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SAO─戦士達の物語

作者:鳩麦
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GGO編
  百七話 Chase

 
前書き
はいどうもです鳩麦です!

今回は死銃さんとカーチェイス!!
SAOの中では珍しいシーンなので書いていて楽しかったです!

では、どうぞ!! 

 
「揺れるぞ!」
カーブに差し掛かったところで、リョウが怒鳴った。ハンドルを回して車体を左に向けて傾ける。地面に広がった薄い砂ぼこりが車体をスリップさせようとするが、元々も悪路を走行する事も想定されている車であるためか、特に問題なくグリップが効いた。そのまま一気にアクセルを開けて再加速。相変わらず車体の大きさの割に驚くべき加速を見せる。
視界の向こうから次々に廃車が障害物となって迫るが、少々ステアリングの重い車をリョウは何とか操ってそれらを躱していく。

「駄目!追って来る!」
後ろの座席から、アイリの声が聞こえた。
それを聞いて、リョウは小さく舌打ちをする。ちらりとサイドミラーを見ると、車体の真後ろからかなりのスピードで付いてくる銀色の馬に乗った黒い影が見えた。少し腰を浮かし、馬の動きに合わせて体を上下させるその動きは、完全に慣れた物の動きだ。
走破力はリョウ達の乗る車より上。というアイリの言葉は残念ながら冗談ではないらしく、路上の廃車を死銃は右に左に避け、時には飛び越えて、ドカカッ、ドカカッと言う重々しい蹄の音と共に間違いなくこちらに迫って来ていた。

「追いつかれる……もっと……早く……逃げて……逃げて……!」
不意に、隣から震えた声が聞こえた。シノンの声だ。焦点の定まっていない目で、車の床を見つめながら自分を抱きかかえるようにして隣に座っている。良く見れば、体は細かく震えているようだ。そこに昨日の冷たく、挑戦的な印象の彼女の姿は無い。ただ、死の恐怖におびえる一人の少女の姿だけが、そこには居た。その姿が、どうしようもなく先日の詩乃と被って見える。
この世界では銃は平気だと聞いた。先程殺されかけたことがそこまでショックだったのだろうか?しかしそれにしては異常なほど……いや、勿論殺されかけると言う体験自体相当異常ではあるのだが……しかし……

『って、此奴の事もそうだがとりあえず……』
いまはとにかく追跡してくる死銃から逃げ切る方が先決だ。
とは言え、死銃と此方では速度的……強いては乗り物的な意味でかなり此方は不利になってしまっている。
第一に、先程から言っている通り。あちらは四足の機械馬で、此方は四輪駆動車。悪路の走破力や三次元的な起動力。おそらくは最高速度も、あちらの方が上だ。此方が勝っている物と言えば……耐久力位か。
そして、向こうはそれに乗っているのが一人。対し此方は四人だ。常識的に考えて、重い方が加速にも時間がかかるし、最高速度も少し落ちる。
こうして考えてみれば、どう足掻いても追いつかれるのは目に見えている。あげく、あちらには一発でも当たればリアルからもログアウトさせられかねない拳銃だ。悠長に考えている暇も無い。どうする……

と、リョウは考えつつ、少しだけ脇が目に入った。天井には相変わらず穴が開いており、そこから光が差し込んで……

「あ、」
と、リョウは気付いた。そうだ。大体この車は本来そうやって使う為の物でもあるのではないか。

「キリト、そこのガンシートから体出して牽制してやれ!アイリ、悪い。キリトにM8貸してやってくれ!」
「え?あ、あぁ!」
「わかった!」
アイリとキリトも気付いたようで、キリトはアイリからM8を受け取ると、幾つか説明を受けた後、鉄板で出来た足場に足を乗せ、上に上がる。

「うおっ!?」
M8を片手にぶら下げ、顔をだしたキリトは予想以上の突風に驚く。その風にあおられて、長い髪がかなりの勢いで揺られた。どうでもいいが、この髪少々邪魔だ。ときどきアスナが戦闘時に愚痴っていた意味が、この世界に来てようやく分かった。
一瞬前に視線を移すと、猛スピードで迫ってくる(正確には此方から近寄っている訳だが)廃車や鉄屑を、キリトの乗る車は次々に回避しつつ物凄いスピードでハイウェイを突っ走っていた。そうしてキリトは後ろに視線を戻す。
銀色の馬にまたがった黒い影は尚も此方の車を超えそうな猛スピードで迫って来ていた。距離は既に150メートル程度まで迫って来ている。あれだけのスピードで動く四本足の乗り物をあそこまで自在に操るとは、凄まじい腕前だ。それだけは素直に認めるべき事であると言えた。
キリトは右手のM8を肩当てで構え、ダットサイトを覗きこむ。此方に気付いたらしい死銃が、ロボットホースの進路を少し左に変えた。それを追うように……

「喰らえ……っ!!」
撃つ!
先程まで彼が使っていたFN ファイブセブンと比べると、大分重めのリコイルショックが伝わり。銃口から次々に鉄の塊が発射される。
死銃の乗る鋼鉄のサラブレッドが通った跡をなぞるように、高速で移動しているためか間を開けて弾丸が着弾し、火花の軌跡を描く。

「くそっ……」
次々に弾丸が打ち出されるが、さりとて死銃もやはり一筋縄でいく訳も無く……

「キリト!揺れるぞ!」
「えっ、うおわっ!?」
突然、リョウの警告。車体が大きく揺れ、キリトの上半身はバランスを崩しそうになる……が、なんとか左手で車体の上に付いたガンシートを丸く囲むような手すりにしがみつき、車内に叩きもどされるような事態は防ぐ。どうやら連続して廃棄されていた大型のタンクローリーを避けたらしく、一瞬死銃が見えなくなった。が、すぐに間からそれが現れる。
キリトは再びM8を数発撃って、そこで弾切れを起こした。

「くっ……」
先程アイリに即席で教わった通りに、M8の弾倉を抜き、ホルダーに入れたもう一つと入れ替える。しかし……

ガッ
「むっ」
1Miss

ガッ
「なっ!?」
2Miss!

ガッ
「くそ!?」
3Miss!!

アサルトライフルに慣れていないせいか、やたらと予備弾倉を入れるのにミスる。

「落ち着いて!!拳銃とは違うけど、ぴったりはまるはずだから!」
「あ、あぁ」
言われて、キリトは冷静に入れる。すぐに入った。なんだったのだ……

「よし……っ!?」
とにかく、キリトは再び後ろ……つまり死銃の方へと向き直る。しかし、そこに先程までとはかなり状況の異なる風景が見えた。死銃が、先程寄りも圧倒的に近い位置に居たのだ。車の左後方。距離にして90、80メートル程度しかない……!と、死銃がおもむろに、脇に釣っていた小型のまるっぽい銃を片手で此方に向けた。P90だ。

「まずいっ!?皆伏せろ!!」
キリトが叫んだ。直後、

パパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパ!!!!!と軽い銃声が立て続けに響き……

「うおっ!?」
「くっ……!」
「くぅ……!」
「キャアアアアッ!?」
キリト達の乗る車に向かってかなりの量の弾丸が立て続けに着弾した。
一応窓は防弾になっている筈だが、かなりの数の弾丸が窓ガラスに着弾したらしく、シノンの座る助手席の小さな窓が粉々になる。そのせいか、シノンの口から甲高い悲鳴が上がった。しかしその悲鳴に……キリトは凄まじい違和感を覚える。

『シノン……!?』
先程から、シノンが見せている死銃に対する恐怖の感情が、尋常ではないのだ。ついさっき抱きかかえた際には、ずっと体が細かく震えていた。それは今もそうだ。先程まで一緒に行動していた限りでは、そこまで恐ろしがっている様子は無かったのに……

『やっぱりさっきの事が……!?』
現実感は薄いとは言え、殺されかけたのだ。まして今、彼女は命を狙われている。このくらいの反応は当然なのかもしれない。
キリトは歯噛みすると、今度は此方の番だとばかりにM8をもって上半身を出す。そして……再び目を見開いた。

『……!』
死銃は、武装を変えていた具体的に言うなら、P90を……先程シノンを撃とうとした拳銃に、持ちかえていたのだ。

『死銃……!』
あの拳銃を打たせては不味い。そう判断し、即座にM8を死銃に向けて引き金を絞る。が、それをあざ笑うかのように、拳銃の銃口が小さなオレンジ色の光を吹き出し……致死の力を持ったその弾丸が、キュゥンッ!と高い音を立てて、シノンの座る助手席の、窓ガラスの淵を直撃した。
これに対して、驚いたように目を見開いたのはアイリだ。と言うのも……死銃の行動が明らかに一つの結論を導き出しているのが、彼女には分かったからである。

先程のP90による銃撃の時点でそうなのだが、そもそも現在死銃はこの車から見ると左後方に居るのだ。あくまでも一般論だが、多量に弾丸を撃ち込まれで窓が割れるというのなら、シノンの居る助手席よりも、アイリの乗る後部座席の方が撃ち込まれる弾丸は多い筈である。少なくとも、そうあって全く違和感は無いはずだ。しかし実際の所弾丸はシノンの座る席の窓を突き破り、そして今彼が撃った致死の呪いを持った弾丸は、シノンを狙ったように助手席の窓縁で火花を散らした。

「嫌あああぁぁっ!!」
突如、絶叫が響いた。聞き慣れた彼女の声とは余りにも違う物だったが、アイリにはそれがシノンの声だとハッキリと分かった。何時もの彼女とは似ても似つかない……心の底から湧き上がったような本能的な恐怖の叫び……

「あ……あ……」
その声を聞いた瞬間に、アイリの頭の中で声がした。

『嫌ぁ!止めて!止めてぇ!』
二発目の着弾。助手席の装甲がカンッ!と高く、軽い音を響かせて、火花を散らす。
そんな小さな音であると言うのに、シノンはビクリと大きく肩を震わせて、隠れるように益々自分の身体を強く抱き締めて、小さく小さく縮こまろうとする。
細い喉を震わせて、只同じ言葉を繰り返しているようだった。

「やだよ……助けて、助けてよ……!」

また、声。

『助けてよ……スィぃ……』

「アイ、リ……」
呟くように言って、彼女はふとまだ左後方に居る死銃が目に入る。ガンシートからキリトが必死の抵抗を続けているにも関わらず、グングンと死銃は接近してきていた。恐らくは、接近してから確実に当てる方法に切り替えたのだろう。重々しい蹄の音は既に始めよりもかなり大きく聞こえるようになり、死銃のスカルマスクがはっきりと確認出来る。そのマスクの奥で……

「……っ!」
死銃が、歪んだ笑みを浮かべる気配が、はっきりと感じ取れた。

「あ、あぁぁ……!」
頭の中が、まるで沸騰するように熱くなる。腹の底で、滅茶苦茶な怒りが蜷局を巻く……

「出すな……!!」
「っ!?アイリ……?」
リョウが前を見ながら彼女に声を掛けたが、それはアイリの耳には入らなかった。

視界が真っ赤になる。気が付かない内に、ドアの固定具に手を掛けている自分が居る……

――コレが邪魔だ……――
――コレがあるとアイツを撃てない……!!――

遂に殆ど50メートル程の距離まで追い付いてきた死銃が、腰のホルダーに手をかけた。再び、あの拳銃を引き抜くつもりらしい。
キリトの牽制も、最早殆ど意味を成していない。右へ左へ、時には紙一重でヒラヒラとかわされていた。

そうして死銃の腰から、真っ黒な拳銃が覗いた……その瞬間、アイリの中で、何かが弾けた。

ハンヴィーの左後部のドアが、鋼鉄のぶつかる音と共に、中で何かが爆発するかのように開いた。

「なっ……!?」
「アイリ!?」
「私の友達に、手をダスナァァァァァッッ!!!!」
突如、アイリの破壊的な叫び声が両者の間に響き渡り、開いた扉の向こう側で幾つものマズルフラッシュが瞬いた。
アイリが、MP7を乱射したのだ。

さしもの死銃もこれには驚いたらしく、機械馬のスピードを少し落として後退するようにその弾丸を避ける。おかげで距離が取れたが、リョウ達はそれ所ではなかった。
車体が左に寄り、声が響く。

「バカ!止せっ!!」
「アイリさん!扉を閉めて!!」
「ワアア゛ア゛ア゛アア゛アァァァァッッ!!!」
リョウとキリトが、アイリを制止しようと怒鳴った。
キリトが身体を晒しているのは、あくまでも現実世界の自分の身体にもしもの事が有ったとしても、ある程度対応する事が出来るからだ。しかし、アイリにそんな手段は無いはずだ。そもそもドアを開いて射撃するなど危険すぎる。
しかしアイリはその制止を完全に無視して(と言うか聞こえて居ないのだ)一弾倉を一気に撃ち尽くすと、凄まじいスピードでリロードを行ってドアを閉じないまま再び銃口を死銃に向ける。

「おい止せ、アイリ!!」
「オオオオオオッッ!」
再びのリョウの制止も無視。そのまま射撃するアイリに、リョウは苛立ったように舌打ちする。

「何だってんだ……っと!」
と、前方の廃車が近くなって居るのを見て、リョウは慌てたようにハンドルを右に切って避ける。すると……

「ん……?」
前方に見えた物を見て、彼は少し声を上げた。しかしその思考が組み上がるよりも先に……

「兄貴、不味い!死銃が……!」
キリトの声がそれを遮った。死銃が三度拳銃を取り出したのだ。

「おいおい……アイリ!」
「こんのぉぉぉ!」
リョウは更にアイリを制止するがしかし、尚も彼女が射撃を止める気配は無い。それどころか、ムキになったように弾丸をばらまき続けている。
既に死銃の間合いに此方は入っている。やむ追えず、リョウは強硬手段に出た。

「止せ……っつてんだろうがぁ!!!」
「うおおぉぉ!!?」
「キャアッ!?」
「!?……あぐっ!?」
車体を一度左に振った跡、強引に右に戻す。
反動でアイリは車内右側へと吹っ飛ばされ、右側へと吹っ飛ばされて、反対側のドアに強かに頭をぶつけた。ちなみに、左側のドアは反動で閉じ、直後そこに弾丸が着弾した音がして、シノンがまた肩を震わせた。ギリギリだったようだ。

「キリト!牽制続けろ!つかいい加減当てろよ!」
「いや、おれアサルトライフルって使うの初めてで……」
「言い訳無用だ!」
キリトに怒鳴り返すと、リョウは再び前を見る。しかしそこでアイリから怒鳴り声が飛んできた。

「何するの!?」
かなりの大声で飛んできたそれに、リョウは少し息を吸い込むと……

「こっちの台詞だ、この馬鹿っ!!!!てめぇはなんだ、死ぬ気か!?あぁ!!!?」」
それ以上の大声で怒鳴り返した。隣にいたシノンが恐怖も忘れて顔をしかめる。
対し、アイリはその声のあまりの大きさと迫力に圧され、一気に初めの勢いがそがれたようだった。

「だ、だって……」
「だってもへったくれもあるか!てめぇ、わざわざ体晒して撃つ所か散々こっちの制止無視しやがって、一体何のつもりだ!!?自殺願望でもあンのか!!!?」
相変わらず、かなりの声量でどなったリョウに、銃声すらかき消されて聞こえたのか、キリトが「兄貴、押さえてくれ頼むから」と忠告する。
隣のシノンは最早リョウの声だけでグロッキーだ。

「だって彼奴シノンに……!」
「シノン狙ってたから守ろうと思いました。か!?」
「「え……」」
その声は、シノンとアイリ両方の口から出た物だった。

「んな事知ってんだよ!だからあの障害物抜けた時左にハンドル斬ったんだろうが!」
「あ……」
確かにあの時、リョウはアイリに忠告を向けながら左にハンドルを切っていただから急に死銃が狙いにくくなり、アイリは余計に体をドアから出したのだ。唯どうしにそれは、開いたドアが道路端のガードレールや標識、障害物と接触するのを防ぐために車体を左に寄らせるのをかなり困難にしてしまった。あのまま行けば、もしかしたらリョウなりに何か考えが有ったのかもしれない。

「で!?なんだ!てめえが死銃に撃たれることは考えてなかったのか!?」
「そ、それは……」
アイリは言葉に詰まる。図星だった。

「てめぇがシノン守って死んで、一体何になんだよ!?もうちょい考えて行動しやがれ!」
「でも……でもっ……!!」
アイリはどうしても収まりがつかず。そのまま何かを言おうと口を開く。が、それをリョウが更に遮った。

「良いか!もしもう一回俺の前で自殺じみた真似してみろ!どっかに縛り付けて動けなくしてやる!!俺は自殺を許すつもりはねぇ!!!」
「う、うん……」
あまりの迫力に結局二の句は返せず、そのまま黙る。と、今度はキリトにリョウが言った。

「キリト!当たったか!?」
「だめだ……!あっちの機動性が高すぎる!」
「じゃ、これ使え!」
そう言ってリョウがキリトに銀色の銃を手渡す。かなりの大きさを持つそれは、リョウの拳銃……DEだった。

「え、けどこれじゃ……」
「死銃に当てろとはいわねぇ!良いか!そのまま感付かれねぇように死銃になるべく俺達の真後ろに付くように牽制続けて、俺がカウントダウンの後合図したら左斜め下に向かってこの車に当てないようにそいつをぶっ放せ!出来るか!?」
「わ、わかった!」
「ああ、言い忘れた!そいつ反動デカいぞ!俺がちっとばかし感じる程度にはな!」
「そりゃ凄いな!」
そう言って、キリトは腰にそれを挟むと再び射撃する。次々に死銃の機械馬の近くに弾丸が着弾するが、やはり直撃弾は未だに無かった。
そうして、リョウが再び怒鳴る。

「行くぞ!」
「あぁ!!」
ハンヴィーの速度は既に、時速200キロを超えていた。

「3!」
キリトがM8を片手に持ちかえ、尚も真後ろから突いてくる死銃を撃ち続ける。

「2!」
腰に触れる。鋼鉄の冷たく硬い感覚がキリトの手に伝わる。

「1!」
それを引きぬいて、持ちあげる。

「撃て!!」
「ふっ!」
瞬間、キリトは車体左斜め下に向けて、DEを発砲。直後、キリトは自分が何を撃ったのか気付いた。あっという間に、それの前を自分達が通りすぎたからだ。

『タンクローリー!!?』
それは、ガードレールに運転席をぶつけたタンクローリーだった。他の車と比べると、幾分か汚れが少なく、新車っぽく見えるタンクローリーだ。
GGOにおける障害物にもFPSらしく、時折大型の機械などにはガソリンが残っている場合もある。しかしそれはランダムで、かなり稀な確率の筈だ。つまりリョウはあれが爆発する方に賭けたと言う事かと、キリトは瞬間的に思った。
しかしリョウがキリトにあのタンクローリーを撃たせた理由は、それだけでは無い。

FPSのジンクスを知っている方には分かるかもしれない。

キリトは、“FPS”で“新車(ッぽい)”を、撃ったのだ。

ズガアァァァァァァァァァァァァン!!!!!と、内臓をかき混ぜられるような轟音と共に、タンクローリーが吹き飛んだ。空高く炎が上がり、爆風が吹き荒れる。
FPSやTPSなどのジャンルのゲームには、偶に言われる所で、こういうジンクスがあるのだ。
即ち、「新車は爆発する」
リョウは、そのジンクスに乗ったのである。

直前で気付いたらしい死銃は機械馬から飛び降りたが、爆風と爆炎はもろに持ち主を失った機械馬を襲い……一秒たたずに、哀れな鋼鉄のサラブレッドは、粉々になった。
それはとても喜ばしいのだが、実は喜ばしくないことも、この爆発には有る。

爆風が、ハンヴィーを飲み込む。

「ぬおおおぉぉっ!!!?」
直前でそれに気付いたキリトが、手すりしがみついて容姿に似合わぬ男らしい叫び声を上げる。

「うわわわわわ!?!?」
「ゎ、キャアッ!?」
女子たちは高めの悲鳴を上げ……

「yeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeah!!!」
リョウは楽しげに歓声を上げて、車体をそのまま一回転させると、何事も無かったかのように再び正面に向けて走り出した。
リョウはかなりスッキリした顔でニヤリと笑うと、からかうように言った。

「俺と追いかけっこしてぇなら、先ずはちゃんと免許取ってきな。見た目ほど簡単じゃねぇぜ、死銃ちゃん」
ハンヴィーはまっすぐに、砂漠に向けて走り去った。
 
 

 
後書き
はい!いかがでしたか!?

今回は案外過程回にならなかったですね……それにしても、一体GGO編に入ってから此処まで何回戦闘シーンの書いたのだろう……1、2……13……?

か、過去最高かもしれませんねwこの戦闘数は……

ま!それも残すところあと数回!
此処からは語りが勝負……うう、上手く書けるだろうか……

ではっ! 
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