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戦国異伝

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第七十四話 都の東でその八


 蒲生はこう部下達に命じたのだった。
「ではよいな」
「はい、軽くですね」
「下がる」
「そうされますか」
「うむ、そうする」 
 こう応えてだった。蒲生はだ。
 三好の兵の兵達がだ。こう言うのを聞いた。
「おい、これはまずいぞ」
「折角休憩を取れると思ったんだがな」
「その前に敵が来るなんてな」
「因果なものだぜ」
「全くだ」
 忌々しげな言葉だった。誰もがだ。
「飯位食わせろよ」
「身支度だって充分じゃないってのによ」
「全く。せわしない戦だな」
「大急ぎで来てこれからかな」
 こう愚痴を漏らしながら来るのを聞いていた。それは侍大将や足軽大将達も聞いていた。それですぐに蒲生に対してだ。こう言ってきたのだった。
「あの、ここはです」
「すぐに攻めましょう」
「多少攻めても軍師殿の策に支障はないかと」
「ですから」
「いや」
 だがそれでもだとだ。蒲生は述べてだ。
 そのうえでだ。彼等にこう返すのだった。
「それでもここはじゃ」
「攻めませぬか」
「あくまで一戦交えてですから」
「それで誘い出すことに徹されるのですか」
「うむ、そうする」
 こう言ってだった。そのうえでだ。
 まずは三好の軍と戦う。その際だ。
 蒲生自身も先頭に立ち刀を抜きだ。こう兵達に命じた。
「よし、攻めよ!」
「はっ!」
「それでは!」
 従う侍達もだ。彼の言葉に従いだ。
 果敢に攻める。こうして鴨川の戦いははじまった。
 蒲生率いる軍はまずは果敢に攻めだ。三好の兵を押した。しかしだ。
 次第にだ。三人衆も気付いて言うのだった。
「安心せよ!敵の数は多くはない!」
「大したことはないぞ!」
 こう言ってだ。乱れようとする兵達を抑えるのだった。
 そしてそのうえでだ。三人は兵達にこうも告げた。
「押し返せ!数では全く負けてはおらん!」
「充分に勝てるぞ!」
「だからじゃ。落ち着け!」
「そのうえでやり返すのじゃ!」
 彼等の言葉を受けてだ。兵達もだ。
 蒲生が率いる織田の軍勢に襲い掛かる。それを受けてだ。
 蒲生は即座にだ。兵達に命じたのだった。
「よし、今じゃ!」
「はい、ここは!」
 兵達も彼の言葉に応えてだ。すぐにだった。
 退きはじめる。そのうえでだ。
 すぐにだ。鴨川の方に逃げる。当然三好の兵達もそれを追う。
 蒲生はそのまま川を渡る。どの馬も兵も泳ぎが達者だ。その彼等をだ。
 三好の兵はさらに追っていく。ここでまた三人衆が言う。
「追え、逃がすな!」
「川を渡りその勢いで向こうの織田の軍勢も撃て!」
「奴等も倒すのじゃ!」
 見れば織田の陣は緩い。それも見ての命だった。
 こうして三好の兵達は川を急いで渡っていく。しかしだった。
 その彼等を見てだ。離れた場所に布陣している松永は己の家臣達に言うのだった。
「これは駄目じゃ」
「三好殿は敗れますか」
「この戦は」
「そもそも兵の数が違う」
 松永は最初にこのことを指摘した。 
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