自由気ままにリリカル記
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十三話~リニスの受難~ 3月25日修正
Side ~Rinisu~
私は何をしているのだろうか。
何故私は生きている。
本来私はフェイトが独り立ち出来るように育てるというプレシアとの契約を完遂しラインを切られて、死ぬはずだった。
私の遺体はせめて火葬にして下さい。とでも言おう。
そうやって死ぬ間際の言葉でも少し寂しく思いながら考えていた。
なにせ、ただの山猫の頃はアリシアにお世話になって……多分ナニカに巻き込まれて一緒に死んだこの身。
そこから使い魔としてプレシアに再会したが、どうやらあの時からそれなりに時が経っていたらしい。
依然のように張りのある肌ではなくところどころに皺が見られて、目にも嘗て研究に没頭していた時のような生気に満ち溢れたような光が見られず、優しさは消えて依然からは想像出来ないような厳しさが現れていた。
そして契約の詳細は伝えられなかったが、プレシアの第二の子供……なのだろうか。
歳で考えれば孫と言っても差し支えない程歳の差がある……アリシアの生まれ変わりなのではないかと勘繰ってしまう程そっくりな容姿をしている。
この子に一般教育と魔導士としての訓練を施し終わった時が私の契約の完遂を意味する。
二度目の人生なのだからせめて私の持てる技術の全てを教えるつもりでフェイトに愛情を籠めて接しよう。
そう決心して今まで過ごしてきた。
そして、フェイトがそこらの魔導士は圧倒出来る力量にまでなり、どこに出ても恥ずかしくないレベルの一般常識を身に着けたことで私の契約は終了。
ああ、そうだ何故プレシアは自分の子供であるフェイトにあそこまできつく接してきたのか。その理由だけでも解消しておこう。
ラインを消そうとするプレシアを一旦止めて、聞いてみるとプレシアは真実を話した。
その時のプレシアは悪霊にでも憑かれたような様相をしていた。
私が使い魔として生まれ変わった時に見たフェイトはプレシアの実の子供ではなくアリシアのクローンだった。
あの時私達が死んだのはプレシア達が開発していた次元航行エネルギー駆動炉ヒュウドラが暴走した事によって溢れだした魔力の奔流によるものだったらしく。
その事故の後に上司の責任をなすり付けられたプレシア達研究員は解雇され、愛してやまなかった実の娘すらも失ったプレシアは必死であるはずもない蘇生方法を探して、探し続けて、探し求めた先に見つけた方法。
それは、フェイトを使って高密度の魔力を保有する願いを叶えるといわれるロストロギアであるジュエルシードを集め、それを利用してアルハザードへ行き、アリシアを蘇生させるというなんとも荒唐無稽。無謀過ぎる計画だった。
なんてふざけた事をしているのですか。あなたは。
既に消滅した都市、ましてや存在すらも確認されていない場所にたどり着くためにクローンとはいえ、自分の子供をただの駒のように扱う事が許されると思っているのですか。
……それに、あなた程の人が十数年の時を掛けてもクローンが限界なのに、現代より遥かに発達していたといわれるアルハザードの技術を理解出来る道理がある筈ありません。
だから、私が止めるべきだった。あの中で最も付き合いの長い私がプレシアをじっくり、ゆっくり、無理矢理にでも正気に戻すべきでしたのに、
フェイトにこのことが伝わったら、あの心優しくて少し精神的に弱いあの子の事だ。
きっと壊れてしまうだろう。
絶対にそれだけは避けなければならない。
決死の思いでプレシアに実力行使で訴えかけようとするも、魔力ラインを切られてしまい、更に魔力ダメージを与えられ、最早虫の息となった私は、運よく魔素が充満している世界に辿り着いて生き残れることを祈ってランダム転移を発動した。
そして、最早残存魔力も後わずか。にも拘らず辿り着いた世界は魔法文化の無い世界らしく、魔素も少ない。私の体を構成する魔素が散るのが見えていないのか、通行人はただの猫としか私を見ない。
既に諦めの気持ちが勝り、死ぬとき特有の芯から冷たくなっていく感覚に身を任せていた。
しかも幻覚でも見ているのか必死な表情でアリシアが何かを懇願しているような姿が見える。……もしかして私を迎えに来てくれたのでしょうか。
目を瞑って私の生を閉じようとした時……
そこで現マスターの邦介と出会った。
マスターは何も語らずに黒い魔力光を近づけ、私の体の気怠さを手早く取り除いた。
マスターが何故私を助けたのか分からない。
気づいたら私は「私の目的を完遂すること」という契約を結ばれて、マスターの家に居候することになっていた。
その頃からだろうか。妙に肩が凝ることが多くなってきたのは。
まあ、今はそんなことはどうでもいいのだ。多分胸が重い所為だ。
それよりもマスターの行動には不思議な点がいくつかある。
マスターの魔力量は元々、プレシアは愚か、フェイトにも届かないAランクだ。
そんな少ない魔力量で私と契約を保てていること自体驚きですが、それ以前にマスターにとって私を使い魔とすることにメリットは一つも無い。
マスターは一人暮らしに慣れていて尚且つ、魔導士としての実力も魔力ランクに見合わない程の実力を有している。
そんな私なんかが、教えることも手伝うことも出来ることなど無いというのに何故助けたのか。
そう言うと、マスターは必ず笑ってこう言う。
「なら、自分のやりたいことをやりなよ。あんな所で死にかけてたんだ。やり残したことがあるんだろう?」
何度聞いても答えは変わらない。
マスターと私は感情をリンクしているため、どちらもどんな感情を持っているかは分かるのに、マスターの感情は常に波が無く、限りなく平坦だ。
プレシアの感情は嫌になるほど激しい怒りとも憎悪ともつかないようなものが流れ込んでくるのに対して、マスターからはまるで森林浴でもしているかのような、何かに包まれているような優しい感じがする。
それでもマスターの本当の感情は分からない。
本音を話しているようで話していない。感情をさらけ出しているよぬに見えるのに実際は目に見えている事とは違っていたり……と、まるで掴みどころがない。
とうとう考えてもきりが無いことに気づき、一旦この件は保留にして、とにかくプレシアの居場所を探すことにした。
ある時を境に、急に肩が凝り始めて、マスターによく揉み解してもらったりして、
真剣にエステに行こうか悩んだりしていた時。
姿は魔法で偽れるから大丈夫だ。だが、金銭面の問題はどうしよう。
マスターはさりげなく無駄なことにはあまり使いたがらないから、どうやっていったものか。
そうやってぶつぶつ、一人言をしていたのを聞いていたのだろうか。
裾が引かれるのを感じて振り返ると、アリシアのような綺麗な金髪と透き通るような赤い目を持った少女。
「……リ、ニ………ス?」
フェイトだった。
あの子たちに出会った時に泣かれて少し焦ったけれど、元気そうで良かった……。
ジュエルシードの収集を手伝ってくれないかと尋ねられ、勿論了承したがやはりプレシアから真実は伝えられていないらしい。
あの頃と比べると大分魔力が落ちてまともに魔法を使うことも出来なくなったけれどなんとかなるだろうか。
それがこのザマだ。
「何でリニスが生きているのか……そんなこと今はどうでもいい。別に物語通りに進まないことなんてよくあるさ。……おい、俺をプレシアの所へ連れて行け。俺ならアリシアを生き返らせることが出来る」
「あなたなんかにそんなことが出来る筈ありません」
それ以前にその情報をどこで手に入れたというのだ。
「そんなにツンツンするなよ」
そう言いながら下卑た笑みを浮かべ、髪を触ってくる。
止めろ。怖気が走る。
フェイトと同じ歳とは思えない程に濁った笑みをする敵に嫌悪感が溢れだす。
執拗に撫でてくるその手を叩き落としたい所だが出来ない。
体は身動きが取れない程バインドされ、今の私では壊せない。
「触らないで下さい下衆野郎」
「……ははは。照れるなって。照れ隠しにそんな事を言っても少しは気にしないぜ」
……何を言っているのでしょうか。
「だけど、少しはその口を閉じていろ」
「閉じませんよ」
「なら俺が閉じてやるよ!」
そう言ってさっきまで髪を触っていた手で私の顎に手を当てて、固定させられる。
そして、敵の唇を私の唇に合わせようとしてくる。
ああ……また、私は駄目だった。
「ぴょ?」
敵の頭にいつの間にか黒い何かが張り付いていた。
そう、認識出來たのは敵がそれによって顔を地面に押し付けられた時だった。
続けて、その黒い何かが人間の手だと理解出来た。
「あばばばばばばはぴょ!!!!!!??」
敵が顔面を地面に押し付けられたまま、かろうじて見える速度で引きずられていく。
終始、ナにかが削れる音が響いている所から見ると顔の造形が酷いことになっているのではないだろうか。
悲鳴が聞こえなくなってしばらくすると、バインドが消えた。
更にしばらくすると目の前に見覚えのある黒い円が現れた。
「随分と苦労してたじゃないか、リニス」
そこからは全身黒尽くめで手に血塗れの短剣を持った……
「って、誰ですか!?」
「あ、ごめん。武器の後処理忘れてた」
そう言って、覆面を取り外すとそこにはマスターの顔がある。
………地味に抜けている人だ。
後書き
今回はかなり短めの文章です。
今回はリニスの視点でした。
文中でリニスが分からない分からない言っていますが、ぶっちゃけ私の方が分かりません。
リニス、というか他のキャラクターの心情がさっぱり把握出来ていません。
\(^0^)/メンドクセ♪
ここからが、今回のあとがきです。
ええと、昨日テストが終わりました。
だから、のんびり修正していこうと思います。
と、言ってもそこまで大幅な修正はないと思いますが、一応書き直せば、タイトルに示しておきます
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