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戦国異伝

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第七十六話 九十九茄子その七


「そうなっても何にもならぬからのう」
「その通りですな。では播磨につきましては」
「上月と広瀬の二つの城はどうなっておる」
 信長は播磨にあるこの二つの城のことをだ。先程報告して来た者に尋ねた。
「その二つの城はじゃ」
「はい、どちらも主が織田に馳せ参じたいとのことです」
「そうか。それは何よりじゃ」
 信長はその報告を聞いて笑みを浮かべたのだった。
「あの二つの城が手に入れば播磨はかなり楽じゃ」
「では播磨もですか」
「このまま」
「態度をはっきりさせぬ国人には人をやる」
 これまで通りのことでいくというのだ。織田家の得意とする懐柔策である。無論そこには織田家の圧倒的な国力や兵力が背景にある。刀を持ったうえでの懐柔策である。
 それをしてだ。信長は何をするかというと。
「他の国の国人達も同じじゃ。全て取り込んでいくぞ」
「そして逆らう家は」
「その家はですな」
「そうそう滅多におらんとは思うがの」
 圧倒的な力を持つ相手がいい条件を約束して懐柔策で来ればだ。大抵の者はなびくと考えてのことだ。
「だがその場合にはじゃ」
「攻めますか」
「そしてそのうえで」
「どうしてもというのなら仕方がないですな」
「やはり」
「そうじゃ。わしは無用な戦は避ける」
 決して戦が好きではないのだ。信長とてだ。
 しかしどうしても避けられないならだ。その場合はなのだ。
「しかし戦国の世じゃ。全てがそういくものではない」
「そうですな。確かに今のところ国人達は競って我が家に加わっていますが」
「それでもですな」
「その場合は」
「そうじゃ。攻めて降す」
 そうすると言ってなのだった。信長はそのことも決めたのだった。
 こうしてだった。国人達への対処も決めてだった。
 信長は冷静な顔でだ。こう述べたのだった。
「では今からじゃ」
「はい、それではこれから」
「それぞれの国を」
「攻める。しかし播磨の兵を摂津に向けるにしてもじゃ」
 ふとだ。信長はこのことに気付いて述べたのだった。
「このままでは烏合の衆じゃな。赤松にしても別所にしてもな」
「浦上もいますが」
 だがそれでもだとだ。今難しい顔で言ったのは蒲生賢秀だった。彼も今は青い服を着ている。
 そのうえでだ。彼は言うのだった。
「家柄で言えば赤松殿ですが」
「しかし織田家に入って日がすぐです」
 このことに言ったのは竹中だった。
「随分思いきったことになりますな」
「左様、かなり問題かと」
 また言う賢秀だった。とにかく播磨のことが懸念材料だった。兵を率いる者についても。
 そしてそのことについてだ。信長もだ。
 考える顔でだ。こう言うのだった。
「それじゃ。既に権六と牛助は近江に行ってもらうことになっておる」
 織田家の武の二枚看板はだ。そちらに向けられることが決まっていた。そしてだ。
「新五郎もじゃ。調略にあたってもらうからのう」
 そしてだった。さらにだ。
「久助は大和、五郎左は丹波じゃ」
「一軍を率いるだけの方となると」
「これが」
「ううむ、そうじゃな。ここはじゃ」
 信長は考えてからだ。そうしてだった。
 信行を見た。そしてこう彼に告げた。
「勘十郎、行けるか」
「それがしですか」
「そうじゃ。ここは御主しかおらん」
 それだけの格があるとなるとだ。信行しかいないというのだ。 
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