SAO─戦士達の物語
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GGO編
百六話 Encount
前書き
はい!どうもです!
ようやく此処まで来れました……GGO編が進んでいることを実感する……
さて、今回はシノン再登場!
そして当然……
では、どうぞ!
「なんか俺達だけエンカウント率高くねえ!?」
銃声が響く中リョウが叫んだ。あれから更に数分が経ち、街の直前までたどり着いたリョウとアイリは街の目の前までたどり着いた。が……街に入ると同時に、ビルの陰から出てきたキレの良い顔のプレイヤーと会敵してしまったからたまらない。
あちらも此方に気付いたのだろう。此方が向こうを攻撃するよりも早く。無数の弾丸がリョウとアイリに向かって飛んできた。
で、今は反撃しつつ遮蔽物に身を隠して移動しつつ。と言った具合である。
「あははは……そうかもね」
隣でアイリが苦笑しつつそう言って、窓から顔を出すとM8をぶっ放す。なかなか激しい撃ちあいになっている。
「あー、時間ねぇってのに……しゃーねぇさっきの感じでご退場願うか……」
「OK」
さっきの感じと言うのは、勿論アイリに突っ込んでもらってリョウが援護する形である。
アイリの戦闘方法は大体分かった。おそらくはAGI先行の、奇襲、突撃型だろう。
隠れ(ハイディング)スキルを上げたりすることで、遮蔽物の多い場所では先程のように奇襲を。それが無い場所だと、MP7で牽制をしたり、AGI自慢の回避をしたりしつつの突撃で、多少のダメージ覚悟のヒット&アウェイ方式なのだろう。
ただこの方式だとストッピングパワーの高い銃相手には相性が悪そうだが……援護が有れば話は別だ。
『元々、ソロプレイ中心のタイプじゃねぇのかもな……』
そんな事を思いつつ、リョウは遮蔽物の中を移動する。アイリは既に離れた所のドアの位置に付いており、此方の合図を待っている筈だ。音であちらの位置は分かるので、リョウが射撃を開始して、その地点に向かってアイリが突っ込む事になっている。
『よーい……ドンっ!』
内心でそんな事を叫びながら、リョウは発砲した。此方が居る背の低いビルに向かってライフルの銃口を向けていたキリっとした顔の男が、慌てたように崩れかけたコンクリートの影に飛び込む。
と、彼が隠れた地点に向かって、リョウから見て少し離れた左側のドアから、アイリが飛び出した。右手で光剣を握ったまま、凄まじいスピードで、100メートルはあろうと言う相手までの距離を一気に詰めて行く。遮蔽物の向こうから、ライフルの銃口が覗いた。しかしそこに向かってリョウが再び弾丸をぶち込み、ライフルの銃口が引っ込み……その奥でマズルフラッシュが瞬いた。
「……ありゃ!?」
そう。角度的に、リョウから相手のアサルトライフル使いが撃てない位置でも、あちらから突っ込んでくるアイリの事は撃てる位置取りになってしまっていたのだ。
『位置取りミスったー!ってやっべ!?』
今更位置取りの事を云々言っても仕方がない。聞き耳スキルでは、相手の位置が分かると言うFPSにおける圧倒的な強みはあっても、遮蔽物の位置や地形については分からないのだ。当然、こういう事もある。しかし今不味いのはそれでは無い。アイリが撃たれるという事だ。当然アイリは向こうに向かって一直線に突っ込んでいるわけで……
────
正面の敵が、自分に銃口を向けていた。マグプル MASADAと呼ばれる銃だ。性能としては使い手のニーズに答えて色々な特製の銃に変貌できる非常に対応力の高い銃で、少し時間が有れば銃自体のそれこそあらゆるパーツが工具なしで素早く交換できると言うから驚きだ。(勿論、戦闘中にそんな暇は無いだろうが)
次の瞬間には飛び出すだろう弾丸に、アイリは身構える……事無く、そのまま突っ込みつつ、腰のMP7を抜く。が、抜ききるよりも前に、MASADAの銃口からフルオートで発射された弾丸が次々に飛んできた。
「っ!」
息を詰めて姿勢を低く、自身の事を貫く、赤い光の線を冷静に観察する。
昨日、GGOをプレイしてきた中で初めて見た、自分と同じ光剣使いの少女……もとい、少年。
彼の戦闘を一度だけ見たが、目から鱗とはあの事だ。
これまでアイリは、光剣を使ってもそれを使うのは攻撃に対してのみだった。頭の何処かで、音速を超えて飛んでくる弾丸を剣で斬れるわけがないと言う固定観念が有ったからだ。しかしよくよく考えてみれば、その弾丸が飛んでくる場所は初めから分かっているのだ。冷静にバレッド・ラインが表示される“順番”を見極めれば、後はその線上に剣を置いてやるだけでいい。
と言う訳で、アイリは昨日の夜実弾発射系Mobを相手にひたすらその練習に打ち込んだ。
その時覚えた通りに、今バレッド・ラインを観察する。その中から、直撃コースの物だけを見極めると……
「ふっ!!」
それぞれの線の上に、順番に剣を置いた。光剣に当たった弾丸が次から次へと両断され、アイリの後ろに飛んでいく。が……
『流石に慣れてないときついか……なっ!』
徐々に判断が追いつかなくなるのを感じて、アイリは弾丸切りから通常の防衛に切り替える。左手のMP7を腕で固定するように構えたまま突進して、引き金を引く。
腰だめにMASADAを撃ちまくっていた相手のキレの良い顔をしたプレイヤーの右腕に弾丸が次々に突き刺さり、体が大きく横に振られて相手は銃口を右に振らされる。
当然アイリからは銃口が外れる訳で……
「一刀……両断!!」
ブレードの攻撃範囲内に相手が入った時点で、アイリは一気に光剣を振り切った。
────
「もぅ、次からは気を付けてね!?」
「面目ねぇ……」
先行しながら言ったアイリに、リョウが後ろを警戒しつつ申し訳なさそうに頭を下げた。
アイリの練習が有ったから良かったような物の。である。相手を退場させるどころか、危うくアイリの方がBobから退場する所だったのだ。
と、いまリョウとアイリが何をしているかと言うと、Bobの舞台となっている島。ISLラグナロクのちょうど中心となっている、都市廃墟エリアの路地を西に向かって移動している所だった。
あの後二人は八時四十五分の《サテライト・スキャン》を、じっくりと確認した。その中からあ得られた情報は三つ。
一つ。銃士Xはどうやら現在この都市廃墟を西に行ったコロシアム的な建物の中に居るらしいと言う事。
一つ。シノンとキリトはどうやら完全に協力関係になったらしく、未だに二人で行動しているらしい事。
一つ。銃士X、キリト、シノンにくわえて、リョウとアイリを覗くと、この都市に後居るのは“リココ”と“キョロ”と言う二人のプレイヤーのみらしいと言う事。
「……そう言えば……」
遮蔽物の向こう側を警戒しながら動きつつ、アイリが言った。
「リョウって、FPS始めてなの?」
「……はぁ?」
素朴な疑問と言うべきか、そこまで考えずに言った発言に、リョウが首をかしげた。
「いや、初心者ってわけでもねぇぞ?まぁVRFPSは初めてだけどなぁ……」
「え、そうなの!?初心者だと思ってた……」
「んなわけあるか。ホントにそうなら銃使ってここまでなんざ来れるかよ」
実際、予選はそれなりに大変だった記憶が有る。殆ど銃だけで武装しているリョウでは、まともに銃が使え、なおかつFPSにおけるPvPに慣れていなければ此処まで来ることなど出来ない筈だった。
「でも銃の名前とか全然知らなかったよね?」
「そりゃな。FPSやってて使う事はあっても、銃の名前なんざいちいち覚えねぇだろ」
「えー!?」
どうやらその辺り、アイリとリョウには認識に違いが有るようだった。アイリは基本的に、気になった事は徹底的に調べるタイプの人間だ。それが功を奏したのか、この世界に来てから銃の知識がかなり豊富になった。幾つかの銃は個人的にも大好きだ。(基本軽い銃が好きである)
対しリョウの場合、FPSにおける銃はあくまでも“武器”であると考えるタイプの人間だった。ゲームによって同一の名前の銃でも多少性能が異なるFPSをやるうえで、その銃の名前や現実世界での性能などは、リョウにとっては有体に言えば特に重要なことでは無かったのだ。
強いて言うなら、RPGにおける「エクスカリバー」と、別のタイトルのRPGにおける「エクスカリバー」が、名前は同じでも性能は全く違う武器であることが多いように、。FPSにおける「M16」と、別タイトルにおける「M16」も、同じ感覚でリョウはみていたのである。
「んなもんだから、いちいち名前覚えたりしねぇんだよ」
「へー……じゃあ、実際の所FPS歴どれくらいなの?」
「んー……」
リョウは考えこむように一度黙る。ちなみに警戒は続けているし、前にも進んでいる。
「あー……かれこれ、10年以上はやってんな」
「な、長いね……何歳くらいから?」
「六歳」
「ろっ……!?」
小学校に上がる前からやっていたと言う事になるようだ。というかそのころからあんな殺伐とした雰囲気のゲームをやっていたのか……
「てか、俺にとっちゃようはシューティングゲームだったからな。そこまで深く考えたことねぇよ」
「ふぅん……」
そんな事を話していると、北に向かう大通りに出た。ここを進めば、銃士Xが狙っている大通りだ。アイリが顔を出し、左右を確認して進行方向に銃口を向け、手でリョウに前進を示す。リョウはアサルトライフルを構えつつ、アイリの前に出て、聞き耳で周囲を警戒しつつ前進。遮蔽物になるべく身を隠すように、その間を縫いながら、なるべく迅速に移動を続ける。
それを始めに目にしたのは、リョウの方だった。
既にスタジアムが見え始めていたリョウとアイリは、銃士Xがこの広い道路を狙っているならばスタジアム内から銃口の一つも見えるだろうと思い、ためしにスタジアムの南西に回るように動き始めていた。
先行するリョウが、環状線に横たわるバスの影から通りの先を見渡した……その時だ。
「……?」
環状線スタジアムの南西……ビルの倒壊した壁面の下に、人影が見えた。ボロボロのマントを着て、背中にリョウの知らない大型のスナイパーライフルと、やはり知らない不思議な形のSMG位の大きさの銃を背負ったその人影をみて、リョウは一瞬だけ顔しかめる。どう見てもそのマントに迷彩効果が有るようには見えなかったからだ。このバトルロイヤルが行われているフィールドで、あんな無警戒に直立していると言うのがそもそも珍しいのだが……
と、よくよく見ると彼は何かを地面に向けているようだった。拳銃だ。右手に持った小さめの拳銃を、地面に向けている。その射線の先に目を移すと……
「……!」
そこに、一人の少女が倒れていた。華奢な細腕にもかかわらず、背中に長大かつ重厚なスナイパーライフルを背負っている。リョウの脳内銃図鑑(記載数極僅か)と、それを照合した結果。今度はリョウが知っている銃だ。と言うか、昨日調べたばかりだったのだ。
グリップとストックが木製で、銃口に大きめのマズルブレーキが付いたそれは、「PGMウルティマラティオ・へカートⅡ」と呼ばれる代物で、フランス製の対物狙撃銃(アンチマテリアル・ライフル)だ。その有効射程は実に1800メートル。このGGO無いに数本しか確認されていないアンマテの一つでもある。
そんな狙撃銃を背負い、このバトルロイヤルに参加している少女……それが誰であるか、リョウにはすぐに分かった。そもそも倒れているのが少女だと分かったのは、その髪の色が鮮やかな水色であり、その髪の持ち主を、彼が知っていたからだ。
昨日控室でほんの数分だけ顔を合わせた少女。名を、「シノン」と言った。
彼女が何故(恐らくは)敵であろうぼろマントの目の前で、倒れているのか。それは、彼女の左腕を見れば自ずと知れた。小さな針のような物が彼女のデザートカラーのミリタリージャケットの袖に突き刺さり、青白いスパークを発生させていたからだ。
あれは確か、「電磁スタン弾」と言う特殊弾で、命中した相手の動きをスパークで強制的に止める事が出来る。所謂「麻痺弾」だ。そんな物を打ち込んでシノンを麻痺させておいて、あんな小さな拳銃でとどめを刺す気なのだろうか?と言うか、彼女と一緒に居た筈のキリトは何処に行った?
嫌な予感を感じつつそんな事をリョウが思っていた時、ぼろマントの横顔が、彼の眼に入った。普通の顔では無かった。機械で作った骸骨のようなマスクをかぶっていて、両眼が赤く機械的に光っている。
スカルマスク。丁度、そんな言葉が似合うマスクだった。そうして、それを見た瞬間……
『仮想世界で銃で撃たれたら、死ぬ』
リョウの頭の中で何かが繋がり……
『顔は、なんかスカル系のマスクをかぶってた』
何かが弾け……
『ボロボロのマント着てたな……』
頭の芯が、カッと熱くなると同時に……
『彼奴のアバター名……』
考えるより先に……
『もしかしてシノンって言わねえか?』
体が動いた。
バンッ!!と音を立てて、リョウの体が空間を切り裂く。低空跳躍。この世界に来てからもお世話になっている跳躍力を最大限に生かして、リョウは跳ぶ。
既にぼろマントは撃鉄を起こしている。銃を構えて撃っても、シノンはどちらにせよ撃たれる。流暢に頭狙っている暇はない。ならば……!
吹っ飛んだ自分の体が一気にぼろマントとの距離を詰める。地面を蹴る音に気が付いたのだろう。ぼろマントが弾かれたように、此方を向いた。直後……
「!!?!?」
「よお」
バキャアァッ!!!
と、凄まじく鈍い音がして、ぼろマントの体がぶっ飛んだ。
リョウが、吹っ飛んだ勢いと筋力値の全てを込めて、そのスカルフェイスマスクの顔面を文字通り正面からぶん殴ったのだ
空中に浮き、軽く三メートルはぼろマントの体が吹っ飛ぶ。着地と同時にシノンをちらりと見ると、まだ撃たれてはいないようだった。少しだけ胸をなでおろすと、目が合う。大きく見開かれたその眼には驚愕と混乱、恐怖と諦めそしてほんの少しの希望のような物が宿っていて、リョウは二ヤリと笑うと、正面を向いて型のXMを構えると、引き金を絞った。
ビルの奥側に吹っ飛んだぼろマントはしかし、低空であるにも関わらず空中で体勢を立て直すと、そのままリョウに向かってスナイパーライフルでは無い方の、やけに丸いフォルムの銃を向ける。
リョウは知らないが、それはFN P90と呼ばれる短機関銃の一種で、正式にはPDW(個人防衛用火器)と言うカテゴリに属する銃だ。サブマシンガン寄り少し大きい程度の大きさであるにもかかわらず装弾数が50発と多く、集弾性も高い。弾丸は少々特殊でキリトの使う5.7x28mm弾を使用している。小口径ながら貫通力に優れる、高性能の銃だ。
閑話休題
「伏せてっ!」
後ろから声が響き、リョウは頭を下げた。と、リョウの後方から弾丸が飛んでくる。アイリがM8でぼろマントを撃ったのだ。ぼろマントはすぐ脇に会った柱の陰に入るが……反撃せんとばかりに銃を向けて来る。先程シノンに向けていた……あの拳銃だ。
「っ!アイリ!避けろ!」
「くっ……!」
息の詰まるような声を出して、発射された弾丸をアイリは回避する。あの拳銃の弾丸に当たれば死ぬかもしれない以上、一発も当たれない。
「にゃろっ!」
と、リョウが今度は20㎜弾に切り替えたXMを立て続けに二発発射する。ぼろマントの隠れる柱に直撃し、粉塵が舞った。
と……
「兄貴!」
後ろから更に、リョウの良く知る物の声。勿論、キリトだ
「おせぇぞキリト!何してた……って今は良いや。シノン持って走れるか!?」
「何とか!」
「うっし……一回逃げるぞ!アイリ、援護頼む!」
「うんっ!」
言うが早いが、アイリは懐から缶ジュースのような形の物体を取り出す。同じものをキリトも取り出し、地面に投げる。スモークグレネードと呼ばれるそれから白い煙が一気に噴き出し、視界を塞ぐ。四人(実質三人だが)はビルの中から飛び出すと、スタジアムを東に回り込むように走り出した。
「でも逃げるって何処へ!?」
アイリの問いに、キリトが返した。
「この先に乗り物のレンタル屋がある!俺はバギーを操縦できるんだ!!」
「すご……」
「そいつは結構!」
言いながら、三人はキリトが出せる限りの速度で走る。
敢えて言うが、リョウが置いて行かれないように跳躍で移動するのに必死だ……と、そのリョウの真横を、凄まじいスピードで大口径の弾丸が通過した。
「っと!?」
「っ!追って来てる……!?」
「面倒くせぇ……相手にすんな!走れ!っつか、彼奴が死銃か!?」
リョウが怒鳴り、それにキリトが答えた。
「あぁ!俺とシノンは彼奴がペイルライダーを殺すのを見た!間違いない、彼奴が死銃だよ!」
「っ……!」
「了解……!」
そのまま走り続けると、正面に壊れかけのネオンサインで[Rent-a-vehicle]の文字が並ぶ看板を掲げた、小さな小屋が見えた。中に飛び込んでモータプールへ入るが……
「な……!」
「マジかよ……」
中にある乗り物の殆どが、全損状態となっていた。その中にはキリトの言う三輪式のバギーも数台あったが、その全てが全損している。
「く……!」
「ど、どうするの!?バギーが使えないんじゃ戦うしか……」
現時点の状況で、それは避けたい事だった。何故ならいくら死銃が一人で、此方が四人もいるとはいっても、死銃がどういったメカニズムで人を殺しているのか分からない以上、あの拳銃の弾丸は一発ももらえないのだ。リスクが高すぎる。
しかし、リョウはそこで、モータープールの奥に会ったひときわ大きな一台の車両を見つけた。
「ハンヴィーか……?」
「え……?」
アイリの問うような視線を一瞥すると、リョウはキリトを見た。
「キリト!一番奥の車にシノンのせろ!何処でも良い!」
「リョウ、どうするの!?」
「俺が運転する」
あっけらかんと言ったリョウに、アイリとキリトが目を向く。
「あ、兄貴出来るのか!?」
驚いたように言ったキリトの問いに、リョウはフンッ、と鼻で笑うと肩をすくめてやはりニヤリとわらった。
「スクーター乗れるお前にバギーが操縦できて、なんで俺に四輪車が操縦出来ねぇんだよ」
「……っ……分かった!!」
キリトは安心したように笑うと奥に走る。リョウもそれに続くと、助手席にシノンを座らせるキリトと反対側。右側の扉を開ける。よくよく見ると、やはりハンヴィーに近い。座席は四つ。天井は一部が抜けて……というかガンシートがちゃんとある。まぁ固定火器までは用意されていないようだが。それにどうでもいいが、アメリカ製のゲームの癖にちゃんと右ハンドルになっている。変な所で芸が細かい。
運転席に滑り込んで刺しっぱなしになっていたキーを回すと、エンジンがかかった。燃料は満タンのようだ。
隣に座るシノンを見る。憔悴しきった顔に、相変わらず恐怖の色が強く見て取れた。少しばかり頭をいたくしつつも、リョウは未だに彼女の腕に刺さったままのスタン弾を彼女の体を乗り越えるように抜いてやり、(昨日の彼女なら間違いなく嫌がっただろうに)のんびりとした声で言う。
「ちっと荒いドライブになると思うんで……しっかりつかまってろよ?」
「……」
シノンは不思議そうな顔でリョウを見ると……
「……うん」
小さく頷いた。と、同時に後ろから声が響く。
「兄貴!良いぞ!」
「乗ったよ!」
「あいよ!んじゃあ出すぞ!」
聞くが早いが、ギアを入れ、アクセルを踏み込む。と……大きめの車体に似合わぬかなりの加速を持って、ハンヴィーは外に飛び出した。と、スタジアムの東側、まだスモークの残るその向こうに、黒いマントが見えた。ギリギリだったようだ。
「あっ!」
「「「!?」」」
と、キリトが後ろで大声を上げ、三人が驚く。
「しまった!建物の中にはまだ確かロボットの馬が……!」
「げっ!?壊してねぇぞ!?」
キリトの言葉に、リョウも反応する。追ってこられては面倒なのだ。
「あー、多分大丈夫だよ」
「「は?」」
が、それをアイリが遮ったことで、リョウとキリトは首をかしげた。
アイリはのんびりとした声で続ける。
「あのロボットホースって、踏破力高いけど、扱いがすっごく難しいから。まず乗れないよ」
「そう、なのか……?」
キリトが聞くと、アイリははっきりと頷く。
「…………」
しかし何となく気になって、リョウはサイドミラーをちらりと見た。既に飛び出した後のモータープール。そこから……一匹の、銀色の馬が現れた。
「……おいおい、そうもいかねぇみてぇだぞ……」
「「「……え?」」」
アイリとキリト。シノンが一斉に声を上げる。先程まで自分達が居たその小屋から飛び出したのは……漆黒のマントをはおった、馬だった。
「くっ……」
「そんな……!」
「……嘘……」
三者三様。それぞれが反応を見せる中で、リョウは辟易としながらまっすぐに前を見る。
「ったく、しつこい男は嫌われるらしいぞ、死銃ちゃんよ」
後書き
はい!いかがでしたか!?
さてさて、ようやく出てきてくれました死銃君!まぁいきなり殴り飛ばされましたがww
死銃VSリョウも近いかなw
GGO編そのものも徐々に佳境へと近づいていきます。まずは次回のカーチェイス。お楽しみに!
ではっ!
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