久遠の神話
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第三十六話 中田との戦いその二
「エンディミオンが自分のものにならないのなら」
「そう思ってだったんだ」
「エンディミオンをずっと眠らせたの」
「その魔法って解けないの?」
「ええと。この本だとね」
樹里はその本を読みながらまた上城に話した。
「魔法を解くには力が必要らしいのよ」
「力?」
「そう。力がなの」
それが必要だというのだ。エンディミオンを目覚めさせる為には。
「それでセレニティはずっと力を集めているらしいわ」
「そうしているんだね」
「どういった力でどうして集めてるかはわからないけれど」
だがそれでもだ。セレニティは力を集めているというのだ。
「そうしているらしいわ」
「ううん、何かね」
樹里の話を聞いてだ。上城は自分の席で腕を組んだ。
そしてそのうえでだ。こう言うのだった。
「可哀想な話だよね」
「そうよね。けれどセレニティは今もエンディミオンを愛していて」
「力を集めているんだ」
「魔法を解けるだけの力をね」
「その力が早く集るといいね」
このことはだ。上城は心から素直に願った。
「そう思うよ」
「そうよね。それでアルテミスだけれど」
「そのセレニティに月の女神の座を譲られた」
「セレニティとは姉妹の様に仲がよくてね」
元々親しかったというのだ。務めを譲られる前から。
「彼女のことをずっと心配しているらしいわ」
「アルテミスがなんだ」
「そうらしいわ。アルテミスもまたね」
「優しい性格なんだね」
「そうみたいね。それでセレニティもアルテミスも」
樹里はこの二柱の神々について上城にさらに話していく。
「その象徴は銀でね。髪は銀色で」
「銀色なんだ」
「そう。それで目は緑色らしいわ」
「銀色の髪に緑色の目なんだね」
「奇麗な感じみたいね」
「それは女神だから奇麗だよね」
「ええ。そうよね」
「銀色に緑かあ」
上城は少し考えてみた。そうして。
頭の中で彼女と合わさった。そのうえで樹里に話した。
「それって銀月さんと同じだよね」
「そうそう、一緒よね」
「偶然の一致だけれど凄いね」
「しかもアルテミスって背が高くてすらりとしててね」
そしてだというのだ。
「あと。弓が得意らしいわ。狩りの女神でもあるから」
「弓も使うっていうと」
「そっくりそのままよね」
「そうだね。そっくりだよね」
上城も言う。そのままだとだ。
「偶然って怖いよね」
「銀月さんってギリシア生まれだし」
「アルテミスままだね」
「ひょっとしてね」
樹里は有り得ないと、上城もそう考えてだった。
そのうえでだ。こう話すのだった。
「銀月さんってアルテミスかも知れないわね」
「そんなこと有り得ないけれどね」
「月って名前だし」
彼女の名前の話題にもなった。
「若しかしたらね」
「それ本気で思ってるの?」
「そんな訳ないじゃない」
すぐにだった。樹里は笑ってそのことは否定した。
「幾ら銀月さんがギリシア生まれでもね」
「神様ってことはないよね」
「絶対にないわよ。それにここに来る目的もないじゃない」
聡美が実際にアルテミスだとしてもだというのだ。
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