久遠の神話
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第三十六話 中田との戦いその九
「そもそもどれだけなんでしょうか」
「大体五十年に一度かしら」
「五十年ですか」
「ええ。それぞれの剣士達の魂は変わらないの」
戦う十三人の剣士達の魂は同じだというのだ。つまり彼等は神話の頃から永遠に戦い続けているというのだ。
「人格は違っていてもね」
「魂と人格はまた別ですか」
「魂は最初からあり人格は形成されるものよ」
「形成?」
「つまり。人格は魂を覆う服の様なものなのよ」
聡美は樹里にわかりやすくこう説明した。
「その違いなのよ」
「じゃあ魂が同じでも」
「そう。人格はね」
「それぞれの輪廻転生の中で違うんですか」
「剣士の魂は変わらないのよ」
聡美はこのことを今上城達に話した。
「そのことも覚えておいてね」
「じゃあ上城君も」
樹里は聡美のその話を聞いてあらためて上城を見て言った。
「時代によってはこうした性格じゃなかったんですか」
「そうよ。悪人だった場合もあるかもね」
「上城君が悪人って」
「思いも寄らないからしら」
「そんなの想像できないですよ」
そこまでだというのだ。
「悪人の上城君なんて」
「そうよね。けれど私にはわかるわ」
「銀月さんにはですか」
「見てきたから」
ふと遠い目になってだ。聡美は述べた。
「だからね」
「見てきた?」
「そう。だからわかるのよ」
こう樹里に答える。
「それでなのよ」
「見てきたっていいますと」
「そう。見たからね」
こう言った。しかしだった。
この話はこれで終わりだった。それ以上は言わなかった。
そしてその聡美は二人に今度はこう提案した。
「じゃあここで少し飲んでから帰りましょう」
「そうですね。次は何を飲まれますか?」
「またジンジャーエールにするわ」
見れば二杯目も飲んでいた。聡美はそのうえで樹里に答えた。
「今度もね」
「そうですか。三杯目もですか」
「ジンジャーエールですか」
「美味しいから」
それが理由だとだ。聡美は二人に答える。
「だからね。それにするわ」
「じゃあ僕も」
「私も」
二人もだ。聡美の話を聞いて言った。
「ジンジャーエールにします」
「そうさせてもらいます」
二人もジンジャーエールを飲んだ。セルフサービスで持って行く。そしてだった。
三人は飲みながら話をした。それが一段落してから店を出た。
店を出るとその前に中田がいた。バイクに乗ってヘルメットを脱いだところだ。
その彼がだ。上城に顔を向けて言ってきた。
「話は聞いたぜ」
「声にですか」
「ああ。決心したんだってな」
気さくな感じの明るい声だった。
「君も戦うんだな」
「決めました。戦ってそうして」
「この戦いを止めるんだな」
「そうすることを決めました」
「じゃあ。いいよな」
上城の言葉を聞いてだ。そのうえでだった。
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