久遠の神話
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第三十五話 止める為の戦いその八
だが次の日だった。上城のところに高代が来た。その時はただ学校の廊下で擦れ違っただけだった。だがそれでもだ。高代は彼の顔を見て言ったのである。
「決意されたのですね」
「わかるんですか?」
「わかります。いい顔をしていますね」
その彼の顔を見て微笑んで告げた言葉だった。
「まだ迷いはありますが」
「それでもですか」
「はい、戦うのですね」
「そのつもりです。そして」
「私も止めますか」
「先生は本当は戦いたくないと思われているのなら」
尚更だとだ。上城は高代の顔を見返して言った。
「僕は絶対に」
「そうですか。それでは」
「あの、本当に先生は」
「ですから。私にはそうした学園を築ける地位も人脈も資金もないのです」
その三つのだ。どれもだというのだ。
「ですから。どうしてもです」
「戦いから手に入れられますか」
「そうします。それが私の考えです」
高代はその考えを変えない。そしてだった。
上城の目を見てだ。言ったのだった。
「戦いたくなれば何時でもいらして下さい」
「そうしてですね」
「はい、私は私の夢の為に戦い」
「僕は僕の願いの為に戦うのですね」
「そうしましょう。是非」
「ではその様に」
二人で話してだ。そのうえでだった。
彼等はお互いの決意を確かめ合い今は別れた。だがその去り際にだ。
高代はふとだ。こう上城に言ったのだった。
「一つ。君が絶対に守らなければならないことがあります」
「僕がですか」
「村山さんを悲しませてはいけません」
このことをだ。擦れ違って背中合わせになった上で背中越しに告げたのである。
「例え何があろうとも」
「そう、ですか」
「はい。人は他の人を笑顔にさせなくてはなりません」
「先生がいつも仰っていることですね」
「特に交際相手はです」
とりわけだ。そうだというのだ。
「悲しませてはなりません」
「だからですか」
「死んではなりません」
こうも告げるのだった。無論彼が上城を倒す可能性も頭に入れている。パラドックスだ。
だがそのパラドックスを承知でだ。彼は上城に告げたのである。
「それは絶対にです」
「絶対ですか」
「そうならない様にはしなければなりません」
上城はだ。例え何があろうともだというのだ。
「わかりましたね」
「はい、じゃあ」
「強くなることです」
こうも告げる高代だった。
「では」
「はい、それじゃあまた」
「それにしても。話は聞きましたが」
背中越しのままだ。高代はまた言ってきた。
「八人目の剣士は魔ですか」
「声からですか」
「はい、聞きました」
あの声にだ。高代は言われたというのだ。
「確かに」
「そうですか。あの声に」
「しかもかなり好戦的な様ですね」
「戦うことが目的みたいです」
「戦闘狂ですか。それならです」
「それならですか」
「私としても戦うことに躊躇はありません」
上城達に対する時とは違い。全くだというのだ。
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