戦国異伝
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第七十二話 六角との戦その七
二つの城が陥ちた。そのことはすぐに信長にも伝えられた。それを受けてだ。
信長は幸田や浅井達にだ。こう告げたのだった。
「すぐに他の支城にもそのことを伝えよ」
「そしてそのうえで、ですか」
「開城を勧めますか」
「織田に加われば迎え入れる」
織田の家臣、そして兵にというのだ。
「そのことも伝えよ」
「では彼等も取り込む」
「そうもされますか」
「その通りじゃ」
こう幸田と浅井に言うのだった。
「わかったな。そう伝えるのじゃ」
「まことにそうされるのですか」
「六角の者達もまた」
「伊勢や美濃でしたことと同じじゃ」
信長の言葉は当然といったものだった。他家の者達を家臣とすることについて。
そしてだ。実際にこうも言ったのである。
「わしは天下を統一するのじゃ」
「だからですか」
「他家の者達もですか」
「そうじゃ。皆わしの家臣となるのじゃ」
天下を統一すれば自然とそうなる。だからだというのだ。
ここでだ。彼はまた彼等に話した。
「それでどうして分ける必要があるのじゃ」
「だからですか」
「他家の者であろうとも用いる」
「そうされるのですか」
「特に優れた者ならばじゃ」
才があるならばだというのだ。
その話を聞いてだ。幸田と浅井はだ。
すぐに他の者達と共に他の支城に向かった。二人の他には矢部や長谷川、それに真木や梶川といった面々だ。彼等が行きだ。そしてなのだった。
観音寺城の支城は全て織田に下った。そのことをだ。
信長は文矢で観音寺城に伝えた。それを受けてだ。
六角はだ。苦い顔で家臣達に言うのだった。
「これはまことだと思うか」
「我等を動揺させる為の偽りでは?」
「それではないでしょうか」
「ふむ。その可能性もあるな」
家臣達の言葉を聞きだ。六角はまずはそう考えた。しかしだ。
念の為櫓から城の外を見る。するとだ。
織田の青い具足や陣笠だけでなくだ。その他の色もあった。
それは浅井の藍や徳川の黄だけでなくだ。地味な色もあった。それはだ。
「六角の兵もおるな」
「はい、間違いありません」
「あの具足の色は」
「家紋こそ出してはいませんが」
そうした陣笠は被っていない。丁度具足やそうしたものを青い塗っている最中らしい。しかしだ。
彼等が今は織田家の者になっているのは明らかだった。それでだ。
六万の兵がだ。今はだった。
「六万に数千じゃな」
「どうやら支城の兵がかなり来ています」
「そのまま織田に入った様ですね」
「間違いなく」
「戦に勝てば兵は増える」
戦における基本の一つをここで言う六角だった。
「そういうことじゃな」
「ではやはり全ての支城がですか」
「陥ちましたか」
「そうなったのですか」
「そうじゃな。間違いない」
また苦い顔で言う六角だった。そしてだ。
彼は周囲にだ。こう言うのだった。
「他の城であればとうの昔にじゃな」
「はい、陥ちています」
「ですがこの観音寺城ならばです」
「そう簡単には陥ちませぬ」
「そうじゃ。この城は陥ちぬ」
まさにそうだとだ。六角も断言する。そうしてだった。
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