自由気ままにリリカル記
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十二話~少し、お仕置きをしよう~ 3月24日修正
温泉に入る際に手袋を外すかどうかで迷っていたのだが外すことにした。
その結果士郎さんと蒼也に見つかってしまった。
与えられた部屋の鍵をくるくると手元で弄りながら考える。
こんなに昼間にやってきたのだから皆、部屋でゆっくりとしているか卓球やゲームでもしているのかと思ったため、ささっとリラックスしに行くために温泉に入りにいったのだが。
まさか人がいて、しかも俺が思うに、かなり欺き難いグループの内の二人が既に入浴中だとは思わなかった。
そのお陰で、こっそりと蒼也が足首をバインドして逃げられないようにするわ、士郎さんの笑顔で地味に威圧感がして怖かったり、説明をしたり、と少し大変だった。
「……上手く隠せていたと思ったんだけどな」
まさか、出会った当初から今まで味わってきた違和感について言われるとは思わなかった。左腕がプラプラしていたんなら言ってくれれば良かったのに。
俺の左腕は俺個人の魔法……というよりはこの世界風に言えばユニークスキルの一部で防御力が高く、闇属性の魔力を通せば伸縮自在に変幻自在、更に魔力の籠める具合で力も変わるという素晴らしい能力を持っており、それのお陰で俺は今まで左腕をあたかも動かしているかのように見せてきたわけだが、これは地味なように見えてかなり魔力のコントロールが難しい。
まあ、それについてはいつか話す機会があれば言うとして、とりあえず士郎さんの洞察力には流石と言わざるを得ない。
『……マスター、特に隠す気ありませんでしたよね? 翠屋にいる間全くの無警戒だったじゃないですか』
またもルナが呆れたように一度だけ短く点滅する。
「勿論。翠屋にリラックスしに甘いのを食べに行っているのに警戒する方が可笑しいさ。まあ、気づかれない限り話すつもりも無かったし、そこまで知られて困る内容でもないしね。……まあ、学校でばれたりするのは厄介だし、女子供にはまだ教えるつもりもないけど」
『だから士郎と、蒼也さんの質問には簡単に答えていたんですか』
無言で頷いて肯定する。
話した事といっても怪我の原因とどうやって左腕に見えるようにカモフラージュしたのか、だけだからまだまだ隠している事は結構残っているのだが。
とりあえず先に言ったように魔法でしたということは話し、怪我の原因は秘密にさせてくれと言って、話すことはしなかった。
話せば絶対に矛盾に気づくことになるし、その矛盾に気づかれるのは厄介だ。
それを差し置いても、魔法の存在を教える必要があったのは少し面倒くさかった。
そして、浴衣を着こみ部屋でだらだらしている今はそんな事があった夜。
良い子はもう寝ている時間である。
先程淹れたばかりの緑茶にほっと一息をつきながら、コンビニで買ったカステラをルナの中へ直接空間を開き突っ込む。
一応ルナが食事する方法は少し前に判明している。
前に色々と調べたところルナの中には人格を形成している核があり、そこにはルナの人間としての姿が存在していることが分かった。
だから、そこへと直接空間魔法で食べ物を送ればルナはデバイスなのに食事することが出来たのだ。
……まあ、その際にルナの姿が知っているようで知らなかった人物の姿であったことに驚いたが。
そして、現在は部屋にいるが本当は外にあるマッサージチェアに座ってゆっくりしたい。
だが、残念ながら月村勢が卓球台やら椅子やらを使っていた。見つかって気まずい思いをするのは嫌である。
ここに来たことを内緒にして欲しいと二人にはお願いした時に、一緒に過ごさないかと言われたが丁重にお断りした。
俺はゆっくりしにきたんだ。
騒ぎにきたんじゃない。それに一人暮らしの方が色々と楽なんだ。
……むしゃくしゃした時にニヤニヤ動画を思う存分に見ることが出来るし。
少し名前が変わっていたが、前世の時に見たコメントが流れる動画サイトと同じ物があったため驚き、すぐにアカウント登録したのは内緒だ。
『あ、マスター。カステラ無くなっちゃいました』
「おう。そうかい」
『……』
「……」
『……カステラ…………』
「……はいはい。買ってくるからそんなこの世に絶望したかのような声を出すなって」
『っ!! ありがとうございます!』
そんなに食ってるといつか太るんじゃないか?
そんな皮肉を頭の中に思い浮かべながら着崩れた浴衣を整え、ドアを開ける。
30度程開いた所でガツリと何かに当たったのか、止まる。
「いたっ」
「あ、すみませ……」
同じように温泉に来ている旅行者三人に出会った。
今ここにいる人が全員なら女三人の旅行ということになるが、皆さん可愛かったり美人だったりと、世の男共が全力で追跡しそうな容姿をしている。一人は金髪少女。一人は野性的な雰囲気を持つ赤髪美女かな。
最後の三人目がリニス。
最後の三人目がリニス
最後の三人目がリニス。
そしてその頭の上にアリシアが顎を乗せてぶら下がっている。
こっちに手振ってくるな馬鹿。
ていうか……おい。
無言でリニスに視線を送るが、目が気にしないでくれといってくる。
アリシアはやれやれだ。とでも言いたげな表情で肩を竦め、首を横に振る。
最近妙に忙しそうに俺の魔力を食っていると思ったらそれが原因なのか。
ジュエルシード集めに忙しかったのか。
それで、ジュエルシードに御執心のアリシアも一緒にリニスと行っていた、と。
お蔭で俺の魔力量がAランク相当からCランク相当に下がって少し大変なのだが。
……まあこれはいいや。魔臓からの魔力が減らなければ問題はないさ。
そしていつものメニューを済ませて、寝ようとした頃。
『……! マスター。ジュエルシードが見つかりました』
「そうか。今日は少し急ぐぞ。一旦戦況を確認しようと思う」
フェイト側にリニスがいるのだから少し変化が起きている可能性もある。
発動場所の近くに来ると、既に戦闘は始まりかけていた。
……なんだろうか。
フェイト陣営と高町陣営のメンバーを確認してみようと思う。
まずはフェイト陣営。
金髪少女のフェイト・テスタロッサ。
フェイトの使い魔である狼のアルフ。
現在は俺の使い魔となっている山猫のリニス。
そして、リニスの肩こりの原因となっている幽霊のアリシア。髪を逆立てて威嚇している。主にキラキラ転生者に対して。
後は、現在進行形で佛坂と戦っている、黒いコートとバイザーで正体を隠している青年……か?
対する高町陣営。
高町はキラキラ三人衆からは一メートル離れている。どうやら苦手意識がある様子。幼い頃に洗脳されたことがやはり原因なのだろう。
白い魔王こと高町なのは。
他称淫獣のユーノ・スクライア。
銀髪青目の神白鋼。
金髪赤目の津神王牙。
金髪オッドアイの佛坂神。
まんまアーチャー、英雄衛宮の姿を模した縁司(えにし つかさ)
……随分とまあ、過剰戦力だことで。
っていうかあんたらいいのか。子供は既に寝る時間なのだが。
まあ、それを言ってしまえば俺もそうなるわけだけど。
しかし、なるほど。リニスが最近忙しそうなのはこれが理由か。
俺が考えをまとめ終えるのと同時に、なのはとフェイトの会話が終わり、ユーノがアルフを転移魔法を使うのを合図に始まる戦闘。
「絶対に理由を聞かせてもらうんだから!!」
「「「モブ野郎には死を!!」」」
フェイトは高町と戦い始める。
キラキラ三人衆は顔を見合わせてニヤリと笑い、黒コートの青年に対して一斉に声を揃えて襲い掛かっていった。
同盟でも組んで邪魔者を消そうという魂胆なのだろうか。
他のメンバーとは違い、明らかな殺意をその目に宿している。
そして縁は何も無い空間から剣を取り出し、リニスへと襲い掛かるが、その顔にはニヤニヤと下卑た笑みを貼り付けている。
これは、少しフェイト側がやばい状況なように見える。
フェイトと高町は特に殺意は無いため問題なし。そもそも二人とも非殺傷設定にしているはずだから少なくとも死ぬことはない。
あの黒コートの青年も……特に問題は無い、と思いたい。
立居振舞から見るに余裕そうだから多分放っておいてもよさそうだが、殺さないかが心配だ。
特に、金髪津神の【王の財宝】には注意しておきたい。中身もあの英雄王の所有物と同じ物がまんま入っているのだから危険極まりない。
そうなると、ここで最も苦戦するのがリニスということになる。
縁とリニスの戦いを見るに、縁の特典はまず間違いなく【無限の剣製】でしかも、中身も金髪津神と同様に英雄衛宮と同じ物が元からコピーされるようにお願いをしたのだろう。
更に厄介なことに動きが平和な国で暮らしてきた人間のする動きではない。
明らかに幾多の戦場を潜り抜けてきた戦士の動きをする。
……だが、重心やら剣の振り方が甘かったりと基本的な部分が抜け落ちている所を見るに、大方経験でも頭に埋め込んで貰ったのだろう。
対するリニスはバリアジャケット以外には魔法を使用せず、地面を自らの足で奔走し、チャンスを見つけてはバインドやら魔力弾やらを使い、相手を牽制している。
まあ、これは仕様がない。俺の魔力量が少ないばかりに節約を強いられているらしい。
別に俺はバリアジャケットを維持出来る分の魔力さえ残っていれば問題は無い。
身体能力強化は魔臓から魔力で出来るのだから。
……今度教えようか。
「はあ。リニスの手助けでもするか。ルナ、セットアップ」
『了解です! やっと私の出番ですね!!』
ルナの弾むような声を聞きながら、浴衣からバリアジャケットへと変化していく。
浴衣から忍者が着るような黒装束。
顔全体を覆い隠すように巻かれている黒い包帯。
そして右手に持つのは黒塗りの短剣。
所謂、暗殺ご用達の装備だ。
今は深夜ということもあって、簡単に視認されることは無いだろう。
全くもって俺向きのデザインだ。
「……よし、いくぞ」
足に力と魔臓からの魔力を溜める。
足からはバチバチと電気が溢れる。
直線上にはリニスを追い詰め始めた縁。
生意気にも口説こうとしている。口説く対象の自由を徹底的に封じた上で、だ。
リニスの顎を手で上げて、無理矢理に唇を奪おうとしている。
どこのヤンキーだ。
『flash move』
だから……そんなヤンキーには……
「っぐ!! 何だ!?」
お仕置きだ。
「がああああぁぁぁああ!!!!!!??」
後書き
現在前投稿していたものをそのまま載せているので、テスト終われば、修正していきます。
ひとまずこんな感じの文章を書いていたんだと思ってくださればいいと思います。
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