いで!」
慌てながらも指示を出している。
「下方弾幕張って!そう、その調子!」
「ユウナ様!上からも!」
「アルフレッド少佐、宜しく!」
「おうよ、任せておきな!」
中々的確な指示であった。しかしかなり狼狽していた。
「何なんだ、この滅茶苦茶な攻撃は」
「ハンブラビが三機来ました!」
誰なのか言うまでもない。
「どうされますか!」
「火力をそっちに!あとモビルスーツ!」
「はい!」
「誰かいる!?いたら行ってもらって!」
「モビルスーツじゃないけれどいいか?」
フォッカーがやって来た。
「スカル小隊だ。援護に来たぜ」
「お願いするよ!」
彼はすぐにフォッカーに返す。
「ハンビラビだから気をつけてね!」
「わかってるさ。じゃあ行くぜ!」
「了解!」
「わかってますって!」
輝と柿崎がそれに応える。彼等の助っ人で何とか生き残った形になった。
「ふう、間一髪」
「あの、ユウナ様」
ここでトダカが彼に声をかけてきた。
「何かな、艦長」
「艦長は私なので。それをお忘れなく」
「あっ、済まない」
すっかり艦長の仕事をしていた。
「ユウナ様は全体の指揮をお願いします」
「わかったよ。それにしても」
今も敵の攻撃が来る。それを見ながら言う。
「凄いものだね、やっぱり」
「流石はティターンズです」
「ゼダンの門はこんなのじゃないだろうね」
「凄いみたいですよ」
何故か艦橋にいるアズラエルがそれに答える。
「ア=バオア=クーの時以上の要塞だとか」
「やれやれ」
その言葉を聞くと溜息が出る。
「困ったものです」
「ですが陥落させることはできる」
アズラエルは不敵な笑みと共に述べた。
「違いますか?」
「まあ確かにそうです」
ユウナもそれは認める。
「陥落しない城なぞありませんでしたし」
「そういうことです。そう考えるとやり易いかと」
「それでは」
「はい」
アズラエルは頷く。
「真面目にですかリラックスしていきましょう」
「ええ。ところでアズラエルさん」
「何か」
ここで話題が変わった。ユウナはあらためてアズラエルに顔を向ける。
「貴方は艦橋におられなくてもいいのですが」
「まあ見学ということで」
「見学ですか」
「作戦に口出しはしませんので」
要するにただいるだけである。しかし邪魔はしていなかった。
「その点は御心配なく」
「わかりました。それでですね」
「ええ」
「どうやらアクアさんがおかしいのですよ」
「彼女が」
ユウナのその言葉に顔を向ける。
「ええ。何か今」
クサナギのモニターをアクアの方に向ける。見れば普段の冷静な戦いではなくエキセントリックなものになっていた。
「あれを見ていると」
「ふむ」
アズラエルはそれを見て考える顔を見せてきた。
「言われてみれば。その通りですね」
「大丈夫でしょうかね」
「といってもあちらにまで回せる戦力は今手元にありませんしねえ」
「任せるしかありませんか」
「ヒューゴ君もいますし大丈夫でしょう」
ここは彼女達自身に任せることにした。
「ここはね」
「そうですか。それでは」」
「はい」
アズラエルは頷く。
「そういう方針でいくべきかと」
「ユウナ様、後方に敵ですぞ!」
「えっ、何時の間に!?」
キサカの言葉にぎょっとして顔を向ける。
「ガブスレイ。マウアー=ファラオです」
「向こうのエースの一人じゃないか!」
「どうされますか!?」
「迎撃に誰か行って!至急に!」
「いません!」
「いませんじゃないよ!マウアー=ファラオが相手じゃやばいよ!」
こうした時にはユウナは弱い。やはり胆力に欠けるのだ。
「それにはっきり断言していい場合じゃないよ!ここは!」
「おい、ユウナさんよ!」
しかしここで金竜の声がした。
「金竜大尉」
「俺が今行く!それまで持ち堪えてくれよ!」
「了解。何か助かったね」
「おう、クサナギを沈められたら元も子もないからな」
モニターの向こうで不敵に笑ってきた。
「もうすぐだ。いいな」
「わかったよ。じゃあ頼むね」
「おうよ。任せておけ」
「しかし一瞬誰かと思ったよ」
「どういうことだ?それは」
「いや、声がね」
ユウナはここで金竜の声について述べる。
「ヒューゴ君のものに似ていたから」
「そういえば似てるな」
金竜本人もそれに頷く。
「否定はしないさ」
「そうだね。何はともあれ頼むよ」
「おうよ」
「後でラビアンローズを御馳走するからね」
「甘いものか」
「駄目かい?」
しかし金竜はその言葉に不敵に笑ってきた。
「いや、いいな」
「よかった。じゃあそういうことでね」
「ああ」
クサナギは何とか助かった。マウアーは金竜に阻まれてクサナギを撃沈することは適わなかったのだ。
「ここは退いた方がいいかしら」
「そうだね」
ここでライラが彼女に通信を入れてきた。
「ライラ少佐」
「ここでの戦いはあらかたケリがついたよ」
「決着が?」
「ああ、あたし達の負けだね」
彼女は冷静な様子でそうマウアーに述べる。
「カクリコン、生きているかい?」
「何とかな」
カクリコンから返事が返ってきた。
「ヤザンはどうだい?」
「俺も生きてるぜ。ラムサスもダンケルもな」
「ジェリドは」
「あの坊やとまた戦ってるさ。元気にね」
ライラはマウアーの問いに答えた。
「とりあえずは損害は最低限ってわけさ」
「そう。それじゃあ」
「後は上がどう判断するかだけれどね」
ちらりと後ろを見る。そこにはジュピトリスがいる。
「話がわからないってわけじゃないけれどね、あの旦那は」
そこにはシロッコがいる。彼は今の戦局を冷静に眺めていた。
そのうえで判断の時を待っていた。ジャミトフ及びバスクに通信を入れる。
「閣下」
「うむ」
「どうしたのだ、シロッコ」
二人はモニター越しに話をはじめる。シロッコはモニターに映る二人を見上げて話をするのであった。
「既に防衛ラインが限界に達しております」
彼はまずはこう述べてきた。
「このままでは守りきれませんが」
「撤退するというのか」
「はい」
バスクに対して答える。
「如何でしょうか」
「今の損害は」
「二割を越えました」
損害を正直に述べる。
「このままですと三割に達するものかと」
「ふむ」
ジャミトフはその言葉を聞いてモニターの中で考える目を見せてきた。そのうえで述べてきた。
「これ以上の戦いは無駄な損害を出すだけか」
「援軍がなければこれ以上は」
「いや」
しかしバスクはこれには首を縦には振らなかった。
「今残っているのは最後の予備戦力だけだ。彼等を投入するのはまだ先だ」
「それでは」
「シロッコよ」
ジャミトフが彼に対して言った。
「ゼダンまで下がれ。よいな」
ジャミトフ自ら撤退を命じた。彼もこれ以上ここで損害を出すわけにはいかなかったのだ。
「そこで決戦を挑む」
「わかりました。それでは」
「全軍撤退させよ。よいな」
「はっ」
敬礼で応える。
「わかりました」
こうしてティターンズは撤退に移った。しかしミッテはその中で最後まで戦っていた。ジェリド達はそれを見て彼女が後詰に回っていると思った。
「珍しいこともあるもんだな」
ヤザンは彼女の姿を見て述べた。
「あの女が最後まで残るなんてな」
「どういう風の吹き回しだろうな」
ジェリドも言う。彼等はいぶかしむ目でメディクスを見ていた。
「これはまた」
「さてな。けれどこれはこれで好都合だ」
「そうだね」
それにライラが頷く。
「今のうちだ。さっさと兵をまとめて下がるよ」
「ああ」
ティターンズはそのままゼダンに向けて去る。その最後にメディクスがいた。
ミッテは戦いながら何かを見ていた。見ながら満足そうに笑っていた。
「いい感じね」
「!?一体何を」
ヒューゴもそれを見ていた。見ながらおかしなものを感じていた。
「何を見ているんだ、あの女は」
「AIがどうとか言っているけれど」
それはアクアにもわからない。何故なのか首を傾げさせていた。
「状況を見ているみたいだけれど」
「これでいいわ」
二人がいぶかしむ中でミッテはアルベロに述べてきた。
「これで今回のデータは揃ったわ」
「揃ったのか」
「ええ、全てね」
そう答えて述べる。
「だからこれでね」
「わかった。では俺達も撤退するぞ」
その言葉を受けて撤退に入る。
「それでいいな」
「わかったわ。それじゃあ」
「うむ」
メディクスも撤退する。ヒューゴとアクアは取り残された形になった。
しかし二人はここで首を傾げさせたままであった。その中でヒューゴがアクアに問う。
「何かありそうだな」
「何かが」
「ああ、あの博士は何かを企んでいる」
彼は言う。
「良からぬことをな」
「先生、一体何を」
「少なくとも博士は御前を裏切っている」
はっきりとアクアに告げた。
「それを忘れるな」
「・・・・・・わかってるわ」
苦い顔でそれに頷く。
「けれどヒューゴ、貴方は」
「俺は俺だ」
アルベロのことは無理にでも吹っ切ろうとしていた。
「気にするな。いいな」
「・・・・・・わかったわ」
アクアはそれに頷く。戦いは何とか終わった。ロンド=ベルは集結しそのままゼダンに向かうこととなったのであった。すぐに作戦会議が開かれた。
「ア=バオア=クーにルナツーね」
エマが作戦会議の中でぽつりと呟いた。
「どちらも。かなりの守りね」
「ティターンズの全てのモビルスーツが動員されるみたいね」
ケーラがそのエマに対して告げる。
「それだけでもかなりのものだけれどね」
「尋常なものではないと」
「ビーム砲座及びミサイルが無数に存在している」
ブライトがここでそれを皆に告げてきた。
「それにも警戒して欲しい」
「それじゃあさ」
ブライトのその言葉を聞いてミオが言ってきた。
「そのビーム砲座とかをやっつけるのとモビルスーツの相手をするのに分けた方がいいんじゃないかな」
「おっ、師匠」
それを聞いたカモノハシ達が声をあげる。
「ええ考えでんな、それ」
「ホンマでっせ、ナイスアイディアや」
「よっ、大統領」
「・・・・・・おいミオ」
そんな三匹を見てマサキがミオに対して言う。
「そいつ等しまっとけよ」
「いいじゃない、それがいいんだから」
「それがいいんじゃねえよ。ったく御前はよ」
「まあマサキここはだ」
何故かギュネイが出て来る。
「落ち着いてくれ」
「いつも思うがあんたこいつのことになると出て来るよな」
「たまたまだ」
そう言うが説得力はない。
「気にするな」
「だといいけれどな」
「けれど今のミオの考えはいいね」
リューネはミオの考えに賛成の意見を述べてきた。
「魔装機神とヴァルシオーネでかなりやれるんじゃない?」
「そうだな」
ヤンロンもそれに同意して頷く。
「それでいくべきだな」
「私もそれに賛成するわ」
最後の一人テュッティも言う。
「それで問題ないと思うわ」
「そうだな」
ブライトは彼等の意見を聞きそれに頷くものを見た。
「あとはゼオライマーのメイオウ攻撃か」
「はい、じゃあ」
マサキがそれに応える。
「僕はそれで」
「よし、作戦はこれで決まりだ」
グローバルが決断を下した。
「モビルスーツを叩く主力部隊と要塞を破壊する別働隊だ。この二つでゼダンの門を攻略する」
「わかりました」
「この戦い、辛いものになる」
グローバルは一同に対して述べる。
「しかし、我々は必ず勝つ。いいな諸君」
「了解!」
会議はすぐに終わり作戦は決定した。こうしてロンド=ベルはゼダンの門に向かった。
アクアはその中で浮かない顔をしていた。窓の外の銀河を見て沈黙していた。
「どうした?」
ヒューゴが彼女に声をかけてきた。
「やはり気になるのか」
「ええ」
彼に顔を向けず窓の向こうを眺めたまま答える。
「気にならないって言えば嘘になるわ」
「そうか」
「ねえヒューゴ」
アクアはそのままヒューゴに声をかける。
「先生は何を目指しているのかしら」
「俺にはそこまではわからない。だが」
「だが?」
「その先にあるのは碌なものじゃないな」
「そうなの」
「勘がそう教えている」
ヒューゴは言った。
「あの人はもう御前が知っているエルデ=ミッテじゃない。それは忘れるなと言ったな」
「わかってるわ」
頷きはする。だが。
「それでも。いえ」
しかしここで踏み止まった。
「戦うわ。私だって軍人だから」
顔をあげた。
「そうよね、ヒューゴ」
「そうだ、今は戦え」
素っ気無くだがこう言ってきた。
「考えるのは後でいいからな」
「そうね。今は」
アクアもその言葉を自分で呟く。
「やるわよ」
「そうと決まったらこっちへ来い」
「こっちへって?」
「エクセレンさんが呼んでる。何でも飲み仲間が欲しいそうだ」
「飲むって」
それを聞いて真面目なアクアはその童顔をかなり顰めさせてきた。
「また戦闘なのに」
「一気に飲んでサウナで酒を抜くそうだ」
「・・・・・・それ、死ぬわよ」
「それでも飲みたいそうだ。さあ、早く行け」
「全く。エクセレンさんも困ったものね」
ふう、と溜息をつくが悪い気はしてはいない。
「いつもいつも」
「シンとカガリも一緒だ」
「あの子達も好きねえ」
「ついでに喧嘩もはじめている」
「飲む前からなのね」
これには呆れた。
「全く。あの子達もいつもいつも」
「とにかく来い。いいな」
「わかったわ。それじゃあ」
何はともあれアクアは気持ちを切り替えることができた。ティターンズとの戦いも遂に最後の局面に入ろうとしていた。ゼダンの門は間も無くであった。
第百五十一話完
2007・3・16
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