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久遠の神話

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第三十四話 戦闘狂その三


「北朝鮮とかですね」
「はい、あの国がいい例えですね」
 その先軍政治の国だ。戦前の日本なぞ比較にすらならない軍国主義国家である。
「あの国に対して武力が備わっていないとどうなりますか」
「攻められます」
 樹里はこう高代に答えた。
「間違いなく」
「そうですよね。やっぱり」
「あの国に攻められないですか?」
「絶対に嫌ですよ、そんなの」
「僕もです」
 樹里だけでなく上城もこう答える。
「そんなのはとても」
「そうですね。僕もあの国に攻められるのは嫌です」
 高代も同じだった。このことは。
「断じて」
「だからですか」
「力は必要ですか」
「抑止力としても」
 そうだというのだ。
「必要ですよ。そして勝ち取る為の力も」
「それは剣士としての力ですか」
「そう。力は必要なんだ」
 教師としてだ。高代は上城に話していく。
「ただ。僕はね」
「先生は?」
「その力には絶対に必要なものがあると考えています」
「絶対にですか」
「そう、必要なものがあります」
 こう上城に話すのだった。
「それがね。あります」
「それは一体」
「心です」
「心ですか」
「そう。人の力には心が必要なのです」
「若しその心がないと」
 上城は高代の言葉にそのまま問いを返した。
「どうなるでしょうか。力は」
「最低の力になります」
 高代は忌々しげに、かつ暗い口調になって上城、そして樹里に述べた。
「そうした力に」
「それはまさか」
「そう。暴力です」
 それがだ。最低の力だというのだ。
「暴力になってしまいます」
「それが最低ですか」
「暴力は絶対に持ってはいけない力です」
「そういえば先生はいつもそう仰っていますね」
「それは本当の力ではありません」
 高代はこうまで言った。暴力に対して。
「心があり力を制御してこそ」
「力ですか」
「暴力は拳や足からだけ出されるものではありません
「口でもですね」
「言葉でも人は傷つけることができます
「じゃあ。暴力は」
「人を傷つけるだけの力です」
 それがだ。暴力というものだというのだ。
「たったそれだけのものです」
「ですが剣士は」
「暴力ではというのですね」
「戦いに際して使うそれは」
「そうですね。そこに心がなければ」
 どうかというのだった。剣士との戦いについても。
「そうなります」
「ですが剣士としての戦いは」
「殺し合いですね。もっと言えば」
「では暴力ではないのでしょうか」
「少なくとも私はそうした力にならないように心掛けています」
 暴力、それは持たない様にしているというのだ。
「絶対に」
「そうですか」
「戦いにも、確かな心が必要で」
「敵を倒すにしても」
「心に筋がないといけないです」
「筋といいますと」
「モラルと言いましょうか」
 今度はこうも言った高代だった。 
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