久遠の神話
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第三十六話 中田との戦いその八
「貴女もね」
「私もですね」
「戦えないけれど」
だがそれでもだというのだ。
「戦う彼をね」
「支えるべきですね」
「一人での戦いは辛いわ」
肉体的ではなく特に精神的にだ。そうだというのだ。
「孤独は人を折れさせてしまうものだから」
「だからですか」
「そう。彼を一人にしないでね」
聡美は上城に対するのと同じ位切実な顔で樹里に話した。
「何があっても」
「若し上城君が一人になれば」
「折れるわ」
ここでは上城を見てだ。聡美は樹里に言った。
「そうなるから」
「わかりました。じゃあ私も」
「そうした意味では貴女も。そして私も」
「銀月さんもですか」
「戦うことになるわ」
剣士ではないがそれでもだというのだ。
「彼と一緒にね」
「戦いを止める為に」
「そう。戦うのよ」
「そうですね。じゃあ」
切実な顔になった。樹里もまた。
そしてそのうえでだ。こう言ったのだった。
「私達になりますね」
「ええ。私も入るから」
樹里だけでなく聡美もだった。
「戦いを終わらせる為にね」
「頑張るんですね」
「そうしましょう」
二人で話してだ。そうしてだった。
樹里と聡美は上城、戦うことを止めさせる為に戦うことを決意した彼に協力すること、つまり彼女達も戦うことを誓い合ったのだった。それからだった。
聡美はあらためてだ。お代わりのジンジャーエールを持ってきてそれを飲みながら樹里、今度はレモンソーダを飲んでいる彼女にこう話した。
「私達だけと上城君だけでは」
「まだ足りないですか」
「同志は少しでも多い方がいいわ」
だからだとだ。聡美は樹里に話していく。
「そうね。ここはね」
「工藤さんや高橋さんもですね」
「あの人達ともお話をして」
そしてだというのだ。
「共に戦いを終わらせるべきよ」
「そうですね。それがいいですね」
樹里も聡美のその考えに頷いて答えた。
「お二人なら絶対に力になってくれますね」
「若し三人が生き残れば」
戦いを終わらせたい考えの三人が生きればだというのだ。
「残る二人は戦いを離脱してね」
「そして残る一人が戦いの終焉を願えばいいのですね」
「それでもうこんな無益な戦いは終わるわ」
聡美の言葉は切実なものになっていた。これまでと同じく。
「神話の時代から続いて。多くの剣士が倒れていった」
「それだけ多くの剣士が倒れたんですね」
上城のそこに悲しみを見ている言葉にだ。聡美も悲しい目になって答えた。
「ええ。それはね」
「そうなんですか。多くの剣士達が」
「一度の戦いに参加する剣士の数は決まっているわ」
「十三人ですね」
「その数は減ることもなければ増えることもないわ」
常に十三人だというのだ。剣士の数自体は。
これだけを見れば多くはないかも知れない。だが、だった。聡美はこのことを言ったのである。
「けれどそれが神話の時代から何十何百と繰り返されると」
「それだけ倒れる剣士の数は多くなりますね」
「そういうことよ」
このことがだ。聡美が今言いたいことだった。
「この戦いでは実に多くの剣士が倒れているわ」
「大体何年に一度位戦いは行われているんですか?」
樹里が問うてきた。このことを。
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