スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇
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第百三十三話 オーブ解放
第百三十三話 オーブ解放
オーブ解放作戦までの一週間。ロンド=ベルは沖縄でバカンスを楽しんでいた。主立ったメンバーは皆沖縄のビーチに出て来ていた。
「つってもよ」
ここでジュドーが言う。
「顔触れはいつも同じじゃね?」
「まあそんなことは言わないの」
「野暮なことはね」
ルーとエルがそれに対して言う。ルーは黒のワンピース、エルは鮮やかな青のビキニである。
「そういうものでしょ?」
「まあそうだけどな」
ジュドーもそれに返す。
「それでも顔触れは増えてるぜ」
「そうだね」
イーノがビーチャの言葉に頷く。
「アークエンジェルやミネルバの面々がいるからね」
モンドも言う。その横では白いお揃いのワンピースを着たプルとプルツーが西瓜割りをしている。
「西瓜後で食べようね」
「ああ」
「おっ、西瓜ね」
そこに真っ赤なビキニのルナマリアがやって来た。プロポーションはかなりいい。
「あたしもやっていいかな」
「ルナマリアもやるの?」
「ええ、こういうの好きなのよ」
彼女はにこりと笑って言ってきた。
「だからね」
「そうか。じゃあ」
プルツーが棒を彼女に手渡す。
「やってみろ」
「よし。それじゃあ」
「ちょっと待って」
黄色いポイント付きのワンピースのルナマリアがそこに来た。
「何?」
「西瓜割りでその棒の持ち方でいけるの?」
「あっ、そういえば」
それを聞いてカズイが気付く。
「今のルナマリアの持ち方って」
「何に影響を受けたの?」
トールが問う。とりあえず男は全員トランクスタイプの水着である。男の水着なぞはっきり言ってどうでもいい。
「この前ユウナさんから借りた特撮ものから」
ルナマリアはそう答えた。
「ああ、あれね」
サイはそれを聞いて何かすぐわかった。
「サイドカーに乗った仮面の人だね」
「そう、それ」
「あれだとちょっと問題があるんじゃないかな」
キラがこう言ってきた。
「ある?」
「うん。あれは切り払う形だからね」
彼はそう説明する。
「やっぱり西瓜割りには不向きだよ」
「そうなの」
「普通に持った方がいい」
レイがここで言ってきた。
「あの赤い仮面のようにな」
「ああ、狼ね」
ルナマリアはそれを聞いて応える。
「じゃあ普通に」
「お姉ちゃんってああいうキャラ好きだったんだ」
緑のビキニのメイリンがそれを聞いて呟く。スタイルは姉の方がいい感じだ。
「悪い?」
「別に。私は私であの白いライダー好きだし」
「あんな弱いの?」
「決める時は決めてない?」
「そうだけれどね」
「それにそのサイドカーの人死んでるじゃない」
「何言ってるのよ、生き返ったじゃない」
「あっ、そうだった」
「アトで生き返って。それも見たでしょ」
「ええ、まあ」
「だからいいのよ。あたしも生き返るなんて思わなかったけれどね」
「ユウナさんがえらく嬉しそうに語っていたな」
ハイネがそれを聞いて思い出す。
「どうしたものかな、あの人の趣味も」
「ははは、僕がどうしたんだい?」
そこに本人がやって来た。
「ユウナさん」
「いや、僕もバカンスを楽しませてもらってるんだよ」
見れば彼もトランクスの水着だ。しかし何か下着のトランクスに似た柄なので一見すると下着でそのまま来ているように見えてしまうのが何かおかしい。
「故郷解放の前の一休みだね」
「そうだったんですか」
「うん、そうだよ」
ユウナはにこやかに笑って返す。
「いよいよだからねえ。何か気持ちが高まるよ」
「そのわりに冷静ですね」
キラがそう声をかけた。
「いや、そういうわけでもないよ」
ユウナは笑ってそう返す。
「これでもね。結構緊張しているんだよ」
「そうなんですか」
「そうだよ。まあ顔には出ていないけれど」
彼は言う。
「実際は結構ね」
「それでユウナさん」
今度はレイが尋ねてきた。
「うん、何かな」
「オーブが解放されたらユウナさん達とはお別れでしょうか」
「いや、そのつもりはないよ」
彼はその質問にはこう返した。
「後はスタッフに任せてね。僕達は戦う予定になっているよ」
「それで大丈夫なんですか?」
ミリアリアがそれに問う。
「祖国を開けて」
「ああ、それはね」
ユウナはその質問にも答える。
「話はパソコンからでもできるし。それにうちの官僚スタッフはしっかりしているし」
「そうなんですか」
「それにこうして戦争に参加しているってことが大事なんだ」
彼はそう述べた。
「オーブも戦っているっていことがね」
「そうなんですか」
「皆戦っているのに誰かだけってわけにはいかないだろ?」
「確かに」
「その点では僕もカガリも意見は同じだったんだ。それでね」
「じゃあクサナギもこのままで」
「うん、これからも宜しくね」
「はい」
「こちらこそ」
「あとアズラエルさんも一緒だそうだから」
「あの人もですか」
だが彼に関しては皆複雑な顔になった。
「何かあるのかい?」
「いえ」
「それはつまり」
「全く。困ったものですね」
「うわ・・・・・・」
そこに本人が来た。紫のビキニにサーフボードを持っている。
「何て水着」
「よくあんなの履けるよな」
「何をそんなに驚いてるんですか?」
「御前自分の水着見ろ」
白のビキニのカガリがそう言う。
「何処にそんな水着があるんだよ」
「普通に売っていますけど」
「トランクスといい御前は紫のものしか履かないのか?」
「紫は高貴な色ですけれど」
「そういう問題じゃない」
カガリは言い返す。
「大体だな、そんな派手な水着で」
「これが僕のスタイルですから」
しかしアズラエルは聞こうとはしない。
「このスタイルは通しますよ」
「くっ」
「別にいいんじゃないのか、それは」
悪いことにここでまたシンが出て来た。
「御前はいちいち何でも言い過ぎるんだよ」
「何だとっ」
「誰がどんな水着着ようが勝手だろ。そもそも御前だってよ」
「私がどうしたんだ」
「胸あるだけで全然色気がねえよな。ったくよお」
「またこいつは」
「いらんこと言って」
ルナマリアとメイリンがその言葉を聞いて呆れた声を出す。
「ちったあ女の子らしくしろよ。そんなんだと嫁の貰い手ねえぞ」
「よくわかったね、シン君」
ユウナがその言葉にやけに関心してきた。
「んっ!?」
「実はねえ、それはオーブの深刻な問題なんだよ」
「そうなのか」
「うん、カガリをお嫁さんに欲しいって人がいなくてね。それで僕も頭を痛めているんだ」
「あれっ」
だがここでアスランがふと気付いた。
「ユウナさんって許婚だったんじゃ」
「いや、それは違うよ」
ユウナはそれはすぐに否定してきた。
「やっぱりね。僕はおしとやかで髪の毛の長い女の子がいいから」
「御前は少しは私をフォローしろ!」
カガリが彼に突っ込みを入れる。
「さっきからシンの肩ばかり持ってないか!?」
「それは気のせいだと思って」
「思えるか。そもそも御前は子供の頃から」
「カガリってあんなのだったのね」
「あっ、わかった?」
「実はそうなのよ」
ミリアリアにマユラとアサギが言ってきた。マユラは赤いワンピース、アサギは黄色のビキニである。
「ユウナさんも昔からああだったけれど」
ジュリは青のビキニだ。三人共プロポーションもいい。
「やっぱりね」
ミリアリアはそれを聞いてやけに納得したようであった。
「どう見たって白鳥じゃないし」
「どっちかっていうと赤龍?」
「主役よね」
「蟹とかコブラとか犀みたいじゃないだけいいんだけれどね」
「御前達もか!」
カガリは今度は三人にも食ってかかった。
「じゃああれか!?私が龍ならこいつはカメレオンか!」
ユウナを指して言う。
「人間は皆ライダーだってね」
ユウナは変身ポーズをしながら笑っていた。
「決まってるから」
「上手いですね」
ニコルがそれを見て素直に言う。
「何かそっくりですよ」
「有難う、やっぱり特撮ものはいいからね」
「はい」
「いや、ユウナさんの特撮ものは俺達もかなりお世話になってるしな」
「感謝感謝」
「何かと勉強になるんだな、これが」
ケーン、タップ、ライトの三人も来ていた。何だかんだで騒がしい面々がカガリの周りに集まってきている。
「で、こいつは何だ!?蝙蝠か!?」
「俺かよ」
シンは話を振られて憮然とする。
「俺じゃなくてキラの方がいいんじゃないのか?」
「こいつはルポでも書いていればいい」
「番組違うよね」
キラはそれを聞いてジュドーに囁いた。
「それだと」
「だよな」
「作品世界間違ってますよね」
ウッソもそれに頷く。カガリが勘違いしていると皆思ったが違っていた。
「あの世界はつながってるんだよ!」
彼女はそう主張する。
「だからアトでもだな」
「うん、そういう見方もあるね」
「確かに」
ユウナとアズラエルはその見方に賛成してきた。
「やっぱりあの作品世界はね。パラレルでも」
「リンクしていると見ていいです」
「そうだ。しかし私は女の子だぞ」
カガリは今度はそれを言ってきた。
「それでどうして赤龍なんだ。白鳥だろうが」
「馬鹿言ってんじゃねえ」
それにすぐにシンが突っ込んだ。
「御前の何処が白鳥だ。全然違うだろうが」
「何だと!」
「むしろ鬼とかそんなのだよ。何ならショウジョウバッタにでもなるか?」
「御前!地獄に落としてやる!」
「ああ、やってみろ!」
また二人は喧嘩に入った。
「今日こそは決着をつけてやる!」
「それは俺の台詞だ!」
「やれやれ、結局はこうなるんだね」
ユウナは思わず溜息をついてしまった。
「困ったものだよ、全く」
「だから嫁の貰い手がないのですね」
「そういうことです。将来はどうなることやら」
ユウナはアズラエルの言葉にふう、と溜息をまた吐き出す。
「困ったものです」
「何かオーブも大変なんだな」
「そうみたいだな」
アスランはシーブックの言葉に頷く。
「しかし結婚なんて」
「アスランは許婚いたんじゃなかったかしら」
緑のワンピースでパレオを巻いているセシリーが言ってきた。
「確か」
「まあね。けれど今はこうして離れてるから」
「ラクス=クラインだったわよね」
ミレーヌが問う。彼女は自分の色のピンクのビキニだ。しかし胸がない。
「うん、そうだよ」
「何か一度でいいから会ってみたいわ」
ミレーヌはそう言う。
「歌手として憧れだから」
「そう言うとラクスも喜ぶよ」
アスランはその言葉に笑みを返してきた。
「有り難う」
「いや、御礼はその」
礼には照れ臭そうにしてきた。
「別にいいけれど」
「そうなんだ」
「しかし何だね」
トールが話に入ってきた。
「こうして見るとロンド=ベルも色々な人間がいるよね」
「そうだよな」
カズイがそれに頷く。
「最初はえらいことになったと思ったけれど慣れてみると」
「楽しくもあるわね」
マリューが言う。黒い派手なビキニから巨大な胸が見える。軍人というよりはモデルといった感じのプロポーションである。雑誌に出ても通用するであろう。
「私もかなり勉強することがあったし」
「私もです」
ノイマンも来た。
「色々ありましたから」
「俺一回死にかけたしなあ」
「僕もでしたね」
「御前等本当によく生きてたな」
ディアッカがトールとニコルに言う。
「死んでたらユウナさんの特撮見れなかったとこだぜ」
「全く」
「危ないところでした」
「で、こいつ等の喧嘩も」
「やっぱり御前死ね!」
「死ぬのは御前だ!」
既に取っ組み合い、掴み合いの喧嘩に入っていた。それを皆呆れる目で見ている。
他の面々もバカンスを楽しんでいる。タリアは白いビキニの紐を外しうつ伏せに砂浜に寝ている。そこで肌を焼いていた。
「紫外線怖くないの?」
それにリツコが問う。彼女は完全武装であった。
「いえ、別に」
タリアはそれに答える。
「たまには日の光も浴びないと駄目だから」
「そうなの」
しかし彼女はコートもサングラスも帽子も外そうとはしない。
「何かその言葉羨ましいわ」
「貴女の方もそんな服装だと暑くないの?」
「そんなのいいのよ」
彼女は言う。
「お肌の方が大事だから」
「そうなの」
「そうよね、ミサト」
「ええ」
見ればミサトも同じである。
「水着なんか着てたらこの日差しは」
「心配のし過ぎじゃないかしら」
「甘いわね、タリア」
ミサトは彼女に言う。
「そんなこと言っていたら本当に」
「後でえらいことになるわよ」
リツコもそれに続く。何か異様なまでに神経質になっているといった感じであった。
「アクアもエクセレンもそれで出ていないんだから」
「二十三でね」
「ううん」
それを聞いてもタリアはどうも賛成できなかった。つい首を傾げてしまう。
「それでもねえ」
「まあああしていられるのも今のうちよ」
海の方を見る。そこではスティング達が遊んでいた。
「若いうちだけ」
「そのうちね」
「怨念めいているわね」
タリアにはそうとしか思えない。
「何か」
「おいステラ!」
スティングがステラに声をかける。
「御前まだ泳げないのか!」
「泳ぐって何?」
「何じゃねえ!また溺れるぞ!」
「俺は水の中じゃ無敵だぜ!」
アウルはアウルで勝手に泳ぎ回っている。三人は結構滅茶苦茶になっていた。
「終わったら西瓜でももらいに行くか?」
「ああ、それはいいな」
スティングはアウルのその提案には頷いた。
「喉が渇いたらな」
「やっぱり夏は西瓜だぜ」
「シンも西瓜食べてる?」
「おう、当たり前だ!」
そこにアルフレッドがやって来た。見事な肉体美である。
「俺が綺麗に切って纏めてやるからな!楽しみにしてろ!」
「けど向こうにはディアッカがいるぜ」
アウルが彼に言う。
「おっさん、そこはどうするんだい?」
「いいんだよ!それが面白いんだ!」
しかしアルフレッドは動じてはいない。
「西瓜の斬り合い勝負だ!見ていろ!」
「西瓜の斬り合い」
「そうだ!腕が鳴るわい!」
「あの人料理できたの」
ミサトはそれを見て少し驚いていた。
「意外っていうか何て言うか」
「貴女が料理しなさ過ぎるのよ」
リツコはそう彼女に言う。
「また極端に」
「いいじゃない、それは」
ミサトはサングラスの奥にバツの悪い顔を見せて述べる。
「誰だって得手不得手があるわ」
「そういえば私も最近料理してないわね」
タリアがそんな二人の会話を聞いてふと思い出した。
「うちの子にも随分会っていないし」
「あら、結婚してたの」
「ええ」
ミサトに答える。
「男の子が一人いるわ」
「へえ。それはまた」
「タリアも隅に置けないわね。子供が一人いてそのプロポーションって」
「努力してるのよ、これでも」
リツコとミサトにそう返す。
「何かとね」
「私もちょっち頑張らないとね、そこは」
「貴女はビールを控えたら?」
「うう・・・・・・」
一番痛いところを突かれて弱ってしまった。
「そのうちえらいことになるわよ。身体が」
彼女達は何か深刻な話になっていた。だが皆全体的に穏やかでのどかなオフを過ごした。そうして一週間が過ぎたのであった。
一週間が経つと彼等は沖縄からオーブに向かっていた。その先頭にはクサナギがいる。
「進め!」
カガリが艦橋で指示を出していた。
「すぐにオーブだ!いいな!」
「ああ、カガリ」
「何だ?」
彼女にユウナが声をかけてきた。二人共オーブの軍服を着ている。
「オーブ解放の時はね」
「施設への攻撃は厳禁だったな」
「そういうこと。すぐにそこから宇宙に出ることになるからね」
「わかった」
その言葉に頷く。
「じゃあそこには攻撃しない」
「さもないとBF団が来た時みたいになるからね」
「あの連中の話好きだな、何か」
「記憶には残ったね」
そうカガリに対して答える。
「嫌でも」
「嫌でもか」
「トラウマになったからね」
ユウナはこうも述べる。
「あんまりだったからねえ。一人であそこまで」
「特撮ものの怪人より酷かったですからな、あれは」
キサカも話に入ってきた。
「人間とは思えませんでした」
「大体あいつ等は人間だったのか!?」
「多分違うんじゃないかな」
ユウナはかなり本気でそう思っている。
「やっぱりあれは」
「そうか」
「そんな気がするよ」
彼は言う。
「あんなのを見ていたら」
「そういえばですね」
ふとアズラエルが話に入ってきた。
「あのマスターアジアという方もそのままでしたね」
「あいつか」
カガリはその名を聞いても眉を動かしてきた。そしてアズラエルに目を向ける。
「あいつもいたな、そういえば」
「はい。どうやらパナマから行方をくらましているようですが」
「生きているんだろう?」
カガリは問う。
「やっぱり」
「まあそうでしょうね」
それにアズラエルが答える。
「というか死ぬと思います?」
「実際に会ったことはないが多分ないな」
それはカガリにもわかった。
「あいつだけは」
「核兵器でも死なないんじゃないかな」
ユウナは述べる。
「彼だけは」
「何時かは戦わないといけないのか?やっぱり」
「何時かはそうでしょうね」
今度はアズラエルが答える。
「それも近いうちに」
「何かそんなの残して宇宙に出るのもな」
「ああ、カガリ」
だがここでユウナが言葉を入れてきた。
「どうした?」
「そんなこと言うと出るよ」
「出るよってまるで怪獣か何かみたいだな」
「実際それに近いじゃない」
ユウナは述べる。
「あの戦闘力は」
「そうだよな。正直あれじゃあ普通のモビルスーツじゃ勝てないぞ」
「だからライオンロボ君やドモン君達がいるんですよ」
「あいつ等か」
カガリの顔がアズラエルの言葉に急に明るくなる。
「そうです、彼等がいますから」
「頼りになるってものだな」
「この部隊は人材豊富ですからね。どうとでも戦えますよ」
「そうだな。何か心配じゃなくなったぞ」
「しかしね、カガリ」
だがユウナはまだ心配顔であった。やはりマスターアジアは手強いというものではなかったからだ。
「相当激しい戦いになるよ」
「やはりそうか」
「それもかなりね。素手で使徒を倒したりするから」
「やれやれだな」
カガリはそれを聞いて大きく溜息をつく。
「私もそこまで強ければな」
「そういえば貴女は身体能力はかなりのものですね」
アズラエルがそれに言及してきた。
「コーディネイターのシン君とも互角ですし」
「あいつとか」
「そういえばそうですな」
キサカがそれに応えてきた。
「カガリ様は元々運動神経は素晴らしいものがありましたが最近はとりわけ」
「それがいい方向に向かってくれればいいんだけれどねえ」
ユウナはついついぼやく。
「全くねえ。困ったものだよ」
「御前なあ」
カガリはそんな彼に対して言う。
「どうにも最近愚痴っぽくないか?」
「そうかな」
「何か。どうしたんだ」
「まあ気にしないでくれていいよ」
しかしユウナはそれに答えようとはしない。そのかわりこう言ってきた。
「僕としてはシン君と喧嘩しないでくれたらいいから」
「あいつが悪いんだ」
シンと同じことを言う。
「あいつがいちいちつっかかってくるからだ」
「結局似た者同士ということですね」
「全くです」
キサカがアズラエルの言葉に頷く。
「乱暴でもいい。健やかに育って頂ければと思っていたら」
「その通りになってしまいましたね」
「神というものがどれだけ意地の悪いものが思い知らされました」
「本当に空き放題言ってくれるな、全く」
「まあカガリ」
ユウナがここで話を変えてきた。
「どうした?」
「もうすぐシンガポールだよ」
「そうか」
「そこからオーブに向かうから」
「いよいよだな」
「うん。だからね」
「わかった」
ユウナの言葉に頷いてきた。
「出撃準備に入る。じゃあな」
「そうだね。では総員戦闘配置」
ユウナが指示を下した。
「それぞれの持ち場に。パイロットは出撃状態で待機」
「了解」
「わかりました」
アサギ達がそれに応える。既に彼女達は格納庫にパイロットスーツでいた。
「カガリ様も」
「ああ、わかってる」
カガリは艦橋のモニターからそれに応える。
「すぐに行く。気合入れていくぞ」
「勿論ですよ」
「祖国解放ですからね」
彼女達も普段よりも気合が入っていた。やはり祖国解放となると心構えが違っていた。
「やってやります!」
「おい、それじゃあ気合が入ったうちにならねえぜ」
それに忍が声をかけてきた。
「藤原中尉」
「じゃあやっぱりここは」
「おう!あれだ!」
三人娘に対して述べる。気合はもう充分であった。
「やあぁぁぁぁぁってやるぜ!」
この声が止めの気合であった。ロンド=ベルは気合を充分に今オーブ解放作戦に入ったのであった。6
守っているのはマーグとロゼであった。そしてシャピロもいた。
「やはりここに来たか」
「予想通りでした」
ロゼがマーグに答える。
「今彼等は戦力的に充実しています。それに対して我々は」
「そうだね」
マーグはロゼに難しい顔で答えた。
「参ったよ、ここで宇宙怪獣の攻撃を受けるなんて」
「かろうじて撃退はできましたが」
「それでもね。おかげで主力を宇宙に向けることになってしまった」
「はい」
「ここに残っている戦力は少ない。どうしたものかな」
「放棄されますか?」
ロゼは撤退を提案してきた。
「今ここで無駄な戦力を消耗するよりは」
「撤退か」
「そうです」
ロゼはまた言う。
「それもまた戦略だと存じます」
「そうだね」
マーグもそれに頷いてきた。
「それではそうするか。シャピロ」
「はっ」
シャピロがそれに応えてきた。
「ここは君に任せてもいいか」
「喜んで」
シャピロは断るわけでもなくそれに応えてきた。無論本心は隠したままであった。
「では頼む。ただしだ」
マーグは言う。
「くれぐれも無駄な損害は出さないようにな。適度なところで撤退してくれ」
「わかりました。では」
「うん。じゃあロゼ」
「ええ」
ロゼはマーグに応えた。
「冥王星周辺にまで下がってそこで戦力を整えなおそう。いいね」
「わかりました。では」
まずはマーグの母艦が撤退した。それを見届けたシャピロはすぐに作戦の指揮に移った。
「いいか、無理に戦うことはない」
彼はマーグの言葉をそのまま軍に対して言った。
「いいな、撤退を優先させる」
無人機を出し有人のものは後方に下げる。自らも後方に退いていた。
そこにロンド=ベルが来た。既に戦闘態勢に入っている。
「よし、行くぞ!」
カガリが言う。ストライクルージュが先頭にいた。
「オーブ解放だ!そして次は宇宙だ!」
「あら」
マリューはその言葉を聞いてふと気付いた。
「カガリもちゃんと戦略を考えるようになったのね」
「ですね」
それにサイが頷く。彼等も将校になったのでそれが求められるようになったのだがサイはその中でもとりわけ戦略や戦力分析に秀でておりアークエンジェルの中では高い評価を受けているのである。
「意外ですけれど」
「うん、確かに凄く意外」
カズイがそれに応える。
「予想していなかったよ」
「そうよねえ」
ミリアリアが頷く。彼女も士官の膝までのスカートになっていた。
「あのカガリだから」
「意外とその素質があったってこと?」
トールの言葉はかなり失礼ではあった。
「これって」
「そうかも」
だがマリューはその言葉に頷いていた。やはりそうだとしか思えないからだ。
「あれで彼女は勘もいいから」
「勘がいいのはいいことです」
ノイマンがそれに述べる。
「それだけで大きく違うものですよ」
「そうね」
マリューはその言葉にも頷いてきた。
「戦争とかってそれで大きく変わるから」
「中には勘だけで戦争してるのもいるけれど」
「だからそれがカガリでしょ」
ミリアリアがトールに突っ込みを入れる。
「一応進歩はあるけれど。今みたいに」
「何かまだまだ進歩が必要みたいだよ」
カズイはまたしても身も蓋もない突込みを入れる。
「見ているとさ」
「けれどあれはあれでいいんじゃないかな」
サイは比較的温厚な評価を述べてきた。
「役に立ってるし、その勘も」
「そうかしら」
だがマリューはそれには首を傾げる。
「そういう時もあるけれど暴走もするし」
「何か私は言われ放題だな」
カガリはアークエンジェルのそんな会話を見てぼやく。
「また何でだ」
「それが人徳です」
クサナギからキサカが言ってきた。
「全てカガリ様の」
「この場合いい意味じゃないだろ」
「はい」
「はいって御前」
思わずキサカに突っ込みを入れる。
「幾ら何でもその言い方は」
「おい、カガリ」
だがここでキースが彼女に声をかけてきた。
「どうした?」
「そろそろ攻撃だぜ。宜しく頼むぜ」
「あ、ああ」
彼女はキースのその言葉に応える。そして構えを取る。
「じゃあやるか。皆、用意はいいな」
「了解、お姫様」
ムウが軽い調子で言ってきた。
「御供させてもらうぜ」
「御供っていうのは」
「まあまあカガリ様」
「そんなこと言わずに」
オーブ三人娘が彼女をフォローする。いつもの光景であった。
「そういうの好きじゃないんですよね」
「そうだ」
カガリはそう答える。
「仲間だ、いいな」
「了解、じゃあ一緒に行かせてもらうぜ」
「そうだ、そうじゃなきゃな」
カガリはムウに対して述べる。
「やっぱり戦友なんだからな」
「へっ、ここで大怪我して戦友の迷惑かけるなよ」
「何っ!」
シンの憎まれ口にすぐに顔を怒らせてきた。
「御前にだけは言われたくはない!」
「俺にだけはかよ」
「そうだ!御前こそ大怪我しても知らないからな!」
「俺が怪我なんかするか!」
シンは言い返す。
「このトップエースの俺がよ!」
「また喧嘩して」
「本当に飽きないわね」
ルナマリアとメイリンはそんな二人を見て呆れ顔であった。だが二人はそれでもやり合う。
「御前みたいな下手が一番危ないんだよ!」
「私が下手だと!」
「そうさ。いっつもオタオタしやがってよ。見ていられねえぜ」
そうカガリに嫌味を込めて言う。
「悔しかったらトップガンになってみろ」
「言ったな!じゃあ見せてやる!」
売り言葉に買い言葉であった。カガリも負けてはいない。
「この戦い!二十機は撃墜してやるぞ!」
「またそんな無茶を」
ユウナがそれを聞いて溜息をつく。
「何でいつもそうなのかなあ」
「まあユウナ様」
そんな彼にキサカが言う。
「マユラ達もいますし。そう無茶なことにはなりませんから」
「そうかね」
だがユウナの表情は変わらない。
「そんなこと言っていつも大変なことになってるじゃないか」
「まあそれはそうですが」
こう言われるとキサカも弱い。黙ってしまう。
「それはそれで」
「まあいいよ。じゃあ」
ユウナは話を切って指示を出してきた。全軍に対して言う。
「そのまま敵に向けて集中攻撃。そして一気に上陸だ、いいね」
「了解!」
「バルマーの腰抜けが!覚悟しやがれ!」
ボルテスとコンバトラーが出る。まずは彼等がミサイルを放った。
「いっけえええええーーーーーーー!」
それで敵のメギロートの数を大きく減らす。それで動きが止まったところで他のマシンも攻撃を浴びせてきた。
「このっ!このっ!」
その中にはキースもいる。彼は一機一機確実に撃っていく。
そしてその穴にバニング達が切り込む。見事な連携であった。
「いいか!確実に敵の数を減らしていけ!」
バニングはそう他の三人に対して言う。
「わかったな!」
「了解!」
モンシアがそれに応える。
「ここはじっくりいきやすぜ!」
「あれっ」
だがここでアデルが気付いた。
「隊長」
「どうした、アデル」
バニングがそれを受けてアデルに応えた。
「敵の攻撃が思ったより弱いですね」
「!?そうか?」
モンシアがその言葉に顔を顰めさせてきた。
「こんなものじゃねえのか?」
「いや」
ベイトが言ってきた。
「そうだな。思ったより弱いな」
「確かにな」
そしてバニングもそれを認めてきた。
「無人機ばかりだ。有人機は後方に下がって積極的な攻撃を仕掛けて来ない」
「戦艦もですね。動きませんね」
ベイトは戦艦も見ていた。見れば彼等もそうであった。
「そうだな。どういうことだ?」
「撤退でしょうか」
アデルが言ってきた。
「この動きは」
「どういうことだ?ここは奴等の地球の拠点なんだろ?」
モンシアがそれに問う。
「それでどうしてだよ」
「詳しいことはわからん」
バニングは言う。
「だが敵の攻撃が弱いことは確かだ」
「そうですね。じゃあ俺達は」
「そうだ。いいか」
バニングがベイトの言葉を受けて新しい指示を出した。
「ここは来る敵だけを狙え。少しずつ前に出ればいい」
「了解」
皆それに従う。だがカガリだけは違っていた。
「このっ!」
ビームライフルを乱射する。それで敵を次々と屠っていく。
「どうだ!これで!」
「おいおい、マジかよ」
そんな彼女を見てシンが言う。
「本当に二十機撃墜するつもりかよ」
「当たり前だ!」
カガリはそのシンにも叫ぶ。
「それで済むと思うな!」
「何て奴だ」
「また何てことを」
シンとユウナは呆れていたがそれぞれの色は全く違っていた。
「若しものことがあったらどうするんだよ」
「まあまあユウナ殿」
「エイブ艦長」
何故かここでエイブがモニターに出て来てユウナをなだめてきた。
「ここは充分な戦力になっていますし敵も大したことはありませんし」
「そうですけれどね」
ユウナはそれに応えて言う。
「やはり若しものことがあれば」
「大丈夫です」
エレも言ってきた。
「今のカガリさんは違ってきていますから」
「違ってきている!?」
「そうです。オーラ力が」
彼女は述べる。
「かなり違ってきています」
「そうなのですか」
これはユウナにはわからないことであった。目をパチクリとさせている。
「そうですね。これは」
シーラも話に入ってきた。
「キラ=ヤマトと同じ」
「キラ君と!?」
「そしてシン=アスカとも」
「!?どういうことですか」
ユウナは話が見えなくなってきていた。
「それって」
「さて」
キサカも首を傾げてしまっていた。
「どういうことなのでしょう」
「御安心下さい」
またエレが言ってきた。
「今のカガリさんにはそうした気遣いは無用です」
「そうなんですか」
「ええ、ですから」
「ユウナさんは艦の指揮にあたられて下さい」
「いえ、それもですね」
ユウナはエレとシーラのその言葉に苦笑いを浮かべて答えてきた。
「実は僕はクサナギの艦長じゃないんですよ」
「えっ」
「そうなのですか」
これは意外であった。実は二人はユウナがクサナギの艦長だと今まで思っていたのである。
「はい、艦長はトダカ一佐なんですよ」
「そういえば私はかなり目立っていませんな」
「はあ」
キサカがトダカの言葉に応えていた。
「ユウナ様とアズラエルさんのおかげで」
「まあ御気になさらずに」
キサカがそんな彼を宥める。
「私も最近そうですから」
「そういうことなんですよ。僕はあくまでオーブの参謀総長兼首相兼首席補佐官でして」
「そうだったのですか」
「それは知りませんでした」
二人の女王はユウナの説明を聞いて目を丸くさせていた。
「ですから。艦のことは艦長に聞いて下さい」
「わかりました」
「それではそのように」
「そうして頂けると助かります」
ユウナは述べた。
「しかし」
「何でしょうか」
キサカが彼に問うてきた。
「僕の役職は自然に増えていないかい?他にも色々やっているし」
「非常時ですから」
キサカの言葉は実に率直なものであった。反論を許さない程に。
「それに」
「それに?」
「デスクワークができる方は今ここにはユウナ様しかおられないので。そこをまず覚えていて下さい」
「だからか」
「はい」
キサカは頷く。カガリにデスクワークが出来る筈がないのだ。その為そうした仕事は自然にユウナのところに向かうのである。
「やれやれだね」
「まあ諦めて下さい」
「それが僕の役目だからね。いいけれど」
既にそれは達観していた。
「しかし。カガリだけれど」
「はい」
話はカガリに移っていた。
「何かあるのかな。キラ君やシン君と同じなんて」
「さて」
彼等にそれはわからなかった。だが今カガリに何かが起きようとしているのは明らかであった。
「行くぞ!」
彼女はさらに敵に攻撃を浴びせていた。ビームライフルで次々と射抜く。
敵の攻撃は見事なまでにかわす。それは既に唯の人間のものではなかった。
「!?カガリさんの動きは」
それに最初に気付いたのはジャックであった。
「何か。普段と違う」
「ああ、そうだな」
それにミゲルが頷く。
「あの動きは一体」
「コーディネイターのそれでしょうか」
エルフィが言ってきた。
「あれは」
「いえ」
だがそれはフィリスによって否定された。
「カガリさんはナチュラルです。そんな筈が」
「ニュータイプ!?」
ジャックがふと言った。
「いや、違うよな」
「はい。むしろ」
フィリスはここであるものを感じていた。それはシーラやエレと同じものであった。
「これは・・・・・・本当に私と同じ」
「貴女と!?」
「ええ」
エルフィに答える。
「そしてラクス様と」
「それってまさか」
ジャックはその言葉を聞いてあることを察した。
「カガリさんも」
「若しそうだとしたら」
ミゲルが呟いてきた。
「カガリもまた」
「この世に必要な方」
「うおおおおお!」
カガリはまだ攻撃を仕掛けていた。弾薬の補給を受け取りさらに攻撃を続ける。
「まだだ!まだやる!」
「カ、カガリ様」
「どうしたんですか!?今日は」
マユラ達もそんな彼女を見て驚きを隠せない。ついて来るだけで精一杯であった。
「何か別人みたい」
「これって」
「見える」
カガリはコクピットの中で呟いていた。
「今は」
その時だった。彼女の中で何かが弾けた。そして。
目の色が消えた。表情がなくなる。彼女も今SEEDになったのであった。
「!?」
「これは」
それに最初に気付いたのはシンであった。そしてアスランも。
「アスラン」
「わかってる」
アスランはすぐにシンに応えた。
「カガリも。まさか」
「うん、そのまさかだよ」
キラも言ってきた。
「カガリもそうだったなんて」
「俺達と同じか」
「そうだな」
アスランはシンの言葉に頷く。
「同じだ。俺達と」
「けれどこれで六人だね」
キラはふと述べた。
「刻印を持つのは」
「ラクス嬢の考え通りか」
「それがどうなっていくんだ」
三人にはそれはまだわからなかった。しかし刻印を持っているモノが集っているのは明らかであった。それがラクスの狙いであったのだ。プラントを、そして人類を救う為の。彼女もまた人類のことを考えていたのであった。
SEEDになったカガリはそのまま敵の中へ突き進む。そして無人機だけでなく有人機までも撃墜してきた。
「何だ、あのモビルスーツは」
シャピロはそれを見て眉を顰めさせた。
「シャピロ様」
そこに部下が来た。そして言う。
「あれ一機だけでかなりのダメージが」
「撤退を急がせろ」
「撤退をですか」
「そうだ。これ以上のダメージは今後の作戦にも支障が出る」
彼はそれを危惧していた。
「だからだ。いいな」
「わかりました。それでは」
部下はそれに頷く。そして彼の指示を伝える。
「前面にさらに無人機を出せ」
そのうえで足止め用の無人機をさらに出すように言う。
「いいな、そして我々も」
「はい」
「やい、シャピロ!」
だがそこにダンクーガも来た。カガリに負けずとも劣らずの勢いで突き進んできたのである。
「今度こそ観念しやがれ!」
「くっ、ダンクーガまで来ていたか。やはり」
「せめて地球で死なせてやるよ!」
「結城、御前もか」
「いいか、忍」
亮が忍に対して言う。
「戦艦だ。一撃で決めるぞ」
「ああ!最初からそのつもりだぜ!」
忍もそれに応える。そして断空砲を構える。
「これでな!」
「一気にやっちゃいなよ!」
雅人も言う。
「それで派手にさ!」
「おう!これでシャピロのどてっ腹に大穴開けてやるぜ!」
照準を合わせる。しかしシャピロにとっては運のいいことに無人機の発出が間に合った。
「持っている無人機を全て出しました!」
「よし」
シャピロはそれに応える。それはすぐに前に展開する。
「総員撤退だ!いいな!」
「はい!」
「冥王星で落ち合う!まずは脱出することを考えろ!」
「了解!」
戦艦と有人機が一斉にテレポートで強引に姿を消した。ダンクーガが断空砲を放ったのはその瞬間であった。
光の帯が一閃し無数の爆発を起こしていく。だがそこにシャピロの姿はなかった。
「チッ」
忍はシャピロが姿を消したのを見て舌打ちした。だがもうどうしようもなかった。
「よし、後は無人機を撃墜していけ」
ブライトが指示を出した。
「いいな、オーブ解放はそれからだ」
「了解」
アムロがそれに応える。そして皆それに続く。
バルマーの無人機は次々に撃墜されていく。暫くして戦いは完全に終わりオーブは解放されたのであった。
「これでよしね」
ミサトは敵が一機もいなくなったのを確認して述べた。
「作戦成功っと。思ったより呆気なかったわね」
「向こうが本気じゃなかったからね」
それにリツコが応える。
「その点は幸運だったかしら」
「まあそうね。けれどこれで」
ミサトは言う。
「宇宙ね、いよいよ」
「ええ」
リツコもそれには頷く。
「遂に、という感じね」
「今回の地上での作戦は長かったからねえ。その分色々とあったけれど」
「美少年増えて嬉しいのかしら」
「まあね・・・・・・ってちょっと」
リツコの言葉にすぐクレームを返す。
「何言うのよ、そこで」
「ザフトの面々も参加したからそうじゃないかなって思ったんだけれど図星だったかしら」
横目でミサトを見て意地悪に笑う。その両手は腰につけてある。
「どう?」
「どうって」
そう言われるとミサトも弱ってしまう。
「まあそれもいいことはいいけれど」
「やっぱりね」
「戦力としてもね。彼等はよくやってくれてるわ」
「特に彼?」
「そう、それと彼」
ミサトは述べる。
「シン君とキラ君ね。何か最近キラ君大人しいけれど」
「まあそれは仕方ないわ」
リツコはこう返す。
「彼は元々そういう性格だし」
「まあそれもいいんだけれど」
「いいの」
「ええ。エキセントリックな子を叱るのもいいけれどああした大人しい子を教えてあげるのも」
「やっぱり好きなのね」
「リツコもでしょ?」
「否定はしないわ」
何とリツコもミサトと同じ趣味であった。
「ただ、シン君には厳しい教育的指導が必要だけれど」
「同感」
「さて、ミサトさん」
エレが声をかけてきた。
「あっ、はい」
「もうオーブは解放しましたし」
「そうですね。じゃあ」
ミサトはその言葉を受けてあらたまる。それから述べた。
「全軍集結。これより宇宙に・・・・・・」
「ふはははははははははははははははは!」
その時だった。高らかな笑い声が聞こえてきた。
「この声は!」
アスカがそれを聞いてすぐに表情を変える。
「まさかこんな時に!」
「来たというのか!」
レインとドモンはそれぞれ違った反応を見せる。だが顔を向けた方向は同じであった。
「マスターアジア!」
「まさか!」
「よくぞミケーネとバルマーを滅ぼした!褒めてやろうぞ!」
「・・・・・・それはいいけれど」
ミサトは急に髪型を乱れさせて呆れた顔になっていた。
「何処にいるのよ」
「また非常識な」
彼は何と海の上に立っていた。そこで腕を組んで高笑いをしているのだ。
「だがロンド=ベルよ!」
「ええい、離しなさいよ!」
アスカはエヴァでマスターアジアに向かおうとする。だがそれをシンジとディアッカに後ろから羽交い絞めにされて止められていた。
「今日こそはあの変態妖怪を!」
「落ち着けアスカ!」
ディアッカがアスカに言う。
「ありゃ人間じゃねえだろ!エヴァでも一機じゃ無理だ!」
「やってやるわよ!」
「相手は素手でATフィールド破壊するんだよ、無茶だよ」
シンジも言う。
「そんな相手に一人で行くなんて」
「今ここであいつを倒しておかないと大変なことになるのわからないの!」
「まあそうだけどな」
ディアッカはそれには同意する。
「どっからどう見たって人間じゃねえしか」
「ちょっとディアッカ」
シンジはその言葉を聞いて彼に突っ込みを入れる。
「そんなこと言ったら元も子もないよ」
「ああ、すまねえ」
「確かに人間にはとても思えないけれどね」
「言っとくがコーディネイターでもあんなのできねえからな」
「BF団じゃないと無理?」
「ああ」
激昂しているのはアスカだけではなかった。シンとカガリもであった。
「だから落ち着いてシン」
シンはキラに止められていた。
「今攻撃しても多分無駄だよ」
「どけキラ!」
しかし激昂する彼はその言葉を振り切ろうとする。
「何で海面に立っているんだ!あいつは人間か!」
「離せ、どけアスラン!」
「落ち着くんだ、カガリ」
アスランはアスランでカガリを制止していた。
「幾ら今の御前でも無理だ。第一当たるものか」
「折角解放したのにどうしてあんなのが出て来るんだ!」
皆それぞれ極端な反応を見せていた。その中でもドモンの感情は際立っていた。
「マスターアジア!」
彼をじっと見据えていた。
「まだ出て来たというのか!」
「そうだ、ドモン!」
彼は海面の上で誇らしげに述べる。
「今ここで成敗してくれてもよいのだがな」
「ほざけ!」
ドモンは彼に対して叫ぶ。
「それは俺の台詞だ!今ここで決着をつけてやる!」
「だが!」
しかしマスターアジアは言う。
「決着をつけるべき場所はここではない」
「何っ!?」
「香港へ来るのだ」
彼は誘う。
「そこで決着を着けようぞ!」
「香港だと!?」
「左様、わかったな」
ここで不敵に笑ってきた。
「言うべきことは伝えた。では!」
水面を蹴って跳んだ。
「さらばだ!」
そのまま何処かへと消えていった。だがその言葉は残った。
「香港だと」
「そこで彼との決着か」
ブライトとグローバルはその言葉を聞いて呟いてきた。そのグローバルにミサトが問うてきた。
「どうしますか?」
もう真剣な顔になっている。その顔で問うてきていた。
「このまま宇宙に向かいますか?それとも」
「うむ」
グローバルはその言葉を受けて決断を下した。それはもう決まっていた。
「香港に向かう」
彼は言った。
「総員香港へ向かう。そこでマスターアジアとの決着をつける、いいな」
「宇宙には向かわないのか」
カガリはそれを聞いて一人呟いた。
「そしてオーブともお別れなのか」
「カガリ様」
だが彼女にオーブ三人娘が声をかけてきた。最初に声をかけてきたのはジュリであった。
「気にすることないですよ」
「そうですよ、戦いが終わったら帰れますから」
次にアサギが。
「それまでの我慢ということで。いいじゃないですか」
「そうだな」
マユラの言葉も受けてカガリは応えた。
「じゃあまただな」
「そういうことですね」
「それじゃあ」
彼女達はクサナギに帰還した。見れば全ての機体が帰還してきていた。
「これでいいな」
シナプスは総員帰投したのを見て言ってきた。
「香港に向かうか」
「はい」
艦橋に来ていたバニングがそれに応える。
「何時でも」
「わかった。では今から香港に向かうぞ」
「了解」
戦いを終えてすぐに香港に向かう。カガリはその中でオーブをチラリと見た。
「またな」
「生きていればまた戻ってこれますよ」
そんな彼女にアズラエルが声をかけてきた。
「きっとね」
「生きていればか」
「はい、僕も貴女も」
「御前はオーブには呼ばないぞ」
「それはまた他人行儀な」
「他人行儀も何もそもそも御前何時の間にかクサナギにいたよな」
「まあそれは御気になさらないで」
「何かこの部隊はどんどん大所帯になっているみたいだしな」
「僕達もそのままここにいるしね」
ユウナが言ってきた。
「それはそれでいいんじゃないかな」
「そうか」
「そうだよ。旅行も人が多い方が楽しいし」
「シンがいないともっとな」
「彼とはどうしても仲良くできないんだね」
「する気もない」
憮然とした声で述べる。
「何時か抹殺してやる」
「早まったことはしないようにね」
「ああ。殺さない程度にな」
「いや、それだけじゃなくてね」
「!?」
「ああ、わからないならいいよ」
ユウナはそれ以上は言おうとはしなかった。
「気にしないでいいから」
「何か引っ掛かるな」
カガリの勘がそれを教えていた。
「一体何なんだ」
そんなことを言いながら香港へ向かう。その中でドモンは燃えていた。
「ねえドモン」
そんな彼にレインが声をかける。
「わかってると思うけれど」
「ああ」
ドモンは燃える声でレインに言ってきた。
「わかってる。ここはな」
「そう。ならいいけれど」
「香港だ」
彼はそのうえで言う。
「そこで奴と」
「それでねドモン」
「どうした?」
「この戦いの後はどうするの?」
レインはそれを尋ねてきた。
「マスターアジアとの戦いが終わって。それから他の戦いも終わったら。どうするの?」
「それはわからない」
ドモンは答えた。
「俺は戦うことしかできないからな。他のことは」
「そうなの」
レインはそれを聞いて悲しいようなわかったような顔を一瞬だが見せてきた。
「やっぱりそうなのね」
「それがどうかしたのか?」
「いえ」
だがそこから先は言わなかった。
「何でもないわ。けれどね」
「ああ」
「今度の戦いが貴方にとって非常に大きなものになるわね」
「倒す」
彼はまた言った。
「何があっても。それだけだ」
「そうなの」
「そうだ」
その言葉には迷いはなかった。それがドモンであった。
「倒す!」
今彼とマスターアジアの最後の戦いがはじまろうとしていた。そしてそれはレインにとっても大きな運命の分かれ道となるのであった。
第百三十三話完
2007・1・3
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