久遠の神話
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第三十六話 中田との戦いその五
「だからなのよ」
「ううん、じゃあコーラとかは」
「サイダーもですか」
「あることはあっても」
「それでもですか」
「あまり、なんですね」
「そう。あまり飲まないの」
ギリシアでは炭酸飲料はあまり飲まないというのだ。日本程。
「私だけかも知れないけれどね」
「それでお酒はワインですよね」
「それになりますよね」
「そう。昔からね」
酒はそれになった。古代、神話の時代からのことだった。
「飲んでるわよ。ただ昔のワインと今のワインじゃね」
「違うんですか」
「やっぱり」
「ええ、違うわ」
聡美は二人に今度はワインのことを話した。ジンジャーエールを飲みながら。
「随分ね。昔のワインはね」
「どんなのだったんですか?」
「味とかは」
「まず。コルクとかがなかったから」
これが発明されるのはずっと後になってのことだった。つまりワインは密封されて保存されていなかったのだ。そうしたワインがどういったものかというと。
「酸っぱかったわ」
「あっ、ワインが空気に触れてですか」
「それでなんですね」
「そうなの。新しく造られたワインは違うけれど」
日が経ってだ。すぐにそうなったというのだ。
「それで。その酸っぱいワインをね」
「どうしたんですか?」
「何かある感じですけれど」
「お水とか海水で割って飲んでいたのよ」
それが古代ギリシアでのワインの飲み方だというのだ。
「そこが違ったのよ」
「へえ。お水で割ってですか」
「そうしてワインを飲んでいたんですか」
「それが古代ギリシアのワインの飲み方ですか」
「そうだったんですか」
「ワインが貴重だったからそうして飲んでいたけれど」
だがそれでもだとだ。聡美は言うのだった。
「次第にそれがマナーになったの」
「じゃあワインをストレートで飲むのは」
「それは」
「そう。当時はマナー違反とされていたのよ」
聡美は当時のことをだ。その目で見たかの様に二人に話した。
「それはローマ帝国でもかなり後になってからもだったのよ」
「随分違ったんですか」
「そこは」
「そうなの。本当にね」
聡美は二人にワインの飲み方、古代のそれを話していく。それはギリシアだけではなかった。
「それで古代はこうした飲み物はね」
「あっ、そうですよね」
「お茶もでしたね」
「お茶は中国でもとても高価なものだったのよ」
それこそ皇帝やそうした高貴な者達が飲むものだった。
「今上城君が飲んでいる烏龍茶みたいなお茶も」
「じゃあ私が飲んでいる紅茶は」
樹里はそれだった。ミルクティーだ。
「これもですか」
「ええ、それもね」
「高価だったんですね」
「お茶自体が古代ギリシアにはなかったのよ」
この事情もだ。聡美は二人に話した。
「高価になる以前に」
「ううん、お茶がないって」
「そうした生活はちょっと」
「考えられないです」
「とても」
「今ではね。けれど昔は」
古代ギリシア、その頃はだというのだ。
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