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久遠の神話

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第三十六話 中田との戦いその三


「ここ日本だからな」
「それはそうだね。ちょっとそういうのは」
「有り得ないから。ただね」
「ただ?」
「確かに連想させられるのよね」
 聡美とアルテミス、両者はだというのだ。
「髪は銀色で目は緑」
「まずはその二つが同じだね」
「背が高くてすらりとしてて」
「おまけに弓が得意ときたらね」
「そのままだからね」
 まさにだ。アルテミスそのままだというのだ。
「銀月っていう名前も」
「あっ、下の名前もじゃないかな」
 上城は聡美、この名前についても言った。
「そんな感じしない?月灯りを表したみたいな」
「あっ、言われてみれば」
「そう。似てるでしょ」
「うん、確かにね」
 こう樹里に話してだった。上城はさらに話した。
「アルテミスの筈がないけれど連想させるものがあるね」
「ええ。面白いことよね」
「そうだよね。ただ銀月さんって」
「今度は何なの?」
「いや、あの人どうやって剣士の戦いの書を読んだのかな」
 上城はふと疑問に感じたのだ。このことについて。
「書かれてる言葉って絶対に今のギリシア語じゃないから」
「古代のギリシア語?」
「それって普通に読めるのかな」
 首を捻ってだ。上城は言うのだった。
「それってかなり難しいよね」
「そうよね。昔のギリシア語になると」
「日本で言うと古典になるけれど」
「現国と古典って随分違うわよ」
 樹里は少したまりかねた様に言った。
「言葉遣いに文法も違うわよね」
「そうそう。全く違う言葉じゃない」
「それってギリシア語もなのね」
「絶対にそうだよ。文字も変わってるだろうし」
「何もかもが別の言葉になっているから」
 難しいのだとだ。樹里も言う。それでだった。
 ここでだ。樹里はこう言ったのだった。
「読むのは相当難しいわね」
「そうだよ。しかもね」
「しかも?」
「今は印刷で書いてるじゃない」
 上城はこのことも話した。文字のことも。
「だから凄く読みやすいけれど」
「あっ、昔の言葉は」
「そうそう、それぞれ手で書いてるから」
「余計に読みにくいわね」
「古文書とか読める?」
 生真面目な顔でだ。上城は樹里に尋ねた。
「村山さんはそうしたのは」
「読めないわよ、あんなの」
 無理だとだ。樹里もたまりかねた様な顔でこう答えた。
「よく時代劇とかで出て来るあの崩した字よね」
「そう、筆で書いたね」
「あれ昔の人はよく読めたわね」
 これが樹里の返答だった。
「そう思うわ」
「うん、けれど銀月さんは読めるみたいだね」
「それが凄いっていうのね」
「まあ。大学生ならね」
 それならとも言う上城だった。
「そうしたことも勉強するだろうし」
「古文書の解読も」
「そうそう。大学生なら勉強するだろうけれど」
「じゃあ銀月さんも?」
「その可能性はあるけれどね」
「それなら問題ないんじゃないかしら」 
 樹里は上城の言葉からこう答えた。 
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