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戦国異伝

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第七十六話 九十九茄子その六


「それぞれ大和と丹波をじゃ」
「はい、そこから入ります」
「そこから平定させてもらいます」
「やってみろ。丹波には他にもじゃ」
 また人の話になる。今度はこんなことを言った信長だった。
「人をやるがじゃ」
「それならばです」
 信長はまだ決めてはいなかった。丹波の話をしているつちに次第に暗くなってきた彼にだった。
 明智がだ。信長にこう言ってきたのである。
「それがしが」
「それがしもです」
「できれば」
 細川と和田もだった。幕臣達が次々に名乗り出たのだった。それを見てだ。
 信長はまずは沈黙した。しかしだ。
 すぐにだ。こう彼等に告げたのだった。
「ではじゃ」
「はい、丹羽殿のお力に」
「是非共」
 こうしてだ。丹波には彼等も行くことになった。これでこちらの話は終わった。そしてだった。
 林にはだ。こう命じたのだった。
「御主は摂津や河内、和泉の国人達や寺社をじゃ」
「我等の方にですな」
「そうじゃ、引き込め」
 そうせよというのだ。
「善七郎に藤五郎もじゃ」
 矢部に長谷川にも言う信長だった。
「御主達もじゃ。国人達を引き入れるのじゃ」
「畏まりました」
「さすれば」
「無論他の大和や播磨の国人達もじゃ」
 多くは己についたその国々のことも忘れていなかった。
「まだ織田についておらん者達はどんどん引き込め」
「所領は安堵しそのうえで」
「こちらに誘いますか」
「いつも通りじゃ。そうする」 
 こう家臣達に答える信長だった。
「丹波に伊賀もじゃ。国人も寺社も次々に取り込め」
「はい、ではその様に」
「進めていきます」
「それにあたるはじゃ」
 国人や寺社の取り込みの話にもなった。それにあたる面々のこともだ。信長は話した。これでおおよそのことが決まった。それを確めてからだ。
 信長はだ。一同にあらためて告げた。
「では。義昭様が正式に公方となられるまでにじゃ」
「それまでに三好を下しですか」
「他の国もまた」
「波多野や六角はどうにかなる」
 家臣達の言葉にだ。信長はだ。
 落ち着いた調子でだ。こう述べたのだった。
「しかし三好はそうはいかぬ」
「当面の我等の最大の敵ですが」
「あの者達はですか」
「あの者達には四国がある」
 そのだ。讃岐と阿波がだというのだ。
「今は完全にはじゃ」
「倒すことはできませぬか」
「それは」
「そうじゃ。だからまずはじゃ」
 三好を近畿から追い出すというのだった。今の信長の最大目標はそれだった。
 そしてだった。その次にだった。
「伊賀の六角、丹波の波多野は取り込み大和も播磨も完全に掌握する」
「手に入れる国は全てそうする」
「そうされますか」
「その国の城の一つや二つで満足する趣味はない」
 少なくとも信長にそれはなかった。その国に進出するならばだった。
 彼はだ。こう言ったのだった。
「その全てを掌握してじゃ」
「確かに。尾張もでしたな」
 大学が信長の話を受けてだ。そうしてだった。
 確かな声でだ。こう言うのだった。
「その国を全て掌握してこそです」
「万全に治めることができるのじゃ」
「ですな。それでは」
「だが焦ることはせぬ」
 それは決してだった。 
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