戦国異伝
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第七十六話 九十九茄子その八
信行は兄の言葉を受けてだ。一旦はだった。
兄の言葉に頷いた。しかしだった。
難しい顔でだ。こう兄に答えたのだった。
「しかしそれがしはです」
「戦の経験が少ないのは確かじゃな」
「まして一軍を率いることははじめてのことになります」
実質そうだった。信行は戦のことには疎い。これが彼の難点でもある。
だからだ。信行自身も言うのだ。
「ですから。ここは」
「補佐じゃな」
「はい、どの者か頼めるでしょうか」
「では。そうじゃな」
信長は弟の言葉を受けて考える顔になる。そしてだ。
そのうえでだ。また言うのだった。
「では猿」
「はい」
「そなたは弟、それに小六と共にじゃ」
いつもの三人だった。その彼等に告げたのである。
「播磨に行くのじゃ。ただし三好の者に見つからん様にな」
「では道案内の者を雇いましょう」
今言ったのは羽柴だった。この辺りは流石にしっかりしている。
そしてだ。その彼が話すのだった。
「ではそのうえで播磨に入り」
「姫路辺りで一旦兵を集めよ」
「はい、そしてそのうえで」
「多少時間はかかるじゃろうがそれでも摂津に向かうのじゃ」
信長は命じる。そしてだ。
その中でだ。彼等の名前も出したのだった。
「飛騨者も連れて行くのじゃ」
「あの者達もですか」
「丹波の山道から播磨に入る」
摂津を通るのは流石に無理だった。三好の勢力圏のそこはだ。もっともその摂津は寺社の勢力や三好に逆らいだした国人達もいて三好の一枚板ではない。
しかしそこはあえて入らずだとだ。信長は話したのである。
「それでじゃ。山道を僅かな者で行くならばじゃ」
「護衛としてですか」
「あの者達を連れて行け」
また告げる信長だった。
「飛騨者をな。よいな」
「わかりました」
信行は己が戦に弱いことを知っている。それでだった。
兄の言葉に頷きだ。そうしてなのだった。
羽柴兄弟と蜂須賀、己の補佐役となった彼等にだ。こう問うたのだった。
「御主達もそれでよいな」
「いやいや、これはかなり心強いですな」
羽柴が顔を崩して笑って信行に応えた。
「あの者達が護衛に来てくれるとなると」
「それにです」
秀長もだ。彼は真面目な顔で信行に述べた。
「忍の者は山道に慣れております。案内役も期待できます」
「そうか。ではな」
「ではそれでよいな」
信行達のやり取りを見てだ。信長もだ。
満足した顔になりだ。そして言ったのだった。
「よし、では御主達は播磨に行くのじゃ」
「はい、それでは」
「飛騨殿と共に」
こうして話を決めてなのだった。播磨に送る者も決めた。
全て万端整えてからだ。信長は今度はこのことを話したのである。
「軸になるのは都じゃ」
「この都に軸を置きですか」
「そのうえでこの度の各地の戦を進められますか」
「そうじゃ。武器や兵糧はこの都に集める」
そしてそのうえでだというのだ。
「そこからその都度それぞれの陣に送るのじゃ」
「ふむ。そうなると」
そこまで聞いて言ったのは山内だった。
「都にかなりの金も用意せねばなりませぬな」
「その通りじゃ。それは三郎五郎に任せる」
信広がだ。都に留まりそうしたこと一切を取り仕切れというのだ。
「岐阜からは遠い。それでじゃ」
「畏まりました。ではそれがしは都に残り」
信広もだ。信長のその言葉に頷いて述べた。
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