久遠の神話
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第四話 中田の告白その六
「怪物を倒すよりさらにです」
「金に力が手に入るんだよな」
「そうです。ですから」
「好きになれないな」
しかしだ。中田はというと。
難しい顔をしてだ。こう声に言ったのである。
「どうしてもな」
「人と戦うことはですか」
「甘っちょろい考えかも知れないけれどな」
こう言いながらだ。声に返す。
「それでもな」
「人と戦い倒すことはですか」
「したくない」
こうだ。はっきりと言う彼だった。
「化け物相手ならどれだけでもやるがな」
「そうですか。しかし」
「望みを果たす為には」
「最後に一人にならなければいけません」
声の感じは穏やかだ。だが中田にとってはだ。
峻厳そのものの言葉だった。実に厳しい。
その厳格な言葉を受けてだ。彼はまた言った。
「だよな。しかもだろ」
「はい、最後の一人になるまでです」
「戦いは続けられるか」
「そうです。魔物も永遠に出て来ます」
「手術代だけでいいんだけれどな」
中田は苦笑いになってこう言った。
「けれどどうもな」
「ご両親と妹さんはどうですか?」
「今は延命にしかなってない」
金を稼いでいるそれがだ。それの費用になっているのだ。
それに加えてなのだ。家族を助けたければ
「やっぱり手術が必要だ。それにな」
「それに?」
「手術は絶対に成功するそうだ」
それは間違いないというのだ。
しかしだ。中田は顔を曇らせてまた言った。
「けれどそれでもな」
「完治はですか」
「無理みたいだな。怪我が予想よりずっと酷くてな」
「では最後の一人になりです」
そのうえでだというのだ。声は。
「願われれば」
「皆元通りになるんだな」
「そうなります。ですから」
「やるしかないんだな」
中田は溜息をついた。しかしそれでも言ったのだった。言うしかなかった。
「そうなんだな」
「そうです。その為には」
「わかったさ」
浮かない顔でだ。首を横に振って項垂れてだ。
中田は声に答えた。そうして言うのだった。
「他の奴ともな」
「戦われますね」
「ああ、そうする」
こう答えた彼だった。そう答えるしかなかった。
「これからもな」
「はい、それでは」
「じゃあ。今は金はこうして貰ったしな」
手の中のその黄金の棒を見てだ。そのうえでの言葉だ。
「とりあえずはこれでいいよな」
「今は」
「これで帰るさ」
そうするとだ。中田は声に答えた。
「じゃあな」
「はい。それでは」
こうした話をしてだった。声も別れの言葉を言った。
その別れの言葉を受けてだ。中田はその場所を去ろうと踵を返した。だがその彼の前にだ。
上城がいた。そうしてだ。
表情を強張らせてだ。彼はそこに立っていた。
何も話さない。しかしだ。それでも目で言っていた。
その目を見てだ。中田も言う。
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